SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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おまけ その1「新年の挨拶」

ロイド「読者の皆さま。」
ヨル「新年あけまして!」
アーニャ「おめめとうござます!」

全員『おめでとうございまーーすっ!!』

ユーリ「今年もこの『SPY×AGITΩ』をどうか、よろしくお願いします!」
フリッド「これからも、俺達は読者の皆さまを楽しませるために全力を尽くします!」
グリム「まあ、俺らの馬鹿騒ぎやアホなとこ見たいなら、損はさせないぜ?だから今年も……!」

全員『よろしくお願いしまーーーすっ!!』




PART.3 邂逅Ⅲ:黒いG3

次の日……

 

「みんなちゃんと並んでー!迷子にならないように!」

『はーいっ!!』

 

イーデン校の生徒達は社会科見学で、今話題の会社「クレマチス社」を訪れていた。

中に入ってロビーで待っていると、エレベーターから一人の男が出てきた。男はニコニコ笑いながら、フリッドと生徒達に近づいてきた。

 

「イーデン校の生徒のみなさん!こんにちは!私はクレマチス社社長のクリスといいます!今日はよろしくお願いします!」

『よろしくお願いしまーーーすっ!!』

「いいお返事ですね!では、あちらを見てください。」

 

クリスは指を指すように右手をロビー中央の壁に取り付けられたモニターに向けた。

すると、モニターに映る映像ではクレマチス社のコマーシャルが映し出されていた。

 

『クレマチス社は世界初のクリーンエネルギーを開発しました!その名も、ネオプラーナ!ネオプラーナさえあれば、森林や水、空気を汚しません!さぁ、あなたも是非ネオプラーナをお試しください!』

「……今、CMで語られた通り、我が社のネオプラーナは世界初のクリーンエネルギー!世界中どこを探しても、同じものはありません!」

 

クリスはそう言うと、内ポケットから小さい瓶に入った青色の液体を取り出した。

 

「これがネオプラーナです。私の手元にあるのはこれ1本だけですが、この1本だけで車1台を約1ヶ月動かせます。」

『すごーいっ!!』

「おーっ!」

 

皆と一緒にアーニャは驚いた。しかしその時……

 

『助けて……』

 

どこからともなく、助けを求める声がアーニャの耳に響いた。

アーニャは辺りを見回すが、誰も困っている様子はない。

フリッドとアーニャ達生徒はそのまま次のフロアへ向かった。

 

「ここは電気室。会社の電気は全てここから来ているんですよ。」

『おーっ……!!』

 

電気室に入って、生徒達は声を上げた。電気室に入ると、目の前には巨大な筒状の水槽があった。その水槽には大量の青い液体……ネオプラーナが入っていた。そのネオプラーナは光で照らされ、キラキラと輝いていた。

その輝きに生徒達は目を奪われていた。

 

「会社の電力はこのネオプラーナによって支えられています。その量、約10トン。半永久的に電力を使うことが可能なのです!」

「すごい量だな……」

 

10トンものネオプラーナを前に、フリッドも驚嘆していた。

すると、ベッキーが手を挙げ始めた。

 

「質問でーす!”プラーナ”って、どんな意味があるんですか〜?」

「プラーナというのは古代インドのサンスクリット語で”息吹”という意味があります。この国の……いえ、世界中の新しい息吹になるように……という願いを込めたのです。」

 

ベッキーからの質問に、クリスはニコニコと笑いながら答える。

その説明を聞きながら、フリッドは……

 

「ん?」

 

辺りを見回していると、見覚えのある姿が目に止まった。

スタッフ専用の出入り口の近くで、眼鏡をかけた気弱そうな男が会社の社員と話をしていた。

 

(あの男……昨日の……!)

 

社員と話していたのは昨日、墓参りの帰りに遭遇したあの男だった。

 

(あの人が何故、こんなところに……?ここの社員なのか?)

