リコリス・アーカイブ   作:足舐め先生

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カフェでの一日とアラン機関

喫茶リコリコ、もといシャーレ併設カフェの朝は早い。開店1時間前には店内の清掃と今日1日分の食材の下拵えを済ませて、コーヒーを淹れ始める。朝食担当のたきなが余ったクズ野菜のスープと目玉焼き。バターを塗った食パンがトースターで焼き上がるのをくるみは爪先立ちで今や遅しと見張っていた。

 

「いやぁ、豆が違うとやっぱり勝手が違うね」

「リコリコと同じようにはいきませんね」

「ミカのこだわりは相当だからなぁ。そんな簡単に真似出来たらきっと泣いちゃうぞ」

「……そうだね」

「なに大丈夫さミカとミズキなら。二人とも伊達に歳はくってないぞ」

 

 少し影を感じた千束を励まそうとくるみが声を掛ける。続けてたきなも、

 

「ええ。私たちが考えるべきことは会った時に二人にどんな言い訳をするかです」

 

そんなおどけた答えをされたら、千束も本来の明るい雰囲気が戻ってきた。

 

 窓から差し込む朝日。和気藹々とした雰囲気のもと朝食は進む。食べ終えたらさっと流しで片付けて服を着替える。リコリコのような和服と違ってシャーレ併設カフェの制服は白いシャツに紺の膝丈までのスカート、その上から深緑色のエプロンを身につけるものだ。元々生徒が空いた時間で入ることもあり着替えも簡単にすむように設計されているらしい。

 

 千束が着たエプロンの一部が大きく盛り上がっているのをくるみが羨ましげに自身との比較をしながら眺めていると、外から人の声が聞こえてくる。おそらく朝の登校の時間帯になったのだろう。シャーレ併設カフェで働き始めて三日目。ある程度この地“キヴォトス”についての一般常識?もだいぶ掴めてきた。

 

 まずキヴォトスで主に見られる人種は三種。頭がディスプレイになっていたり、ロボットのような頭の人種。そして犬や猫を二足歩行にしたような人種。こちらは背が低く見た目も愛らしいのですっかり千束は気に入っている。

 

 最後に先生が“生徒”と呼ぶ人たち。見た目としては千束たちとほとんど一緒だ。背中に翼、頭に角や動物の耳、尻尾なんかもついていることを除いたら一般的な女子とそう変わらない。特筆すべきなのは彼女たちは銃器を当然のように携行し、そのほとんどが十全に扱う技術と身体能力を有していることだ。そして付け加えると、大の大人を戦闘不能状態にすることも可能な特製の千束の低致死性弾も生身でほぼ効果を発揮しない防弾性を有している。フルメタルジャケットでようやくダメージが見込めるレベルと少女の方のミカから聞いた時は流石にタチの悪い冗談だろうと考えた。二人はお互いリコリスで数々の仕事をこなして来た。銃という武器がどんなに簡単に人を殺すのか痛いほど理解している。しかし話が信じられてないと判断したミカは、その後直ぐにたきなのS&W M&Pをちょっと借りるねと手に取った。彼女はおもむろに銃口に手の平を翳して安全装置を解除しそのままトリガーを引いた。一射、二射。

 

 たきなの口から悲鳴の漏れる音が聞こえた。急いで手の平を確認すると流れる血もいっさい無く、銃弾が当たった場所さえ分からない。しかし確かに当たった証拠に指先で45AP弾が挟まれていた。ほらねと返されたS&Wをよく出来たレプリカとすり替えされたのではとたきなが調べるのも無理も無い。彼女曰く自分は多少は強いので他の子だともう少しダメージが入るとのことだが、彼女たち“生徒”が千束たち人間と大きく違った能力を有している事を深く実感した事件だった。

 

 しばらくすると賑やかな登校中の少女たちの声が届かなくなる。原因は声を掻き消す騒音だ。毎日開店前近くになると通りから大きなエンジン音とキュルキュルと金属の擦れるような騒音が聞こえてくる。

