「よし……こんなところかな。」
フリッドはホワイトボードにマジックで文字を書く。これまでに浮上してきた謎をまとめているのだ。
「これが、今までに浮上した謎だ。」
フリッドは書き殴ったものを皆に見せた。残された謎は以下の通りだ。
1.ブラックサレナの構成員の数
2.G4の装着員及びその数
3.ネオプラーナ
4.クレマチス社との関係
5.内通者の有無
6.ブラックサレナの最終目標
「……結構あるな。」
「まず、ブラックサレナの構成員……」
フリッドはホワイトボードを裏返して裏側を見せる。裏側には3人の名前が書かれていた。
「まず、リーダーのウォルター・クロフォード。元秘密警察だったが、裏切って世界中をパニックに陥れようとしている。」
「しかも、かなりの強さ……そうでしょ?ユーリ。」
ヨルはユーリの方に顔を向けた。ユーリは姉の質問に答え、コクリと頷いた。
「うん……秘密警察の中で『最強』って言われてたし、刀を扱わせたら右に出る者なんていない……G4を使ってる姿も見たけど……圧倒的だった。」
ユーリはあの時見た、ウォルターが装着するG4が刀でショッカーの戦闘員達と怪人をあっという間に倒した光景を思い出し、震えた。ウォルターの強さは健在だということが目に見えて分かった瞬間だった。
「次は……ガオ・グウェイ。仮面ライダーダパーン。」
フリッドは続けてガオの名前を指差した。
「ブラックサレナの一員で、多分幹部クラス。この男のことは……グリムの方が詳しいか?」
「別に詳しいワケじゃねぇよ。ただの腐れ縁だ。まだ小さかった頃……俺はアイツとナワバリ争いをしてたんだ……といっても、ガキの喧嘩だったけどな。」
グリムは目を瞑り、昔の記憶を呼び起こした。小さかった頃、お互い敵意をむき出しにして殴り合いの喧嘩をしたあの頃……
「……アイツも俺と同じ”家無し”で……些細なことばっかで喧嘩してたなぁ……たいてい顔がむかつくとか、態度が気に食わないとか、そんな理由でな。」
「うーん……今のところ、ブラックサレナに入る動機が見当たらないな。」
グリムの説明を聞いても、ガオが組織に入る理由は不明だった。特に強い恨みがあるようにも思えない。
「動機ねぇ……アイツ、ボクサーになって成り上がるとか言ってたけど……結局挫折したらしい。それからは行方知れずになった。俺もその時には復讐に燃えてたから、アイツのことはそれ以上知らない。」
「そうか……なら、これ以上は掘り下げられないか……」
ガオへの掘り下げをやめ、続いてフリッドはグインの名を指差した。
「グイン・バーナード……仮面ライダーギンペン。」
「その男に関しては『WISE』が調べてるわ。資料持ってきた。」
フィオナは鞄からコピーされた資料を取り出し、会議机に並べた。
「グイン・バーナード、49歳……職業は警備員。奥さんは息子が産まれてすぐに事故で死亡……息子のマーティも東西戦争の折に爆撃によって死亡……死んだその日は、誕生日だったみたい……」
フィオナのその一言に、部屋がシンッと静まり返った。
「誕生日の日に死んじまったのか……そりゃ、やりきれねぇよな……」
「……あの人には二度会ったが……底知れぬ憎悪を感じた。チャップマンへの恨みもそうだろうが、戦争や国そのものに恨みを感じているようにも見えた。」
フリッドはグイン……ギンペンと戦った時のことを思い出した。
戦闘力は素人に毛が生えたぐらいだったが、執念による勢いは凄まじいものがあった。
「ガオとグインが変身に使ってるベルトは、エースが使ってるのと同じ奴だ。確か、『デザイアドライバー』だったかな……」
「エース君の世界のものをなんで持ってるのか……そこも謎だな。」
「今はそこの議論は後にしましょう。」
アイネは二人が使うドライバーについて深掘りすることを後回しにすることを提案した。今はG4に関して深掘りする方が先決ということだ。
皆もその案に乗り、次の話に進む。そこでフリッドはノエルに尋ねた。
「ノエルさん、ブラックサレナの構成員……何人ぐらいいるか分かるか?」