 

一瞬、あの男はクレマチス社の社員だと思ったが、社員にしてはどこかよそよそしい。さっきから話している社員とペコペコと頭を下げていた。

フリッドはその様子をまじまじと見ていたが、向こうもこちらに気づいたのか、目線をこちらに向けてきた。

 

(おっと…!)

 

フリッドは思わず目線を外し、正面を向き直した。

 

「すいませーん、このネオプラーナって、どんなことにも使えるんですか?」

 

その時、ダミアンが手を挙げてクリスに質問をした。

 

「もちろん!電力だけでなく、ありとあらゆるエネルギーの代わりになりますから!加えて、人体にも有益なのです!」

「人体にも……?すいません!」

 

クリスの返答を聞き、フリッドは思わず手を挙げた。

 

「どうしました?先生。」

「私からも質問よろしいでしょうか?人体にも有益と言いましたが……病気や怪我を治せるということですか?」

「その通りです。怪我をした場合は傷口にネオプラーナを塗り、風邪や胃が痛い場合はネオプラーナを少量飲めば、たちまち良くなります!」

 

クリスの言うことはどこか胡散臭かった。だが、妙に自信満々に言っている。

 

「はーっ、スゴイですねぇ。」

 

怪しく思ったフリッドは思わず顔をしかめそうになったが、なんとか笑って相槌を打った。

しかし、心の中ではずっとクリスとネオプラーナを怪しんでいた。

 

(なんか引っかかるなぁ……)

(あらたなナゾ……わくわく!)

 

疑い、首を傾げるフリッドに対し、アーニャはこの後何が起きるのかわくわくしていた。

その時…

 

『助けて……!』

 

先ほどと同様、助けを求める声がアーニャの耳に響いた。しかも今度は一つだけではなかった。

 

『助けて……!』

『助けて!!』

『こんなとこは嫌だ……!!』

『解放してくれぇ……!!』

 

一度に大量の声が響いてくる。アーニャはその声がどこから来るのか、辺りを見回した。

その声達の主は、すぐに見つかった。その声は……電気室の真ん中にある水槽に入ったネオプラーナから聞こえていた……

 

「うっ……!?」

 

その声を聞いた瞬間、アーニャは恐怖と同時に吐き気を覚えた。

誰もいない、人間ですらない液体から声が聞こえてくるのだ。しかもその声は恐怖に怯えている。幼児であるアーニャにとって、これほど恐ろしいものはない。

アーニャはその場で跪き、蹲った。

 

「アーニャちゃん!?」

「お、おい!どうしたんだよ!?」

 

両隣にいたベッキーとダミアンが、突然その場で蹲ったアーニャを見て慌てた。

そこにフリッドがすぐさま駆けつけた。

 

「どうした!?」

「アーニャちゃんが……!」

「アーニャちゃん!どうしたんだ!?お腹痛いのか?!」

 

フリッドの呼びかけにアーニャは首を横に振り、恐怖で体を震わせた。

 

(怖がってるのか……?一体何を怖がってるんだ……?)

 

何故怖がっているのか分からなかったが、フリッドはとにかくアーニャを落ち着かせようと、そのままアーニャを抱き上げた。

 

「すいません!この子、体調が悪いみたいで……!」

「おや……医務室にご案内しましょうか?」

 

フリッドはクリスに断りを入れると、クリスは医務室への案内を促した。すると、抱かれていたアーニャはフリッドにしがみつき、首を横に振った。

 

「……いえ、少しバスで休ませて様子を見ます。それでも体調が悪ければ病院に連れていきます。」

 

しがみついてきたアーニャを見て、フリッドはアーニャを早くここから出すべきだと察した。

そしてフリッドはアーニャを連れて学園バスに戻った。

 

「アーニャちゃん大丈夫?深呼吸して…ゆっくり、落ち着いて……」

 