 

「……何度聞いても慣れませんね」

「Tiger I の駆動音に慣れたらお終いだ」

 

 シャーレ併設カフェからある程度離れている道路を通っているのだろうが、僅かに振動で地が揺れている気さえする。戦車の隊列が道路を通行するという異常事態に驚いたのは三日も経っていないにも関わらず遠い昔のように感じる。キヴォトスは余りに情報量が多いのだ。

 

「確かゲヘナって学校の戦車だったよね?」

「ええ。先生が言ってました」

 

 “生徒”というには何処かの学校に属しているということだ。キヴォトスにはゲヘナを始め、様々な学校が大小乱立している。それぞれの特色や校風もあり、利害関係や歴史から学校同士の仲はそれほど良く無いらしい。くるみがドローンを撃墜されたのもその学校の内の一つだそうだ。当初は直ぐに行けるものだと思っていたが、キヴォトス人でも無い部外者が学校に入る許可を得るのには複雑な手続きがあるらしい。元々ここでの身分を証明出来るようなものがいっさい無い三人には尚更。それらの面倒な手続きをすっ飛ばせるのが“先生”だ。しかし、先生も忙しい身でなかなか千束達の為の時間を割くことが難しく、今日の午後にはまとまった時間がとれるらしい。それまでキヴォトスの情報とここの通貨であるクレジットを稼いでいるのが現状というわけだ。

 

「それにしても“先生”っていったい何者なんだろう?」

「それは私も思っていました。このカフェだって維持費はかなりかかっているでしょうし、先生は各校を自由に行き来できる特別な権限もあるみたいですし」

「おまけにカフェに来る生徒は皆先生に好意的だしねぇ。モテモテで私も羨ましい〜」

「しかしここのネットで調べてみた所、時々変な噂も聞くぞ。生徒にお願いして踏んでもらっただとか、靴を舐めただとか、生徒に首輪をつけて紐で引っ張り、夜の散歩をしただとか。まっガセだろうけどな」

「またまた〜」

「冗談も流石にそこまで行くと笑えてきますね」

 

 口とは裏腹に内心たきなは先生への警戒心を高めた。自分はともかく、二人がそういった被害を受けるのはよろしく無い。そうして雑談をしていると直ぐに鐘がなった。基本的に生徒達の授業は一般大学のように単位制らしく、自由時間も多い。その分部活や委員会での活動に従事していることが殆どらしい。つまり午前中でも授業をサボっている訳では無い生徒達がシャーレ併設カフェにやってくるわけだ。

 

「いらっしゃいー!」

「いらっしゃい」

「いらっしゃいませ」

 

 やって来たのは一人の生徒。軍服の意匠を感じさせる制服はゲヘナ特有のもの。くるみより背は高いが何処か幼い印象で、床にまで届きそうな毛量の赤紫色の髪の生徒だ。彼女はふぅんと軽くこちらを眺めるとカフェの端のソファー席に腰掛けた。直ぐにたきなが注文を取りに向かう。注文はコーヒーとBLTサンド。オーダーを受けて千束がコーヒーを、くるみがBLTサンドの調理を始める。先生こだわりのブレンド豆をミルで挽くと芳ばしい香りが漂ってくる。先生が店にいない場合は、生徒は本来ドリップ式のコーヒーメーカーでコーヒーを抽出するのだが幸い今は人が少ない。今回はハンドドリップで出す。機械では出ない味わいのハンドドリップコーヒーは一度ハマれば抜け出せないほど魅力的だ。

 

 隣でくるみは食パンにバターを塗ったものをトーストにする。マスタードを薄く塗り、レタスとトマトベーコンを乗せた後にトマトソースをかけてトーストで挟んだ。最後にトーストの対角線上をカットすれば完成だ。

 

出来上がった二品をたきながトレーに乗せて運ぶ。そのまま彼女が口に運ぶさまをそれとなく三人で見守った。喫茶リコリスでも新規のお客様が出した食事を口に運ぶ時は何時も緊張の一瞬だ。BLTサンドに関しては残念ながらノーリアクションだったが、コーヒーは少し口に含むと目を瞠って満足げに頷いていた。

