巻き込まれた少年は烏になった:Re   作:桜エビ

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ラビエス戦の杜撰さに過去の自分を殴りたい


ビキニング

 空気の張り詰めた会議室でそれは行われていた。

 

「さて、次の議題ですが、ここ一週間の間に[打ち合わせ]と違う戦闘が4回行われました。由々しき事態です。先ず、それぞれの原因究明の結果を報告してください」

 

 若々しい男が立ち上がる。

 ここにいる面々の大半が企業の重役である。そして立ち上がったのはローゼンタールの代表だった。

 

「我々ローゼンタールから。我々の場合、部下に内容を伝える際に社内ネットワークを使用してメッセージを送ったのですが、送信中にクラッキングを受け内容が改竄されていました。こちらが資料です」

「……なるほど」

「今後はセキュリティー強化や、情報伝達をアナログにするなどして確実性を高めます。今回の件、誠に申し訳ございませんでした」

「分かりました。では国連では何が」

 

 企業と国連は表向きには敵対関係。にも関わらず、企業の重役が集まるこの場には国連議長もいたのである。

 

「こちらも同様にクラッキングを受けていました。手口はローゼンタールが受けたものと全くと言っていいほど同じだ」

「なるほど、ここはどうやら同一犯のようですね。ではGAは」

 

 初老の女性が答える。

 

「こちらの場合、ホットラインのテキストメッセージが改竄されていました。国連のメッセージと比較的すると、こちらの戦力が後ほど手に入れた本来の指示書よりも少ない」

「国連議長」

「……その指示書に間違いは無い。そしてそちらに届いたメッセージを確認したが、勝敗すら入れ替わっている」

 

 国連議長はしぶしぶ肯定した。

 

「セキュリティーチェックの間、情報伝達を口頭などネットワークに頼らない形式にして様子を見ましょう。さて、次の議題は……」

 

 □

 

 卒業式が終わって、二人は向き合っていた。

 

「予定合わないね……」

「まあ仕方ないか。気づくの遅かったし」

 

 親からのサプライズ旅行と紫蘭の空いてる日が被り、気まずい空気になったときの記憶。

 少しの沈黙の後、紫蘭は後ろを向き距離を取る。

 紫蘭が口を開いた。

 

「ねえ、練」

「なんだ」

 

 瞬間、猛烈な炎が吹き荒れた。

 その熱さに思わず顔を庇い、そして再び周囲を見回す。

 

「どうして人殺しになっちゃったの?」

 

 積み上がる瓦礫。先程まで学校だったものは廃墟と言ってもいいほど破壊されていた。

 

 振り返る紫蘭は左半身が真っ赤に血に濡れて。

 

 

「‼……夢か。踏ん切り、つけたつもりだったんだけどな」

 

 自室の机から跳ね起きた。どうやら、勉強中に寝てしまったらしい。

 しかし悪夢になるとは、自分で感じているより重く考えてるのか。

 

 あれから何回もミッションに行った。

 拒否権は無い。言われたものを戦って壊した。

 でも、何か違う。楽しい訳でもない、ひたすら罪を重ねる日々が続いた。

 

 

「あ、紫蘭と連絡してない……」

 

 夢がきっかけで、京都で会ったきり連絡してなかったことを思い出す。急いで文面を考えてメールを送る。

 送信ボタンを押して数分、置いていた端末はメール返信ではなくコール通知で返してきた。

 

「おおっと⁉」

 

 急いで出ようとして手が滑るが、なんとかキャッチして応答ボタンを押す。

 

「まさか電話掛けて来るなんて思わなかった……」

『ごめん……久しぶりでさ、声聞きたくて』

「ああ、ごめん。気が回らなくて」

 

 確かに、1ヶ月以上放置してしまった。

 外では早く出過ぎたセミが鳴いている。夏休みの時期も近づいてきているのだな、とぼんやり思った。

 

『大丈夫?声暗いよ』

「昨日まで外国行ってて、時差ボケにやられた。言うほど深刻じゃない」

『そう、良かった』

 

 悪夢を見ていた、なんて言ったらさらに心配を掛ける。汗の具合から、結構うなされていたようだ。

 これ以上話していたらボロが出る、と思って切ろうとする。

 

「あんまり話すと怒られるからな。そろそろ切るぞ」

『分かった。生きてるかの確認だから、もうちょっと連絡がほしいな』

「了解、じゃあな」

 

 なんとか会話を終わらせる。

 カレンダーを見て、明日はアリーナで65位――ラビエス・モンテさんと対戦する。

 

 気を引き締めないと。

 

 □

 

 

 アリーナでアセンブルを確認。

 