バスの座席に座らせ、フリッドはアーニャの背中をさすってやった。アーニャはそれに応えるように深呼吸をし、あの時聞いた声のことを話し始めた。

 

「……アーニャ、こえきいた。」

「声?」

「ネオプラーナから……!」

 

アーニャの一言にフリッドは困惑しそうになったが、冷静に頭の中で整理を始めた。

あの時、自分を始めとして他の皆がその声に気づいている様子はなかった。アーニャにしか聞こえていない……それはつまり、心の声ということだ。

 

「液体のネオプラーナから声が聞こえた……?」

「なるほど、噂通り裏がありそうですね。ネオプラーナ……」

 

その時、バスの運転手が運転席から立ち上がり、呟きながら二人に近づいてきた。さらに運転手は帽子とマスクを取った。

その瞬間、二人は声を上げた。

 

「法条!?」

「きょーとー!」

「私はもう教頭ではありませんよ。」

 

2人の前に現れたのは、ある意味二人の因縁の相手ともいえる男……「WISE」のスパイ、法条。

 

「どうしてお前がここに……?」

「仕事です。以前から、上層部はクレマチス社を怪しんでいました。」

「理由は?」

「実は……クレマチス社は2年前まで倒産寸前とされていた弱小企業でした。それが最近になって大企業へと成長しました。」

「もしかして、その要因って……」

「ええ、例の……」

 

法条から話を聞き、フリッドはクレマチス社が大企業に成長した要因が何か分かりかけてきた。

だがその時だった。突然銃声が鳴り響き、バスの窓ガラスが割れた。

 

「うわっ!?」

「なんだ!?」

 

フリッドは窓の外を見た。そこには、黒いパワードスーツに、青い瞳をした戦士が立っていた。

さらにいえば、その戦士は保安局のあるライダーによく似ていた……

 

「黒い……G3……!?」

 

細かい部分は違っていたが、それは黒いG3に称するに相応しい見た目をしていた。

 

「法条、アーニャちゃんを頼む!!」

 

本能的に危険を察したフリッドは、法条にアーニャを任せて窓から外に飛び出した。

 

「お前……何者だ!?」

「……」

 

黒いG3は何も言わず、こちらを睨んでくるフリッドに銃口を向けた。

 

「返事はどうしたぁっ!!」

 

────────────────────────

 

時間は少し遡り、フリッドと生徒達がクレマチス社の社会科見学に来ていた頃、街の中央広場では傷病軍人支援チャリティーイベントが行われていた。

この場に、ヨルの元同僚であるカミラ、ミリー、シャロンにドミニクがイベントの手伝いに来ていた。

 

「あー、もう!今年もまた手伝わされるのか〜……」

「市のイベントなんだから仕方ないでしょ。」

 

ため息をつきながらミリーに対し、カミラは軽く叱りつけた……が、他の3人に対し、カミラは軽い荷物しか持っていなかった。

 

「ちょっとカミラ!軽い荷物ばっか持たないでよ!」

「しょうがないじゃない!今日はお腹の調子が悪いんだから……」

 

カミラはそう言いながら下腹部を慰めるように撫で回した。

 

「それに、今日はヨル先輩以上の助っ人を頼んだから大丈夫よ!」

「ヨル先輩以上〜〜?」

「誰よそれ?」

 

カミラの一言にミリーとシャロンは声を上げた。すると、カミラはドミニクは互いに顔を見合わせ、ニッと笑った。それを見て、ミリーとシャロンは首を傾げた。

 

「ちょっと役所のみなさま!!」

 

その時、カミラ達に向かって怒鳴り声が響いてきた。その声に4人はビクッと体を震わせた。

声が聞こえた方に顔を向けると、そこには数人の中年女性が4人を睨んでいた。

 

(ゲッ、愛国婦人会……!)

