SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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第11話「たとえ化け物と呼ばれても 後編」

 

アンノウンの毒針に刺されたダミアンは、バーリント総合病院に運ばれた。

この病院は、ロイドの表向きの職場でもある。

 

「翔一君、アーニャ。」

 

ダミアンが入院している病室にロイドが入ってきた。

翔一とアーニャは不安そうな顔をしてロイドの方を見た。

 

「ロイドさん、ダミアン君の……容態は?」

「ああ、今担当医から診察結果を借りてきた。」

「ちち、じなん……しなない……?」

「大丈夫だ、心配するな。」

 

ロイドはアーニャに微笑みかけながら頭を撫でた。ふと辺りを見回し、フリッドがいないことに気が付いた。

 

「フリッドさんは?あの人に一番に伝えたいんだが……」

「ああ、ダミアン君の家族に電話するって言ってました。」

 

翔一の言葉を聞き、ロイドは病院内にある公衆電話へ向かった。

 

「だから!義兄さん・・・ドノバンさんを出してくれって言ってるんだ!」

 

病院の一画にある公衆電話に着くと、そこには受話器に向かって、病院内にも関わらず大声を張り上げるフリッドの姿があった。

 

『申し訳ございません……ご主人は何かと忙しいもので……』

「なら、メリンダさん……奥さんはいないのか!?」

『申し訳ございません。奥様も今日は大事な用が……』

「自分の息子が危ないかもしれないんだぞ!!それより優先できることなんてあるのか!?」

 

どうやらデズモンド家の使いの者と話しているようだが、どうも要領を得ないようだった。

 

「そうか……もういいっ!!二人に伝えとけ・・・もしダミアンが死んでも、アンタ達二人は平常心でいられるかってな!!」

 

痺れを切らしたフリッドは捨て台詞を吐き、乱暴に受話器を戻した。

 

「……フリッドさん。」

「あ……ロイド君。」

 

ロイドに気づき、フリッドは改めて周りを見た。周りにいた人達は大声を張り上げて電話をしていたフリッドをまじまじと見ていた。

 

「す、すまない。病院なのに……」

「いえ……外で話しましょうか。」

 

ロイドはフリッドを誘って病院の中庭に出た。

そこにあるベンチに隣り合って座った。すると、フリッドはため息をつきながら項垂れた。

 

「・・・ご両親、来られないんですか?」

「ええ……あの二人は、ダミアンに関心がないんだ。まぁ、毎日見てるわけじゃないから、どう思ってるのか分からないが……」

「………」

 

フリッドの話を、ロイドは黙って聞いていた。

 

「ダミアンはまだ6歳だ。まだまだ両親に甘えたい年ごろのはずだ。なのに……!」

 

フリッドはダミアンに関心がない両親に怒っているのか、ギリギリと拳を握った。

 

「ダミアン君のこと、気にかけてるんですね。」

「ああ……おかしいだろ?親でもないのに。」

 

そう言ってフリッドは鼻で笑ったが、ロイドは首を横に振って否定した。

 

「いえ……そんなことありませんよ。」

「……ダミアンとは1年前に出会った。」

 

フリッドはゆっくりとダミアンと初めて出会った時のことを話し始めた。

 

────────────────────────

 

その時、俺は亡くなった父親の相続権のことで、デズモンド家の屋敷に来ていた。

応接室で義兄さん……ドノバンさんと弁護士の3人で父の財産の取り分のことを話してた。

そんな時、

 

「ち、父上・・・」

 

部屋に入ってきたのはダミアンだった。

 

「み、見てほしいものがあるんです・・・」

 

ダミアンが手に持っていたのは野球グローブとボールだった。父親とキャッチボールがしたかったんだ。だけど……

 

「お前に用はない。」

 

ドノバンさんは冷たい対応をした。

 

「義兄さ・・・ドノバンさん、俺のことなら後でいいですから。」

「構わん、こっちが先だ。」

 

ドノバンさんはダミアンの顔を見ようとしなかった。ショックを受けてたダミアンは部屋から出ていった。

相談が終わった後、俺はダミアンを探した。

ダミアンは、外に停めてあった俺のバイクを見ていた。

 

「バイク、好きなのか?」

「別に……でも、かっこいい……」

 

そう言ったダミアンの目はキラキラ輝いてた。多分、初めてバイクを見たんだろうな。そう思うと、なんだか微笑ましくなって……

 

「乗るか?」

「えっ?でも……」

「何か言われたら、俺が無理やり乗せたってことにしとくから。なっ?」

「……うん!」

 