 ――――

 HEAD:YH12-MAYFLY

 CORE:C03-HELIOS

 ARMS:CR-A88FG

 LEGS:CR-LH84L2

 F.C.S.:CR-F69

 BOOSTER:CR-B83TP

 GENERATOR:KONGOH

 RADIATOR:ANANDA

 INSIDE:None

 EXTENSION:None

 BACK UNIT R:WB03R-SIREN

 BACK UNIT L:WB01M-NYMPHE

 ARM UNIT R:WE07M-PIXIE3

 ARM UNIT L:CR-WL79LB2

 

 ――――

 

「軽量二脚でマシンガン、6連ミサ、ブレードにして、タンクの後ろをとる。っとこれでいいはず」

 

 最後の確認を終えると俺はACに乗り込んだ。

 アリーナに入場した俺はラビエスさんを待った。

 

 

『ラビエスの登場です』

 

 アナウンスとともにシャッターが開いた。

 暗くて中がよく見えない。

 しかし、ズシン、ズシン、とタンクでは聞かない音が聞こえる。

 

『な、なんとラビエス。2年ぶりに重量二脚で登場だぁ!かつて[門番]と呼ばれた彼が帰ってきたぁ!』

 

(嘘だろ⁉あの人が足を変えた⁉)

 

 ホログラムでアセンブルが表示される。

 

 ――

 HEAD:H04-CICADA

 CORE:C05-SELENA

 ARMS:YA10-LORIS

 LEGS:LH08-LACKAL

 F.C.S.:CR-F73H

 BOOSTER:B03-VULTURE2

 GENERATOR:KONGOH

 RADIATOR:CR-R92

 INSIDE:I04E-SQUID

 EXTENSION:None

 BACK UNIT R:CR-WBW98G

 BACK UNIT L:CR-WBW98G

 ARM UNIT R:CR-WR88G2

 ARM UNIT L:CR-WH01HP

 ――

 

 

 

 一応、戦い方の変更はしなくてもいいかもしれないが、足を変えると当然ながら挙動が変わる。

 しかも、俺は最盛期のラビエスさんの動きを知らない。

 

『少年』

「なんですか」

 

 彼はゆっくりと試合開始位置へと進む。

 

『俺は絶対曲げない1つの信念がある』

「いきなりですね。アセンブル変更と関係が?」

『ああ。俺は味方を自分の目の前で死なせないと決めている。俺がタンクに変えたのは、味方が助けを求める時に戦えるタフさを欲したからだ。目の前で機体が動かず助けられないなんてのは、もうごめんだ』

 

 そして俺の正面まで来た。

 

『お前にはあるか?自らを駆り立てる程の望みが』

 

 ブザーが鳴る。

 

 同時に俺はラビエスの右をとるようブーストを吹かした。しかしハンドガンの弾幕が最初に襲い掛かり、。

 そこにEOともう一方のグレネードが命中し、抵抗も出来ず吹き飛ばされた。

 

「グウゥゥッ‼」

 

『そんなものか少年ッ』

 

 高火力の圧力が俺にのしかかる。

 衝撃の余韻が消え操縦を取り戻す。俺は横を取ろうとするが、ラビエスさんは後退しながらのサイティングをすることで延々とグレネードランチャーを撃ち続けた。

 だがアリーナの広さは有限。後退し続けるうちにアリーナの壁に近づいている。

 

「そこだッ!」

 

 6連ミサイルロックオンが終わり、連続発射されるミサイルがラビエスさんに突き刺さり爆発する。

 畳み掛けるようにオーバーブーストでジグザグに動きながら接近。マシンガンを叩き込んだ。

 

『悪くない、が』

「え?ぅわぁあッ!」

 

 グレネードのロック範囲外から攻めたが、懐に入ったと思った瞬間こちらのロックオンが不可能になる。その動揺を突くかのように大型オービットの砲撃が俺の動きを止めた。

 聞き慣れない警告音で俺は気づく。ラビエスさんは攻撃を食らう間、インサイドのECMユニットを放出していたことに。

 

 ラビエスさんは飛び上がりながらグレネードランチャーを発射し俺の挙動を縛り続ける。

 

『がら空きだぞ』

「ぐぅう!逆旋回か……ッ!」

 

 逆旋回は、あえて背を向けるながら相手を飛び越すこで敵を捕捉する。機動性の低い機体向けのテクニック。

 グレネードの爆風で視界の潰れた俺は、逆旋回で後ろへ回られてることに気づか無かった。

 俺は上から回り込んでやろう、と同じように考え前へと飛び上がってしまっていた。しかし飛び越えてから旋回しようと考えていたため、結果的に逆旋回のカモにされたのだ。

 

 強い。

 

 その一言に尽きる。

 今までの重量二脚は簡単に死角に回れたのに、この人はさせてくれない。気づけばオーバーヒートのダメージでAPは1000まで来ていた。

 これが30位台、門前と呼ばれた所にいた人の力。

 

(でもこの距離なら!)