(また絡んできた……)

 

カミラ達は以前にもこの愛国婦人会の女性達に絡まれたことがあった。その時はヨルと、同じく婦人会のメリンダのおかげで事なきを得た。

 

「さっさと働いてくださる?こっちの準備も進まなくなるんですけど?」

「は、は〜いっ、すぐやります〜〜!」

 

婦人会の主婦達に睨まれ、4人はすごすごとその場から立ち去った。

その時、主婦の一人が声を上げた。

 

「あら?今日はあの生意気な黒髪のゴリラ女はいないのね。」

 

ヨルのことを言っていた。あの時、ヨルはミリーのことをバカにした婦人会を煽り、追い払ってみせた。

そのことを根に持っているようだった。

 

「あの女、役所を辞めたのかしら?」

「え、ええ……辞めて旦那さんと一緒に喫茶店をしてます。」

 

尋ねられたドミニクは恐る恐るヨルが市役所を辞めたことを話した。

すると、主婦達はクスクスと笑い始めた。

 

「フフフッ、ざまぁないわね!」

「私達に楯突くからこうなるんだわ!!」

 

主婦達はここぞとばかりに笑い、ヨルを罵倒した。

正直言って見てて恥ずかしくなるほどみっともないが、4人はそれを黙って聞いていた。

 

「会長に気に入れられてるからって生意気なのよ、あの女!」

「あんな女の喫茶店なんて、どうせ安物ばっか使ってるんでしょう?お似合いね!」

 

主婦達は調子に乗ってさらにヨルを罵倒した。すると、カミラはさすがに耐えきれなくなり、主婦達を睨み返した。

 

「アンタ達いい加減に……!!」

「おいーーーっす!!」

 

カミラが主婦達に噛みつこうとしたその時、その間に割って入るように一人の少年が現れた。その少年は、グリムだった。

 

「グリム!」

「えっ?助っ人ってこの子!?」

「おう、飯奢ってくれるって言うから来たぞ。飯はピザでいいぞ。」

 

グリムはサングラスを外してポケットに入れると、拳の骨を鳴らした。

すると、婦人会の主婦達はまた笑い始めた。

 

「役所の方々は情けないわねぇ、こんな子どもに仕事を手伝わせるなんて……地に落ちたものねぇ……」

 

またしても主婦達は罵倒を始めた。すると、グリムは主婦達の方を向いた。

 

「……なぁ、おばちゃん達さぁ……」

「ん?」

「そうやって、わざわざ仕事の手を止めて人をバカにして……恥ずかしくねぇの?情けねぇのはテメェらだろ。」

「は……!?」

 

グリムの言葉を聞き、主婦達は頭にピキッ……と青筋を立てた。グリムは構わず続けた。 

 

「あーあ、こんな大人にはなりたくねぇな……少なくとも人を思いやれる人間になりてぇわ。アンタらみてぇなババァどもと違って。」

「なっ……!?こ、このガキッ!!」

 

さらなるグリムの罵倒を聞いて、眼鏡をかけた主婦が平手打ちしようと手を振り上げた。

グリムにとって、こんな平手打ちなどスローモーションに見える。グリムはやれやれといった様子で平手打ちをよけようとした。

しかし、その時……

 

「ダーリィ〜〜〜ンッ♡」

「ん……?だあぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、グリムは背後を向いた……と同時に、グリムの自称恋人のロゼッタがどこからともなく現れ、グリムに抱きついてきた。

 

「ダーリィン♡会いたかったぁ♡」

「お前は一体どっから出てくんだ……!!」

「グ、グリムくん……?その人は……?」

 

じゃれ合う(?)二人を見ながら、ドミニクは恐る恐る声をかけた。すると、ロゼッタは一旦グリムから離れ、カミラ達に挨拶を始めた。

 

「恋人のロゼッタですっ!ダーリンがお世話になってます♡」

『ダ……!?ダーリンッッッ!!!?』

「もういいよ、その反応……3回目だぞ……」

 

いい加減見飽きた反応に、グリムはため息をついた。

 

