SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

113 / 159
PART.15 螺旋Ⅴ:ユーリの変身

「勝負だ、ユーリ。」

 

この日、遊園地は定休日だった。その遊園地にユーリと英寿、アイネはいた。

フランキーの方はクロエを連行するため、クロエを連れて保安局へ向かった。

 

「勝負だと……?」

「ああ。俺が手に入れた情報を賭けてな。でも……俺とお前とじゃ天と地ほどの実力差がある……だから、ハンデをやる。」

 

英寿はそう言うと、手に持ったカバンからあるものを取り出し、ユーリに投げ渡した。

 

「こ、これ……!?」

 

ユーリは目を見開いて驚いた。英寿が渡してきたのは、英寿も持っている「デザイアドライバー」とブーストレイズバックルだった。

 

「バックルはそれだけじゃない。周りに他のバックルを隠しておいた。それで俺に一撃でも与えてみろ。……こんだけハンデをやれば、弱いお前でもやれるんじゃないか?」

「なんだと……!?ふざけやがって!!」

 

自分に対して煽ってくる英寿に怒りを露わにし、ユーリはデザイアドライバーを腰に巻いた。同時に、英寿もドライバーを巻いた。

 

「その舐めた口……縫い合わせて二度と言えないようにしてやる……!!」

《SET》

「フッ……やってみな。」

《SET》

 

ユーリはベルトの右側にブーストレイズバックルを、英寿も同じくベルトの右側にマグナムレイズバックルを装填した。

英寿は右手で狐を作り、前にスッと差し出す。対し、ユーリは右手で顔を隠し、その手をギュッと握りしめた。

 

「変身ッッ!!」

「変身!」

《MAGNUM》

《BOOST》

《READY...FIGHT》

 

英寿は仮面ライダーギーツへと変身し、ユーリは白と黒で彩られたタヌキのマスクを被ったライダーに変身した。

 

「変身した……ユーリ君が……!」

「仮面ライダータイクーン……いや、白黒で警察っぽいから……『ポリスタイクーン』ってとこか。」

 

仮面ライダーポリスタイクーンに変身したユーリ……ベルトを使い、「変身」と叫んで初めて仮面ライダーへと変身したユーリだったが、その喜びをよそに、ユーリはギーツに突っ込んでいった。

 

「ウオォォォォォォォ!!」

 

右腕のマフラーから炎を吹かし、加速をつけたパンチを繰り出した。しかし、ギーツは軽々とかわしていく。

 

「くそっ……!」

「そんなモンか?」

「この……!姉さんパーーンチッ!!」

 

ユーリはさらに腕のマフラーから炎を吹かしながら、何度もパンチを繰り出していく。しかし、その全てをギーツはかわしていき、お返しに腹に銃口を押しつけ、引き金を引いた。

撃ち出される銃弾にユーリは吹き飛んでいった。

 

「うわぁぁぁっ!!」

(エース君……強い……!)

 

ギーツの強さは圧倒的だった。数々の戦場をくぐり抜けてきたかのような立ち振る舞い……ユーリの攻撃をまるで子ども扱いするようにあしらっていた。

さらに、単純に強いだけではなかった。

 

「あれ?バックルが……!」

 

ユーリの上半身のブーストの装甲がなくなった。見ると、ベルトに装填したはずのバックルがなくなっていた。

 

「脇が甘いな。」

 

ブーストバックルはギーツの手の中にあった。銃で吹き飛ばす瞬間、ユーリのベルトからバックルを奪ったのだ。

ギーツはベルトの左側にブーストバックルを装填した。

 

《DUAL ON》

 

ギーツはマグナムのトリガーと、ブーストのハンドルを捻った。

 

《GET READY FOR BOOST & MAGNUM》

《READY...FIGHT》

 

ギーツはマグナムブーストフォームへと姿を変え、銃を構えた。

 

「どうする?さらに差ができたな。」

「くっ……!」

 

たじろぐユーリに向かって発砲するギーツ。ユーリは走り回りながら銃弾をよけ、近くの観覧車に身を隠した。

 

(クソッ……!どうすれば……!?)

 

何かないかと辺りを見回すユーリに、あるものが目に止まった。

 

(これ……バックルだ!)

