SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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PART.16 螺旋Ⅵ:逆転への狼煙

 

アーニャが攫われ、皆は情報の整理とアーニャを助ける手立てを考えるため、喫茶シオンに集まった。

 

「すまない、ロイド君……!ヨルさん……!俺が不甲斐ないばかりに……!」

 

フリッドはロイドとヨルに深々と頭を下げていた。自分がいながら、アーニャを守れなかった……そのことにフリッドは責任を感じ、2人に謝罪していた。

 

「謝らないでください、フリッドさん!」

「ああ……お前に非があるわけじゃない。」

 

喫茶シオンの地下室に全員集まっていた。ロイドとヨルは、頭を下げて謝る宥めていた。

すると、英寿はテーブルの上にある城の写真を置いた。

 

「ここが奴らのアジトだ。ミュンク地方にある古城だ。」

「この城は……!」

 

その時、ロイド、ヨル、フランキーの3人は写真を見て目を見開いた。その城には見覚えがあったのだ。

 

「知ってるのか?」

「イーデン校入学の合格祝いに、アーニャを連れてってやったんだ。」

「ここにアーニャさんが……?」

「多分な。それから……」

 

英寿はさらにもう一枚、とある資料をテーブルに置いた。

 

「これは?」

 

それは装置の設計図だった。かなり大掛かりな装置のようで、装置の真ん中に貼り付け台のようなものがあった。

 

「奴らは巨大な装置を開発している。名称は『ESPシステム』……G4を無敵の存在に変える装置……そう聞いた。」

「G4を無敵に……!?」

「冗談じゃねぇぞ……!」

 

英寿が掴んだ情報を聞いて、戦慄するロイド達……ただでさえ強力なG4がさらに強化される……想像したくもない光景だった。

 

「まさかと思うが……この貼り付け台……」

 

ロイドは設計図に書かれている貼り付け台に注目した。普通、装置に貼り付け台など作らない。しかし、ここにアーニャが攫われた理由があると考えた。

 

「そうだ。何のためか分からないが、奴らはアーニャを装置の一部に使うつもりだ。」

「そんなこと……させてたまるか!これ以上、先輩の好きにはさせない!」

 

ユーリは覚悟を決めたような目で大声を上げた。それを見て、グリムはニッと笑った。

 

「へっ、吹っ切れたみたいだな。」

「ああ……皆に心配かけちゃって……ごめん。」

「なに、心配してなかったよ。君はタフだからな。」

 

申し訳なさそうに謝るユーリ。それを慰めるように、フリッドは優しく肩に手を置いた。

 

「それより……これからどう動く?」

 

ユーリは続けて呟いた。ユーリの一言に、皆、腕を組んで考え始めた。

どう動くか……というよりはどうやってアーニャを助け出すか、と考えていた。

すると、グリムが声を上げた。

 

「もう正面からぶつかるしかねぇだろ!」

「それはダメだ。アーニャちゃんが人質にされてるんだぞ?下手したら殺される……!」

 

フリッドの反論を聞き、グリムは口を紡いだ。すると、今度は英寿が意見を述べ始めた。

 

「いや、その可能性は低いと思う。」

 

英寿はそう言うと、テーブルに置いた設計図に目を移した。

 

「こいつがどんな装置なのか分からないが、あいつらはあの子をこの装置の部品に使うつもりだ……だから、あの子を殺すってことはない。それより問題なのは……」

「なんだ?」

「敵の数だ。敵のほとんどはG4だ。その数はおよそ500……だが、奴らはさらに数を増やしてる。このままいけば、奴らが目標にしていた1000体に到達する。」

 

英寿の言葉を聞き、皆一様に唾を飲んだ。もし、ブラックサレナのG4の数が1000体になれば、自分達では太刀打ちできないかもしれない……脳裏にそのことが浮かんでくると同時に、この地下室と上の階を繋ぐ階段から、足音が聞こえてきた。

 

「フフフッ……どう足掻いても、君達は我々に勝つことなどできない。」

「お前……!」

 