「結成当初はお兄ちゃん達3人含めて、だいたい20人くらいです。でも……それから徐々に賛同者を増やして、メンバーは今……500人にもなります。」
「ご、500っ!!?」
構成員500人……そのとんでもない数にフランキーは声を上げた。他の皆も同様に驚いていた。
「た、ただのテロリスト集団が、500人……!?」
「それだけ国や国の偉い奴らが嫌いな連中が多いってことか……」
「次はメンバーを1000人に増やす……って言ってました。」
「1000人……!」
ブラックサレナの目的が一つ判明した……メンバーを1000人に増やすこと……しかし、何故そうまでメンバーを増やしたいのかは謎だ。
「でも……なんでそんなにメンバーを増やしたいんでしょう?」
その時、ヨルが皆が気になっていることを口に出した。
「まさか……そいつらを全員G4の装着員にするつもりなのか……?」
続けて、ロイドがハッと気がついたように声を上げた。
「先輩、どういうことですか?」
「前にアイネさんが言ってただろ?G4は装着した時点で死ぬことが確定する。メンバーを集めたいのは、G4の装着員を増やすためなんじゃないか?」
ロイドの説は、例えるなら銃に込める弾を買うのと同じことだった。確かに理にかなっている説といえる。
しかし、アイネはそれを否定した。
「それはないと思うわ。ウォルター君が言ってたわ。『G4の軍団を作る』って……1000人の構成員を使い捨ての駒にしてたら、せっかく集めた意味がない。」
「言われてみれば、確かに……」
アイネはふとノエルの方に顔を向け、彼女に尋ねた。
「ノエルちゃん、ブラックサレナにはG4は何機あるのかしら?」
前にフリッド、グリム、ユーリの前に同じ時間にG4が現れた。それはつまり、「G4は少なくとも3機は存在する」ということだ。
アイネはさらにG4はいると思い尋ねたのだ。
「G4は続々と作られてます……数はもう、500機以上作られてます……!」
「マ、マジかよ……」
皆はまたも驚いた。まさかそんな数のG4が作られているとは想像もしてなかった。しかし、そうなると疑問が浮かぶ。
「でも、なんでそんな数が作れるんだ?G4作るのだってタダじゃないだろうに……」
「ちなみに姐さん、G3-Xってどれぐらい金かかるんだ?ゼロが何個つく?」
「……ゼロが、軽く5、6個つくわね……」
とんでもない値段に皆は息を飲んだ。それだけ値段が高いものを500機も作るとなると、国家予算レベルの値段になる。
「……そ、それだけ作れるってことは、ブラックサレナには何かデカい後ろ盾……スポンサーがいるってことだ。」
「そこでネオプラーナが関わってくんじゃねぇか?」
その時、グリムは手を上げて意見を述べ始めた。
「ほら、ロゼッタが言ってただろ?ネオプラーナからG4と同じ匂いがするって!クレマチス社と繋がってるってことじゃねぇか?」
「うーん……さすがに匂いを根拠にするのはな……」
「いえ……グリム君の意見は正しいです……」
皆がグリムの意見に難色を示す中、ただ一人、ノエルだけは肯定した。しかし、ノエルの手は何故か震えていた。
「ノエルさん……?」
「お兄ちゃんと、クレマチス社社長のクリスは繋がってます……そもそも、ブラックサレナはあの二人が結成したんです。」
ノエルの言葉に空気がざわついた。
しかし、その時フリッドが意見を述べ出した。
「じゃあ……ネオプラーナもG4と関係してるのかい?」
「はい……!あぁっ……!」
すると、ノエルは頭を抱えてうずくまった。何かを思い出し、それに恐怖している。そんなノエルを慰めるように、隣に座っているユーリは背中を優しくさすった。
「大丈夫……?言いたくないなら言わなくていいからね?」
「……大丈夫。言うから……」
背中をさすられて、ノエルは落ち着いたのか静かに深呼吸を始めた。
「G4のエネルギー源に、ネオプラーナが使われています……」
「ネオプラーナを……!?」