「だ、だってグリムくんにこんな彼女さんがいたなんて……し、しかもこんなデカパ……おほんっ!ふくよかな人とは……」

「何デレデレしてんのよ、このバカ!」

 

カミラはドミニクの脇腹に肘鉄を入れた。ドミニクがロゼッタの大きな胸を見てデレデレと鼻の下を伸ばしていたからだ。

 

「ち、ちょっとあなた達!!」

 

その時、談笑しているグリム達を見かねて、眼鏡の主婦が声を上げた。

 

「お喋りしてないで手を動かしなさい!準備が進まないって言ってるでしょ!?」

「あー、はいはい……今やりますよ……」

 

「しかたない」と言いたげな態度で、グリムは目についた大きめの木箱に近づいた。中にはイベントで使う機械が入っている。軽く50キロはあるがグリムは、

 

「よっ……と」

『ッッッ!!?』

 

片手で軽々持ち上げてしまった。それを見たカミラとドミニク以外の全員は目が飛び出る勢いで驚いていた。

 

「フフッ、言ったでしょ?ヨル先輩以上の助っ人だって!」

「た、確かに……」

「これ、あっちでいいのか?」

 

グリムは向こう側を指差して荷物を置く場所を尋ねた。

 

「うん!お願いね!」

 

頼まれて、グリムは荷物を置く場所に向かって歩み始める。それと同時に、婦人会の主婦達が運ぼうとしている荷物をチラ見した。自分と違い、軽い荷物ばかり持っているのを見て、グリムはフッと嘲笑うように笑った。

それは「お前らガキに負けてんぞ」とバカにしているような笑い方だった。

 

(こ、このクソガキ……!!)

 

グリムのその態度に主婦達は激怒しそうになっていた。すると、続けてカミラがフッと笑った。

 

「プッ……!ガキに舐められてやんの……」

 

消え入りそうなほど小さい声での罵倒だったが、婦人会の主婦達にはしっかりと聞こえていた。

そして次の瞬間、

 

「こ…の……!!クソクソクソクソッ!!クソどもぉぉぉ!!」

「!?」

 

眼鏡の主婦は怒りのあまり雄叫びを上げ、手を振り上げた。

カミラはとっさのことで驚いたが、後ろに下がってその平手打ちをよけようとした。しかし次の瞬間、カミラは何かに足を取られ、バランスを崩した。同時に平手打ちがカミラの頬に炸裂。カミラはその場に尻もちをついた。

 

『っ!!』

「カミラ!!」

 

突然の光景に全員声を上げ、その光景を荷物を運ぶ途中だったグリムは、荷物を投げ出してカミラの元に駆け寄った。

 

「うっ……!!」

 

尻もちをついたカミラは、何故か腹を庇うように触れた。普通、顔を叩かれたら、頬を庇うのが普通だ。しかしカミラは逆に腹を庇っている。

 

「カミラ……!お前、もしかして……!?」

 

グリムは一瞬分からなかったが、カミラの腹が少し膨らんでいることに気がついた。ここから予想できるのは……

 

「うん……!お腹に、赤ちゃんがいるの……!!私と、ドミニクの子が……!」

「えっ……!?」

 

カミラの言葉に全員が驚いた。ドミニクの方も何も知らなかったかようだ。さらに、同僚のミリーに至っては何故か顔面蒼白になっていた。

 

「嘘でしょ……!?」

「てめぇ……!!何しやがんだゴラァッ!!!」

 

友人が、それも妊婦が傷つけられたのを見て、グリムは怒りで声を上げた。

さすがに妊婦相手に暴力を振るったことに動揺しているのか、婦人会の主婦達は慌てていた。

 

「わ、私が悪いんじゃないわよ!その女が煽るから……!それに、妊婦なら黙って家にいなさいよ!邪魔じゃないのよ!!」

 

その瞬間、グリムの中で糸のようなものがプツンッと切れてしまった。

 

