委員長の「い」!
「いよいしょー!」
もひとつ「い」!
「いやっさー!」
それから「ん」!
「んぎぎぎぎぎぎ……」
そしたら「ちょ」!
「ちょわー!」
最後に「う」!
「うほーい!」
というわけで絶賛崖登り中である。
あの後、日が暮れるまで学級委員長を指導する栄誉について説明を受けたのだ。
そしたらいつの間にか委員長さんのトレーナーということになったのだ。
そういうことになったのだ。なんで?
かけだしトレーナーとして見るに、彼女は随分と速く、速く、速かった。息が切れるほどに。
そんな走りをするウマ娘に何が言えよう。
だから何も言わずに崖を悠々と登ってみせたのだ。
彼女は黙って、その手足を使って着いてきたのだ。
まあ黙って見てるのもなんなのでちょっかいを出している最中である。
「登っ……たぁぁぁぁああ! バックシィィィンッ‼︎」
登りきったようだ。
バクシンバクシンと息を切らせている委員長さんを労う。
よくがんばりました。
「はな……まるです……ね」
おけまるです。じゃあ今きた崖を降りましょうか。
「はあ……はあ……」
……?
「……やりましょうとも! 行きましょうとも‼︎」
委員長さんはやる気だ!
では崖にダイブ──危ない!
「ちょりゃー……ああッ⁉︎」
足元の土が崩れて落ちそうになった委員長の腕を掴む。
「トレーナーさんッ!」
みょーん。
無事ですか⁉︎
「トレーナーさんこそ! 体がものすごい伸びてます‼︎
それにこの手ッ! もっちもちです!」
ふふふ。これが秘訣なのです。
と笑っている場合じゃない。体を縮めて委員長を崖の上に引き戻す。
大丈夫……そうだね。おめめがキラキラしてるね。
「そうですか、これが学級委員長になる秘訣……!」
よく分からないけどそうかもしれない。そうじゃないかもしれない。
それはともかく、崖を下りようか。
「ハイッ!」
あ、頭の方を下にして下りようね。
「……ハイッ!」
その日は死人のような表情で眼だけがギラギラと光る委員長と楽しく帰路に着いたのだった。
ーーーーー|--/
〜〜〜〜〜〜〜
翌日。
お天気は雨である。
昨日は慣れない運動で筋肉痛がひどい委員長のため、ストレッチを兼ねた室内プールでのトレーニングを行っている。
気分はウミウシうきうき気分である。
さて、そのトレーニング内容はというと。
でーでん♪ でーでん♪
「ややっ」
で♪ で♪ で♪ で♪ で♪ で♪ で♪ で♪
「ちょわ⁉︎ この耳は──」
で♪ で♪ で♪ で♪ で♪ で♪ で♪ で♪
ざっぱーん!
「ああー!」
残念! サクラバクシンオーの冒険はここで終わってしまった!
「……対象を確保。攻守交代です」
じゃあ次はブルぼんを委員長が追ってください。
耳は水面に出したまま、声に合わせて捕まえてね。
「ぬぬぬぬ……。やられましたぁ。でも今度は負けませんよ!」
「挑戦と認定。『メカシャーク』モードから『サーファー』モードに切り替えます。」
じゃあいきます。
──でーでん♪──
と、まあ。サメ映画ごっこである。
はじめはバクバクとしゃかりきに泳ぐ委員長をゆっくり泳がせるためだったのだが、口をあけてポカンと見ていたウマ娘がいたのだ。
なので声をかけて協力してもらっているのだ。ミホノブルボンという名前らしい。ブルぼん。
さて、ひとしきり遊んだ……じゃなくてトレーニングを終えて、ブルぼんにお礼を言ったところ、ブルぼんが鞄から半透明の四角い棒を出してつきつけてきた。
「これは!」
委員長、知ってるの?
「委員長に分からないことはありませんとも! でも知らないことはあります! なんでしょうか!」
なんでしょうか。
ブルぼんは棒を口元に運ぶと、シャキ! サク、シャクシャクと食べ始めた。
「栄養補給用のカロリースティックです。アミノ酸スコア百の高タンパク栄養食です。どうぞ」
食料だった。いただきます。
グリースみたいな味だった。ロボットの食料では?
「オペレーション『サメ映画ごっこ』、非常に有意義でした。よろしければまたお願いします」
こちらこそ。ね、委員長?
「もちろんですとも! ところでトレーナーさんの持ってるカロリースティックがシマシマになったのですが……。それに食べる音もサクサクではなくザリザリという音が……」
シマシマだからね。ザリザリ。
「ミホノブルボンさんはどう思いますか? ……ブルボンさん?」
「思考にエラーが発生。ステータス『ナメピーガガガがが」
「ブルボンさん⁉︎」
一分くらいバグっていたブルぼんだったが、その後「何も問題ありません」と立ち直ったのだった。
大丈夫?
「デバッグ完了。スキル『無』を取得しました。今後は同スキルによりデバッグします」
本当に大丈夫?
「何も、問題、ありません」
大丈夫なのだった。多分。