 

 小ジャンプ機動による軽快なステップで、数回の切り返しをしつつ接近ブレードを振りかぶる。

 グレネードの弾頭は上手いこと切り返すときに回避することが出来た。

 そして発射間隔の間隙にブレードをねじ込むかのように振り下ろし。

 

『少し、鋭さが足りなかったな』

 

 直前の一発を撃った直後に肩のキャノンに武装を変更していたラビエスさんが、地面に向かってそれを撃ち放った。

 通称自爆抜けというこのテクニックは、本来自身が反動で動けない状況下において敵を引き剥がしつつ離脱を測る自傷技。

 それを近接戦に持ち込んだ俺に対して、カウンターとして放ったのだ。

 

「ぅ……ああ……」

 

 爆風でよろけたところに、構え状態でも自動的に発砲するオービットが撃ち込まれることでAPが0になる。

 

『試合終了ぅ!勝者ラビエス・モンテ、65位を防衛‼かつての[門番]としての実力を見せつけた!』

 

 久しぶりの敗北。ひたすらに圧倒された。

 

『なぜ、俺が本気を出したのか。分かるか』

 

 俺は、なにも言えない。純粋に分からなかった。

 

『お前には死んでほしくないからだ。俺は今まで、自分の機体を壊して、目の前で何度も仲間を失った。そうならないように俺はタンクにしたんだ』

 

 ラビエスさんは声を絞るように話す。

 

『仲間の危機に機体が言うことを聞かないなんてことはなくなった。だが、もしタンクだったせいで仲間を失ったら。俺は躊躇無く機体を変える』

 

 そして、彼の機体は背を向けて去って行く。

 

『目的と手段を履き違えるな。目的が愉しむ事なら構わないが、もし目的を忘れて戦いにのめり込むようなら、いつか死ぬぞ。そういう奴を俺は何度も見てきた』

 

 

 俺は呆然としていた。

 

 □

 

 アリーナの休憩室で俺はここ4ヵ月を思い返していた。

 

 オニキス襲われて、右足を骨折した。運ばれた先でいきなり脅されたし、預けられた先が恩人だったりもした。

 レイヴン試験も、依頼も、と想定外がちょくちょくあったな。

 

「随分考え込んでるけど大丈夫?、アキレス」

「シャルさん」

 

 向かい側椅子にゆっくりと腰を掛ける。

 

「ラビエスに言われたこと、気にしてるんでしょう」

「はい」

 

 よくよく思い出してみれば、俺の目的は生きる事だった。生きて会いたい人たちと再開する。別に大したことじゃない。

 それを難しく考えてたのかもしれない。

 

 けど、俺が生きるためには、誰かを殺さなきゃいけない。そしてそれに対して躊躇いも無くなり歓びすら感じる。それが嫌だった。

 そんな俺を見透かしたようにシャルさんは言った。

 

「レイヴンは自分の意志の為ならその他なんてどうでもいいんだよ。自分の思うがまま、好きなように生き、好きなように死ぬ。自分の為、大切な人の為、己が意思のため。君もそうすればいい。」

 

 でも。辛いものは辛い。

 

「まあ、飲み込めなかったのは仕方ないよ。ココ平和すぎだから」

 

 そんな世界なんだ。ここは。それが飲み込めないのは、きっと日本という国に生まれたから。

 でも俺は、生きるためその枠から出た。おそらく本当に嫌なのなら親を見捨ててすぐ逃げれば良かった。だがそれを選択しなかった以上、レイヴンとして戦うことを受け入れていなければならない。

 

 郷に入らば郷に従え、だ。

 俺も、そうすればいい。好きなように殺し、好きなように殺される。

 俺はまだ生きたいんだ。その過程で戦うのが嫌だの好きだのはどうだっていいんだろう。

 レイヴンとして染まってしまうなら、思いっきり染まってしまえ。

 強要されたとかそんな事関係ない。俺はレイヴンであることを選び、そして未だに『逃げない』事を選び続けている。

 

 俺は、生きるために戦うレイヴンだ。

 

「ごめん、何も無ければ先帰ってて。この後用が……」

「よう、シャル。そこにいるのはアキレスか」

 

 声を掛けてきたのは金髪の少女。

 ぶかぶかのチョーカー(首輪)が歩くたび揺れる。

 

「あの、どなたですか?」

「私はランク45、ストレイド。シャルの友人だと思ってくれ」

「そうよ。待ち合わせしてたの。ってことでごめん。また家で」

 

 

 シャルさんはそのまま去って行く。

 ストレイドさん、か。今度あったらシャルさんの事聞いてみたいな。

 

 

単語集やキャラクター集は必要そうですか

  • 私にはそれが必要なんだ
  • 単語集だけでいい
  • キャラクター集だけでいい
  • この小説には、不要だ……
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