 

ユーリが見つけたのはギーツが隠しておいたバックルの一つだった。ユーリは銀色にオレンジの差し色が入ったそのバックルをおもむろに掴み、ベルトの右側に装填した。

 

《SET》

 

「エース、ぼくはここだ!」

 

ユーリは叫び、物陰から飛び出し、バックルのボタンを押した。

 

《GREAT》

《READY...FIGHT》

 

ユーリは上半身にアーマー……が装着されることはなく、代わりにマスクにバイザーが装着された。

 

「な、なんだこれ!?頭だけじゃん!!」

《RAYSING SWORD》

 

狼狽えるユーリをよそに、どこからともなく一振りの剣が現れた。

よく見ると、鍔の部分にバックルが取り付けられていたが、引っ張ってもそれは外れなかった。

 

「なんだよ……!ハズレかよ……!」

「使いもしないでハズレ呼ばわりか?」

「うるさい!ウオォォォォォォォ!!」

 

ユーリはレイジングソードを手に、ギーツに斬りかかった。

ブンッと大振りで攻撃するが、ギーツは軽々とよける。

 

「剣の扱いがなってないな。」

「黙れ!」

 

ギーツの言う通り、ユーリの剣の扱いはまるで素人のようだった。大振りばかり繰り出して、構えも適当だった。そんなものでは、攻撃など当たるはずもない。

しかしユーリは怒りに任せて攻撃してしまう。

 

「こんな実力でよく今まで戦ってこれたな。他の仲間に甘えてたのか?」

「黙れって言ってるだろ!!」

 

乱雑に攻撃するユーリに、ギーツは煽り続ける。それに怒るユーリは何度も何度も、感情に任せて乱雑な攻撃ばかりを繰り返す。

 

(クソッ!クソ、クソクソクソクソッ!!!)

 

攻撃が当たらないことに苛立ちを募らせた。だがその時だった。

 

『ユーリ、何度言えば分かる。』

「っ!!」

 

ユーリの脳裏に、一人の男の声が浮かび上がり、攻撃の手を止めた。

その男は、ウォルター……まだ秘密警察にいた頃、共に特訓をしていた時、ウォルターはユーリに教えていたことがあった。

 

『お前はすぐに頭に血が昇る。だから攻撃もデタラメかつ乱雑になる。いいか……大事なのは、”正眼の構え”だ。』

(正眼……)

 

ウォルターの教えを思い出し、ユーリは剣を構えた。その構えは剣術において基本の構え、”正眼の構え”と呼ばれる構えだった。

剣先を相手に向け、左手で剣を持ち、右手も持ち手を掴むが、あくまで右手は”添える”だけ……その基本の構えを取り、ユーリはスッと息を整える。

 

『怒りや憎しみ……そういった激しい感情に左右されず、内包し平常心を保つんだ。』

(平常心……)

 

怒りは内に秘め、今は目の前の敵を倒すために冷静さを保つ……それがウォルターの教え……

 

『正眼の構えだぞ、ユーリ。それさえ続けていれば……お前は強くなる。』

 

次の瞬間、ユーリは駆け出し剣を振るった。

 

「!!」

(振り方が……さっきと違う!)

 

ユーリの剣さばきはさっきと違い、剣術の基礎を守っているものだった。

しかし、それでもギーツは攻撃をよけていく。よけたその瞬間、ユーリの一撃はギーツの背後にあった街灯に当たった。

その時、剣がギュオンッ……という音がなった。

 

「!!」

(まさか……)

 

その瞬間、ユーリはレイジングソードの特性に感づいた。

すると、ギーツは近くにあったゴミ箱をユーリに向かって蹴り飛ばした。

 

「ッ!セイッ!」

 

ユーリは振り向きざまにゴミ箱を切り裂いた。その時、また剣がギュオンッと音を立てた。

 

(やっぱり……この剣、斬る度にチャージされてる。ひょっとしたら……!)

 

レイジングソードは攻撃し、斬る度にエネルギーがチャージされていく特性を持つ……それに気づいたユーリは、行動に移った。

 

「うあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

正眼の構えで落ち着きを取り戻し、冷静さを保ったユーリの攻撃は鋭く、簡単にはよけられない。しかし、ギーツとて歴戦のライダー。そう簡単に攻撃は当たらない。

 

(ユーリくん……やっと落ち着きを取り戻してきたのに……!攻撃が当たらない……!)

