ベージュ色の制服のリコリス達   作:mai#急行八甲田

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原作開始1年前になります。
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第1章 中部本部・名古屋支部 編
名古屋派遣 ① ……pressing issue


 

 15時を過ぎた頃、椿黒 百合(つばくろ ゆり)と藤 なずな(とう なずな)の2人は司令室にいた。

 

 机の上には書類が山積みになっている。几帳面な性格の司令だがあまり整理されていないのを見るとここ数日は忙しい日々が続いているのだろうか。しばらくの無言の時間が過ぎると司令が口を開いた。

 

 

「特別任務だ、1ヶ月間名古屋支部で仕事をしてもらう。」

 

 

 そう告げると1枚の紙を渡してくる。

 

 名古屋支部か、前回の長期出張は札幌支部だったなと思いながら書類を受け取り目を落とす。

 

 

「向こうは先月も大規模な作戦を行ったそうだ。その時の被害が多く、東京支部にも応援要請が届いた。1年半前の借りを返せと五月蝿くてね。」

 

 

 確かに名古屋支部からも20人の応援が来ていた。任務終了の帰り際にプライベートの連絡先を教え合った2人のセカンドリコリスのことを思い出す。あの後直ぐに片方がファーストへ昇格となったと連絡が来た。

 

 だがなぜ我々2人だけが?何かの事情があるのだろうか。

 

 

「君達が青か赤の制服を着てくれれば話易いのだが、、」

 

 

 我々は何度も昇格を断っている。

 

 

「ここからは私の独り言だ。」

 

 

 紅茶の良い香りがする。飾り気のない真っ白なカップの中身を一口飲むと誰もいない方向に話し始めた。

 

 

「向こうではサードが主にセカンドによって明らかな差別をされているそうだ。1年半前に支援をしてくれた広島支部でも同様の事態が起きているそうだ。そちらにもサードを2人派遣する。」

 

 

 サードがセカンドやファーストと区別されることはよくあることだ。だが行き過ぎた区別は差別となりサードの士気にも関わってくる。

 

 

「加えて前回の名古屋での作戦は明らかに内通者がいる。裏切り者と言うべきかな。」

 

 

 そしてゆっくりと私達の方に向き直った。その目は様々なことを語りかけてくる。別の支部とはいえ内通者のせいで多くのリコリスが命を落としたことに何かを感ているのだろうか。

 

 

「以上だ。」

 

 

 自分達が何を求められているのかは理解した。

 

 

「承知しました。」

 

 

 司令がこうやって見送ったリコリスが戻ってこないなんてことは2回や3回ではないのだろう。

肩に何とも形容し難い重さを感じながら司令室を後にした。

 

 

 

 

 

「今度は名古屋旅行っすか、楽しみっすねー!」

 

 

 あー、肩凝ったと言わんばかりに腕を伸ばしている。9年前にコンビを組んで以降、お互い様々な任務をこなし生活を共にしてきた。

 

 

「いやー、ユリ先輩と1ヶ月も旅行に行けるだなんて、司令には感謝しかないっすよ。どこ行きますかね〜、ユリ先輩とならどこ行っても最高に楽しいっすけど、適当に探しておきますね。」

 

 

 無邪気にそう話す姿を見せられると何も言えない。毎日のように私と危険な任務をこなしているのだ。彼女に息抜きをさせてあげなければと思う。

 

 自室に戻る途中、噴水広場を通るとそこそこの人数のリコリスが居た。

 大半のリコリスは外の世界を良く知らない。何か悩んでいるとき、落ち着きたいとき、誰かと触れ合いたいとき、暇なとき、ここで暮らすうちにこの広場が自分の中でも大切な場所になっていくのだろうか。

 

 そんな中に誰と話す訳でもなく天井を見つめてボーッとする1人のリコリスがいた。他のリコリス達と同じく灰色の制服を着ているが、纏う雰囲気が違う。

 それもそうだろう。彼女は袖を通してから今年で9年目になるリコリスだ。誰かを殺し、自分が殺されるかもしれない世界で毎日を生きてきたのである。何度も同じリコリスの死を見てきた彼女は、他のリコリスと違う何かを感じる。

