別冊星達のミュージアム 創刊号   作:苗根杏

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にわにわさんの書き下ろし集中連載、2本目です。


お揃いのキモチ

  

「音羽〜♪」

  

 それは、なんの変哲もない日の出来事。

  

「うわっ……く、くぅちゃん?」

「えへへ、音羽のほっぺは柔らかいデスね〜」

  

 ここ、スクールアイドル部の部室で、書類作業をしていた音羽に可可が擦り寄っていた。

  

「んぅ、くぅちゃんくすぐったいよぉ……それに……」

「ほぇ、どうかしマシタか?」

「くぅちゃんは、いいの? 僕みたいな、男にベッタリしてて……こんな事してたら、くぅちゃんのスクールアイドルとしてのイメージが崩れちゃうんじゃ……」

「むぅ〜っ、それは聞き捨てなりマセン」

  

 ぷぅっと頬を膨らませた可可は、音羽にその身を預けながら続ける。

  

「音羽は音羽デス。可可の好きな音羽だから、一緒にいたいって思うんデス。男の子だから、とかそんなの関係ありマセン」

「くぅちゃん……」

「音羽は可可の事、いやデスか?」

「そ、そんな事一度も思った事ないよ! だって、僕もくぅちゃんが……うぅ、好きだもん!」

  

 少し頬を朱に染め、音羽が可可に伝える。

  

「ふぁ……えへへ♡ありがとうございマス。んー、おちょは〜♪」

  

 満足げな可可はスリスリと音羽と頬を擦り合わせる。

  

「むにゅ……ふふっ」

  

 それが、何故かとても心地良く感じる音羽なのであった。

  

 ─────

  

「可可ちゃん、最近おとちゃんと仲いいよね」

  

 練習の合間の休憩で、ふとかのんがそんな事を口にした。

  

「むふふ、可可と音羽は好朋友デスからね!」

「ふふっ。ありがとね、くぅちゃん」

  

 かのんの言葉を受け、音羽と可可の2人は笑い合う。

  

「それに、最近音羽といると心の中がホワホワ〜ってするんデス」

「あ、僕もそれなんだかわかるかも。心も体もポカポカしちゃう感じ?」

「うわーっ! お揃いデスね、音羽♪」

「んっ。もう、くぅちゃんってばぁ」

  

 可可はまた、ピタッとその身を音羽にくっつける。音羽も、その頬は朱に染まりつつも、満更ではなさそうな表情でそれを受け入れていた。

  

「かのんちゃん、これは……」

「うん……2人とも、明らかに好き同士だよね?」

「ほぁ? ハイ! 可可は音羽が好きデスよ?」

「うん。僕も……って言うのは、まだちょっと恥ずかしいけど」

「そうじゃなくって! 両想いってこと!」

「両想い……?」

  

 2人の声が重なる。

  

「おとちゃんも可可ちゃんも、お互いの事が恋愛的に好きって意味だよ! 違うの?」

「れん、あい、てき……?」

  

 2人は、お互いの顔を見合わせる。直後、2人の顔は真っ赤に染まり、バッと互いから離れた。

  

「く、可可が音羽を恋愛的に好き!? 你在说什么!?!?」

「そ、そうだよ! 僕とくぅちゃんが、そんな……」

  

 2人はもう一度、お互いの顔を見合わせる……が。

  

「〜〜〜っ!!!」

  

 一度意識し出したら最後、もう直視する事など出来なかった。

  

「はぁ……とんだ伏兵がいたものね」

「な、なんデスかグソクムシ! べ、別に可可は音羽なんて……」

「そ。アンタがそう言うなら……私が音羽を貰っちゃおうかしら?」

  

 すみれが挑発的に、グイッと音羽をその身に寄せる。

  

「ハァ!? そ、そんなのダメデス!!」

  

 すると、可可が再び音羽の腕を掴み自分の方に寄せるが。

  

「あ……」

  

 さっきよりもその顔は真っ赤に染まり、何故か腕はがっちりホールドしたまま再び互いの顔を背けた。

  

「ここまで露骨だといっそ清々しいわね」

「あのぉ……さっきから皆さんは何をお話ししてらっしゃるのですか?」

「可可が音羽を好きって話よ」

「まだ好きだと決まったわけではありマセン!!」

「まぁ! 音羽くんにも彼女が……!」

「くぅちゃんはそうじゃないって! ほら、練習再開するよ!」

  

 音羽の音頭により、一旦その話題は打ち切りとなったが。

(ど、どうしよう。ダンスしてるくぅちゃんを見てると、なんだか胸がドキドキして……)

(うぅぅ……音羽を見てるとドキドキしマス。これでは練習になりマセン!)