 

その光景を見て、アイネは歯がゆく思っていた。その時、ギーツは足のマフラーで加速をつけた蹴りを繰り出し、ユーリを蹴り飛ばした。

 

「ぐはっ!」

「どうした?もう終わりか?」

「そんなワケ……ないだろ!」

 

ユーリは剣を地面に突き立てながら立ち上がった。その時だった。

 

《FULL CHARGE》

 

剣から音声が鳴り響いた。それを聞いた瞬間、ユーリは剣についたバックルを引っ張った。先ほどと違い、バックルはすんなりと外れ、ユーリはマスクの下でフッと笑った。同時にギーツも笑った。

 

「やっぱり……こういうカラクリか!」

「レイジングソードの特性に気づいてたんだな。」

 

ユーリはギーツに攻撃する際、”あること”を意識していた。それは、「ギーツを攻撃するフリをして、他の物を斬る」ということだ。

ユーリの狙いはギーツではなく、遊園地に配置されているベンチやゴミ箱、街灯が狙いだった。それらを切り裂き、レイジングソードをチャージしていたのだ。

そして今、エネルギーは完全に溜まった。

剣についていたバックルをベルトの左側に装填した。

 

《TWIN SET》

 

2つのバックルをセットし、ユーリはレバーを引いた。

 

《TAKE OFF COMPLETE JET&CANON》

《READY...FIGHT》

 

ベルトから音声が鳴り響くとともに、ユーリの、ポリスタイクーンの姿が変わった。

全身に銀色の重装甲を身に纏い、背中にジェット機のような翼を伸ばし、下半身の鎧に巨大なブースターが装備された。

 

「ハアァァァァァァッ!!ダァァァァッ!!」

 

ユーリは雄叫びを上げながら、ブースターで飛び上がって宙を舞い、ギーツに向かって突っ込んだ。

 

「そうだ、ユーリ……諦めない限り、そこに願いがある限り……!希望はある!」

 

ギーツはハンドルのついたバックルを取り出し、一旦ベルトに装填したバックルを全部外してから、新たなバックルを装填した。

 

《SET》

 

バックルを装填し、ハンドルを捻った。すると、バックルから4つの排気口が展開し、炎が吹き出した。ギーツはその炎に包まれ、全身に赤い装甲を纏った。

 

《BOOST MARKⅡ》

《READY...FIGHT》

 

ブーストフォームマーク2に姿を変えたギーツは、足を広げて腰を深く落とした。

 

「ハアァァァ……!ハッ!!」

 

次の瞬間、ギーツは炎を纏いながら目にも止まらぬ速さで飛び上がり、向かってくるユーリに突っ込んでいった。

両者の攻撃は空中ですれ違いながらぶつかり合い、火花が散った。

ギーツはジェットコースターのレールの上に着地し、ユーリは攻撃でふらつきながらも空中で静止した。

 

「やるな。だが、まだまだだ。」

(エースの奴……あんなの隠し持ってたのか……!明らかに僕より速かった……!)

 

ギーツのブーストフォームマーク2は、ユーリのコマンドフォームのスピードを遥かに凌駕していた。

やっと切り札を手に入れたと思っていた矢先、相手はさらに上をいっていたのだ。

すると次の瞬間、ギーツは目にも止まらぬ速さでユーリの目の前に現れ、拳を繰り出し、地面に向かって叩き落とした。

 

「うぐっ!?」

(マズい、このままじゃ……!)

 

このままでは地面に墜落する。かといってジェットで体勢を整えるのは間に合わない。そこでユーリは、

 

《REVOLVE ON》

 

ベルトを180度回転させた。するとユーリの身体は空中で静止し、変形が始まった。上下のアーマーが入れ替わり、そのまま地面に着地した。

アーマーが入れ替わったことで、背中のブースターはキャノン砲に変わった。

 

「くらえ!!」

 

キャノン砲の砲身をギーツに向け、光弾を発射するも、ギーツのスピードに勝てるはずもなく、光弾は外れてしまう。

 

(このままじゃ勝てない……!一撃与えるだけでいいのに……!こうなったら……!)

 

このままでは勝てないと悟ったユーリは、逆転するため、ある策を思いついた。

 

《LOCK ON》

 

バックルのボタンを押し、キャノン砲のエネルギーをチャージした。そしてバックルのレバーに手をかける。しかし、すぐにはレバーを引かなかった。

 

(まだだ……!)