 

 

「なずな、朝栄《あさえ》と話してくる。」

「了解っすー!後で迎えにいきますからごゆっくりと。」

 

 

 彼女はスキップでもしそうな勢いで先に自室へと戻っていった。

 

 

「なーんだ、葵だと思ったのに、、。」

 

 

先に口を開いたのは竜胆の方だった。

 

 

「すまない。」

「謝られると何も言えないわね。あの子は荷物の準備にどれだけ時間をかけるのかしら。。。明日から広島支部に出張なのよ。百合も行くのでしょ?場所はどこなのよ?」

「我々は名古屋支部だ。」

「いいわねー、名古屋支部。広島支部には知り合いがいないから羨ましいわよ。」

「1年半前の作戦のときは広島支部から応援は来てなかったはずだが。」

「ええ、、来たのは札幌支部、仙台支部、名古屋支部と福岡支部だったはずよ。」

「不思議だな。我々はあの時の借りを返してほしいと言われて名古屋支部に行くのだが。」

 

 

 朝栄達は司令から何か別のことを言われたのだろうか。

 

 

「知らないわよ…。私には検討もつかないわ…。」

「広島支部の管轄で大きな作戦はあるのか?」

「大規模作戦あるかどうかにについては何も言われてないわね。期間は1ヶ月。……裏切り者を探してこい。それからセカンド達から冷遇されてるサードの待遇を良くしてこい。この2つよ……。」

「やはり本命はその2つなのか。度を超えた区別をされるサード、それに内通者か。」

「その内通者がサードへの変な差別をするようにセカンドリコリスを煽ったのかしら?」

「現時点では何の確証もない……。だがこの2つは決して無関係ではない。それに組織の結束を崩すのには悪い作戦ではないと思う。」

「結局サードが1番人数が多いものね、、普段の作戦も基本はサード中心だもの。今回は面倒くさいわね。」

 

 

 先程の司令の顔を思い出す。厳しいイメージがあるが心の中では日本中のリコリスのことを考えてくれているのだろう。あの目はそういうことだ。

 

 

「他にここから派遣される場所は知ってるのか?」

「全部ではないわ。…………ちょっとこの前一緒に組んだ青服が4人で京都支部に行くっていうのは聞いたわよ。」

「セカンドを4人派遣するのか…、」

「そうよ、、けど期間は1週間と短めね。」

 

 

 司令の考えが読めなくなってくる。司令は広島支部にサードを派遣すると言ったはずだ。我々の任務に関係がないから言わなかったのか、はたまた言えない理由があったのか。

何か結論を出すには情報が少なすぎる。

 

 

「あっ、そうそう、、雫が言ってたのだけどこの作戦、どうやら全ての本部併設支部にここから人員を出すみたいよ。」

 

 

 全国には北海道、東北、関東、中部、近畿、中国.四国、九州.沖縄の7つの本部がある。我々の東京支部は関東本部の所属である。関東全域での活動及び難易度の高い任務をこなすのが東京支部だ。

関東本部には他に北関東支部、南関東支部、墨田区にある喫茶店リコリコの支部、特別な知識と技術をもっているリコリスが所属しているという羽田.成田支部がある。

本部併設支部は札幌、仙台、東京、名古屋、京都、広島、福岡の7つだ。

 これら全てに派遣するようだが我々サードが行くのは名古屋、広島の2つ。つまりどっちかが本命ということで良いのだろうか。 

 

 ふと顔を上げると彼女がこちらを覗き込んでいた。関係の無いリコリスが多くいるこの場所であまり話すのは良くない、そう言いたそうな顔である。

 周りを見渡せば明らかに人数が増えている。2人並んでベンチに座るリコリスや複数人でおしゃべりを楽しむリコリスばかりである。こちらの様子をちらちらと見てくるリコリスもいる。我々の場違い感は相当なものだろう。

 そんなときに向こうから歩いて来る1人のリコリスが目に入った。竜胆藍(りんどう あい)、朝栄葵(あさえ あおい)とタッグを組んで8年目、サードリコリスだった。

 

 

