SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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PART.14 螺旋Ⅳ:黒き眩惑

イーデン校に悲鳴がこだまする。イーデン校を襲う者達が現れたのだ。その襲撃者は腰に「デザイアドライバー」を巻き、黒いスーツに身を包み、頭に動物型のマスクを被っていた。

 

「おい、見つかったか!?」

「ダメだ!見つからない!」

 

ライダー達は何かを探しているようだった。その時、ヤギのマスクを被ったライダー、仮面ライダーレターは急な襲撃に怯えている生徒に目をつけた。

 

「おい、お前!ピンク髪の女生徒、見なかったか?」

「ひっ……!」

 

レターが質問するも、その生徒は怯えるだけで何も話せなかった。すると、痺れを切らしたレターは右手に持ったダガーを生徒に突きつけた。

 

「おい……さっさと言えよ!!」

「お、おい!やめろ!」

 

その時、ダガーで生徒を脅そうとするレターに、蝙蝠のマスクを被ったライダー、仮面ライダーブラーリが止めに入った。

 

「うるさいな!ウォルターさんが言ってただろ!痛みと恐怖で口を割らせるのが手っ取り早いってな!」

 

レターはブラーリの手を振り払うと、ダガーを生徒の腕に押し当てようとした。だがその時、

 

「デヤッ!!」

 

掛け声とともに鋭い跳び蹴りがレターに飛んできた。レターは反応出来ずに蹴り飛ばされた。

そこに現れたのは他でもない……イーデン校の教師、フリッドだった。

 

「生徒に手を出すな!!」

「先公がしゃしゃり出てくるな!!」

 

蹴り飛ばされたレターは立ち上がり、ダガーをフリッドに突き出す。しかし次の瞬間、フリッドの足が振り上げられ、ダガーを弾き飛ばした。

 

「っ!?」

「セイッ!!」

 

さらにフリッドは、振り上げた足をそのまま勢いよく振り下ろし、踵をレターの脳天に叩きつけた。

 

「ぐはっ!?」

「だ、大丈夫か!?」

 

脳天に踵落としを喰らい、レターはふらついたが変身しているおかげでそこまでダメージは入らなかった。

 

「この野郎……!ここでやっちまうぞ!」

「でも……!」

 

他のライダー達は戸惑った。なぜなら、今のフリッドは生身……生身の人間を攻撃することになってしまう。しかし、他のライダーに喝を入れるようにレターは大声を上げた。

 

「ここでやらなきゃ、なんのために俺達はブラックサレナに入った!?全部無駄にする気か!?」

『!!』

 

レターの一言に、ライダー達は言葉が詰まった。この腐った世界を変えたいと思っているのは、ブラックサレナに入った時から変わらない……そのためなら何人でも、何者だろうが、殺すしかない。

 

「やるしか……ないか……!!」

《SET》

 

ライダー達の一人、イノシシのマスクを被ったライダー、ターボンは静かに呟き、隣にいるハクビシンのマスクを被ったライダー、ハクビとともにベルトの右側に弓矢が造形されたバックルを装填した。

 

「そうだ……!やるしかないんだ……!」

《SET》

 

さらに、ブラーリとシロクマのマスクを被ったライダー、シローもハンマーが造形されたバックルをベルトの右側に装填した。

それぞれバックルを装填すると、皆バックルに造形された武器をボタンのように押した。

 

《ARMED ARROW》

《ARMED HAMMER》

 

音声とともに右肩と右胸に装甲が装備され、同時に手には緑色のボウガンとピンク色のハンマーが装備された。

 

「やっちまえ!!」

『ウオォォォォォォォ!!』

 

レターを殿に、5人のライダーは突っ込んできた。レターはダガーを大きく振りかぶって勢いよく振り下ろす。

しかし、フリッドは後ろに飛び退いた。フリッドの背後にはベンチがあり、フリッドがよけたと同時にベンチが2つに切り裂かれた。

すると、フリッドは切り裂かれたベンチの片方を掴んで持ち上げると、勢いよくレターの横顔に叩きつけた。

 