「どうした?撃たないのか?ならこっちからいくぞ!!」

 

すると、ギーツはユーリに向かって超高速で突っ込み、拳に炎を纏って突き出した。

 

「今だ!」

《COMMAND TWIN VICTORY》

 

ギーツが眼前に近づいてきた瞬間、ユーリはバックルのレバーを引いた。キャノン砲にチャージされた青い光が一気に放たれた。

さすがのギーツでも、超至近距離からではよけられるはずもないとユーリは思っていた。

だが、ギーツは読んでいた。目の前から姿を消し、背後に回ってきた。

 

「なにっ!?」

《BOOST STRIKE》

「ハアッ!!」

 

次の瞬間、ギーツは炎を纏った拳をユーリの脇腹に叩きつけた。

 

「ごふっ……!!ぐあぁぁぁっ!!」

 

腹に必殺の一撃を喰らい、ユーリは吹き飛び地面に転がり、変身が解除された。

 

「ユーリ君!!」

「か、はっ……!!」

 

腹の痛みに悶えながら、ユーリは地面に寝転がる。そこにギーツが近づき、倒れるユーリを見下ろしてきた。

 

「……お前はその程度だったんだな。もう少しやれると思ったんだがな……」

 

ギーツはそうユーリに吐き捨てると、その場から立ち去ろうと背を向けた。しかし、突然足が重くなる感覚を覚えた。見ると、倒れたユーリがギーツの足にしがみついていた。

 

「ハァ……!ハァ……!」

 

ユーリはギーツのアーマーに手をかけながらヨロヨロと立ち上がり、拳を握りしめた。

 

「フッ……!」

 

ヨロヨロになりながらも、ユーリはギーツの顔に拳を叩きつけた。しかし、もう体に力は残っておらず、ユーリの拳はギーツになんのダメージも与えられなかった。

そして、ユーリはその場に膝をつき、泣きじゃくった。

 

「お前の言う通り、ぼくは弱い……!フリッドさんとか、グリムの奴よりも……!ロッティさえも越えることができない……!スーツがなきゃ、何もできない……!!ノエルさんを助けることも……!!」

 

ユーリは自分の弱さに嘆き、涙する。ユーリはG3を装着することで、初めて他のライダーとともに戦える。そんな自分を情けなく思っていた。

ユーリは泣き喚き、さらに心情を吐露する。

 

「津上……!戻ってこいよ……!!どこで何やってんだよ!!お前とぼくなら、どんな奴だってやっつけられるのに!!」

 

心情を吐露し、泣きながらユーリは地面を殴りつけた。

今、この場にアギトが、津上翔一がいてくれたなら……どれだけの人間を助けられただろうか。少なくともノエルを助けられたかもしれない……そう思ったユーリは、アギトに縋りたい気持ちになっていた。

 

「……勝負はお前の勝ちだ。」

 

すると、ギーツは呟きながらユーリに手を差し伸べた。

 

「……は?」

「いっぱいスッキリしたか?」

「いや、えっ……?どういうこと!?」

 

困惑するユーリに、英寿はフッと笑いながら変身を解いた。

 

「お前は怒りと悲しみで周りが見えなくなってた。ただ前に突き進むだけになってた。」

「まさか……それを分からせるために勝負を……?」

 

ユーリがそう言うと、英寿はウンと頷いた。

 

「お、お前な……でも、ぼくはお前に勝ってなんか……」

「何言ってんだ?」

 

ユーリは自分はギーツに勝てなかったことを伝えようとした。すると英寿は自分の頰を指差した。

 

「一発当てたろ?」

 

つい先ほど、フラフラになったユーリは一発だけギーツの顔面にパンチを与えた。それが一撃だと、英寿は言った。

 

「そ、そんなのアリかよ……」

 

ユーリは苦笑いを浮かべながら、差し出された手を取って立ち上がった。

すると、笑っていた英寿の表情が曇り始めた。

 

「……ノエルがあんな目に遭ったのは、俺の責任でもある。」

「えっ……?」

 

ノエルの手を離し、ユーリに背を向けた。

 

「俺は……ノエルが襲われることに気づいてた。だから俺はそれを阻止しようとセーフハウスに向かった。だが……俺の行動は奴らに筒抜けだった。」

「どうして……!?」

「俺がブラックサレナにスパイとして潜入していたことに、奴らは気づいていたんだ。セーフハウスに向かう俺に、G4を差し向けた。それも5体も……」

 

そう語る英寿は、悔しそうに拳を握っていた。

 

「俺はなんとかG4を全て倒し、セーフハウスに向かったが……遅かった。俺がついた時には、ノエルは……」

 

英寿の話を聞き、ユーリは英寿もノエルのことを助けたかったのだと気づいた。だが、結果として英寿は助けられなかった。ユーリも……

その時、ユーリはノエルが残した遺書のことを思い出し、懐から抜き出した。

ユーリはそれをゆっくりと読み始めた。

 

『ユーリくん、君がこの手紙を読んでいる時、私はきっとあの人に殺されてると思う。それで……ユーリくんに頼みがあるの。』

「頼み……?」

 