「確かに、ネオプラーナは次世代エネルギーと言われてる。この小さい瓶に入ってる分だけでも、車を約一ヶ月はガソリン無しで動かせる。」
フリッドは机に置かれた小瓶のネオプラーナを指差した。
さらにノエルは話を続けて言った。
「それから……G4の装着者は……装着者は……!”死体”なんです……!!」
その瞬間、部屋の中がシンッと静まり返った。その後すぐ、フランキーは突然笑い始めた。
「ハ、ハハハハ……!じ、冗談キツいぜノエルちゃん!そんなのゾンビ映画じゃあるまいし!そんなのあるわけ……ないよな?」
フランキーはノエルが冗談を言ってるのだと思い、笑い飛ばした。だが、ノエルは至って真剣な顔をしていた。
それを見た瞬間、フランキーは血の気が引くような感覚を覚えた。
「マジ……なのか?でも、アイネ姐さんが言ってたじゃん!装着員が死んでもG4は動き続ける……でも、戦闘までは出来ないって!」
「……ネオプラーナがそれを可能にします。」
フランキーの反論にノエルは答え始めた。
「死体にネオプラーナを注入することで数時間の間、肉体の腐食を抑えて、肉体そのものを生前同様の状態に戻すことができるんです。」
「確かに、ネオプラーナは人体にも使えるとクリスは言っていた……それなら装着員が死体だったとしても戦闘を続けることができる……」
ノエルの言っていることが真実なら、G4の”中身”が死体だとしても戦闘を続けられる……しかし、そうなると謎が残る。
「しかし……いくらなんでもネオプラーナは便利すぎないか?死んだ人間の体を生前に戻す……そんなエネルギーなんて、どうやって作ってる?」
ロイドはその謎に気づき、声に出して言った。死体を動かすエネルギーなど、そうあるものではない。
すると、ノエルはまたしても怯えるように震え始めた。
「ノエルさん、どうしたの……?」
ユーリは先ほどと同様、優しく背中をさすった。
すると、向かいに座っていたロゼッタは小瓶を手に取り、中のネオプラーナの匂いを嗅ぎ始めた。
「何やってんだ?さっきも嗅いだじゃねぇか。」
「うん……改めて、どんな匂いなのかと思って……この匂いは……お酒……いや、消毒液?」
ロゼッタの鼻は犬並みだ。ネオプラーナに存在する様々な匂いを嗅ぎ分けようとしている。
「アルコールの匂いか。」
「後……ん?スンスン……」
その時、ロゼッタの鼻はある違和感を感じ取った。その違和感を感じた瞬間、ロゼッタは自分の腕に鼻を押しつけ、体の匂いを嗅ぎ始めた。
さらに、ロゼッタはグリム以外の全員の匂いまで嗅ぎ始めた。
「な、なに……?」
「やっぱり……このネオプラーナ……人間と同じ匂いがします!」
『……はいっ!!?』
匂いを嗅ぎ終わったロゼッタは、とんでもないことを口走った。皆はそれに驚いて声を上げたが、ロゼッタはドヤ顔気味に説明を始めた。
「人間の匂いって一人一人違うんですけど、大元の匂いはおんなじなんです。」
「だから、ネオプラーナからも同じ匂いがしたってか?それは流石に……」
それはありえない、と否定しようとしたその時、フィオナはため息を吐きながら、鞄からある資料を取り出し、机に置いた。
「……あなたの嗅覚、想像以上ね。」
「夜帷、それは?」
「ネオプラーナの分析結果です。書かれているのはネオプラーナに含まれている成分になります。」
フィオナの説明を聞きながら、ロイドは資料を手にとって読み始めた。そこで、成分の方に目を通した時、ロイドは目を見開いた。
そこに書かれている成分は「水素、炭素、窒素、酸素、ナトリウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、カルシウム、鉄……etc」とあった。それは、”あるもの”を構成する成分だった。
「まさか、これは……!!」
「そうです。ネオプラーナの成分は、人間を構成している成分と同じです。つまり……ネオプラーナの材料は……人間そのもの。」
その推論は、あまりにも狂気的で、現実離れしていた。しかし、ユーリの隣で震えているノエルを見て、皆は真実だということを察した。