俺はダミアンを後ろに乗せてバイクで走った。あの子は楽しそうに笑ってた。あの時の笑顔は忘れられない。

 

それから俺は、時間を見つけてはダミアンに会いに行った。一緒にキャッチボールしたり、アイス食べたり、ツーリングしたり……そのたびにアイツは笑ってた。

 

────────────────────────

 

「俺も楽しかった。あの時は彼女と別れたばかりだったから。ダミアンは俺の心の隙間を埋めてくれたんだ。」

 

病室へと戻りながら、フリッドは話し続けていた。ロイドはその話を黙々と聞いていた。

 

(ドノバンと息子の関係は冷めきっているのか……となると、息子とアーニャを仲良くさせるのは得策ではないか……?)

 

ロイドはドノバンに近づく策として、アーニャをダミアンと仲良くさせようと目論んでいた。しかし、フリッドの話を聞いて考えを改めるべきか迷った。

そうこうしている内に病室につき、二人は中に入った。

 

「ダミアン……」

「・・・・ッ!!」

 

フリッドの姿を見た途端、ダミアンは目の色を変え、頭の下に敷いていた枕を投げつけた。

枕はボフッと音を立て、床に落ちた。

 

「……出てけっ!!」

「ダミアン……」

「お前のせいでこうなったんだ……!お前は最低の化け物だ!二度と顔なんか見たくない!!」

 

ダミアンは今にも泣きそうな顔で怒り、今度は花瓶を掴んで投げようとした。

しかし、その時翔一が腕を掴んで止めた。

 

「ダミアン君!ダメだよ!」

「うるさい!出てけ!出てけよッ!!」

 

ダミアンは怒気を含んだ声で叫んだ。

それを聞いたフリッドは何も言わず、俯いたまま病室を出ていった。ロイドもそれに続くように病室を出た。

 

「……同情します。」

 

ロイドはそう言って、慰めるように肩を叩いた・・・と同時に服の襟元に盗聴器を仕込んだ。

ダミアンが発した一言が引っかかったのだ。

 

(化け物……とはどういうことだ?悪いが、聞かせてもらうぞ。)

 

盗聴器が仕込まれたことなど気づかず、フリッドはゆっくりと口を開いた。

 

「……ロイド君、ダミアンの容態は・・・?」

「ああ……実は、最近、同じくアンノウンに刺されたという患者が多くて……そしてその患者さんは……24時間以内に全員、亡くなってます。」

「なんだと……!?」

 

ロイドの言葉に、フリッドは耳を疑った。するとロイドはダミアンのレントゲン写真を見せた。

 

「ここを見てください。」

 

ロイドは心臓の辺りを指差した。

そこには棒状のようなものが写っていた。

 

「これは、アンノウンが注入した金属片です。亡くなった患者さんの遺体を調べたところ、この金属片は24時間かけて成長し、成長しきった段階で相手の全身の熱を奪い、凍死させる……」

「そんな……!手術では取れないのか!?」

 

フリッドは興奮し、ロイドの肩を掴んだ。

 

「……金属片が心臓付近にあります。無理に取ろうとすれば、逆に……」

 

ロイドの言葉に、フリッドは絶望した。だが、

 

「……アンノウンを倒せば、この金属片は消えるのか?」

「アンノウン自身が金属片の巨大化を行っているとすれば、あるいは……」

「……わかった。」

 

フリッドはそう言って、ロイドの元から離れた。

 

「どこに行く気ですか!?あなたはアギトじゃない!あなたには無理だ!」

 

ロイドはフリッドに声を掛け、呼び止めようとした。だが、フリッドは聞かず、そのまま進んだ。

ただ一つの光明に賭け、前へと進んだ。

 

「最低の化け物か……いいさ、化け物でも。化け物でいることしか選べないなら、それを選べばいい……!」

 

フリッドが静かに口ずさんだと同時に、例の耳鳴りが聞こえた。

アンノウンが現れたのを感じ、ギュッと拳を握った。

 

────────────────────────

 

「グルルルル……」

 

公園の中にある小さい森の中、鋭い眼光が親と一緒に歩く小さい男の子を睨んだ。

それはアンノウンだった。アンノウンはゆっくりと姿を現し、じわじわと親子に近づいていく。そして、毒針のある触手を伸ばした……と同時に、アンノウンは突然蹴り飛ばされた。

 

「グウッ!?」

 

現れたのは静かに怒りを燃やすフリッドだった。

 

