SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

1 / 159

この作品をきっかけに、原作両作品に興味を持っていただければ嬉しいです。



序章「彼の者はアギト」
第1話「戦士、再醒」


東西の間に鉄のカーテンが降りて十余年、隣り合う東国<オスタニア>と西国<ウェスタリス>の間には仮初の平和が成り立っていた。

 

そんな世の中で、東国に住む3人の親子がいた。

 

「少し遅くなってしまったな・・・()はもう帰ってるだろうか・・・」

 

静かに呟きながら歩く金髪の男・・・ロイド・フォージャー。職業は精神科医。

 

「そうですね、この時間ですと帰ってきていると思います。」

 

ロイドと親しげに話す黒髪の女性・・・妻のヨル・フォージャー。職業は公務員。

 

ショーイチ(・・・・・)のごはん、たのしみ!」

 

ヨルと手を繋いでいるピンク髪の幼女・・・二人の娘、アーニャ・フォージャー。

 

一見、ごく普通の家族に見えるが、この家族は本当の家族ではない。所謂、"疑似家族"というものだった。

そこには深い事情があった・・・

 

「ん……?」

 

自宅が見えてきた時、ロイドは声を上げた。家の前に青年が立っていた。青年は3人に気づくと、ニカッと笑顔を浮かべ、駆け寄ってきた。

 

「おかえりなさい!」

「翔一君……君、家の鍵はどうした?」

 

ロイドが尋ねると、翔一という男はタハハといった感じにまた笑った。

 

「いやー、それがウッカリ家の中に忘れちゃって!それで、ここで皆さんを待ってました!」

「……何をやってるんだ、君は。」

 

翔一の話を聞き、ロイドはため息をついた。その横でヨルはクスクスと笑っていた。

その時、アーニャが翔一が両手に袋を下げていることに気が付いた。

 

「ショーイチ、なにもってる?」

「あ、これ?これはね、ほうれん草!いっぱいもらったんだ!」

 

翔一はかがんで目線をアーニャに合わせると、袋に入ったたっぷりのほうれん草を見せた。

それを見てアーニャは一瞬喜んだが、すぐに微妙な顔になった。

 

「もしかして、一週間ホウレンソウ・・・?」

「あ、わかっちゃった?でも大丈夫!いっぱい料理考えてるから!まず、おひたしに、グラタン、あ、後ミートソースに混ぜたりとか・・・」

 

翔一は思いつく限り料理の名を呟いた。それをよそにロイドは玄関ドアのカギを開けた。

 

「翔一君!いいから、入りなさい。」

「はい!」

 

彼の名は津上翔一。フォージャー家の家族ではないが、訳あって居候している。そして、ロイドとは異母兄弟となっている(・・・・・・・・・・)

 

(この男が転がり込んでから早一週間……とりあえず危険はないが、任務(・・)に支障が出ない内になんとかせねば……)

 

ロイド・フォージャー。彼は本当は精神科医ではなく、黄昏という凄腕のスパイだった。ある重大な任務のため、孤児だったアーニャを養子とし、同じく形式上の恋人を探していたヨルと偽装結婚していた。

 

「翔一さん、何か手伝いますか?」

「いえ、大丈夫です!だってヨルさん、ぶきっちょじゃないですか!」

「ぶ、ぶきっちょ……」

(ああ、また言われた……これで7回目……)

 

ヨルは家事が下手だった。掃除や洗濯は出来たが、他は壊滅的だった。特に料理がひどかった。

しかし、それも仕方のないことだった。

 

(殺しだけでなく、料理も勉強すれば良かった……)

 

彼女は本当は凄腕の殺し屋だった。暗殺組織所属の「いばら姫」という名前で、対象者を殺害していた。

 

(この男、無害そうに見えて意外と毒吐くな……本当に何者だ、この男は……)

 

ヨルと翔一のやり取りを見て、ロイドは思った。

一週間前、ヨルがこの男、翔一を拾ってきた。話を聞くに、雨の日にヨルが公園の近くを歩いていたところ、ずぶ濡れで倒れていた翔一を発見した。

その後家で介護をしたが、目を覚ました時、翔一は記憶を失っていた。

記憶が戻るまでの間、翔一をフォージャー家で預かることになったのだ。

 

(しかし不思議なのは……アーニャがこの男を妙に気に入ってることだ。)

 

ロイドはチラリとアーニャを見た。

翔一といっしょに暮らそうと言い出したのはアーニャだった。その理由は、彼女の能力に関係していた。

 

(うーん……あいかわらずショーイチのこころ、よめない……)

 

ロイドとヨル、翔一には話していないが、アーニャは超能力者だった。他人の思考の映像や心の声を聞くことができる。が、どういうわけか翔一の心は読めなかった。

まるで心そのものに鍵がかかっているような感じだった。

こんなことは、アーニャの人生で初めてのことだった。だが、アーニャはそれに「わくわく」していた。

いつか翔一の心の声を聞く、それまで一緒にいたいと思ったのだ。

 

「はーい、出来ましたよー!」

 

翔一は声を上げ、料理をテーブルに置いた。

翔一はロイド達が隠していることを知らない。本当の家族ではない、ということは知っているが、翔一にとってそんなことはどうでもよかった。

ただ、記憶喪失の自分を拾ってくれた3人はとてもいい人達で、いい家族だと思っていた。

 

「翔一特製、ホウレンソウカレーでーす!」

「わぁっ、おいしそう!」

「カレー!」

「カレーにほうれん草を入れたのか。」

 

かぐわしい香りが鼻孔をくすぐり、味に期待を膨らませる3人。そんな空気の中、翔一は……

 

「ほうなんれす!」

 

