ウマ娘 シマシマの旅   作:達谷堂

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こっそりチラ裏から移動。
タイトルは某千の顔を持つ男主演の映画からなのだった。


第十話 グラスワンダーの幻のウマ娘とチャンピオン

 青い空の下、桜の季節は終わろうとし、柔らかい風がそよそよと吹いている。

 ここは府中市にあるトレセン学園寮の一室。

 ウマ娘がいる。体重計がある。たんぽぽがある。

 そのウマ娘はたんぽぽを齧りながら、ちょっとした気持ちで体重計に乗ってみた。

 

 ──……。

 

 ウマ娘がいる。体重計がある。たんぽぽもある。

 もう一度乗ってみる。

 

 ──体重計が示す数値を見て、彼女の頭の中で無数のたんぽぽの花が回転した。

 何がいけなかったんだろう。この前、友人に負けまいとしてちゃんこを十杯食べたのが原因だろうか。それとも春野菜の天ぷらを毎日食べたのがいけなかったのだろうか。天ぷらはヘルシーなのに。

 

 彼女は動揺していた。食事管理と練習をこなせば体重は落ちていくという単純で科学的な事実を忘れるほどに。

 彼女は動顛していた。だから意味もなく衣装箪笥を開け、中にしまっていた同室のウマ娘に貰ったレスラーのマスクを手に取ったのは仕方のないことだった。

 そのマスクは真っ白で、とても被りやすそうに見えたのだ。

 繰り返しになるが、彼女は動揺していた。動顛していた。だからなんとなくそのマスクを被ってみたのも仕方がないことだったのだ。

 

 ──被った途端、白いマスクは青い炎に包まれ、周囲にはたんぽぽの花弁のごとき火の粉が舞う。

 

 ふと鏡を見る。そこには一人のルチャドールウマ娘がいた。

 不思議な高揚感があった。

 鏡に映った自分の姿を見て、同室のウマ娘に観せられた映画を思い出した。メキシコのレスラーの映画だった。

 

「エラケンタポテカワモデスプリュール……」

 

 妙に耳に残ったセリフ。それが口をついて出た。

 マスクの蒼炎がいっそう燃え上がる。燃え盛る。……何が燃焼しているのだろう?

 

 彼女は大きく目を見開いた。

 カロリーだ! そう天啓を得た。──体を鍛えろ。真面目に生きろ。そしてカロリーを燃やせ!

 とその時。

 

 ──ガチャ。

 部屋のドアが開いた。

「? 誰かいるのデスか?」

 同室のウマ娘が入った時には誰もいない。

 ただ、開いた窓から若草の薫りとともに暖かな風が吹き込むばかりであった。

 

ーーーーー|--/

〜〜〜〜〜〜〜

 

 私とバクちゃんは、今日も今日とてあそ…鍛えていた。これも委員長として世界の全ての模範となるためである。

 崖っぷち昇降運動も今では足で登って手で降るくらいには慣れてきたようである。

 しかし、練習を終えてバクちゃんは浮かない顔で言ったのだ。

 

「トレーナーさん。私たち、何か大事なことを忘れているような気がするんです。でもそれが何なのか……うぅ……」

 

 大事なこと……なんだろう、心がざわめく。むずむずするのだ。

 私とバクちゃんの練習は順調だ。しかし確かに何かが欠落しているような感覚が二人の間にあってスッキリしないのだ。

 

「むむむ、思い出せぇ、私の委員長力ぅ……!

 ──あ、ところで! 最近、フリースタイル・レース場で謎のメキシカンウマ娘が暴れているとか。これは府中の委員長として見過ごせませんね!」

 

 切替えが早い! 悩むよりも先に解決するのがスピードウマ娘の宿命なのだ。

 

 じゃあ今度野良…じゃなくてフリースタイル・レースを見に行ってみようか。

 

「ええ、行きましょうとも! この世に光をもたらす者として!」

 

 トレセン生とバレると色々めんどくさそうだから変装しようね。

 

「変装……というと?」

 

 僕はシマシマ仮面一号として行くよ。

 

「ほほう、それでは私はバクシン仮面二号になりましょう!」

 

 行こう。

 

「行きましょう!」

 

 ──そういうことになった。

 