 

 良しッとガッツポーズを小さくする千束を見てたきなも微笑んだ。彼女はよっぽどコーヒーを気に入ったのか、その後二杯も追加で注文して帰り際には小さく『コーヒー美味しかったですよ』との言葉も貰った。ミカのハンドドリップを見て練習した甲斐もあったというもの。ホクホクとした心持ちでその後も接客を続けていると時間が過ぎるのもあっという間だった。

 

「やぁ。待たせちゃったね」

 

 昼過ぎには約束通りカフェの裏口から先生が現れる。千束達の為に急いで仕事を消化したのか、シャツは薄っすら汗ばんで顔には疲労の色が見える。心配した千束達に今日は止めておこうと提案されたが意志は固いようで首を縦に振らない。基本的に多忙な先生は次の空き時間が何時とれるか分からない上に、

 

「生徒の喜ぶ姿を見れば疲れなんて吹き跳ぶからね!」

 

ニカッと破顔してそんなことを言われたら断ることも出来なかった。おどけてぐっと力瘤を出して見せる。白のワイシャツ越しに見せる先生の細腕は当然力こぶなんて一切出る筈もなかった。下手したら子供にさえ負けそうな非力さで、それでもその腕はたきなにとって力強く見えた。

 

 

 

ミレニアムサイエンススクール。通称ミレニアム。工学を始め、電子技術等の科学技術の粋を集め日夜研究を続けているキヴォトス一の技術を誇る学校だ。おおよそ最新技術のほとんどはこの学校で生まれ、保守や運用もこの学校の特別なエンジニア無しでは不可能な為、各学校との繋がりも大きい。敷地も広く、最新式の警備システムを導入したロボットや防衛システムは生徒たちの試作品の実地試験としても運用されている。今回ミレニアムに訪れたのはくるみがドローン越しに見えた風景と、防衛システムから撃墜されたのがミレニアムだろうと推測できたからだ。

 

 そのミレニアムの端に位置する実習センターに一行は到着した。車から降りると直ぐに爆発音が響く。いざ奇襲かと身を屈めて車の影に隠れて、たきなは拳銃とは反対側の手でくるみを伏せさせる。千束は先生を車のドアを盾代わりにして隠れさせ襲撃者を索敵。しかし暫く待っても何も起きる気配が無かった。そればかりか、爆発音をものともせずに駐車場の端を歩く生徒たちに警戒される始末だ。流石に対応が場違いなものだと気づく。

 

「……大丈夫。ここでは爆発が日常茶飯事だから。多分エンジニア部の実験で爆発が起きたんだと思うよ」

「ならそれを先に言ってよ先生ー!」

「そうですよ先生」

 

 頬を膨らませて先生に詰め寄ると彼女も口元を指で掻いて反省する。

 

「アハハ、ごめんね。わたしも……すっかりここの爆発に慣れちゃってたなぁ」

 

 どこか自嘲気味に笑う。自身でも非常識に慣れてしまった事の自覚が芽生えたのだろう。

 

「おっちょこちょいな奴だなぁ先生は」

 

 たきなの手で地面に伏せられたままのくるみが、地面を這う蟻を暢気に眺めながらそう言った。

 

 

 実習センターの中は世間一般的な体育館じみていた。二人にはリコリスで育成されてきたので実際の学校に通ったことは無いが、資料で見たことはある。軽く300㎡はありそうな区画はその運用方法は見た目通りに運動に使われることはほとんどない。エンジニア部等の試作品の起動・駆動・性能・安全テストに扱われることが中心だ。端には金属の端材や、失敗品の山。パッと目に入るだけでも旋盤にグラインダーや油圧式ジャッキに溶接器具など一通り揃っている。内部は特殊な素材で実験に伴う少々の爆発などものともしない。

 

