ウマ娘 シマシマの旅   作:達谷堂

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なぜかシマーチャンはウマ娘世界のどの図鑑にも載っていません。
噂話にも出てきません。不思議!
という捏造設定。


第六話 暁の超特急

 まっすぐな田んぼ道。

 抜けるような青い空。

 どこか鳥に似た表情で、白い身体が風のように奔走(はし)る。

 

 ぷぁーん。

 

 新幹線である。

 

「トレーナーさん、今日はここでどんなトレーニングをするのでしょうか?

 もしかして、わたしの永遠の好敵手(ライバル)との競争ですか⁉︎」

 

 委員長さん。

 

「はいっ!」

 

 じーっ。

 

「……あの……何か仰ってください! ムズムズします!」

 

 ──速さとは!

 

「……! ──スピード!」

 

 スピードとは!

 

「強い!」

 

 強さとは!

 

「すごい!」

 

 すごさとは!

 

「バクシンです! ──シマシマとは!」

 

 えっ……ス、ストライプ!

 

「ストライプとは!」

 

 おしゃれ!

 

「おしゃれとは!」

 

 他にないもの!

 

「そうですとも! 模範的ウマ娘であるわたしは、新幹線にも負けない唯一抜きん出て並ぶものない速さで駆け抜けるのです! まる!」

 

 勢いに負けちゃった。

 そうだね。じゃあトレーニングの話をしようか。

 

「はいっ! 今日はどんなトレーニングを……はて、さっきも似たような話をしたような……?」

 

 ……今日は追い比べをします!

 

「ややっ! いよいよわたしの新幹線(ライバル)との一騎打ちですね⁉︎」

 

 お相手はこちら。シマナシシマシマトンボモドキのシマシマーチャンくんです。

 シマーチャンくん、ご挨拶を。

 

 ぶぁーん。

 

「ん……えっ? あのぅ、そのぅ……いえっ! 委員長たるもの、種族の壁を超えて模範を示しましょう! よろしくお願いします!」

 

 ぶぁーん。

 

 じゃあこれをかぶって。

 

「王冠……ですか?」

 

 この王冠を取りっこします。お互い充分離れたところでスタートです。よーいどん!

 

「え? まだ離れ……ちょわー!」

 

 ぎちぎちぎちぎち。

 

「ま、負けません、この素敵に無敵な学級委員長は! 困難に打ち勝って見せますとも!」

 

 がんばってー。……あっという間に行ってしまった。

 

 “──シマーチャンは普段は府中近辺にいて、夕暮れの田んぼで飛び交うコウモリなどを捕食している体長およそ一〇〇センチのトンボモドキです。モドキなのでトンボではありません(アストンマーチャンをよろしくお願いします)。

 別名空飛ぶ女主人(フライングミストレス)(オス)とも呼ばれ、写真や動画を撮っているとどこからともなく映り込んでくるんです(マーチャンですよ)。

 シマナシ、ということはシマシマなのもいるのかというとそうでもなく、発見時に尻尾にシマがあるように見えたけれど後からよく調べたらシマがなかったとか、そもそもトンボでもなかったとか不思議な経緯があるんですよ(アストンマーチャンですよろしくお願いします)。

 あ、あとこれからもマーチャンを応援してくださいね!”

 

 以上、発見者兼命名者であるアストンマーチャンのトレーナーから聞いた知識で、シマーチャンも彼の紹介である。異世界ってすごい。

 彼と話してるとアストンマーチャンの名前が脳内にリフレインして脳がとろけそうになっちゃうのは怖いのである。異世界ってすごい。

 

「すごい! わたし! はやい! とりゃー!」

 

 あ。帰ってきた。

 シマーチャンが王冠を足に抱えてるということは一回は取られたということである。

 

 無理もない。コウモリさえも捕らえる機敏さで動き回るシマーチャンの速度は想像を絶する。

 そしてあの体躯から生み出されるプレッシャーは天性の捕食者のそれであり、緊張させられた身体は本来の力を発揮するのも難しいはずである。

 しかし──。

 

「はっはっはっは」

 

 再び王座を奪還したすごくてはやい委員長には緊張も無縁のようだった。

 

「はっはっはっは」

 

 委員長、王冠を……あれ?

 

「はっはっはっは、はっはっはっは、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ……げほっ」

 

 笑顔で息切れしているのだった。

 

ーーーーー|--/

〜〜〜〜〜〜〜

 

 シマーチャンにはお礼のお肉をあげてお別れをした。

 彼は手を振る代わりに尻尾を振動させて──あっこれがシマシマに見えるのかぁ!

 

「トレーナーさん、ちょっといいですか?」

 

 なあに?

 

「わたしは、速く、強くなれているのでしょうか?

 その……他のスカウトの方々の言うようなスプリンターとしてではなく、すべてのレースで勝利できる完全無欠の学級委員長として……」

 

 珍しくが委員長が弱気である。こういうときは……。

 

 委員長。いや、バクちゃん。

 

「はい」

 

 今日は何メートル走れた?

 

「ええと……たくさんです!」

 

 一〇キロは走ってたよ。一万メートルだね。

 

「そんなに⁉︎ ふふん、わたしはまた勝利してしまったみたいですね」

 

 自分の限界を超えたんだよ。それもかなりのスピードで。

 

「限界……そうですか! そういうことですか! つまりいつかは新幹線(ライバル)にも──」

 

 ハヤブサは時速三九〇キロ、トップガンは時速一二〇〇キロを超えるから、速くなろうね。

 

「え? 新幹線(はやぶさ)の時速は三二〇キロでは……ってマヤノトップガンさんはそんなに速いんですか⁉︎」

 

 目指せ日本一の学級委員長!

 

「……やりますとも! やってみせますとも! えい、えい、バクシン!」

 

 花丸元気になったようで何よりである。

 

「──トレーナーさん、初めて会った時はすごいシマシマで、本当にヒトなのかなあ、ナメクジなんじゃないかなあ、と思ってましたけど、この学級委員長王たるサクラバクシンオー、どこまでも着いていきますよ!」

 

 えっ。

 

「いざ、バックシーン!」

 

 ヒトなんだが! ナメクジじゃないんだが!




これからもマーチャンを応援して下さいね(^^)。
     ∧_∧
 ピュー (  ^^ )
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎

   アストンマーチャン
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