「私……見たんです……!G4の素体として使えなくなった死体を……大きな水槽みたいなのに入れて、溶かすところ……!!」
「使えなくなったら、ネオプラーナにするってことか……」
「なんだか異次元の話だな……」
仮面ライダーがこの世界に現れた当初、その時も現実離れしたものが現れたと思ったが、ネオプラーナはそれ以上といえる。
その時だった。ユーリは小さく呟いた。
「まさか……いや、あり得るのか……?」
「ユーリ君、どうした?」
「いや……これは僕の妄想……推理なんですけど……」
ユーリは息をスッと吸って、落ち着いて自身の推理を話し始めた。
「まず……疑問なんですけど、G4の素体が死体なら、別にメンバーを1000人に増やす必要はないと思うんです。」
ユーリの言う通り、別にメンバーを1000人に増やさなくても、十数人程度集めれば済む話だ。
「それに1000人も民間人集めても、大して役に立たないと思うんです。どうせ集めるならチンピラとかマフィアとか集めた方がまだ戦力になるだろうに。」
「確かにな……」
「さっき、ノエルさんが言ったことを思い出してほしい。『G4の素として使えなくなった死体をネオプラーナにする』って……だから……もし、集めた1000人を全員G4の素体にして、最終的にその全員を溶かしてネオプラーナにする……とかは考えられない?」
ユーリの推理を聞いた途端、その場にいた全員が凍りついた。それほどまでに衝撃的な推理だった。
「そんなの…ただの大量虐殺じゃねぇか!?」
「でも、辻褄は合うな……それと、俺も思いついたことがある。」
ユーリの推理を聞き、続けてロイドが自分の推理を語り始めた。
「ユーリ君も言ってたが、何故ブラックサレナは戦闘経験のない民間人をメンバーにするつもりだったのか……恐らく、民間人でなければならなかったんだ。」
「どういうことだ?」
「民間人という立場の人間が必要だったんだ。国を相手にするにはな。民間人を盾に使えば、政府はそう簡単に手が出せない。迂闊に攻撃すれば、他の民衆に敵意を向かれる。反感を買い、国に不信感を抱かれる。ブラックサレナの目的の一つが復讐だ。この作戦なら、国そのものに復讐できるだろう。」
「全部計算尽くってことか……!」
ユーリの推理とロイドの推理……その2つが合わさったことで、ブラックサレナの目的が浮き彫りになった。
民間人を1000人集め、その全員をG4を装着させて殺し、その後にネオプラーナの材料にする……マネーロンダリングの人間版といったところだろうか。
「……あの、ノエルさんの話を警察やマスコミに流せば、ブラックサレナに不信感を与えられませんか?」
「いえ、それは難しいわね。」
静まり返る空気の中、ヨルは意見を出した。しかし、フィオナは首を横に振った。
「口での説明だけじゃ証拠にならない。ブラックサレナが”クロ”だっていう決定的な証拠が必要よ。ウォルターとクリスが会話をしてる写真とか、ネオプラーナが製造されている映像とか……」
「八方塞がりだな……」
民間人にブラックサレナは危険な奴らで、敵だということが分かってもらえれば、向こうの作戦を阻止できるが……そのための決定打がない。
皆はすっかり意気消沈し、ため息を吐いた。その様子を見かねて、ヨルは席を立った。
「い、一回休憩しましょうか!私、紅茶入れますね!」
「俺も……買い置きしといた菓子出すか。」
グリムも席を立ち、部屋の棚にある袋菓子を取り出し、中を開けてテーブルに置いた。
しかし、誰も手をつけない。人一倍食い意地が張ってるグリムでさえ、手をつけなかった。
死体云々の話が出て、食欲が無くなっていたのだ。ブラックサレナのやっていることは常軌を逸している。死体を使うことを屁とも思っていない。
そんな連中に立ち打ちできるのか、否、しなければならない。
「あ、あのー……ロイドさん。」
その時、上の階で紅茶を入れていたヨルがひょこっと顔を出し、ロイドの名を呼んだ。