「たとえ化け物と呼ばれても、俺は大事なものを守る……!!」

 

フリッドは静かに叫び、両腕を交差させた。

光も痛みも怒りも全部、その腕で抱きしめて、孤独の戦士は叫ぶ。

 

「変身ッ!!」

 

フリッドはギルスへと姿を変えた。そして拳を握って天を仰ぎ、声の限り叫んだ。

 

「ウオォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

叫び終わると同時にアンノウンを睨み、腕の金色の爪部分を掴み、引き抜くように伸ばした。

すると、そこから鞭状の触手「ギルスフィーラー」が伸び、それをヌンチャクのように構えた。

 

「フッ!」

 

ギルスは離れた間合いから鞭を振るった。アンノウンは斧で応戦しようとするが、間合いが遠く、ギルスに近づけなかった。

 

「ハッ!」

 

アンノウンは苦し紛れに斧をブーメランのようにして投げた。しかし、ギルスを鞭で弾き飛ばした。

そして、鞭でアンノウンの腕を巻き取った。

 

「ハァッ!!」

 

思い切り引っ張ってアンノウンを引き寄せ、ボディに拳を食らわせた。何発も何発も拳を食らわせていき、さらに顔面に向かって拳を繰り出した。

しかし、アンノウンは咄嗟に盾を前に出した。

 

「!!」

 

ギルスの拳はそこで止まってしまった。アンノウンはお返しとばかりにギルスに攻撃を与えていく。

 

「ぐっ!がはっ!」

 

攻撃を喰らいながらも、ギルスは倒れまいと踏ん張った。しかし、アンノウンは思い切りギルスを蹴り飛ばし、樹木に叩きつけた。

 

「がっ・・・!くそっ、まだ……!?ぐ、ああああああああっ!!」

 

その時、前回同様、激しい頭痛に襲われた。

 

(前より短くなってる……!奴が目の前にいるのに……!!)

 

頭痛は前よりひどいものだった。目の前にいるアンノウンさえ倒せば、ダミアンを助けられるはずなのに……そう思いながら、ギルスは意識が朦朧としていた。

 

その時だった。走馬灯のように、ある少年の顔が目の前に浮かんできた。

自分といるとき、いつも笑ってくれた、自分の心の隙間を埋めてくれた、愛おしい笑顔・・・・

 

『叔父さんっ!!』

「ダミアン……ッ!!フンッ!!」

 

ギルスはギルスクロウを伸ばし、自分の胸に突き刺した。

その痛みで、意識を取り戻し、立ち上がった。

 

「こんなところで……倒れて、たまるかっ!!!ウゥゥゥゥゥ・・・・!!」

 

ギルスは唸り声を上げ、ゆっくりとクラッシャーを開いた。

 

「グオオオオオオオオオオッ!!」

 

そして一気に顔を前に突き出し、力の限り叫んだ。その叫びは超音波となり、アンノウンを襲った。

アンノウンは咄嗟に盾で防いだ。しかし次の瞬間、盾は粉々に砕け散った。

 

「っ!?」

「ハッ!!」

 

アンノウンが驚くのをよそに、ギルスは片足を頭上まで振り上げながら跳躍した。そして、アンノウンの肩に踵落としを繰り出した。同時に踵から「ギルスヒールクロウ」が伸び、背中に心臓へ突き刺さった。

 

「ウオァァァァァァァァァァッ!!」

 

ギルスは叫ぶと同時にもう片方の足でアンノウンを蹴り飛ばし、刺さった爪で切り裂いた。

 

「グオアアアアア!!」

 

ギルスの着地と同時にアンノウンは断末魔を上げて爆発した。

 

「はあ・・・はあ・・・」

 

ギルスは息を切らしながら、フリッドの姿へと戻った。

フリッドは疲れたのか、その場で膝をついた。

 

「もう、大丈夫だからな……ダミアン……」

 

────────────────────────

 

翌日、バーリント総合病院・・・

 

「信じられない……心臓の金属片が跡形もなく消えているんです!」

「それでは、ダミアン君は……」

「ええ、もう大丈夫です!」

 

ロイドはダミアンの担当医と話していた。アンノウンが倒されたことで、ダミアンの心臓に寄生していた金属片が消滅したのだ。

 

「後は1日様子を見て、体調に問題がなければ明日にでも退院できます。」

「では、僕は御家族にそう報告します。」

 

二人は互いに一礼し、担当医はその場から去った。

 

「ロイドさん!」

 

