裏切りのラスボス少女〜主人公君を裏切って憎しみに満ちた目で見られたい〜   作:あへんちんき

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体がカナヅチになっていなかったのでエタエタの実は食べていなかったみたいです。

追記

ガンジス太郎様、潮見朔夜様、誤字報告ありがとうございます。


じゅうわめ

ミナが人質にされた。そう聞かされた時、俺はひどく動揺した。誰に攫われたのか、何の目的で攫ったのか、一切分からない。もしかしたら、罠の可能性だってある。実際、電話越しにミナの声は聞こえなかった。

でも、それでも……。

 

 

 

俺にとって、浦霧ミナという少女はどういう存在なのだろう。

大切な存在であることは確かだ。友人……とも少し違う。他の友人とは何か違う、特別なものを、俺は彼女に感じている。救にも同様に特別な感情を抱いてはいる。けれどそれは、ミナに対するモノとはまた別物のような気もする。具体的に言うと、救は『相棒』で、ミナは………。

 

 

 

彼女との日々を思い返してみる。

最初は、ただ容姿の良い転校生がやってきたな、くらいの感覚だった。他のクラスメイトと同じように、多少言葉を交わすことはあるが、それ以上深入りはしない。知り合い程度の関係だった。その関係性が変わったのは、ミナが上位悪魔に乗っ取られかけた時だ。俺は彼女を助け、彼女は俺の協力者になった。

 

 

 

そこからだった。彼女との関係が進んだのは。

俺は上位悪魔(ベリアル)との戦闘で、左腕を負傷した。そのせいで、私生活でも普段通りに振る舞えなくなり、苦労するはずだったのだが……。

 

 

 

結論を言うと、そこまで不自由な学校生活ではなかった。勿論、友達が気を遣ってくれたりしたっていうのも大きいけど、1番は、ミナの存在だ。一応俺、一人暮らしで自炊してるわけだけど‥‥。まあ当然、左手のない状態で料理なんてできるわけもなく、俺はインスタント食品やコンビニ弁当で晩を済ませようと思っていた。そんな時、ミナが俺の家にやってきて……。『私が手料理を振る舞いにきたぞー!』なんて元気よくそう言って、俺の晩御飯を作り始めた。

 

 

 

『聖君が左腕を怪我したのは、私のせいでもあるし……。あ、それに、私は聖君の協力者だからね!これくらいしないと!』

 

 

 

そう言ってエプロン姿で料理を作るミナの姿は、俺にとっては新鮮な光景で。

初めて他人に作ってもらった料理は、自分で作るそれよりも、数倍も美味しく感じた。

 

 

 

それから、俺が左腕を使えない間、ミナは毎晩俺の家に手料理を振る舞いにきてくれた。

 

 

 

俺の左腕が治った後も、しばらくその習慣は続いてたっけ。いつの間にか俺も、ミナに手料理を作ってもらうのが当たり前のようになっていて。

 

 

 

『はい、これお弁当』

 

 

 

なんて言って、手作り弁当を渡された時は驚いた。俺は普段学校では自分で弁当を作っていたのだが、左腕が使えなかった間はコンビニ弁当で済ませていた。そんな俺の姿を見て、俺の弁当を作ってくれたらしい。といっても、その時には左腕はもう既に回復していたので、手作り弁当はその日だけだったのだが。

 

 

 

その後も、悪魔討伐で俺が授業を受けれなかったりする時、ミナはいつも俺の家にやってきて、その日の範囲の授業の内容を教えにきてくれていた。

 

 

 

ふと、聞いたことがあった。

どうしてここまでしてくれるのかって。帰ってきた返事は、『聖君と一緒にいるのが楽しいから』だと言った。その言葉を聞いて、そういえば俺もミナと一緒にいると楽しかったなってことに気づいた。そこから、俺は何で彼女が俺に構うのか、その理由を、自分なりではあるが考えた。

 

 

 

多分だけど、俺と彼女は、少し似ているんだと思う。

親がいないっていう境遇とか、本当の意味で自分を見てくれる存在がいないってこととか。そんなところが、似てるんだって、そう思った。俺と彼女は似た者同士で、だから、惹かれ合うんじゃないかって。

あの時、ミナが悪魔に取り憑かれた後、ミナの記憶が失われなかったのは、もしかしたら必然だったのかもしれない。

 

 

 

そうだ。いつの間にか、浦霧ミナという少女は、俺の中でとても大きな存在になっていたんだ。

 

 

 

ミナのことを考えると、少しざわつく胸。

ミナと一緒にいると、楽しいって思える。

 

 

 

そうか、俺にとってのミナは……。

 

 

 

「救、行こう。大事な仲間(ミナ)を助けに」

 

 

 