「ヨルさん、どうしたんですか?」
「それが……」
「お久しぶりです、Mr.フォージャー。」
挨拶とともに、ヨルの背後から見覚えのあるメタルの顔がひょこっと出てきた。それは間違いなく、”K”だった。
「ぬあぁぁぁっ!!?な、なんでお前がここにいるんだ!!?」
ロイドは突然現れた”K”に声を上げて驚いた。皆もその声に驚き、ロイドの方を向いた。
それに構わず、”K”は堂々と皆の前に現れた。
「あっ!?お前……!」
「お久しぶりです。グリム様、フリッド様。」
”K”はグリムとフリッドの方を見て、深々とお辞儀をした。
「えっと……こいつ、何?」
「申し遅れました。私、ショッカーの外世界観測用自律型人口知能”K”と申します。」
「がいせかい……?というか、ショッカー!?」
”K”の自己紹介を聞き、皆は思わず身構えた。
「ま、待ってください!」
その時、ヨルが皆の前に立った。
「”K”さんは悪い人ではない……と思います!多分!」
「いや……姉さん、そいつ人じゃなくない?」
「でもまぁ、危害を加えるつもりはないと思うぜ。」
ヨルの言葉に続いて、グリムは喋りながらポケットからカイザフォンを取り出した。
「俺に新しいベルトをくれたのもこいつだしな。」
「俺も……彼の助言がなければ、囚われていたフィオナを見つけられなかった。」
さらに続けてフリッドによる擁護も始まり、他の皆は戸惑いながらも大人しく席に座った。
すると、”K”は手に下げた袋から何かを取り出した。
「こちら、よろしければ……超高級ピーナッツです。」
「ぴーなっつ!!?」
好物の名を聞き、アーニャはすぐさま”K”に飛びついた。
「どうぞ、アーニャ様。」
「あざざますっ!ふぉ〜……!こうきゅうぴーなっつ……!」
「お茶菓子も用意しております。よろしければ……」
アーニャが高級ピーナッツに見惚れている横で、”K”は袋からさらにお茶菓子を取り出した。
その後、紆余曲折を経て”K”が用意したお茶菓子と、ヨルが淹れた紅茶で休憩に入ることになった……
「……で、お前は何しに来たんだ?」
紅茶を飲みながら、ロイドは、”K”に尋ねた。
「仮面ライダーがウォルター様と接触したとお聞きしました。我々はあの方を探しています。そのことで我々ショッカーに情報提供をしていただこうかと。」
「ショッカーなんかに情報を渡す気はない!」
”K”からの申し出に、ユーリは大声を出して断った。いくら”K”がいい奴だったとしても、相手はショッカー。情報を悪用される危険は十分にあるからだ。
「でも、なんでショッカーがウォルターを追ってんだ?」
ポテチを食べながら、今度はグリムが”K”に尋ねた。それに対し、”K”は答え始める。
「ブラックサレナとクレマチス社が所有するネオプラーナ……あれは元々、我々ショッカーのものだったのです。」
「……なんだと?」
「順を追って説明しましょう。過去に、ショッカーは『ハビタット計画』という計画を進めていました。その計画にプラーナ……ネオプラーナの原型が使われていました。」
「そのプラーナというのは、どういうものなんだ?」
説明の途中、ロイドから質問されるが”K”は動じることなく答える。
「プラーナというのは生き物の体に宿る『生命エネルギー』そのものです。本来は粒子状のものですが、クレマチス社は人体を液体にすることでより効率的にプラーナを作り出そうとしたようです。」
「じゃあ……クレマチス社はそれを丸パクリしたのか。」
「慌てないでください。まだ続きがあります。」
”K”は話を戻し、再度語り始めた。
「『ハビタット計画』は順調に進んでいましたが、2人の仮面ライダーによって阻止され、計画の責任者だったチョウオーグも死亡……そのまま計画は白紙。計画のことを記した資料も処分される……はずだったのですが、その計画書が奪われたのです。」
「もしかして、それがウォルター先輩……!?」
ユーリの一言に、”K”はコクリと頷いた。
