1944年10月25日 フィリピン上空
西澤博義 「…本当にこうしなければならないのか…。」
彼の目の前を飛んでいるのは関行男大尉が搭乗した爆装零戦…特攻機。その後ろから続いて飛んでいるのは関大尉が率いる敷島隊…最初の神風特別攻撃隊。
彼の任務は米空母に突入する敷島隊の援護だ。西澤は心苦しく思った。
ブゥーーン!!
敵戦闘機だ。しかし、彼からしたらちっとも恐ろしくはない。あの地獄のラバウルで戦い抜き、米軍から”ラバウルの魔王”と言われた男だ。
いともたやすく敵機を撃墜した。その時、彼の横を飛んでいた列機のうち一機が火を吹いた。
彼が列機を初めて失った瞬間である。
その後彼は無事に敷島隊を守りきり、全機突入を報告した。
西澤博義 「俺も彼らの後を追う。」
この時、西澤はこう呟いたと言う。
1944年10月26日
ミンドロ島北端上空
西澤博義 「零戦受領の為にマバラカット基地に行け、か。」
操縦士 「本当に上の連中は分かってませんよ。西澤さんや他の奴らも命がけで戦ってるのにそんな事どうでもいい的な態度とって…!」
西澤博義 「いや、そう怒ることはないですよ。少なからず私たちの活躍は届いていますよ、きっと。」
操縦士 「そう言われてもですねぇ、認めない連中もいますし…」
偵察員 「敵機上空!!」
西澤博義 「!?なんだって!」
ダダダダダダッ!!
ビュン!ビュン!
機銃員 「くそぉ〜!!」
ドガガガガガガ!!
ガンッ!!ガンッ!!
ボォワァーー!!
操縦士 「くっ、緊急着陸します!!」
偵察員 「おいっ!上からくるぞ!!」
ミンドロ島北端海上
西澤博義 「…私だけが生き残ってしまった…。君たちには申し訳ない。」
西澤博義 「(なぜ、私だけが生き残ったのだろう…。私は列機の命も守れない。敷島隊が突入するときも平然と見ていた。どうしてこんな私を神は生かしたのだろう…。)」
ブロロ〜
大艇偵察員 「おい!誰かいるぞ!!」
西澤博義 「お〜い、ここだ〜!!」
彼は二式飛行艇に救助されたのち、マバラカット基地へ輸送されたのだった。
西澤博義 「(私はあの時、彼らの後を追うはずだった。しかし、今思えば生きていてよかった。なぜなら同じ思いを持つ”仲間”に出会えたんだからな。)」
坂井三郎 「おい、西澤。どうしたんだ?」
赤松貞明 「なにボーっとしてんだよ。俺たちに休みはないぜ。」
岩本徹三 「赤松、そう急かすな。今日ぐらいゆっくりしようぜ。」
西澤博義 「……」
坂井三郎 「西澤?どうした?」
西澤博義 「いや、何でも無い。少し考え事をしていただけだ。」
赤松貞明 「そうかぁ。」
整備兵 「坂井さ〜ん!西澤さ〜ん!機体の整備が終わりました!」
坂井三郎 「分かった。今行く。いくぞ西澤!」
西澤博義 「分かってますよ、坂井さん。」
硫黄島 千歳飛行場
米整備兵1 「これは手酷くやられたなぁ。」
米整備兵2 「そうだな。全く整備が大変だよ…。」
米整備兵3 「なんでこうなったか理由を知りたいか?」
米整備兵1 「なんだよ。知ってるのか?」
米整備兵3 「昨日の空襲で見たこともない戦闘機が迎撃に上がってきたらしいぜ。」
米整備兵2 「あぁ、”青い零戦”のことか?」
米整備兵3 「それだよ!そいつに爆戦の大編隊がやられたらしいぜ。」
米整備兵1 「これはまた面倒くさいものがでてきたな…。」
米整備兵2 「でも奴らには殆ど物資が残っていない。今更新型機を作ったとしてもそのうちに資源不足になるだけさ。」
米整備兵1 「なんだよ…心配させやがって。」
米整備兵3 「だけど、気をつけたほうがいいぞ。近いうちにジャップがなにか仕掛けてくると上の連中が言ってたぜ。」
米整備兵2 「そんなの杞憂に終わるさ。話はこれで終わり。さあ、仕事仕事。」
その時、けたたましい警報音とサイレンが鳴り出した。
米司令官 「何事だ。」
米偵察員 「敵襲!!敵襲!!ジャップだ!」
米兵1 「なんだって!」
米兵2 「敵の数はっ!?」
米偵察員 「戦闘機80機前後!」
米司令官 「爆撃機は?」
米偵察員 「確認されてません!」
米司令官 「戦闘機のみで空襲か…。全稼働機に出撃命令を!」
1945年6月16日
この日に後の日本の戦局を有利に持ち込む戦いが始まる。陸軍と海軍、そしてドイツまでもが手を組んだ、大本営発令の大規模反攻作戦、「皇国の大反攻作戦」の最初の戦い…その名も
硫黄島奪還作戦
さまざまな思いを抱いた陸軍兵士、海軍軍人、そしてパイロット。先の硫黄島の戦いで散っていった者たちの無念を晴らすべく、故郷を守るべく、大日本帝国は立ち上がる。
坂井三郎 「硫黄島が見えてきたぞ。」
西澤博義 「敵もみえてきましたけどね…。」
岩本徹三 「そんなの関係ない。俺たちは最後の時まで戦う、それだけだ。」
赤松貞明 「そうだな。撃墜王の名は伊達ではないぞ。」
連山機長 「こちら連山隊長。この度は護衛感謝する。」
坂井三郎 「いえいえ、これくらい当然です。零戦のもともとの役割は爆撃機などの護衛ですから。」
岩本徹三 「俺は十分に戦いたいだけだけどな。」
司令部 「全機、硫黄島に突入せよ。幸運を祈る。」
次回 硫黄島奪還作戦 前編
滅茶苦茶不定期ですみません…。