「ぬおっ!?」

「こ、この……!!」

 

レターが怯み、今度はシローがハンマーをフリッドに向かって振り下ろしてきた。しかし、フリッドはその腕を絡め取り、シローの腹に膝蹴りを叩き込んだ。それも一発だけでなく、何発も。

すると、横からブラーリが同じくハンマーを振るってきた。だがフリッドは絡め取ったシローの腕を掴んで、ロポの方へ投げた。

 

「うわっ!!」

「うおっ!?」

 

互いにぶつかり合い、シローとブラーリは地面に転がった。

 

「クソ……!」

 

すると、今度はターボンとハクビが手に持ったボウガンをフリッドに向けた。

遠距離攻撃を持ち合わせていないフリッドは、思わず身構えた。

すると……

 

「叔父さーーーんっ!!」

 

フリッドを呼ぶ声が響いた。目線を向けると、そこにはダミアンの姿があった。

 

「これ使ってーーーっ!!」

 

ダミアンの手には、どこから持ってきたのか、鉄パイプが握られていた。ダミアンは渾身の力を込めて、それを思い切り投げた。

投げられた瞬間、フリッドは駆け出した。それを逃がすまいと、ターボンとハクビはボウガンを発射した。しかしその前にフリッドは鉄パイプを手に取り、飛んできた矢を弾いた。

 

「ダァッ!!」

 

フリッドは懐に入り込み、ターボンの足に鉄パイプを叩きつける。ターボンは足を殴られ膝をつきそうになった。その瞬間、今度は顔面に鉄パイプが飛び、思い切り殴り飛ばされた。

さらにフリッドは、そのまま鉄パイプをフルスイングしてハクビを殴り飛ばした。

 

「こ、こいつ……強い……!」

「人間離れしてる……!」

 

皆、生身であるにも関わらず互角以上に渡り合っているフリッドに戸惑いを隠せなかった。

だがその時、

 

《NINJA》

 

その音声とともに、上空から二振りの刃「ニンジャデュアラー」を手に、ギンペンが襲いかかってきた。

 

「っ!!」

 

フリッドは咄嗟に鉄パイプで防いだが、ニンジャデュアラーで鉄パイプは切り裂かれてしまった。

 

「グインさん……!!」

「邪魔しないでくれ……フリッドさん……!」

 

ギンペンの登場に、レター達は一斉に彼の元に集まった。

 

「みんな……数はこっちが有利だ。物量差で押し切る。」

『了解!』

 

ギンペンが身構えると同時に、レター達も武器を手に構えた。

すると、フリッドは両手を顔の前で交差させた。

 

「変……身ッ!!」

 

叫び声とともに、フリッドはギルスへと変身し、さらに両腕から鋭い爪を伸ばした。

すると次の瞬間、ギンペンは煙のように姿を消した。

 

「なにっ!?」

「こっちだ。」

 

背後から声が聞こえ、ギルスは振り返ると同時にクロウを振るった。その瞬間、刃と刃がぶつかり合い火花が散った。

 

「ニンジャ……なるほど、言い得て妙だな……!」

「うおぉぉぉ!!」

 

その時、レター達が加勢するように一斉に飛びかかってきた。しかし、ギルスは片腕から鞭状の触手を伸ばし、近くにある木に巻きつけ、そのまま根っこから引き抜いた。

 

「ぬぅりゃあ!!」

『うわっ!?』

 

引き抜いた樹木をそのままレター達にぶつけ、吹き飛ばした。

そのままもう片方の腕から伸びるクロウをフェンシングのように突き出し、ギンペンに攻撃する。

ギンペンはそれをかわしながら、二振りのニンジャデュアラーを連結させ、三日月形の刀に変化させた。

 

「ぬあぁっ!!」

 

三日月の刀を思い切り振り上げ、ギルスの脳天に向かって振り下ろす。

ギルスは両腕のクロウで攻撃を防いだ。しかし、ギンペンは力を込めて刃を押し込もうとする。

 

