蒼焔の機影 〜硫黄島奪還作戦〜   作:蒼海 輪斗

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台本形式だと分かりづらかったので、リメイクさせて通常仕様にしました。


リメイク版
リメイク版第一話 青い悪魔


 日本の敗戦色が濃くなってきた昭和二十年。そろそろ戦争は終わるだろう。そして自分たちが勝つだろう。米軍たちはそう信じていた。その青い悪魔をその目で見るまでは…。

 

 

 

 

1945年 6月12日 小笠原諸島近海

 

 4機のアメリカ陸軍の戦闘機P-51が飛行していた。昨日、消息を絶ったB-29爆撃機隊の捜索に出ていた小隊だった。

 

 「こちらマスタング1。ただいま友軍と連絡が途絶えた海域に到着した。これより捜索にでる。」

 

 小隊長は無線を介して本部に連絡をいれた。周りは広大な海原が広がっており、航空機は1機も見えない。

 

 「こんなところに日本軍機がいるんでしょうかね。」

 

 3番機のパイロットが疑問を口にする。それに2番機のパイロットが答えた。

 

 「安心しろ。いたとしても俺がすぐに撃墜してやるよ。」

 

 「やれやれ、頼もしい限りだ。」

 

 4番機のパイロットが呆れ気味で無線機から視界を前に移した。小隊長が何気なく後ろを振り返ると、それはそこにいた。

 

 「っ!?4番機!!6時方向に敵機‼ブレイクするんだ!!」

 

 突然の呼びかけに4番機のパイロットは慌てて後ろを振り返る。しかしそこには何も見えない。

 

 「6時!?どこだ、わからない!!」

 

 4番機がそう叫んだ途端に、機体から炎が吹き出た。いつの間にか後方に付いていた日本軍機に銃撃されたのだ。そのまま4番機は急速に降下していった。

 

 「4番機がやられた!!各員、戦闘開始!!敵機を墜とせ!!」

 

 小隊長の指示で残りの2番機と3番機が日本軍機を包囲する。しかし日本軍機はひらりと包囲網を突破すると2番機にぴったりと張り付いた。2番機はなんとかして振りほどこうと回避行動を取るが、日本軍機は逃さない。

 

 「後ろに付かれた!!だめだっ、振り切れないッ!!」

 

 日本軍機は機銃を射撃し、P-51を穴だらけにしていく。2番機は錐揉みしながら海面へと墜ちていった。

 

 「くそっ!!2番機も墜とされた!!」

 

 2番機を撃墜した日本軍機は続いて3番機の背後に付いた。小隊長はその時日本軍機の姿をはっきりと見た。

 それは今までずっと見てきた日本の戦闘機、零戦だった。しかしその機体は深緑でもなく明灰色でもなく、ただ青く塗られていた。

 

 「零戦!?でも機体が青い?」

 

 青い零戦は今度は3番機の背後に迫った。

 

 「ひぃ!?来てる!!高空飛行で離脱をこころみる!!」

 

 3番機は急激に高度を上げ、青い零戦の追撃を振り払おうとした。だが、青い零戦もその機動に難なく付いてきた。

 

 「ぐっ、はぁはぁ…」

 

 高空域での回避行動で凄まじい加速度Gがかかり、3番機のパイロットは息を切らす。それでも青い零戦は追ってくる。

 

 「つ、付いてくる…!それに、撃ってこないぞ…」

 

 不思議なことに青い零戦はまだ一発も弾を撃っていない。まるで追い込んでから獲物を捕食する肉食獣のようだ。

 

 「落ち着け3番機!!今助けに行く!!」

 

 小隊長のP-51が3番機を助けるために速度を上げた。無線機からはパイロットの悲痛な叫びが流れ込んできた。

 

 「うわあああああああああ!!嫌だ嫌だ!!殺されるッ!!助けて…」

 

 パイロットが叫んでいる途中で青い零戦は機銃を斉射し、あっという間に3番機を火だるまにした。

 

 「なんてこった…。3番機が殺された…」

 

 小隊長は青い零戦を恐怖を堪えながら凝視していた。今度の攻撃目標は間違いなく自分だ。小隊長は無線を本部につなげると必死に報告を始めた。

 

 「こちらマスタング1!!ただいま日本軍機と交戦中。敵は零戦だが機体が青く恐ろしく強い!!俺以外の全員が殺された!至急応援を求める!!」

 

 報告を行いながらやっとの思いで小隊長は青い零戦の背後を取った。そして機銃を連射しまくる。しかし青い零戦は横滑りを利用して弾幕を回避しており、一発も当てられない。

 

 「ちくしょう!!当たれッ!!」

 

 めちゃくちゃに機銃を撃ちまくると次の瞬間、青い零戦が視界から消えた。

 

 「なっ!?どこに…」

 

 なんと青い零戦は左に捻り込むように旋回して、小隊長機の視界から消えたのだ。必死に敵機を探す小隊長が後ろを振り向くとそこには…

 

 

 

 青い零戦がぴったりとくっついていた。恐ろしく速い動き。無駄がない旋回。そして機銃の火力…。

 

 「悪魔だ…。あのゼロは青い悪魔だ…」

 

 とうとう青い零戦は小隊長に向かって機銃を射撃し始めた。機銃弾は少しずつ機体を掠らせていく。

 

 「だ、誰か…、助けて…」

 

 小隊長は救いを求めた。しかし助けてくれるものはどこにもいなかった。機銃弾で蜂の巣にされた小隊長のP-51は、炎を吹きながら海面へと墜ちていった。

 

 それを確認した青い零戦は大きく旋回すると、もと来た場所を戻り始めた。

 

 青い零戦の操縦室では、頬に傷跡のある若い青年が操縦桿を握っていた。青年はスロットルレバーを強く握りしめた。

 

 「これで日本を救うことができる。」

 

 青年、”西澤廣義”は言った。

 

 「この”零戦七八型”で…。」

 

 西澤の操縦する青い零戦、零戦七八型はエンジン音を轟かせながら広い太平洋の上空を飛び去っていった。

 

 

 

 

 その後、アメリカ国防総省にはその青い零戦の目撃情報が急増した。中には交戦した者もおり、重症を負って帰還したものがほとんどだった。

 さらにB-29による爆撃の効果が薄くなってきたのだ。乗組員たちの話では迎撃に上ってきたのはほとんど例の青い零戦だったのだ。

 

 それに恐ろしいことに占領寸前の沖縄にも青い零戦が大量に襲来し、アメリカ海兵隊を蹂躙していったのだ。艦船に対する攻撃も過激さを増し、今では特攻以上の被害が出ている。

 

 

 

1945年 6月20日 米軍占領下 硫黄島

 

 「なぁ、聞いたか?沖縄がジャップの連中に奪還されたみたいだぜ。」

 

 一人の米兵が他の米兵に話しかけた。もうひとりの米兵も返事を返した。

 

 「そうだな。なんか青い零戦が出てきたみたいだな。」

 

 「そうなんだよ。恐ろしく速くて強いらしいぜ。しかもあのB-29を簡単に撃墜してるみたいだぜ。」

 

 「まじかよ…。まもなく戦争が終わると思ってたのによぉ。」

 

 「まぁ、そう悲観すんなって。どうせ奴らの最後の悪あがきだろうよ。」

 

 米兵はそう言うと、笑った。そんな戦闘機が敗戦寸前の日本に作れるはずがない。

 

 

 その油断が、後にアメリカ本国を脅かすことも知らずに…

 

 

 

次回   帝都大航空戦 

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