人物名解説
藤 なずな (とう なずな)
藤の花言葉
優しさ、決して離れない、恋に酔う
藤の英語の花言葉
歓迎、忠実な、確固たる
なずなの花言葉
あなたに私の全てを捧げます
白花 茉莉花 (しろはな まりか)
茉莉花→ジャスミン
ジャスミンの花言葉
愛想の良い、優美、官能的
ジャスミンの英語の花言葉
愛想の良い、朗らかで気品がある
白色のジャスミンの花言葉
好色、柔和
白色のジャスミンの英語の花言葉
好色
***
職員に連れられて司令室へと向かう。すれ違うリコリス達が皆こちらを見てくる。見覚えのないサードリコリスに興味があるのだろうか。違う、こちらを見てくるのはセカンドリコリスばかりだ。そしてその目はどこか攻撃的である。
司令室の前に到着すると副官が待っていた。職員は副官と一言二言交わして帰っていった。
「司令が中でお待ちです。」
そう言うと副官はドアをノックした。
「栗田司令、東京支部からのリコリスが到着です。」
「入れ。」
そう言われて司令室に入る。中は東京支部の司令室と全く同じ造りである。ソファに案内されて我々は腰を掛ける。
ふと机の上に目が行く。楠木司令が持っていたのと同じマグカップが置いてあった。
司令はこちらを見ると執務机の椅子に座ったまま話し始めた。
「中部本部・名古屋支部の司令、栗田だ。全く、、楠木め、優秀なリコリスリを寄越せと言ったが………。」
「うちらはそこらのファーストより優秀っすよ。」
「それぐらい経歴を見れば分かる。だからこそ楠木が君達を寄こすとはな。」
「楠木司令と知り合いだったのか?」
「元同僚だよ。一緒に仕事をしていたこともある。」
私は栗田司令の顔に見覚えがあることに気が付いた。だが、どこで会ったのかが思い出せない。相当昔であったことは確かだ。
もう一つ、栗田司令という呼び方に違和感を覚えた。その前回に会ったと思われる時には別の呼ばれ方をされていた気がする。
「どうした、私の顔に何か付いているのか。」
隣を見るとなずなが司令の顔をじっと見ていた。
「いや、前にあんたとどっかで会った気がするんすよ。でもいつだったか思い出せないんすよねー。」
「ふふっ、そうか。確かに、どこかで会ったかもしれないな。」
栗田司令は我々と会ったことを覚えている様子だ。思い出せない。栗田司令と会った場所が。今回の件の謎を解く重要な手掛かりになる気がする。どこだ、いつ、どこで、どうして会った。
「長距離移動で疲れているだろう。手短に済まそうか。」
もう少しで思い出せた気がするが栗田司令の声に遮られた。司令の方が早く終わらせたいように感じるのは気の所為だろうか。
「君達には先ず1週間、名古屋市内を中心にリコリスとして活動をしつつ、こちらの雰囲気に慣れてもらう。その後に関しては後達する。詳しい事は副官に聞いてくれ。質問はあるか?」
「うちらは大規模な作戦の応援の為にここに来たんすよ。」
「何のことだ。」
その口調で我々は気付いてしまう。既に司令は裏切り者に従わざるを得ない状態であることに。どんな弱みを握られているのだろうか。また1つ新たな事が分かった。
「君達は情報を持っている。私はヒントも与えた。それを繋ぎ合わせれば真実に辿り着ける筈だ。話は以上、帰りたまえ。」
我々は副官に案内されて司令室を出る。その時、栗田司令が小さい声で呟いたのが聞こえた。
「済まないな、私が無力なばかりに……。」
その表情は昨日の楠木司令と同じだった。
「あなた達の部屋は221号室です。今日は特に予定がありませんので休日と同じく好きな様に過ごして下さい。明日は9時に私が部屋に向かいます。何か質問はありますか?」
「部屋の場所はどこっすか?」
「近くのリコリスにでも聞いて下さい。」
「案内してくれないんすか?」
「このあと私は別件がありますので。」
「部屋は2人っすか?」
「ここのリコリス棟は東京と違って狭いので基本的にサードとセカンドは4人部屋です。」
「先客が居るってことっすね。うちらがその部屋に入るってことは欠員が出たんすか?」