「……おい、クソババァ……人間、頭に血ィ昇って口論できなくなるとなぁ……最終的に暴力に走るんだよ……今のお前みたいにな……!!」

 

瞳孔を開きながら、グリムの顔に半透明の模様が浮かび上がった。このままオルフェノクに変身して、目の前にいる女達を皆殺しにしてやろうと思ったのだ。

そんなことをすれば、今まで積み上げてきたものが一気に壊れてしまう……そんな時だった。

 

「あなた達何やってるの!!」

 

そこに一人の女性が現れ、大声で叱咤した。

 

「か、会長!?」

(メリンダ・デズモンド……!!)

 

現れたのは愛国婦人会の会長、ダミアンの母親メリンダ・デズモンドだった。メリンダはカミラを殴った眼鏡の主婦に駆け寄り、何も言わずに頬を思い切り叩いた。

 

「か、会長……!?」

「あなたがしたことは遠くから見えました。お腹に子どもがいる人に、なんてことを……!!」

「し、しかし……!!」

「おい、ババァども!」

 

言い争いに発展しそうになる二人を見て、止めるようにグリムは声を上げた。

 

「口喧嘩してる場合かよ!さっさと救急車呼べっ!!この責任は取ってもらうからな!!」

 

メリンダの登場で、グリムは一旦落ち着いてオルフェノクの力を引っ込めた。

すると、

 

「おい!そこのお前止まれ!」

 

遠くの方から声が聞こえてきた……かと思いきや銃声が響き渡り、悲鳴が響いた。

 

「なんだ……?」

 

グリム達は騒ぎがする方に顔を向けた。そこには、現在フリッドも遭遇している黒いG3がいた。黒いG3はチャリティーイベントに来ていた軍人を銃で次々と射殺していた。

 

「黒いG3だと……!?」

 

驚くをよそに、黒いG3は銃口をこちらに向けてきた。

 

「っ!!ドミニク!みんな連れて隠れてろ!!」

 

銃口を向けられ、グリムはドミニクに忠告をしながら、黒いG3に向かって走り出した。

黒いG3は向かってくるグリムに向かって銃を撃ってくる。グリムは走りながら道に落ちていたバケツを拾い上げ、それで銃弾を防ぎつつ、黒いG3の懐に入り込んだ。

 

「うぉぉらぁっ!!」

 

バケツを頭に叩きつけた。硬いものを頭に叩きつけられ、黒いG3はフラッ…とぐらついた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

バランスを崩したところを、グリムは拳を突き出して殴りかかった。

 

────────────────────────

 

また時間は遡り、フリッドとグリムが各々活動している頃…保安局秘密警察では……

 

「フンフンフ〜〜ン♪」

 

鼻歌を歌いながら、今にもスキップしてしまいそうな足取りで、ユーリは廊下を歩いていた。

そこに向こう側からアイネとフランキーが歩いてきた。

 

「あら、ユーリ君。今日はすごくご機嫌ね。」

「えっ?そうですか?」

 

ユーリは自分でも機嫌がいいことに気づいていなかったようだった。しかし、すぐさま何故機嫌がいいのか考え、それを思い出し、ユーリは頬を染めた。

 

「あー……じ、実は昨日、ぼくの家にノエルさんが泊まったんです……」

「おっ!?マジかよー!!」

「とうとうチェリーボーイ卒業かしら?それで?どうなったの……?」

「……ました……」

『ん?』

 

ユーリが何か呟いたが、恥ずかしいのか声が小さくて聞き取れなかった。そんなユーリを見て2人はニヤニヤと笑っていた。

そんな2人にイラつきながらも、ユーリは意を決して言った。

 

「ふ、二人で隣り合って!て、手を繋いで、寝ましたァ!!」

『……えっ?』

「へ?」

 

2人は声を上げた……と同時にため息をついた。

もっと親密な関係になったのかと思い期待していたのだが……期待外れに終わり、2人はガッカリしたのだった。

 