ほうれん草と「そうなんです」を掛けたダジャレをぶちかました。

 

『……はい?』

 

翔一の寒いギャグに、食卓の空気が凍り付いた。

 

 

────────────────────────

 

食事を終え、皆が寝静まったころ、ロイドは本来の仕事をしていた。

 

(ここか……)

 

今回の任務は暗殺。東西両国の平和を脅かす政治家ウォルドの暗殺が目的だった。

ロイドはウォルドの自宅に忍び込み、家の中にいるウォルドを暗殺するつもりでいた。

無事にウォルドの自宅……屋敷に侵入したが、様子がおかしいことに気が付いた。

 

(おかしい……警備がいない。調査では警備が5人ほどいたはずだが……)

 

罠かもしれない、とロイドは慎重に忍び込む。そして、天井裏からリビングを覗き込んだ。

 

「!!」

 

ロイドは自分の目を疑った。そこには死体が転がっていた。警備員、使用人、そしてターゲットのウォルドにその家族……皆殺しにされていた。

 

(ど、どういうことだ……!?他の奴か?だが、この殺し方は……)

 

その殺し方は異様だった。体が無理やり捻じ曲げられていた。頭部が真後ろに、間接があらぬ方向に曲げられていた。他の死体も全てそうだった。

ロイドはその異様さに鳥肌が立ちそうだった。その時、窓の外に気配を感じた。

外を見ると、窓の外に人と思わしき影があった。

 

(まさか奴が……!?)

 

ロイドはすぐさま外に出た。相手が何者か分からないが、確かめる必要があったからだ。

 

「待て!」

 

ロイドは声を上げて拳銃を向け、睨みつけた。だが、その顔はすぐに茫然とした顔に変わった。

目の前にいたのは、人間ではなかった。虎……というよりは豹に近い。人の姿をした豹の化け物がこちらを睨んでいた。

それを見た途端、ロイドは恐怖を感じた。得体が知れないものへの恐れだ。ロイドはすぐさま引き金を引いた。

だが、放たれた銃弾は怪物には当たらず、当たる前に粉々に砕けた。

 

「そんな……」

 

ロイドは軽く絶望した。すると、怪物は左手の甲を右手の指でなぞる仕草を見せた。何かのサインかもしれないが、そのサインを見せてすぐ、目にも止まらぬ速さでロイドの眼前に近づき、首を掴んで持ち上げた。

 

「な…なに……!?かはっ……!!」

 

首を絞められ、ロイドは死を予感した。その瞬間、頭の中に浮かんだのは家で寝ているはずのヨルとアーニャの笑顔だった。

 

(ヨルさん・・・アーニャ・・・)

 

本当に殺されてしまうと思ったその時、まばゆい光がその場を照らした。同時に気配を感じた。目の前にいる怪物とは違う、圧倒的な"強者"の気配……

 

「!!」

 

その気配を感じた瞬間、怪物はロイドから手を離した。

 

「かはっ!!がはっ!!」

 

ロイドは喉を抑えて咳き込みながら、怪物とともに光の方を見た。

そこには一人の男が立っていた。光のせいで顔は見えないが、勇ましく仁王立ちしている。

 

「アギト……」

 

怪物がボソッと呟いた。そして、男は構えを取った。

 

「ハアァ……変身ッ!!」

 

男は叫ぶと同時に腰に両手を当てた。そして、男はさらにまばゆい光に包まれ、その姿を変えた。

金色の鎧を身に纏い、赤い目を輝かせる戦士へと台詞通り、「変身」した。

 

「変わった……?」

 

ロイドが驚いていると、怪物は金色の戦士へと突っ込んでいく。

 

「オオオオオオッ!!」

「フンッ!ハッ!」

 

怪物は金色の戦士へ次々と攻撃を繰り出す。しかし、戦士はその攻撃を次々といなし、怪物の体に徒手空拳を浴びせていく。

銃弾が効かなかった相手に着実にダメージを与えていた。攻撃を浴びせる度に、怪物が怯んでいく。

 

「ハアァ……タアッ!!」

 

戦士は拳に力を込め、怪物を殴り飛ばした。

殴りばされた怪物は2メートルほど吹き飛び、地面に転がった。

 

そして、怪物に最後が訪れようとしていた。

戦士の頭の角が翼のごとく展開した。

 

「ハアァァァァ……」

 

戦士は構えを取り、力を溜めた。すると、地面に紋章が浮かび上がった。紋章は彼と同じく金色で、彼の顔面を模っていた。

すると、紋章が戦士の右足に吸い込まれていく。

 

「ハッ!」

 

戦士は空高く飛び上がった。そして空中で一回転。

 

「デヤァァァァァァッ!!」

 

叫び声を上げながら飛び蹴りを繰り出した。蹴りは怪物に命中し、またも地面に転ばせた。

そして着地した戦士は展開した角を元の状態に戻し、先ほどのような構えを取った。まるで、日本の剣道における"残心"のようだった。

 

「グッ……!!ウ、ウウウゥゥゥ!!ウオオオオオオオッ!!」

 

蹴りを喰らった怪物は頭に輪のような光体を浮かばせたかと思うと苦しみ始め、断末魔を上げながら爆発した。

その爆発を背に、金色の戦士は静かに佇んだ。

 

「何者だ、奴は……?」

 

ロイドは目の前で起きたことに、ただただ驚くしかなかった。

その時、金色の戦士は佇みながらロイドに顔を向けた……

 

 

 





最近になって両作品にハマり、見ていくうちに「あれ?この2つ、なんかシナジーがある気がする」と思い、書くに至りました。

評価・感想などいただけるととても嬉しいですし、励みになりますので、楽しんでいただければ幸いです。



後、ロイヨル多めです


作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。