「あっ先生! 我々エンジニア部の新作の発明品を見学に来られたのですか?」

 

 千束達が踏み入ると直ぐに奥から作業中の生徒がやってきた。黒縁の眼鏡をかけた作業服姿の生徒だ。

 

「コトリ、実は……」

 

 暫く事情を説明すると、

 

「なるほど! 事情は分かりました! ……おそらく先日警備システムに引っかかったドローンのことですね。確かウタハ先輩が興味を持ってましたよ」

「ウタハが……」

 

 まずい予感に表情を曇らせる先生。雲行きが怪しいのを空気で理解したくるみは先生の裾を掴んで見上げる。

 

「おい大丈夫なんだろうな先生? そのウタハって人の手に渡って無事で済むのか私の可愛いドローンちゃんは?!」

「……急ごう。コトリ、ウタハは何処に?」

「多分作業室ですよ。前の仕事の納期が終わって直ぐに作業室に籠るなんて流石はエンジニア部の部長ですね!」

 

 駆け足で作業室に向かう先生の後を三人は遅れないようについてゆく。

 

「……さっきの爆発音。もしかして――」

「――しぃーっ! 言葉は力を持つんだよたきな!」

 

ついに金属製の丈夫なドアに辿り着いた。部屋の上にはWorking chamberとある。既に部屋の前で中から金属音を擦る不協和音が聞こえている。堪らずくるみが小さなからだ全体を使って部屋の扉を勢いよく開け放った。

 

「あぁーーーーーーーーっ!」

 

 悲痛な声に現場を見ることなく結果を察した千束。たきなは先生の後ろから奥を望みこむとそこには悲劇があった。中央の作業台に乗せられたドローンは、パーツごとに分解されてネジも丁寧に金属製のトレーに並べられている。分解作業中の生徒二人は中央のドローンを挟んで、電気ドライバーやハンマー、ガス溶断機にレンチと道具をその都度変えながら作業中だ。紺色の作業着に手袋、オイルが付着するのを防ぐに使うマスクとゴーグルを身に着けた二人は、まるでドローンという実験体を開胸手術でもてあそぶマッドドクターの姿にしか見えなかった。況やそれを直視したくるみの衝撃はたきな以上のものだったろうことは想像に難くない。

 

「ん? 先生? すまない今は分解作業中でね。要件なら少し後にしてくれると嬉しい」

「あれ? その子どうしたの? 気絶したみたいだけど?」

 

 目の前で人(くるみ)が気絶したとあれば流石に作業を続ける訳にもいかない。直ぐに作業服を脱ぐと休憩室へ連れてゆく。マッドドクターの印象とは違って作業服を脱いだ二人は美少女だった。休憩室でくるみを一旦寝かせて、医務室から生徒を呼んでくる間に簡単に自己紹介と事情を説明することとなった。

 

「なるほど。あのドローンの持ち主は気絶したくるみって子だったとはね」

 

 エンジニア部の部長であるウタハはクールな表情で藤紫色の長髪を靡かせた。

 

「とても興味深い構造のドローンだった。でも鹵獲された時の為のデータ消去は不十分」

 

 どこか眠たげな眼で同じくエンジニア部の一年生でありマイスターのヒビキが続く。

「やはり」

「やっぱり」

「「自爆機能がついてないと」」

 

 二人で目線を合わせて当然のように言う。千束とたきなは理解が追い付かない様子だ。代わって先生が二人に尋ねた。

 

「あのドローンは元に戻せるの?」

「墜落時に配線が切れたのとボディが歪んだせいで、少し時間はかかるけど修理することは可能だよ。分解してたのも、内部に異常がないか調査する為だった……」

「なら安心だね!」

「本当に良かったです」

 

 なにしろくるみのドローンはこのキヴォトスで三人が帰還する為の情報収集に大いに役立ってくれるものだ。

 