ーーーーー|--/

〜〜〜〜〜〜〜

 

 ここは非公式のフリースタイル・レース場──通称『野良レース場』である。走ることを本能に刻み込まれたウマ娘たちの憩いの場であり、ガチ勢からエンジョイ勢まで様々な者が揃い踏み、アマチュアとしてレースを楽しんでいる。

 たまにトレセン学園生を見かけることもあるそうだが、設備が揃っている環境にいるにもかかわらずここに出張るのはあまりお行儀が良くないこととされている。

 とはいえ、あくまで“あまり”であってチラホラとトレセン学園生も見える。

 

 そこに奇妙な一団があった。

 

「──お前はスパートをかけるときに歩幅を狭めてピッチ気味になる傾向があるが、従来のストライドのリズムのままに強く蹴って走った方が伸びるはずだ! なんで言うとおりにしないんだ⁉︎」

「ご、ごめんなさい。でもどうしても急ごうとすると足が動いちゃうんです」

 

 この程度なら近隣のガチ勢ウマ娘の範疇で済んだだろう。だが──。

 

「そうかそうか。ならば……先生!」

「エラケンタポテカワモデスプリュール」

 

 首が太い。腕が、足が太い。そして――腹も太い。尻などパンパンである。

 ウマ娘としては魁偉といっていい体躯に目の覚めるような青いマスクをかぶり、同じく青いマントを羽織り、さらに両手に金属バットを持ったミッチミチのウマ娘が出てきたのだ。

 

 指導されていた子の顔から血の気が引く。

 

「それだけは! それだけは堪忍してください!」

「いいや、ダメだ。『足が動いちゃう』とか言い訳する時点でやる気がない。

 先生にカンカンしてもらってこい!」

 

 走り出したウマ娘の後ろから、マスクドウマ娘がマントを翻し、頭上で金属バットを打ち鳴らしながら追いかける。

 

 カン、カン、カン、カン!

 

 いや、追い立てているのだ。

 というか何なのだアレは。

 

「トレーナーさ……いえ、シマシマ仮面一号さん!」

 

 なんだい、バクシン仮面二号?

 

「──走ってきます!」

 

 ごう、と空気が周りを巻き込んで激しく動く音がした。

 疾風のごとく走り去ったバクシン仮面は、カンカンというリズムに合わせて軽快にマスク娘に追いついていく。

 桜色のアイマスクを付け、両肩には香車の駒の形をした飾りを付けた改造服を着込んだバクシン仮面の走りは、まるで止まることをしらないサメのようなあり様だった。

「でーでん♪ でーでん♪ でーで、でーで、でででででで……」

 カンカンカンカンカン!

「あ゛ぁー!! ぐふへぅ! んあー!」

 

 上手に一般ウマ娘さんを追い込んでいるバクちゃん。ジョーズだけに。

 まあ楽しそうでなによりである。

 

 追いついたバクちゃんは「用意はいいですか⁉︎ ここからがスタートですよ!」と言って遙か前方にバクシンしていってしまった。

 

 一方わたくしシマシマ仮面はというと。

 もぐもぐ。もぐもぐ。むいー。

 

「なあ……あんまり言いたくも聞きたくもないけどよ」

 

 なんですか?

 

「草食うなよ」

 

 これは道草を食ってるんであって、レース場の大事な芝には口をつけていないので安心してほしいのだ。

 

(やっぱりアレ、カタツムリ……梅雨が始まるわね)

(すっごいカラフルなシマ模様だな。フードでよく見えないけど顔色もシマシマだぜアレ)

 

 不思議なヒソヒソ話が聞こえる。

 そう、私は今、いつものシマシマスーツ姿ではなく、白と桃色のストライプに彩られたパーカースタイルなのだ。ついでに渦巻き型のリュックも背負っているのだ。

 完璧で完全な変装である。

 

「まあ腹壊さなきゃいいが……おい、ありゃアンタのツレか? 良い走りしてるじゃねえか」

 

 お褒めに預かり光栄です。

 

「天性だな。生まれつき走ることに必要なものが分かってる。

 ――だが、躓いた時が怖い」

 

 ……いいえ、彼女はもう何度も躓いて、起き上がってきました。

 