その時、ロイドに声をかけてきた男がいた。振り向くと、そこには翔一とフリッドの姿があった。

 

「翔一君、フリッドさんも。」

「ダミアン君、大丈夫なんですか?」

「もう大丈夫!アンノウンの毒は完全に消えた!他にも被害があった患者さんの毒もだ!」

「そうか……よかった……!」

 

ロイドの報告を聞き、フリッドはホッと胸をなでおろした。

 

「いやー、本当によかった!さっそくお見舞いに行きましょう!」

 

翔一はダミアンが無事なことを喜び、さっそく見舞いに行こうとした。

しかし、

 

「いや、俺は行かない。二人で行ってくれ。」

 

フリッドは思いつめたような顔で呟いた。

 

「え?」

「俺が行ったら、アイツまた怒るかもだからな。代わりに、これをアイツに渡してくれないか?」

 

フリッドは手に持っていた小さい箱を差し出した。箱の側面にはケーキ屋の名前が入っていた。

 

「エクレアだ。アイツと初めてツーリングした時、買ってあげたことがあってな。それは喜んで食べてたよ……」

 

思い出を語りながら、フリッドは翔一にエクレアが入った箱を手渡した。

 

「わかりました!じゃあ、『フリッドさんからだよ』って伝えておきます!」

「いや、言わなくていい。」

「え?」

 

翔一はまたも声をあげた。同時にフリッドは苦笑いを浮かべた。

 

「でないと、受け取ってもらえないかもしれないからな。頼んだよ、津上君。」

 

フリッドは翔一にエクレアを託すと、泣き笑いのような顔を浮かべてその場から立ち去っていった。

 

その後、二人はダミアンの病室に訪れた。

 

「ダミアン君!明日には退院できるって!」

「……」

 

ダミアンは何も言わず、俯いていた。そんな中、翔一はニコニコ笑って見舞いの品を差し出した。

 

「はい、これは俺とアーニャちゃんから!本当は千羽鶴折りたかったけど、10羽しか作れなくて!」

 

翔一はダミアンの前にあるテーブルにアーニャと折った折り鶴を置き、さらにそこに、フリッドから託されエクレアを置いた。

 

「ッ!」

 

それを見た瞬間、ダミアンは目を見開いた。箱に描かれた店のロゴに見覚えがあったのだ。

おそるおそる蓋を開けた。中にはエクレア二つと小さく折り畳まれたメモがあった。

メモを手に取り、中を見た。それはフリッドからの手紙だった。

 

〈ダミアン、退院おめでとう。これはお祝いのエクレアだ。お前はもう覚えてないかもしれないが、これは俺とお前の思い出の品だ。今のお前が喜びそうなものが、これしか思いつかなかった。それから、今まで怖がらせてごめんな。もうお前の前には現れないから安心してくれ。 追伸・あの時、お前はアーニャちゃんを身を挺して守ったな。最高にかっこよかったぞ!〉

 

その手紙を読んだ途端、ダミアンは両目から滝のように涙を流した。そして、泣き声も出そうになったが、それを出すまいとエクレアを手に取り、口に突っ込んだ。

 

「……翔一君、行こう。」

「……はい。」

 

ロイドと翔一は、これ以上見てはいけないと思い、ダミアンの病室から静かに出て行った。

 

少年は涙を流し、エクレアを口にしながら嗚咽した。口がチョコとクリームまみれになっても止めなかった。決して泣き声を出すまいとするためだ。

自分自身のプライドと、後悔と罪悪感を胸に秘めながら、少年は泣き続けた。

 

 

────────────────────────

 

病院から去ったフリッドは、一人街を歩いていた。

 

(ダミアン、もうエクレアは食べてくれただろうか……いや、食べてないかもな。化け物からの贈り物なんて、見たくもないだろう。)

「ごほっ!げほっ、げほっ!!がふっ!!」

 

その時、フリッドは一際大きい咳払いした、かと思うと、口からは血を吐き出した。

 

「……ッ!!」

 

手についた血を見て戦慄した。しかしすぐさま口を拭って、再度歩き始めた。

 

(……もう、時間はないってことか。いいさ……なら、この命が尽きるその時まで、戦って死んでやる。それが……化け物にはお似合いの死に様だ。)

 

男は歩き続けた。いつか、近い内に来るかもしれない死に怯えながら、孤独の戦士は前へと進んだ。

 

 

 

 

 





今回は文章の一文にAimerさんの「残響散歌」の歌詞を載せてみました。
ギルスに合うかも、と思って選びました。


作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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