「いいえ、3ヶ月前に彼女達が221号室に移動した時から2人です。特に気にすることはありません。他になければ私はこれで失礼します。」
そう言い残して彼女は立ち去ってしまった。
「なんかうちらの扱い酷くないっすか。」
「事情があるのだろう。仕方が無い。」
「まあ、今日一日休みになったのはありがたいだすねー。何しますか?あ、先に荷物整理しないとっすね。」
「とりあえず広場に戻って茉莉花と合流して部屋に案内してもらおう。」
「了解っすー。」
私は考えた。栗田司令が我々に与えてくれたヒントとは何なのだろうか。裏切り者へと繋がる手掛かりを他に言っていただろうか。
栗田司令は楠木司令を同僚だったと言っていた。そして同じマグカップを持っていた。恐らく過去に同じ職場または接触の機会が多い場所で働いていた。楠木司令はここ10年はずっと関東にいた筈だ。とすれば栗田司令は以前は関東にいたということになる。会ったのはその時だろう。
栗田司令は我々の質問に対して何のことだと言った。楠木司令は大規模な作戦を行うと言っていた。つまり大規模作戦とは裏切り者を処刑するための作戦ではないだろうか。そしてそれに参加するリコリスは自力で裏切り者に辿り着き、かつ知っていることを相手に知られていない者でなければいけない。
相当理論の飛躍があるが、過去の経験と知識からかなぜかその様な結論に達してしまった。いや、なずなに読まされた巨人が出てくる漫画の団長が同じ様なことをしていたからかもしれない。一旦なずなと答え合わせをするべきか。
だがそれはすれ違ったリコリスのせいで出来なかった。正面玄関と受付を過ぎたところだった。
「おい、待てよそこのサード。」
我々は立ち止まった。先程司令室に向かう際にこちらを睨んでいた4人組のセカンドリコリス達だった。
「ここのルールを知りませんでした、か、、新入り。」
「何すか?、ルールって??」
「なら教えてやるよ。通路はセカンド優先だ。サードは端に寄って待っていろ、、理解したか?」
「ちょっと何言ってるか分からないっすねー。」
「ちょっと貴方、それがセカンドに対する口の効き方かしら?雑魚のサードのくせに。」
「うちらの方があんたらより強いっすよ。何なら模擬戦しますか?1対4でいいっすよ。ハンデもあげるっす。目隠しでもしましょうか??」
「なずな、あまり煽る様なことを言うな。」
小説や漫画に出てくる典型的な自らの大したことがない地位や立場を利用して下の者をイジメる集団だ。あまりにテンプレート過ぎて笑うことすらできない。
「すまない。」
「あら、貴方は謝罪が出来るのね。なら端に寄ってくれないかしら。」
「ちょっと、ユリ先輩。何でこんな奴らに謝るんすか。」
「面倒を起こしたくないからな。」
彼女達について調べなければ。裏切り者に繋がる何かしらの情報を持っている、そんな気がする。こんなにも堂々と変なルールを作っているのだ。もしかすると協力者か。いや、それは無いか。このやり取りから分かるのは彼女達が馬鹿だということだ。だとすれば良いように使われているだけか。
「ここは我々がいた東京と違う。なずな、ここにはここのルールがある。」
「物分かりがいいようだな、お前は、。」
なずなは今にも彼女達と喧嘩をしようとしている。だがそこへ思わぬ乱入者が現れた。
「あらー、2人共こんなところにいたのね〜、遅いから探しに来ちゃったわ。。」
茉莉花が来てくれたのだ。預けていた荷物はどうしたのだろうか。
「あれ、茉莉花さん。うちらの荷物はどうしたんすか?」
「それなら大丈夫よ。電話で一葉ちゃんを呼び出して荷物番をさせてるからね〜、。」
鬼畜だ。死にそうな顔で荷物番をする一葉の顔が想い浮かぶ。
「そういう訳でこの子達は私が預かるわ。行くわよ百合、なずな。」
「おい!待て白花!!」
「待ちませ〜ん。それより年上なんだから呼び捨てにしないでくれるかしら。」
「ふざけんな!いつもサードの味方をしやがって。」
我々は茉莉花に引っ張られる様にしてこの場を立ち去る。最後まで彼女達はこちらを睨んだままだった。