「ぬうぅぅぅ……!」

「くっ……!」

 

ギンペンの力は強く、ギルスは押されそうになっていた。

するとその時、どこからかボールが飛んできて、ギンペンの頭に当たった。

 

「っ!」

「き、君達……!」

 

ボールを投げたのはアーニャだった。さらにその後ろにはダミアン達もいた。

皆、各々武器になりそうなものを持って、投げる準備をしていた。

 

「いたぞ!ピンク髪の女生徒だ!」

「っ!アーニャちゃん、みんな逃げろ!」

「やだ!アーニャたち、せんせーたすける!!」

『おーっ!!』

 

ギルスの忠告を聞かず、アーニャ達は各々レター達に物や石を投げつけていく。

 

「チッ!このガキども……!あのピンク髪捕まえろ!」

「やめろぉ!!」

 

ギルスは叫んだ。すぐにでもアーニャ達の元に駆けつけたかったが、ギンペンがそれを許さない。

 

「邪魔をしないでくれ!!」

「グインさん……!こんなこと、誰も望みませんよ!」

「黙れ……!」

「こんなこと……死んだ息子さんが、あの世で喜ぶんですか!?」

 

その瞬間、ギンペンの力が一瞬だけ抜けていった。死んだ息子……グインが仮面ライダーになる決意をさせた人物……

 

「マーティ……」

 

ブラックサレナに入ったのも、チャップマンを殺したのも、全ては死んだ息子のため……しかし、フリッドの言葉はその決意を揺るがせるものだった。

ギンペンの力が抜けた隙に、ギルスは腹を蹴り飛ばし、アーニャ達の元に駆けつけ、レター達に立ち塞がった。

 

「お前らももうやめろ!こんなこと、誰が望む!?」

「決まってるだろ……!死んでいった奴らさ!」

 

その時、レターは叫んだ。

 

「私利私欲のためにブラックサレナに入った人間もいるが、それはほんの一部だ!ほとんどの人間は戦争で死んでいった家族や仲間の復讐のために入ったんだ!俺達は、復讐の果てに未来を手に入れるんだ!それが俺達の正義だ!!」

 

レターは続けて叫ぶように考えを主張した。私欲で動く者などごく僅か……皆、この国の、世界中の未来のために戦っているのだと、ギルスに向かって叫んだ。

 

「……子ども達を泣かせることが、未来に繋がるのか?」

「……!!」

 

その瞬間、レターは言葉が詰まった。

 

「さっき、君が尋ねた生徒の顔を見たか?怯えてた……泣いていた……!あんなのが君達の正義か!?」

 

ギルスの言葉にレターは黙り込んでしまった。どんな理由があったとしても、どんな理想があろうと、幼い子ども達を巻き込むのは間違っている。

そのことをさらにレター達に伝えるため、ギルスは声を上げる。

 

「自分達がやっていることは正しい……だから、目の前で誰かを傷つけたとしても、都合よく無視をする……死んでいった人達が、それを望むのか!?正義のためなら子どもを泣かせてもいいのか!!そこから目を背けて、何が正義だ!!」

 

叫ぶギルスに、レター達は何も言い返せなかった。その時、ガチャンと何かが落ちる音が聞こえた。

そこに目を向けると、シローが持っていたハンマーを地面に落としていた。

 

「も…もうやめようよ、みんな……!」

「お前……何言ってんだ!?」

 

「もうやめよう」と言うシローに、レターは掴みかかったが、シローはその手を振り払った。

 

「ぼく、ブラックサレナに入ったのは、仮面ライダーになりたかったからなんだ……みんなと動機が違うから、今まで言わなかったけど……ぼくも仮面ライダーになれるって……アギトみたいになれるって、浮かれてた……!」

 

そう言ったシローの両肩は震えていた。震えながら、シローは続けて語り始めた。

 