『はい。もう準備はできています。』

 

 

 

そうだ。浦霧ミナは、俺の大事な『仲間』だ。

だから、助けに行く。理由はもう、十分だ。

 

 

 

 

 

 

^_^

 

 

 

 

 

 

湯越高校跡地。

ここか。電話の相手が言っていた場所は。

 

 

 

『聖、気をつけてください。罠の可能性があります。』

 

 

 

「ああ、分かってる。」

 

 

 

俺達はそっと、廃校舎の中へと足を進めて行く……。

 

 

 

真っ暗な校舎内。俺も救も、ただ黙って中を進んでいく。

あからさまではあるが、不自然に、体育館付近だけが異様に明るかった。十中八九、ここに電話の相手()がいるんだろう。

 

 

 

俺は真正面から、体育館の中へと入る。

わざわざ窓から入ったりなんてしない。ここにきた時点で、俺は相手の領域内に入ってしまっているのだ。今更小細工が通用するとは考えない。

 

 

 

そこにいたのは……。

 

 

 

「聖君……。」

 

 

 

柱に縛りつけられたミナと。

 

 

 

「はじめまして………ではないわね。さっきぶり、主矢君。来てくれて嬉しいわ」

 

 

 

俺のクラスの副学級委員、初飛 命(ういひ みこと)がいた。

 

 

 

 

 

^_^

 

 

 

 

 

命ちゃんの狙い通り、主人公君はここにやってきたみたいだ。まあ、彼の性格からして、私のこと助けに来ないなんてことは絶対ないだろうとは思っていたけどね。だって彼、身近な人は誰でも助けようとするから。私は主人公君の性格は、ここ数日で完璧に理解したと言っても良い。そりゃだって毎晩手料理を振る舞いにいくなんていう通い妻っぷりを発揮しましたからね、はい。

 

 

 

主人公君の本質は、誰かに理解されたい。誰かに自分のことを見てもらいたいって言う、承認欲求だ。幼い頃から両親の愛を受け取ることのなかった彼は、愛情に飢えている。そして、『本当の自分』を見てくれる存在を必要としているわけだ。で、多分主人公君は、私に対して親近感というか…仲間意識のようなものを抱いていると思う。実際私も近しいものは感じたし。まあ、私の(設定上の)境遇と彼の境遇は少し似ているからね。

 

 

 

幼い頃に両親と死別し、その愛を受け取ることはなかった。小さい頃から家のことは全部自分でやってきて、誰からも好かれず、ただやるべきことをこなすだけの人生。

 

それが私の(設定上の)境遇と、主人公君の境遇だ。

 

 

主人公君は、誰かから必要とされたかった。だから、高校生になってからは、誰とでも仲良くなれるように積極的に話しかけるようになったし、交友関係も広がった。けれど、彼の心は満たされなかった。だって、本当の意味で自分を見てくれる存在なんて、いないのだから。

 

 

 

皆が皆、上っ面の、薄っぺらい関係。それを主人公君に、強要している。

 

 

 

しかーし!!

そんな時、主人公君()が出会ったのが〜!

 

宇宙の宝!!ウルトラスーパー美少女!!

皆のアイドル、浦霧ミナちゃんだったのだ!!!!

 

 

 

ミナ()との出会いは、主人公君にとってとても大きなものだっただろう。だってそうでしょ。自分の怪我を心配して、毎日晩御飯作りに来てくれる容姿SSSクラスのハイパー美少女だよ??

毎日主人公君の家に通ったし、その分たくさん餌付けもしたし、勉強の面倒まで見たこんなん惚れてまうやろー!!私なら間違いなく惚れるね。うん。

 

 

 

まあ、これ全部私の憶測なんだけどね。でも、当たらずとも遠からずだと思うよ。

だって実際、本来は『世界に破滅をもたらすもの』が、転生初日に『世界を救済しようとするもの』の正体を発見するなんて考えられないだろう。それが許されるなら、ほとんどの世界で『世界に破滅をもたらすもの』が勝利してしまうんじゃないかと思う。だから、多分だけど、主人公君は本当は、自分が『世界を救済しようとするもの』であると、周りにバレたかったんじゃないかなって思う。だから無意識のうちに自分の正体がバレるように振る舞っていて、結果『世界に破滅をもたらすもの()』に見つかってしまったのだと思う。

 

 

 

………と、長々と話してしまったが、まあ要するに、主人公君の私に対する好感度はかなり高いし、私を助けに来ないなんてことはありえないってことだ。だって私は、彼の『理解者』になり得るのだから。

 

 

 

命ちゃんと主人公君は、互いに睨み合う。

さて、これからどうなっていくのかな?私は予測不能な展開にワクワクしながら、2人の戦いを見守ることにした。

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