「水を差すようで悪いが、ドローンでの偵察はおススメしないな。三人は()からキヴォトスに来たのだろう? ミレニアムは比較的セキュリティもしっかりしてるから直ぐにドローンを落とすことで事なきを得たけど、学校の情報はこのキヴォトスで重要視されている。産業スパイや対抗校の情報を狙ってるやつはわんさかいるからね。もしこのドローンが機密情報を映していたら、いくら先生のお願いでも返すことはできなかっただろう。ドローンでの偵察が学園都市全体を敵に回す可能性も考えるべきだよ」

 

 あくまで冷静にウタハに諭されてしまった。突きつけられる事実に千束とたきなも唸るしかなかった。事情は知らなかったとは言え、クルミのドローンを修理してくれて忠告もしてくれたウタハには謝意と感謝の気持ちしか湧かない。

 

「ごめんねウタハ」

「? 先生が謝る必要はあったかい?」

「本来ならわたしが言うべきだったことをウタハに言わせてしまったからね」

「……なに。先生がそう思ってくれただけで十分さ」

 

 そうしていると精神的ショックから復帰したくるみが戻ってきた。顔色はまだ悪かったが事情を説明すると現金なもので直ぐに戻る。

 

「しかし……そうなると手詰まりだな」

 

 現状、元の世界に戻る手掛かりを探るためのドローンが探査目的では使えなくなってしまった。先生も含めて四人で議論してみてもなかなか直ぐには良い案など出てくるものでもない。このままシャーレ併設カフェで働きつつ、地道に情報収集するしかないのだろうか。

 

「そういえば。千束……ちゃん?」

 

 空気を読んで話しかける機会を待っていたのかヒビキが恐る恐るといった感じで声をかけた。くしゃくしゃとした黒髪から犬のような垂れ耳が覘いてどこか小動物的な印象を受ける。

 

「千束で良いよー。その代わり私もヒビキって呼んで良い?」

「……うん。良いよ。それでね――」

「――なになに? 千束ちゃんに答えられることなら何でも聞いて。あっスリーサイズはNGで」

「その制服に着いてるフクロウのピンバッチって」

「あ~、これは色々あってねぇ」

 

 千束は少し話を濁した。

 

アラン機関。あらゆる才能の持ち主を支援する謎の機関でその支援を受けた選ばれた人間は後のオリンピック出場者だったり、ノーベル賞を受賞したりと数々の功績をあげている。支援を受けた人間はフクロウのピンバッチを与えられ俗にアランチルドレンとも呼ばれており千束自身もその一人である。只アラン機関もただの慈善団体では無く、才能の方向性の善悪を問わずに支援をしている。千束に見いだされた才能は『殺し』の才能だ。生まれた時から心臓に疾患を持って長生き出来なかった千束に人工心臓を移植して支援してくれたアラン機関には感謝もしているが、出来たばかりの友達に話すには色々と重く長い話になってしまう。話すこと自体はに否やは無いが、確実に空気が重くなってまでする話ではない。

 

 その千束の煩悶を知ってか知らずかヒビキは、

 

「私も貰ったのそれ。ほら」

「えっ!?」

「はっ!?」

「嘘……」

 

 作業中に引っかかってしまうことを恐れたのか、ヒビキはポケットからフクロウのピンバッチを取り出して、肩にかけた上着の胸元に留める。何故だか本人は理解できないが、途端に全員の興味を予想以上に買ってしまったことが今更恥ずかしくなったのだろう。頬を赤らめてモジモジし始めたヒビキの反応も気にならないほど三人は集中してピンバッチを見つめている。唯一その中で一人だけはやたら恥ずかしがるヒビキの反応と揺れる胸元を凝視する悪い大人もいた。

 

「ちょっと……ヒビキ。それ貸して貰ってもいい?」

「え、うん良いよ」

 

 手渡されたフクロウのピンバッチを自身のそれと見比べて確かめる。フクロウの羽や材質。細かい意匠なんかもそのままだ。前の世界ならレプリカもあっただろうが、このキヴォトスでアラン機関のピンバッチなんてある筈がない。そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「このピンバッチ……どこで、誰から貰ったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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