「ぼく、仮面ライダーになりたかった……!仮面ライダーが大好きだった……!!でも、今のぼくがしてることは……仮面ライダーを貶めてる……!!こんなこと……アギトが悲しむ……!!」

 

シローはその場で膝をつき、えずくような声を上げた。恐らく泣いているのだろう。マスクの下は涙で濡れているに違いない。

シローのその言葉が、皆に伝播していき……皆、武器を手放し、地面に落とした。

 

「俺ら……何やってたんだろう……」

「私達……私達が恨んでた奴らと同じことしてる……」

 

皆意気消沈し、戦闘する意欲すらなくなっていた。だが、一人だけ武器を手放さい者がいた。

 

「……何言ってんだよ。なんのために俺らは仮面ライダーになったと思ってんだよ!?」

 

それはレターだった。レターはダガーを握りしめて叫んだ。

 

「今ここで投げ出したら、俺らはただのテロリストで終わる!もうやり直しは効かねぇんだよ!!」

「やり直せるよ。」

 

その時、レターの言葉にギルスが答えた。その声色は生徒と接する時と同じ、優しい声だった。

 

「人間……いつだってやり直せる。やり直すのは……いつだって遅くない。」

「うっ……!ううっ……!!」

 

ギルスの、フリッドの優しい一言に、レターは泣き崩れ、その場に膝をついた。

それを見て、ギンペンは思うところがあるのか俯いていた。それを見かねたギルスはギンペンに声をかけた。

 

「グインさん……あなたも、やり直せます。息子さんのためにも……」

 

そう言って、ギルスは手を差し出した。それに対し、ギンペンは少し唸りながら、その手を取ろうとギルスに近づこうとした。

しかし……

 

《GLARE LOGIN.》

 

両者の和解は破壊される。

 

《INSTALL.》

 

冷たい機械の音声とともに……

 

《DOMINATE A SYSTEM GLARE.》

 

その音声とともに一人のライダーが姿を現した。

 

「残念ながら……やり直すことは叶わない。」

 

現れたのは、赤と紫のラインが入った黒いライダーだった。他のライダーと違い複眼がなく、身体中に丸い窪みのようなものがあった。

 

「お前、誰だ……!?」

「その声、社長……」

《HACKING ON》

 

レターが声を上げた瞬間、黒いライダーはベルトの頭にある指紋認証装置に指を当てた。すると音声とともに両肩、両膝、胸の装甲が外れ、5つの球体となった。

さらにその球体は、レター達5人のマスクを弾き飛ばし、代わりにマスクとして装着された。

 

「うわっ!?」

「な、なんだこれ!?」

「は…外れない……!」

 

急に妙なマスクをつけられ、レター達は困惑しながらも何とか外そうともがいた。そんな5人にさらなる狂気が襲う。

 

《CRACK START.》

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?』

 

その瞬間、マスクに紫色の電撃が走り、5人は叫び声を上げながら苦しみ始めた。しかし、すぐにガクリと項垂れた。

 

「み、みんな……!?」

「フフフッ……5人は私の支配下に置いた。このグレアの力でな……こんなこともできる。」

 

グレアというライダーは、指をパチンと鳴らした。すると、ガクリと項垂れたレター達のマスクから、「ピッ…ピッ…」という時計のような音が聞こえた。

 

「生徒達に盛大な花火を見せてあげよう……」

(花火……?まさか……!!)

 

マスクから響く時計のような音……グレアが口走った「花火」という言葉……そこから導き出されるのは……

 

『やめろぉぉぉぉぉぉ!!』

 

ギルスとギンペンは同時に声を上げた。その次の瞬間、5人のマスクが赤く発光し……激しい音ともに爆発した。

5人は頭だけでなく体ごと爆発し、吹き飛んだ。マスクは無事だったが、5人の身体は残ることはなく、粉々に吹き飛んでいった。

その光景に、ギルスとギンペンはあまりに突然のことで愕然としていた。アーニャ達も恐怖のあまり動揺し、その場で腰を抜かしていた。

 

