人物名解説
黒羽 一葉 (くろば かずは)
くろば→クローバー
クローバーの花言葉
約束、復讐
クローバーの英語の花言葉
私を思って
1つ葉のクローバーの花言葉
困難に打ち勝つ、開拓、始まり、初恋
柳 (やなぎ)
柳の花言葉
従順、自由
柳の英語の花言葉
自由、悲哀
栗田 (くりた)
栗の花言葉
贅沢、私に対して公平であれ
栗の英語の花言葉
私に対して公平であれ
***
足元を見ると2人の死体があった。彼女達は死の瞬間、何を感じたのだろうか……。
想像するのは容易い。ゴムに塩と砂糖をまぶした様だと評される通り、塩化アンモニウムの塩味とアンモニア臭、リコリスの甘味が同時に口の中を駆け抜けた筈だ。加えて彼女達が口にしたものは Lilja の手によってキシリトールがまぶされていた。だからそこにキシリトールの甘さと清涼感もあったのだろう。
「salmiakki(サルミアッキ)の。キャンディー。。フィンランドでは。よく食べる。。美味しい。。。」
「いや、美味しいとは思わないっすよ。」
salmiakki(サルミアッキ)はフィンランドでよく食べられているリコリス菓子に塩化アンモニウムを添加したものだ。お茶や料理の味付けにも使われる。このリコリスとはスペインカンゾウ(licorice)のことで、彼岸花(lycoris radiata)のリコリスではない。
2人は息を吹き返すと柳から渡されたお茶で口の中を一刻も早く洗い流そうとして、、また倒れた。
「そのお茶。。。私の。。」
「おっ、間違えた、。めんごめんご。」
サルミアッキ入りのお茶を口にした彼女達は再び死体となっていた。
誰かがこの部屋に向かってくる気配がする。この感じは、司令の副官か。ドアをノックするとこちらの返事を待たずに部屋に入ってきた。何枚かの書類を持って先程と変わらぬスーツ姿の副官は、倒れている2人を見て不思議そうにしていた。
「えっと、何で2人は倒れてるの?」
「リコリス菓子を食ったら余りの美味しさに倒れたんっすよ。」
「リコリス菓子?あなた達リコリスの名前が付いたお菓子?」
少し興味を持った様子の副官に Lilja が近付き先程のキャンディーを渡した。
「美味しい。。1つ。あげる。。食べてみて。」
副官は手渡されたキャンディーを何の疑いもなく口にした。そして、、…………、死体が1つ増えた。
「流石に死体になるほどの不味さじゃないと思うんすけどね。」
2人よりも早く復活した副官は、柳から手渡されたお茶を飲んで再び死体になっている。
副官がゾンビみたいな格好で我々に書類を渡してきた。明日から1週間、自由に外出が出来る許可証だ。外に泊まることも出来るようになっている。更に今日の分の許可証も渡された。
「明日の朝、命令下達に参ります。今日は外泊はできません。この部屋に泊まって下さい。それから他の4人にも明日から1週間、自由に外出可能な許可証が出ています。」
「あんま興味ねぇけど貰っとくわ、。」
「私も。。余り。外出しない。。でも。皆と。外行きたいから。。貰う。。。」
「僕たちも明日から1週間出られるのか。」
「あなた達2人も今日は外泊できないので気を付けて下さい。」
副官は部屋を出て行った。帰り際に Lilja からサルミアッキを貰っていたが司令の紅茶にでも入れるのだろうか。
「やっと荷物の整理が出来るっすね。」
「僕たちも手伝うよ。」
「私も。。手伝う。。。」
「いや、うちがやりますからいいっすよ。」
「ユリ先パーイ。机とロッカー手前でいいっすよね。」
「ああ、頼む。」
なずなは4個のスーツケースを開けるとあっという間に綺麗にしまった。
「荷物全部出してるけど明日から外泊しないの?」
「その荷造りはまたやるっすよ。スーツケースに入れっぱなしは嫌っすからね。」
なずなが普段使っている我々2人の枕をベッドの下段に置いた。ついでにお揃いのパジャマも畳み直して布団の上に置いく。
「あら、2人共いつも一緒のベッドで寝てるのね。」
「夜は五月蝿くすんなよ、。」
「私は大丈夫。。問題無い。。。」
「なら良かったす。」
「ねえ、何で皆平然とそういう話が出来るの?」
一葉の顔が何故か赤くなっている。何を想像したのだろうか。
なずながいつものコーヒーマシンを取り出してコーヒーを淹れる準備を始めた。柳が開いてない天然水のペットボトルを渡してくる。それを持参のポットに入れるとお湯を沸かし始めた。
「ところで2人は今日、出掛けるのかしら?」
「うちはどっちでいいっすよ。ユリ先輩はどうするっるか?」
「今日はしなくて良いだろう。ここの施設等を見て周りたい。」
「午後に案内するよ。明日の朝は僕たちもここに居ないといけないみたいだから今日の外出は取りやめるしね。」
「私は。。ご飯食べて。寝る。。。」
「俺は部屋に居るぜ、、。4人で行ってきな。」
全員、この後の予定は決まったようだ。なずながコーヒー豆を挽き始めると良い香りが部屋に漂う。
「良かったら昼食を6人で食べるのはどうかしら?」
「僕はいいよ。」
「うちも問題無いっす。!」
「問題無い。」
「ご飯。皆で。。食べる。楽しみ。。。」
「俺もか?」
「柳。。来たくないなら。いい。」
「なら俺も行くよ。、。」
コーヒーが1滴、また1滴と抽出されていく。6人分となれば相当な時間がかかるだろう。
「じゃあ僕達はなずなのコーヒーを飲んだら一旦部屋に戻るよ。待ち合わせは何処にしようか?」
「噴水広場に11時半でいいんじゃないかしら。」
全員それで構わないようだ。取り留めもない会話を5人でしているうちにコーヒーが淹れ終わった。
「サルミアッキは入ってないっすから。」
「もうあれは止めてよ。」
一葉と茉莉花は恐る恐るコーヒーを舐めると安心したよう飲み始めた。柳はうわ、うめぇーなこれと言って飲んでいる。Lilja はキシリトールを入れてから口にした。
私も一口飲む。何時もの味だ、安心する。なずなも全員が飲み始めたのを確認してから、私とお揃いのカップに口を付けた。
先程のお茶会とは打って変わってまったりとした時間が過ぎていく。皆一言も話さず、ただ、コーヒーを味わった。
**
「まったく、酷い目に遭いましたよ。」
「何があった。」
「221号室に向かったら、お菓子を渡されて、それを食べたら今までに経験したことの無い味で、お茶もその味がして。本当に最悪でした。」
彼女はそう言って司令にいつものカップで紅茶を出した。司令にも同じ目に遭ってもらおうと思い、あの子からもらったサルミアッキを入れている。司令がどんな反応をするか楽しみだ。
「司令、紅茶です。」
「ありがとう。」
司令は紅茶を一口飲んだ。さあ、余りの不味さに倒れるか、どうなるか。どうにもならない。どうして?司令はもう一口飲んでから言った。
「ふふっ、salmiakki 入りか。」
司令は中身を全て飲み干し何事も無かったかの様に執務を再開した。