「あれ、百合も一緒か。」

「全く、準備にどれだけ時間かけたのよ。。。日付が変わる前に出発なの分かってるわよね。」

「いやー、1ヶ月分だからね。こっちから持って行くものと向こうで買い足す物の仕分けに迷っちゃってさ。本当にごめんて。。」

「………………、今日は一緒のベッドで寝るわよ。。良いわよね?…。」

「うっ、、……。……、分かったよ。。一緒に寝るから機嫌直してくれる…?」

 

 

 藍のその一言で不機嫌にしていた葵の顔が途端に明るくなる。

 我々を見る視線の数が一気に増えた気がする。それもそうだ。まだ夕方だというのに大勢のリコリスの目の前でイチャ付き始めたらそうなるだろう。

 

 

「それじゃあ、僕たち部屋に戻るから。」

 

 

そう言って立ち上がった2人の手はしっかりと恋人繋ぎである。

 

 

「それに、ほら、、。ユリの大好きななずなも来たみたいだしね。」

 

 

 後ろを振り向くとなずながこちらに駆け寄って来るところだった。犬のような尻尾と耳が見えるが幻覚だろう。

 

 

「ユリ先ぱーい!!、荷物終わりましたよ!!!。て、先輩方お疲れ様っす。!」

 

 

 あからさまに私に飛びついて抱きつこうとしていたがなぜかそれを止めてしまう。急に尻尾と耳が見えなくなる。やはり幻覚だったようだ。

 

 

「お疲れ!なずなちゃん。」

「お疲れ様。」

「2人はもう行くんすか?」

「うん、今日中に出発するからね。」

「じゃあ、気を付けて行ってきて下さいっす!」

「ええ、行ってくるわね。」

「ありがとう!行ってくるね。2人も気をつけて!。」

「あぁ、行ってくるよ。」

「ありがとうございます。行ってくるっすよ!」

 

 

 これでお互い会うのが最後になるかもしれない。だからといって特別なことをするわけでもない。まるで朝学校に行くのを見送るように行ってらっしゃい、行ってきますと言う。それが我々の間で取り決めたルールだ。

 

 2人が部屋に戻るのを見とどけるとなずなは私の隣に座ってきた。近い、ものすごく近い。広場のリコリス達の視線が痛い。なずなは私の左側から体を密着させて右腕を私の首の後ろに回し、左腕をお腹側から腰の後ろに回すと、更に顔を私の胸に埋め始めた。こちらを見ていたリコリス達の顔が赤くなる。それもそうだ。我々は傍からみれぼイチャ付いているカップルにかしか見えない状態だ。

 

 

「そろそろ、戻らないか?」

「あぁー、駄目っすよ。もう少しこうしてましょうよ。、…。」

「周りのリコリス達がこっちを見ているが。」

「いいじゃないっすか〜〜!!。皆に見てもらいましょうよ。、!」

 

 

「まだ日も落ちてないのに公衆の面前でイチャイチャするとは、!!やはり長年付き合い続けた百合ップルはこうでなくっちゃね!、!!。!。」

「あ、来たすっか香。」

 

 

 うっとりとした顔で訳の分からないことを言う青服のリコリスが立っていた。彼女はの名前は月下 香(つきした かおり)。9歳で制服に袖を通し、今年で16歳を迎えるなずなの同期、セカンドリコリスだ。

 

 

「やっぱり夕方の噴水広場は百合の宝庫ね!!右も左も上も下も、どちらを見ても百合がある!!なんて素晴らしいの!!!!」

「いや、天井とか床にめり込んでるっすよ。でもこの時間が1番イチャ付いているリコリスが多いのは間違いないっすね。見てるだけで心が癒やされるっすよ!!。」

「いつまで抱きついているんだ、なずな。」

 

 

 人が来たというのにまるで見せつけるかのようにいつまで経っても離れない。

 私はなずなの頭の上に手を置いた。嫌なら引き剥がせばいい。だがそれを私はしない。あくまでもこれは彼女がしたいからと自分に嘘を付く。

 普段から死というものと向き合って毎日を送るからだろうか。何かでストレスを発散しなければやっていけないし、人間の三大欲求のうち任務等の都合で食欲と睡眠欲に関してはどうしても制限されてしまう。だが性欲はそうではない。特に制限をかけるようなこともないし、お偉い方々も見て見ぬふりをしている。