「怪我もなくか? そりゃすげえ。……ああ、確かにスプリンターみたいな短気な(・・・)(トモ)な割に制御がきいてるな」

 

 なんかこのウマ娘さん、ガチすぎないだろうか。ガチ娘さんである。

 

 ふとガチ娘さんを見る。

 少し日に焼けて赤茶けた髪、小麦色の肌、黒い瞳。服はどこかの学校の青いジャージ姿である。ズボンのサイドに白く縦ストライプが走っているのがシマシマポイント。耳はピンと立ち、シッポは風に揺らめいている。

 

「何見てんだよ。つーかあんたの恰好きもちわ」

 

「――シマシマ仮面さん! 走ってきました!」

 

 話をしているうちに特訓(?)を終えたバクちゃん仮面が駆け寄ってくる。

 あ、足元悪いから気を付けてね!

 

「了解です! ――おおっと」

 

 早速ながら草に隠れた石に蹴躓いた。

 

「危ねぇ!」

 

 ぼよん。

 

 だが、我が身を大地へと投げ出して彼女を受け止めた。私のリュックが。

 

「カバンが……伸びただと?」

 

 このリュックはただ渦巻きになっているわけではない。

 投げるように振ると渦巻きがバラけて一本の長い袋兼クッションになるのだ。

 

 つまり、バクちゃんがこけそうになる瞬間、私は素早く渦巻き型リュックをうみょんとして柔らかく包み込んだのだ。

 

「ありがとうございます、シマシマ仮面さん!

 そしておめでとうございます! 私の隠しきれない委員長魂によって何度転んでも立ち上がるという模範が、人生の糧になりましたね!」

 

 ――ね。

 

 と、私はガチ娘さんを見る。耳は立ったまま動かない。

 

「……待て、躓いてきたってマジでそういう」

 

「わぁぁぁぁん! 疲れたー! 走るのやだー!」

「真面目に生きろ、真面目に生きろ、真面目に生きろ――素晴らしい」

 

 寝っ転がって喚いているへとへとのウマ娘。

 そしてその耳元でひたすらささやき続けるメキシカンウマ娘。

 

「ちっ、ほんとに疲れたやつが元気に叫ぶもんかよ。――おい! 今の走りは良かったぞ、その感覚を忘れるな!」

 

 ガチ娘さんは彼女たちの元へ行ってしまったのだ。

 

 はて、ところで。

 ……バクシン仮面さん、何でフリースタイル・レース場に来たんだっけ?

 

「何で? ……なぜでしょう?」

 

 お互いにしばらく悩むのだった。

 

ーーーーー|--/

〜〜〜〜〜〜〜

 

「シマシマ仮面さん。これは重要な課題です。でもそれが何なのか……。

 ──あ、ところで! 最近、フリー・スタイルレース場で謎のメキシカンウマ娘が暴れているとか。これは府中の委員長として見過ごせませんね!」

 

 それだ!

 

「あっ」

 

 私とバクちゃんはメキシカンウマ娘のいる方を見る。

 

 彼女は受け身の練習をしていた。

 燃え盛る蒼炎の色をしたマスクをかぶり、その周りには花びらのような光が舞う幻想的な風景。

 はちきれんばかりの体躯には制服が悲鳴を上げ……制服?

 

 トレセン学園の制服である。

 

 バクちゃんが耳打ちしようとして、しかしどこか迷うように目線を漂わせた後、私の目元に顔を寄せボショボショと小さな声で内緒話をする。

 

「私の革新的な頭脳が導き出した答えによると、彼女はトレセン学園の生徒ですね!

 ……ところで耳はどちらに?」

 

 耳の場所は自分でもよく知らな……ナイショなのだ。でもあなたの声は聞こえるのだ。

 しかし、トレセン学園の生徒がこんなところで他のウマ娘を追い回しているのは問題──。

 

「はい! 私も変装して追い回しました! 褒めてくださっていいんですよ?」

 

 ──問題はないかな。普通のことなのだ。

 良い走りもしたし、じゃあ帰ろっか?