「こりゃあ一生チェリーボーイ確定かもなぁ……」

「そーね。期待した私らがバカだったわ。」

「ちょっとぉ!?これでも頑張ったんですよ!?」

 

失礼な態度を取る二人に、ユーリは声を上げた。すると、アイネは何かを思い出したように手をパンッと叩いた。

 

「あっ、そうだ!昨日、新しい仮面ライダーと会ったんでしょ?」

「誰からそのことを?」

「俺がロイドから聞いたの!うっ……!」

 

そう言うとフランキーが自信満々に胸を叩いた…が、すぐに苦しそうに胸を抑えた。

すると、それを見かねてアイネはため息をついてフランキーの背中をさすった。

 

「ほら、へっぽこなんだから無理しないの。まだ包帯が取れただけなんだから。」

「ううっ……一言多いんだよ、姐さん……!」

 

以前、仮面ライダー4号達から受けた怪我から回復したフランキーだったが、まだ完治はしていないようだった。

アイネはフランキーの背中をさすりながら、話を戻した。

 

「ねぇ、そのライダー君、今度連れてきてくれない?」

「どうしてですか?」

「実はね……今、G3-Xの強化プランを考えてるの。新しい仮面ライダーが増えて、ショッカーにも強敵が後何体いるかもわからない……このまま行くとG3-Xが力不足になる可能性がある……そうならない様にするための強化プランよ。」

 

アイネの話を聞き、ユーリはなるほどと頷いた。これまで現れたライダーはどれも強くたくましかった。ギルスもルデス…もといカイザも強くなっている。それと比べると自分とG3-Xは……と考えてしまう。

 

「分かりました。次に会ったら聞いてみます。」

「頼むわね。」

 

アイネの頼み事を承諾したユーリはうんと頷いた。

と、その時だった。けたたましい音を立てながら、サイレンが鳴り響いた。

 

『南C地区の港にショッカーと思われる怪人出現。対策班は現場に急行されたし。』

「……聞いたわね?さっそくお仕事開始よ!!」

「はい!」

「よっしゃ!」

 

サイレンと放送を聞き、3人は気合を入れて現場へと向かった。

 

────────────────────────

 

現場の港にたどり着くと、そこではショッカーの戦闘員と両手に鋭い刃を持つジャガーの怪人が人々を襲っていた。

 

『G3-システム、アクティブ!気合い入れなさい、ユーリ君!』

「はい!」

 

G3-Xを装着したユーリは、バイクから降り銃を抜いて構えた。

 

「むっ……!来たか、仮面ライダー!」

 

ジャガーの怪人、ハサミジャガーはユーリを見るなり臨戦態勢に入った。

 

「人間どもを襲えば、ノコノコ現れると思っていたぞ!さぁ、盗んだ計画書を出せ!!」

「……は?」

 

身に覚えのないその一言に、ユーリは声を上げた。その様子にハサミジャガーは怒り狂った。

 

「しらばっくれるな!貴様が盗んだのは分かってるんだ!!」

「イーッ!」

 

その時、ショッカーの戦闘員がハサミジャガーに駆け寄り、耳打ちを始めた。

 

「……なんだと!?盗んだのは『青い仮面ライダー』じゃなくて、『青い髪をした男』だっただとぉ!?馬鹿者が!!」

 

戦闘員の耳打ちを聞き、ハサミジャガーは怒り狂い、戦闘員を蹴り飛ばした。

その様子を見て、ユーリは呆れた様子で首を振り、深いため息をついた。

その時だった。どこからかヘリのローター音が鳴り響いた。

上を向くと、そこには1台のヘリコプターが……

 

「ヘリ……?アイネさん!保安局から助っ人ですか?」

『いえ……そんなの聞いてないけど……』

 