 

 

「あそこの2人、、、どっちが右で左だと思う??」

「いつも言ってるけどうちは左右に拘らないっすからね、……、どっちでもいいっすよ……。それより雪野先輩はまだ来ないんすか??早く部屋に帰ってユリ先輩とイチャ付きたいんすけど…、…。」

 

「いや、既にイチャ付いているだろ。公共の場でなぜ抱き合ってるんだ、お前らは。」

 

 

 2人分の荷物をカートに載せて押している青服がいた。彼女は雪野 雫(ゆきの しずく)、過去に1ヵ月程タッグを組んでいたこともある同い年のセカンドリコリスだ。

 

 そう言う彼女もいつの間にか香に後ろから抱きつかれていたが。

 

 

「盛大なブーメランだな。」

「お前と違って一方的に抱きつかれてるだけだ。一緒にするな。それよりこっちはもう出発だ。あまり長話はできない。」

 

 

 聞けば2人の行き先は札幌だという。もうこの後すぐに出発するそうだ。こちらも手短に自分の行き先と内容を伝える。

 

 

「私も司令から全ては聞けてない。どこが本命なのか、それすらも検討が付かない。セカンド4人かと思えば2人、単なる実力による振り分けと言われればそうかもしれないが……。お互い現地に行かなければこれ以上のことは分からないと思う。」

 

 

 そう言うと雫は時間を確認した。どうやらもう行くようだ。抱きついていた香を無理やりに引き剥がしている。

 

 

「もう時間だからいったん終わりにしてくれ。車の中でも抱きついてかまわないから。」

「その言葉……、しっかりと録音しましたからね、、………、!」

「えっ、……、。いつの間に…?」

「さあ、!!行きましょ!!百合先輩、なずな、気をつけて行ってきて下さい。こちらも行ってきますね。!!」

「ありがとうっすね。そっちも気を付けて行って来て下さいっすよ。」

「あぁ、ありがとう。行ってらっしゃい。」

「ひ、…ひとまず行ってくる。そっちも気を付けろよ。」

 

 

 そう言い残すとカートごと雫は引きずられていった。まぁ、あの2人のことだ。放って置けば良いだろう。

 

 時刻は既に17時を過ぎている。広場にいるリコリスの人数も少なくなっていた。なずながやっと私から離れる。

 

 

「で、うちらの今後の予定はどうなってるんするかね??」

「明日は4時に出発だ。起床時刻は3時にする。早めに食事と入浴を済ませて21時には寝るぞ。」

「寝るの早いっすね〜、明日からのユリ先輩との名古屋旅行が楽しみで眠れないっすよ!!」

 

 

 お互いほとんど同じタイミングでベンチから立つとなずなが手を握ってきた。恋人繋ぎというやつだ。彼女に教えてもらってから7年が経つ。普段から過激なスキンシップをされても私は特に動揺はしない。嫌とも思わない。むしろもっとしたいといつも思っている。それでも私の方からすることはない。なぜか私の方からしようとすると恥ずかしい、そんな気持ちになる。夜には体を重ねてもっと恥ずかしいことを幾度となくしているはずなのに。そんな気持ちを全て見透かしているように彼女は私の顔を見て笑ってくる。

 

 私は自分の本当の気持ちにいつも通り蓋をするといつも通りの無機質な表情で広場を後にした。

 

 

 部屋に戻ると私の分の荷物の準備も完了していた。身の回りのことは全て彼女がやってくれる。別に自分1人でできない訳ではない。ただ、彼女がそうしたいらしい。だから私は好きな様にさせている。それを望んでいるのであれば私に止める権利もないだろう。

 一応、過去に逆らってみたことはある。だがその日の夜に、

 

 

「昼間は先輩の手を煩わせてしまいましたね……。安心して下さい。夜は私が全てやりますから……。先輩は私に身を任せて…、ただ、狂って下さいね、、。……、。」

 

 