  

 2人の意識はまだ、お互いに向き合ったままだった。

  

 ─────

  

 練習も終わり、夕日が差し込む部屋で片付けをしていると。

  

「それじゃ! 私はバイトがあるから! うぃっすー!」

「あぁ! 私もちぃちゃんのバイトの手伝いでもしよっかなぁ!?」

「わ、私もご一緒させてください! すみれさんも!」

「な、なんで私まで……はぁ、音羽ぁ……」

  

 若干1名名残惜しそうな人物がいた気もするが、音羽と可可の2人を置いてすたこら行ってしまった。

  

「よ、余計なお世話デス! 別に可可は音羽が……あぇ……」

「んっ……」

  

 再三向き合った2人。

  

「あ、あの……音羽?」

「う、うん! なに、くぅちゃん?」

「……近くに行っても、いいデスか?」

「う、ん……いいよ?」

  

 いつものように、2人の距離が近くなる。

 いつもと違って、どこかぎこちない。

  

「ぎゅっ……てしてもいいデスか?」

「えっ!? う、うん……」

  

 いつものように、2人の距離が0になる。

 いつもと違って、心臓が早鐘を打つ音が煩い。

  

「……音羽の心臓、ドクンドクンいってマス」

「く、くうちゃんこそ……」

「お揃い、デスね?」

  

 いつもの距離感も。

 いつもの応酬も。

 いつもと違う空気に呑まれてしまう。

  

「可可達本当に……両想い、なんでショウか?」

「わかんないよ。そんなの、急に言われたって……」

  

 不意に2人の目が合う。

 お互いの空色の瞳を、夕日色の瞳を覗き込む。そこに映る自分がどんな顔をしてるのか、確かめるかのように。

  

「僕の顔、多分真っ赤だ」

「ハイ。でも、可可もきっと……」

「うん。お揃い、だね?」

  

 互いの鼓動が触れ合って。

 互いの視線が触れ合って。

 互いの吐息が触れ合った時。

  

「音羽……キス、してみマスか?」

「は……!? ななな、なんで!?」

  

 不意に、可可がそんな事を口にした。

  

「だって……両想いは、キスをするのデショウ?」

「そう、かもしれないけど……僕たちまだそうと決まったわけじゃ」

「だったら……してみたらわかるはずデス。両想いじゃなかったら、した後にイヤってなるはずデス」

  

 暴論だった。普通なら、はいそうですかと首を振るのはあり得ない。

 だがしかし、音羽の脳は。部屋に漂う甘美な空気でとっくに麻痺していたのだ。

  

「いいよ……くぅちゃん……僕たちが両想いか、確かめてみよう?」

「ハイ。音羽、目を閉じて……」

  

 2人がそっと、目を閉じる。2人の距離はより一層近くなり、まるで吸い寄せられるかのように。

  

「……ちゅ」

  

 2人の唇が、重なった。

 沈黙が、2人の間に流れる。

  

「んっ……ちゅぅ……んむぅ……」

  

 先に沈黙を破ったのは可可だった。2回、3回と唇を重ねる。音羽も、静かにそれを受け入れていた。

  

「ぷは……しちゃい、マシタね」

「うん……しちゃった、ね」

  

 しばし、見つめ合う2人。

  

「音羽のキモチは……可可と、お揃いデスか?」

「うん……お揃い」

「えへへっ……ね、音羽。もう一回……」

「いいよ、くぅちゃん……ふふっ」

  

 どちらからともなく、もう一度。2人の唇が重なった。

 

 

 




にわにわさんのあとがき
────────────
『お揃いのキモチ』
おとクゥです。誰も書かないであろうカプを書きたかった、という心意気で書かせていただきました。今回は恋人同士になるまでの過程を書かせていただきましたが、この2人は恋人同士でなくてもキャッキャしてるのが似合うと思います。音羽くんが唯一渾名で読んでるのも萌えポイント。
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