「い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

恐怖のあまり、ベッキーは叫び声を上げた。対し、グレアは笑い出し、拍手をしていた。

 

「ハハハッ……いい花火だっただろう?戦う気のないクズにはお似合いだっただろう。」

「ふ……ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

5人の死を嘲笑うグレアに、ギルスは雄叫びを上げ、グレアに向かって突進していった。しかし次の瞬間、5つのマスクが球体に戻り、丸い窪みから光線が放たれた。

 

「ぐあっ!!?」

 

ギルスは光線を浴びてしまい、怯んでしまった。さらにマシンガンのように光線が放たれ、ギルスは集中砲火を受けてしまう。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

光線の集中砲火を浴び、ギルスは吹き飛び、地面に転がった。

 

「無駄はよしたまえ。君にこの私は倒せない……さぁ、アーニャ・フォージャーを渡したまえ。」

「何故、アーニャちゃんを狙う……!?」

「さっさと渡せ。でないと……」

 

すると、宙に浮かぶ球体……ビットの銃口がアーニャ達に向けられた。要求を飲まなければ生徒達を殺す……そう言いたいのだ。

だがその時だった。

 

「うあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

雄叫びとともに、ギンペンが持っているニンジャデュアラーでグレアに斬りかかった。だが、グレアはそれを片手で受け止めた。

 

「……なんのつもりかな?グイン君?」

「これ以上……!お前の好きにさせない……!!」

「フーッ……理解に苦しむね……君は。ムンっ!!」

 

グレアは反旗を翻したギンペンにため息をついた。その直後、グレアは思い切り蹴りを繰り出すも、ギンペンは後ろに下がってよけた。

 

《ROUND 1.2.3 FEVER》

 

ニンジャデュアラーの鍔のディスクを3回転させると、刀身に緑色の風が纏っていく。

 

「ダァァァァァァァッ!!」

《TACTICAL FINISH》

 

風を纏った刃を振るい、十字型の風の刃をグレアに向かって飛ばした。風の刃はグレアに直撃した…かと思いきや、ビットが光線でバリアを作り、攻撃を防いでいた。

 

「……!!」

「君はもうクビだ。」

 

グレアはそう言うと、模様が入った透明なカードを取り出した。そのカードをベルトの右側のスリットにスラッシュして読み込んだ。

 

《DELETE》

 

その音声とともにグレアの右脚に紫色の電撃が走った。すると次の瞬間、グレアは目にも止まらぬ速さでギンペンの懐に入り込んだ。

 

「っ!?」

「フッ!!」

 

ギンペンが驚いている隙に、グレアは腹に蹴りを叩き込んだ。さらにそこから何度も何度も必殺の蹴りを叩き込んでいく。

 

「ゴフッ……!!」

《SHUTDOWN》

 

グレアはさらにカードを2回スラッシュした。先ほどよりも凄まじい電撃が右脚に走り、直後、グレアはギンペンの後頭部に必殺の蹴りを直撃させた。

 

「ガッ……!!」

 

後頭部に一撃を喰らい、ギンペンは崩れるようにその場に倒れ、変身が解除された。

 

「グインさん……!!」

「変に情を抱くからこうなる……」

 

グレアは吐き捨てるように言うと、アーニャ達の方に歩み寄っていく。

 

「やめ……ろ……!」

 

光線を受け、フラフラになっていたギルスだったが、アーニャを守ろうとグレアに掴みかかろうとした。しかし、片手で投げ飛ばされ、地面に転がってしまう。

その時、ダミアン、エミール、ユーインの3人がアーニャを守るように立ち塞がった。

しかし、グレアは軽い蹴りで3人を簡単に蹴り飛ばしてしまい、アーニャの胸ぐらを掴んで持ち上げた。

 

「あぐっ!」

「さぁ、来てもらおうか。来たるべき未来のために……」

 

アーニャを捕まえたグレアは、指を鳴らした。するとビットが地面に向けて光線を放って砂煙を起こした。

砂煙が晴れた頃には2人の姿はなくなっていた……

 