同時に、ユーリはG4と初対面した日のことを思い出した。あの時、ハサミジャガーは「青い髪の男」を探していた。
「そうか……だからショッカーはウォルター先輩を探してたのか……!」
ウォルターはショッカーの計画書を奪った張本人。ショッカーからすれば許されない行為だ。だからウォルターを探し、報いを受けさせる為に探していたのだろう。
「これまでの段階で分かったのは……こんな感じか。」
フリッドは今までの話を整理し、判明したことをホワイトボードに書く。そして判明したのは以外の通りとなる。
1.ブラックサレナはウォルター、ガオ、グインの3人を含めて500人ほどメンバーがいる(現在、メンバーを1000人に増やそうとしている)
2.G4の数は500機ほど。装着員は人間の死体(ネオプラーナの力で人間と変わらない動作をする)
3.ネオプラーナは元々ショッカーのものだったが、ウォルターが奪い、クレマチス社が新しく作った。そしてその材料は人間。
4.クレマチス社社長のクリスはブラックサレナ創設メンバーの一人。現在もブラックサレナを支援している
「だいぶ全貌が見えてきたか?」
「そうだな。残りは……」
残った謎は、内通者の存在とブラックサレナの最終目標……
内通者に関して云えば、かなり気が重たくなるものだ。味方の中に裏切り者がいて、影でスパイをしていたと疑うことになる。
「なぁ……ちょっといいか?」
その時、グリムが手を上げた。
「内通者に関係することか分かんねぇけど……チャリティーバザーでカミラが殴られた時……ミリーの様子がおかしかったんだよ。」
「ミリーさんが……ですか?」
不安そうな顔をするグリムに、ヨルは首を傾げた。
「ああ……カミラが妊娠してるって知った途端、青ざめてたんだよ。まるで……『取り返しのつかないことをした』って感じで……それで、ここに来る前、奴の仕事場に行ったんだけどよ……ミリーは帰った後だった。でも、同僚のシャロンが言ってたんだ。」
「……なんて?」
「……『あの時、ミリーがカミラの足元にわざと工具箱を置いたように見えた』って……つまり、ミリーはあの映像を取るために、わざとカミラを転ばせて……!」
シャロンから聞いた情報と、そこから推測できることを語るグリム。対し、ヨルは首を横に振って否定した。
「嘘です……!ミリーさんがそんなことするわけないです……!」
しかし、ヨル自身、思い当たる節がないわけではない。
以前のチャリティーバザーで、ミリーは愛国婦人会に噛みついたことがある。ミリーの父は戦争で死んだ。そのことで愛国婦人会に噛みついたのだ。その時はヨルとメリンダのおかげで事なきを得たが、少なくともミリーの中には憎悪がある。グインと同じく、戦争とチャップマン総裁への憎悪が……
「……こればっかりは本人に聞くしかねぇ。」
「なら、私も行きます!」
「わかった。じゃあ、明日な。」
ヨルもミリーの真意を確かめるため、共に聞き込みすることを願い出た。グリムはそれを了承し、頷いた。
すると、フリッドはホワイトボードに書かれた6番目……『ブラックサレナの最終目標』に丸をつけた。
「奴らの目的の一つは復讐だ。でも、目的は他にもあると思う。それがネオプラーナやG4の軍団と繋がってくる……と俺は考えてる。」
「確かに……ただ復讐するだけなら、勝手にやればいいだけだ。」
「ただ、そうなると……何が一番、目的としてしっくりくるかだ。世界征服、適者生存、成り上がり……どれもしっくりこない……」
フリッドは頭の中でブラックサレナの真の目的は何かを考えたが、答えは出なかった。他の皆も考えたが、それでも答えは出ない。
その時だった。”K”が突然立ち上がり、天井を見上げた。
「おい、どうした?」
「お客様が来たようです。3名ですね。」
「客……?店はもう閉めたが……」
皆、一様に上を見上げた。と同時に、アーニャは上にいる”客”の心の声を感じ取った。
(ユーリ、どこだ……?いるのは分かっているぞ……)
(へへへっ……ウォルターには悪いが、思い切り暴れさせてもらうぜ……!)