ユーリは思わず呟いたが、手紙を読み進めた。

 

『あの人を、お兄ちゃんを止めて。私を殺したら、あの人は歯止めが効かなくなる。私は、”妹さん”は、あの人に残された最後の”良心”だと思うから。』

「良心……!」

『ユーリくん、私ね……もしも、もしもだよ?生きていられたら……あの人をちゃんと「お兄ちゃん」って呼びたい。今まで義務感で呼んでたから……次は心の底から呼びたい。』

 

手紙に書かれていたのは、ノエルの願いだった。それを読んで、ユーリは自分が恥ずかしく思えた。ノエルはこの手紙に願いを残していたのに、自分は怖がって読まなかった。それだけでなく、怒りに身を任せて、裏切り者とはいえ同僚を殴ってしまった。

そして、ユーリは手紙の最後の文を読んだ。

 

『追伸・私の部屋の机に、津上君から預かってた物があるよ。ユーリくん、きっと喜ぶと思う。』

「津上から……?」

 

─────────────────────

 

ユーリは英寿とアイネを連れて、ノエルが住むマンションを訪れた。仕事部屋にある机……ユーリはその周りや引き出しを調べた。そこで見つけたのは、封筒だった。

その封筒には津上翔一の字で、「ユーリさんへ」と書かれていた。

 

「これだ……!」

 

ユーリは封筒の蓋を開け、中の物を取り出した。それを見た瞬間、ユーリは目を見開いた。

それは、翔一が作った「アギトの会」の会員証だった。今度は「補欠」ではなく、正式な会員証……

 

「津上……こんなの作ってたのか……?」

 

正式会員証を見て、ユーリは涙腺が緩むのを感じた。封筒の中には、会員証だけでなく、手紙も入っていた。手紙に書かれていたのは一文だけだった。

 

『ユーリさん、俺の家族をお願いします』

 

その一文を読んだ瞬間、ユーリは両目から涙がこぼれ落ちた。

 

「……ッ!バカが……!そんなこと、分かってんだよ……!!任せとけ、津上……!!」

 

親友が残してくれた最後のプレゼント……ユーリは涙しながら、その会員証を握りしめた。

その様子に、英寿は微笑み、アイネは優しくユーリの肩に手を置いた。

その時、部屋にある電話が鳴り響いた。

 

「はい、もしもし?」

 

アイネはその電話を取った。

 

『あっ、姐さん!そっちにいたのか!姐さん達がいそうなとこ、手当たり次第電話してたんだよ!!』

「フランキー君?どうしたの?」

 

電話をしてきたのはフランキーだった。何やら慌てている様子だった。

 

『フリッドから連絡があって……アーニャがブラックサレナに攫われた!!』

「なんですって!?」

『ロイドとヨルちゃんも、さっき知らされたらしい!一旦、喫茶シオンに集まるって……!!』

「わかったわ!私達もすぐそっちに向かうわ!」

 

電話を終え、アイネは受話器を戻した。そこにアイネの大声を聞いて英寿が近づいてきた。

 

「どうした?」

「アーニャちゃんが攫われたの!ブラックサレナに!」

「アーニャ……あのピンク髪の娘か。」

「みんな、喫茶シオンで集まるって言ってたわ!」

「なら、そこで俺が掴んだ情報を教える!」

 

2人が話していると、さっきまで泣いていたユーリが立ち上がり、声を上げた。

 

「これ以上……先輩達の好きにはさせない!2人とも……行こう!!」

 

その目にもう迷いはなかった。大切な人の願いのために、大切な友との約束を守るために……一人の男は今、戦士となる。

 

 

 




おまけ「イベントが多い」

原作のユーリ
「姉さん♡姉さん♡」
「ロッティィィィィ!!姉さんのために別れろぉぉぉ!!」
「姉さんのためならなんだってやる!!」

今作のユーリ
「津上ィィィィ!!このキューピッド気取り男がァァァ!!…と思ったら、そいつアギトだった!」
「アンノウンが出てきて姉さんとかロッティどころじゃない!」
「フリッドとかいう男に家庭教師の座を取られた!……と思ったらギルスだった!」
「グリムとかいうガキがウザい!……と思ったらアナザーアギトだった!」
「同僚のシンさんが何か神様みたいな奴の片割れだった!」
……他にも多数のイベントあり


「イベントが……!イベントが多い……!!」


────────────────────

ユーリ目線から見たら、めちゃくちゃイベント多かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。