 

「……いえ、私は彼女と走りたいと思います! 古今東西あらゆる委員長を超えるためにも、より良いグローバルな競争相手が必要です!」

 

 決まりだ。それじゃあ──。

 

「話はまとまったみたいだな」

 

 ガチ娘さんが後ろに立っていた。メキシカンウマ娘もその隣でスクワットをしている。

 

「二五〇〇メートル、右回りでどうだ? ちっとばかり狭いから二週はするが」

 

 唐突な提案であったが、両者異論無しということで即決だったのだ。

 

 ──万が一怪我をしてはいけないので、コースを軽く流し、身体を温めながら路面状況を確認してもらう。

 バクちゃんは蹄鉄のメンテをその場で行い、芝ともダートとも言い切れないコースに合わせていた。小さい頃からの習慣で蹄鉄は自分でお世話しているらしい。

 

 さて。両者ゲート――見えないエアゲートであるが――に入ったのだ。

 開始の合図は──。

 

「ベァン!」

 

 ガチ娘さんのピストルっぽい大音声をきっかけに大地が蹴られる。

 

 開幕はバクちゃんの驀進(ばくしん)猛ダッシュである。距離を覚えているかどうか怪しいスタートにも見えた。

 

 対するメキシカンウマ娘は、やや離れてバクちゃんについていくが、徐々に突き放されていった。

 だが焦りは感じられない。どうも冷静に様子を見ているようである。

 

 ――第四コーナーを抜け、2週目の入口に入ったところで、バクちゃんが失速した。

 スタミナ切れ? その間にもメキシカンウマ娘がドスンドスンと差を縮めてくる。まるでイノシシである。

 

 燃やせぃ! 燃やせぃ! とカロリー燃焼の歌を歌いながらド迫力でバクちゃんに並び、抜こうと……いや、抜けない! 並んだままだ!

 この時のバクちゃんの眼光は捕食者のそれである。見えないゴールを獲物とし、並走相手を出し抜いて一番に喰らいつく。

 シマーチャンとの狩りごっこの経験が、バクちゃんを一流のハンターとして覚醒させたのだ。

 互いに並び、離れず、そして――。

 

「負けましたッ!」

 

 快活に笑って叫ぶバクちゃんの顔は空のように晴れやかだった……雲みたいな白目さえ剥いていなければ。これが今流行りの曇らせってやつだろうか。 

 そう、二週目の最終コーナーまではよく食らいついたものの、メキシカンウマ娘は青い炎とともにカロリーを燃やしてジェットのように足下に噴射した。

 そして爆発させて上空に飛んでいき――ショートカットでゴールしたのだ。

 

 バクちゃんの敗北宣言までは静まりかえっていたレース場に歓声が上がる。なんかヤケクソ気味なのは気のせいである。

 野良レースはルール無用。レギュレーションなどないのだ。ないったらないのだ。

 

 先刻より幾分か、いや随分とシュッとしたメキシカンウマ娘はたおやかな仕草で緩くなった制服の裾を締め直していた。心なしか背まで小さくなった気がする。

 その後、ちょっとボウっとしていたようだが、何かに気づいたように周りを見渡すと、夕日みたいに真っ赤な顔をして――マスクで見えないのにそう思わせる何かがあった――先ほどよりも遥かに猛烈なスピードでどこかに走り去ってしまった。……おや? あの後姿は確かグラ……いや、謎娘である。秘すれば芝なのだ。

 

「──おや? 謎のメキシカンウマ娘さんはどこに……?」

 

 何も言わず、夕日の先に帰っていったよ。

 

「なんと⁉︎  残念ですね。」

 

 僕たちも帰ろっか。

 そう言って帰り支度をしようとした、その時。

 

「──ちょっと待ちな」

 

 耳も尻尾もだらりと下げて、ガチ娘さんが立ちはだかった。

 ちょっと目が怖い。

 

「そこのシマシマ。帰る前にオレと走りな」

 

 このシマシマ仮面と走りたいと……私は自慢じゃないがかけっこで勝ったことは生まれて一度しかありません。

 それでも良いのですか?

 

「良い」

 

 良いのだった。

 

 ──ちなみに、今日より後にメキシカンウマ娘の姿を見た者は……たまにいるのだった。なんで?