(あのフリッドという男はここにいるのか……?出来れば戦いたくないが……)
その声は、紛れもなくあの3人……
「ちちっ!ははっ!うえにいるの、ぶらくされなっ!!」
「なにっ!?」
「フィオナ、ノエルさんを頼む!」
アーニャの言葉を聞いたライダー3人とフォージャー一家、それにアイネはすぐさま上の階へ上がっていった。
そして、上の階……店に戻ると、そこの入口にはブラックサレナの3人……ウォルター、ガオ、グインの3人が立っていた。
おまけ「中の人つながり」
「いこうか、家族旅行!」
「おでけけおでけけ!」
フォージャー家はフリジスへ家族旅行に行くことになった。だがその時、テレビで速報が入った。
『皆様見えるでしょうか!現在、フリジスの公園で軍人と思われる男が演説を開始しました!』
テレビのキャスターが目をやる方向には、映画に出てくる敵キャラ、ドミトリ(CV.中村倫也)が民衆の前で、車の屋根に登って仁王立ちしていた。
『……俺はお前達と同じ人間だ。同じ痛みを感じている人間だっ!!』
ドミトリは叫び、自身の胸を叩いた。さらにその演説は続いた。
『黙っていれば差別は続き、徹底的に叩き潰される!だからお前達はもっと怒っていい!!ここは政府の人間だけの国じゃない!!俺達の国でもある!!……だったら戦うしかないだろ。』
ドミトリの演説に、民衆はただポカンと口を開いていた。すると、ドミトリの背後に同僚のルカがやってきた。
『お、おーい!お前何やってんの!?っていうか、お前そんなにイケボだったか!?』
ドミトリの様子がおかしいことに気づいたルカは必死に呼びかけるが、ドミトリは答えない。すると……
『信彦っ!!』
『……まさか生きていたとはね。』
そこに現れた一人の男……男の名は南 光太郎。光太郎を見た途端、ドミトリはニヤリと笑った。
『えっ?誰……?ドミトリ、お前のしりあぁぁぁぁぁぁっ!!?』
光太郎のことを尋ねようとしたルカは声を上げた。何故なら、ドミトリの顔が変わっていたのだ。やせ細った骸骨のような顔から、中村倫也のような顔に変わっていた。
『か、顔が中村倫也になってる!!?』
驚くルカをよそに、ドミトリと光太郎はギリッと拳を握り顔の近くに持っていった。
『変ッッッ身!!』
『変身ッ……!!』
2人は互いに似たような変身ポーズを取り、叫んだ。そして言葉通り2人は変身を遂げた。光太郎は仮面ライダーBlack Sunに、ドミトリは仮面ライダーShadow Moonへと変わった。
『今度こそ決着をつけるぞ、信彦ォォォォォォォ!!』
『来い……!光太郎ォォォォォォォ!!』
『いやもう、お前らよそでやれぇ!!』
そこから二人による大乱闘が始まり、フリジスはパニックになったとか……
そしてその映像を見たフォージャー一家は、互いに顔を見合わせ、微笑んだ。
「……フリジス行くの、やめましょう。」
「なんか前にもこんなことありましたね。」
「てんどん」
「ボフッ」
「劇場版SPY×FAMILY CODE:WHITE」……完
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劇場版スパイファミリー、興行収入50億突破!……ということで、中の人ネタでのオマケにしました。