謎のヘリの襲来にざわめくユーリ達とショッカー。すると、ドアが開き、そこから黒いアーマーに身を包んだ戦士が飛び出し、地面に着地した。

 

『!!』

「あ、あれは……!?黒い、G3……!?」

 

現れたのは黒いG3……突然の乱入者にユーリ達は動揺していた。

 

『G4……!?』

「えっ?」

『どうして……!どうしてG4がこんなところに……!!?』

 

黒いG3はG4というようだった。そのG4が現れてから、アイネは声を荒げていた。すると、それをよそにG4はマスクの耳元に手を当てた。

 

「武器の投下。」

『了解。』

 

G4が誰かと通信し、ヘリから筒状のケースが飛来した。G4はそれを受け取り、中を開けた。開けると、中に入っていたのは……刀だった。

G4はその刀の鞘についたアタッチメントを腰に接続して”帯刀”し、そのまま”抜刀”した。

 

『GZ-02”アメノハバキリ”、アクティブ』

「……来い。」

 

三者の目の前に現れたG4……そのG4の出現が、東国と西国を混乱の渦に巻き込むとは……この時、誰も予想できなかった。

 

 




おまけ その2「お年玉」

「アーニャちゃん、はいコレ!俺とフィオナからお年玉!」
「あっ、すいませんお二人とも……」
「アーニャ、お礼は?」
「あざざます!」

フリッドは正月の風物詩、お年玉をアーニャに手渡した。しかし、フリッドは申し訳なさそうな顔をしていた。

「本当は俺とフィオナ、別々に渡したかったんだけどな……」
「このバカ、1ヶ月の給料の半分をあの子のお年玉に注ぎ込んだんです。」
『うっわ……』

フリッドに肘鉄を食らわせながら語るフィオナの言葉に、その場にいた全員がドン引きした。しかし、フリッドは首を横に振って反論を始めた。

「だって!!公式のお正月イラスト見たか!?ダミアンが着物を着ているだけでも破壊力高いのに……扇子をっ!持ってるんだ!!それを見ただけで、『あら、背伸びしてるのかな?かわいいねぇ♡』って心が叫んでるんだよっ!!普段からかわいいのにあんなの反則だ!!ほっぺたなんかプニプニしてそうで……ああっ、ダミアンを抱っこしながらほっぺたプニプニした……うごっ!!?」

フリッドのダミアン語りが白熱しかけたその時、フィオナはどこからか取り出したバットを脳天めがけて振り下ろした。
バットでの一撃を受け、フリッドはその場に倒れた。

「すいません、このバカが白熱して……」
「い、いえ……むしろいつも通りで安心したというか……」
「フリッド……頼むから犯罪だけは起こさないでくれ……」

フォージャー一家に冷たい目で見られながら、フリッドは立ち上がり……頭から血を流しながらニコッと笑い、フィオナの方を向いた。

「あ、ああっ……フィオナったらヤキモチやいて……!あっ、そういえばフィオナの着物姿も素敵だったなぁ……あの着物の下に雪のような白い肌の……俺しか知らない姿があると思うと、もう興奮して仕方な……!!」

次の瞬間、フィオナは髪に差したかんざしをフリッドの首の後ろ…首の急所目掛けて突き刺した。刺されたフリッドは言葉を発することなく、その場に倒れた。

「すいません、このバカ…後でもう一回ぶっ殺しますんで。おじゃましました。」

そう言うと、フィオナは倒れたフリッドを無造作に掴んで引きずり、そのまま出ていった。

「ロイドさん……フリッドさんって、教師ですよね?」
「俺も信じられませんよ……というか新年一発目のおまけが、こんなんでいいのか……?」
「……うぷっ」

白い目で呆れていたロイドとヨル、さらにアーニャはダミアンとフィオナに対する愛が重いフリッドに胃もたれを起こしていた。

─────────────────

新年一発目のおまけがこんな内容ですいません……でも、フリッドは今年も変わりません!安心(?)してください!

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