「アーニャちゃん……!!」

「フリッド……さん……!」

 

アーニャが攫われ、言葉が出ないフリッドに、倒れているグインがフリッドを呼んだ。

 

「グインさん!」

 

フリッドはフラフラと立ち上がりながらも駆け寄り、グインを抱き起こした。グインは口から血を垂らし、息も絶え絶えになっていた。

 

「ブラック……サレナは……あの子を使って……計画の最終段階に入る……」

「最終段階……!?」

「……最初は、ノエルさんを計画の中核に使うつもりだった……だが、彼女が裏切って、始末されたから……計画が変更された……中核に、あの子を……!」

 

息が絶えそうになりながらも、力を振り絞って話すグイン。フリッドはそれをしっかりと聞いていた。しかし……

 

「何故、アーニャちゃんじゃないといけないんですか……?アーニャちゃんをどうするつもりなんですか!?」

「……マーティ……」

 

その時、グインは息子の名を口にした。その目からは光が消えかかっていた。

 

「……待たせて、ごめんな……ダメな父さんだったよな……」

「グインさん……?グインさん、しっかりしてください!!」

 

目に光が消えかかっているグインに、フリッドは必死に呼びかける。グインから命の炎が消えかかっていたと気づいたからだ。

しかし、グインの目の輝きはだんだんと消えていく……

 

「マーティ……お前が欲しがってた、ブリキのロボットのオモチャ……買ってやるからな……ハハハッ、当たり前じゃないか……お前の誕生日なんだから……」

 

グインは息子のマーティの幻影と話していた。フリッドの言葉など耳に入っていなかった。

 

「これからはどこにも行かない……ずっと……ずっと……」

 

「一緒」と続けて言おうとしたグイン……だが、その言葉を言い切ることはなかった。

 

「グインさん……!!」

 

グインの息は完全に止まり、命の炎は完全に消えていた。

死んだ瞬間にグインの身体は重くなり、フリッドの腕に重くのしかかった。

 

「……!!ウオォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

グインの死に様を目の前で見て、フリッドは叫び声を上げた。もう少しで改心するかもしれなかった人間達が一度に死んだ……その事実がフリッドに重くのしかかった。

悔しさと怒りを覚えるのと同時に、フリッドはグレアを必ず倒すことを心に誓ったのだった……

 

 

 




おまけ「怒ると怖い」

「そういえば……フリッドって怒ることないよな。」

その日、近所のバーでフリッド、ロイド、フランキー、フィオナは飲んでいた。飲んでいた時、ふとフランキーが声を上げた。フランキーの一言に同意するように、ロイドが口を開いた。

「確かに……見たことないな。」
「怒ったことねぇの?お前。」
「うーん……あんまりないかな。怒るのも疲れるじゃないか。」

フリッドはそう言うとニコッと笑った。するとフィオナが割って入るように声を上げた。

「何言ってるの?あなたちょくちょく怒ってるじゃない。寝起きの時とか。」
「えっ?」
「そうなのか?」
「今度見せてあげますよ。寝起きのフリッド。」

後日……フィオナは予告通り寝起きのフリッドを喫茶シオンに連れてきた。

「本当に連れてきたか。」
「ウーッス!おはようフリッド!」

寝起きのフリッドに対し、フランキーはにこやかに挨拶をしてきた。すると……

「チッ……うっぜぇな……」
「へっ?」
「フ、フリッド……?」
「あぁ…?殺すぞコラッ……」

フリッドはいつもは出さないような低い声で2人に吐き捨てた。
いつもと様子が違うフリッドに、2人は戸惑った。

「こいつ、寝起きが悪い時はいつもこうなんです。気にしないでくださいね。」
「そ、そっかぁ……」
「怖っ……」

この後、二度寝したらいつも通りに戻った。

───────────────────

そういえばフリッドにブチ切れたことないかも、と思って作ったオマケ。ブチ切れたっけ……?読み直そう。

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