 

ーーーーー|--/

〜〜〜〜〜〜〜

 

 さて、距離は一二〇〇メートル……とガチ娘さんは言いたかったようだが、試しに走りはじめた私の姿を見てすぐに一二〇メートルに変更した。

 ふふふ、恐れをなしたか。

 

「いや、ちょっとおそ……驚いただけだ。え、それで勝ったことあるのか⁉

 そ、そうか……あー、ルールは良いな? オレは普通に走るが、あんたはなんでもありだ」

 

 それではあまりにこちらが有利ではないの?

 

「負ける気がしねえ。それでも負けるなら……それこそが──」

 

 じゃ、いきますか。

 ──はっけよーい! のこった‼︎ 「どすこーい‼︎」

 

 バクシン仮面により私の背中に張り手が思い切りぶちかまされた。

 

 「──は? ……くっ、負けるかよ!」

 

 ガチ娘さんも走り出した。素晴らしいスタートダッシュだ!

 

 それに対し、私は背負っていたマイマイ型リュックの丸みによって車輪の如くゴロゴロと転がっていく。

 気分はふんふん、フンコロガシである。ちょっと身体が潰れるのが玉に瑕だが。

 

「おっ先ー!」

 

 ……抜かされてしまったのだ。

 でも焦らず騒がず、身体が地面と接する直前に全身を緩めて──接地とともに一気に締める!

 

 ぼん、と身体が前方に勢いよく跳ね飛ぶ。気分はバッタである。

 おっ先ー。

 

 んなー! と奇声を上げるガチ娘さんを尻目に……すぐ横⁉︎ すごい追い上げだ!

 

「ァァァぁぁぁぁあああああ‼︎」

 

 ま、まけ……ふんぬっふんぬっ。

 できる限り身体を細く伸ばして、空気抵抗をなくすと同時にバランス調整し、ぼいんぼいんと跳ね飛ぶ。

 

 バクちゃんが叫ぶ。

 

「ゴォぉー〜ール! ゴルゴルゴルゴォーー〜ール‼︎」

 

「判定は⁉︎」

 

「──ツノの差で、シマシマ仮面さんの勝利です!」

 

 息を切らしながら悔しがるガチ娘さん。まいったかー。

 あ、ちょっとあつくて身体が乾いてきた。いっぱい動くと体温で身体が乾いちゃうのだ。

 

「待て、ツノって何だ?」

 

 そうガチ娘さんが問うと、バクちゃんは首を傾げた。私も首を傾げた。

 みんな首を傾げ、うーんと唸ったが答えが出ないのできっとツノの差なのだろうということになった。

 

 そういうことになった。多分。

 うんうん唸っているガチ娘さんを見る。じー。

 

「よく分からないが世界の闇を知ったような気がするぜ……。

 ん? どうした?」

 

 耳と尻尾、何かおかしいような。

 

「ああ、これか」

 

 そう言うとガチ娘さんが耳と尻尾を千切った。

 ビクッとするバクちゃん。私もビクッとしてツノが縮んだ。

 

「これはな──」

 

 要約するとこうである。

 ガチ娘さんはトレーナーを目指す近隣の一般生徒であり、ウマ娘の気持ちを知るために常に耳と尻尾を装備している擬似ウマ娘だったのだ。

 

「一行に省略してくれてありがとよ。

 そいでよ……あんたら、トレセン学園のトレーナーと生徒だろ?

 ああ、誤魔化さなくていい。走りを見りゃ分かる」

 

 分かられちゃった。

 しょうがない、そうです我々がトレセン学園です。

 

「自分達が学園みたいなセリフだな。

 まあ、それくらいでなきゃな……このオレの予測を吹き飛ばしてくれたんだから」

 

 我々に送るまなざしが妙に熱い。気分はエスカルゴである。

 

 その後、連絡先を交換して再会を約束したのだった。絶対来いよ、来なきゃ夜中にお前の家にドリルで突撃するからな! とはガチ娘さんの言葉である。

 

ーーーーー|--/

〜〜〜〜〜〜〜

 

「今日は楽しかったですね、トレーナーさん」

 

 うん。正規ではないとはいえ、他のウマ娘ともレースもできたし。

 ……。

 

「……」

 

 あっ。

 

「あっ」

 

 思い出しちゃった。

 

 次の日。

 慌てて初めての模擬レースを予約したのだった。

 ……ついでに担当契約(書面)もしたのだった。




本当は去年の5月に投稿したかったのだった。
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