と言われてベッドの上でめちゃくちゃにされて以降やめることにしたのだ。

 

 

「どうしたんすか?」

「いや、普段から私の分まですまない。」

「私がしたくてしてるんすからお礼はなしっすよ!!。」

「あぁ、一度昔に自分で準備をしたら夜にベッドの上でメチャクチャにされたな。」

「それ、思いっきり私のこと誘ってるっすよね?!?!」

「そんなつもりは無い。」

「照れなくてもいいっすよ!私が欲しかったらいつでも言って下さいっす!!!うちはいつでも大歓迎っすからね!!!!!」

 

 

 どんなに冷静でいようとも、どんなに感情を隠そうとも私は人の温もりからは離れられない。それは一番自分で理解している。だから無条件で私の全てを受け入れてくれる彼女にいつまでも依存してしまう。私の方こそ彼女から離れられなくなっているのだ。

 彼女を絶対に失いたくない。だから少しでも危険は排除したい。なるべく全てを知っておきたい。私はリコリス全員に配布されている端末を取り出す。

 

 

「ラジアータに質問するんすか?答えてくれますかね??」

 

 

 過去のある作戦の際に我々は関東本部のラジアータがどこにあるのかを知ってしまった。本来なら知り過ぎたとして処分されるはずだったが様々な思惑が絡みあった結果、こうやって今もリコリスとして活動している。

 ラジアータは全てのインフラの優先権を持ち、我々に端末等を通して指示を送ることもある。ならば我々の端末からもラジアータにアクセスすることが可能であると考えられる。その結果、我々はラジアータを使って通常なら知ることのできない情報を得てきてのだ。

 

 

「ラジアータ、私の質問に答えてくれるか。」

 

 私は端末に呼びかける。すると画面が暗くなりアプリが起動した。私はそこに質問を打ち込む。

 

 

――今回の任務は何が目的だ

 

 ―ソレヲ知ル必要ハ無イ

 

――では裏切り者は誰でどこにいる

 

 ―ソノ立場ニ無イ

 

――今回の任務を達成するために必要なことだ

どうすれば成功の可能性が上がるのか、何が最善かを考えて答えてほしい

 

 

暫くすると画面に新しいメッセージが送られてくる。

 

 

 ―特別ニヒトツダケ教エル

  裏切リ者ハアナタ達ノ名古屋支部ニ居ル

 

 

 そうメッセージを残すとアプリが勝手にシャットダウンされた。

 

 

「まぁ、うちらの所が本命って分かっただけでも収穫っすよ。」

 

 

 私は端末を机の上に置いた。とりあえず今日は休もう。なずなが既に準備してくれていた入浴セットを手にとると大浴場に向かった。

 

 入浴と食事を済ませて部屋に戻るとなずながコーヒーを淹れてくれた。2人でベッドの上に横に並んで座ってそれを飲む。

 

 

「ユリ先輩、いつも言ってるじゃないっすか。表の先輩はただの凡人で精神力も強くない。でも努力と経験、そして皆の思いを背負う。そうして誰よりも強くなっていく。でもそれは先輩にとって相当なストレスっすよ。」

 

 

 私が強くなる理由は自分という存在が欲を満たしたことへの罰だ。その罰はとても辛くて苦しい。だがそれを私は受け入れなければならない。

 

 

「今日はもう寝よう。」

「ちゃんと歯磨きはして下さいね。」

 

 

 コーヒーを飲み干して歯を磨き、寝る準備を整える。

 2段ベッドの下段、私のベッドに入るとしばらくしてなずなも入ってきた。私は無意識に彼女の手を握る。

 

 

「お休みなさいっす、先輩………。」

 

 

 何故か強い眠気に襲われている。私は返事をしたかどうかも分からないまま眠りに落ちて行った………、………、…。

 

 

 

 

 

 医務室で貰ってきた睡眠薬、良く効くっすね。毎晩、うちといっしょでなければ眠れないユリ先輩、昔は違った。常に冷静で無表情で理論的に物事を考え、感情なんて無かった。でも今は違う。

 明日の朝はしっかり起こしますからね。今日の夜はゆっくりと眠って下さいっすね。

 

 

 

 

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