カツンッ、カツンッという足音とともに現れた一人の男。フリッドにとって、忘れることのできない憎き相手……

 

「クリス……!!」

「なにっ?じゃあアイツがクレマチス社の……!!」

「失礼……鍵が開いていたものでね。」

 

クリスは不敵に笑うと、近くにあった椅子に偉そうに腰掛けた。

 

「……戸締まりはしたんだがな。」

「それより、ずいぶん余裕そうじゃねぇか。社長さんよぉ……社長ってのはそんなにヒマか?敵のアジトに堂々と顔出すなんてよ!」

 

グリムはクリスに向かって叫んだ。クリスの行動は、まるで自分がブラックサレナのメンバーであることを隠さず、堂々としているようだった。

グリムの指摘に、クリスは答えた。

 

「余裕そう……?いや、これは本当に余裕なんだよ。何故なら君達じゃ、私を倒せないからな……」

《VISION DRIVER》

 

クリスは笑いながらベルトを取り出した。そのベルトは液晶画面がデカデカとついており、その右横にはカードをスキャンするためのスリットがある。

そのベルトを見た瞬間、フリッドは目を見開いた。

 

「そのベルト……!やっぱりお前があのライダーだったのか!!何故あの時……グインさんや他の仲間を殺した!?彼らは殺すほどのことをしたのか!?」

「あれはリスクマネジメントというヤツだよ。」

 

そう笑いながら言うクリスに、フリッドは目を丸くした。

 

「は……?」

「奴らが改心したら、君達に余計なことをベラベラ喋るかもしれないだろう?」

「たったそれだけのことで……!?」

「リスクを考えない経営者なんて存在しないよ。」

 

クリスはクスクスと笑い、殺した相手のことなど気にしていない様子だった。そんなクリスを見て、ユーリは静かに呟いた。

 

「何が経営者だ……テロリストの分際で……!」

「テロも立派な商売だよ。」

 

ユーリの一言にクリスは反論を述べ始めた。

 

「考えてみろ。G4が完成すれば……もし戦争が起きても、戦死者を減らすことができる。」

『!!』

「なんせG4の中身は死体だ。兵士として使えば人件費もかからないし、無駄に戦死者を増やすこともない。」

 

クリスのその言葉に、皆は一瞬、その考えは理に適っていると思ってしまった。

それに感づいたのか、クリスはニヤリと笑い、さらに続けて言った。

 

「加えて言うなら……ただ余生を生きているだけの老人ども……口だけは達者の無能な政治家……そういった無能な奴らをG4の素体にし、最終的に死体を溶かしてネオプラーナにしてしまえば……皆が望む平和な世界が生まれる。」

「……そんなの、スジが通らねぇだろ……!」

「フッ、スジね……」

 

グリムが苦し紛れに言った一言に、クリスは笑い飛ばした。

 

「そんなものを求める人間がどれだけいる?民衆が求めるのは理想より結果だ。一銭にもならない理想なんかより、結果をね……」

「うっ……」

 

その言葉に何も言えなくなってしまった。クリスの言い分は少なからず正しいと思ってしまった。

だがその時、ただ一人反論する者がいた。

 

「みんな騙されるな。そいつは口が上手い。」

 

ただ一人、英寿は反論した。同時に、英寿はクリスを睨みつけた。

 

「猿芝居はやめろ。クリス……いや、”転売屋のククレス”。」

 

英寿は違う名前を言うと、クリスは笑みを止めた。しかし、すぐにまた笑い始めた。

 

「フッ……流石に狐は騙せなかったか。」

「な、なんだ?エースの知り合いだったの?」

 

互いに顔見知りの様子の2人を見て、ユーリは戸惑いながらも英寿に尋ねた。

 

「こいつの本当の名前はククレス。こいつは元々、俺がいた世界の住人だった。そこでこいつは、転売をしていたんだ。」

「転売?」

「ああ……」

 

英寿は懐からデザイアドライバーとIDコアを取り出した。

 

「このデザイアドライバーは、このIDコアをはめることで変身できる。だが、このIDコアは特定の人間にしか使えない特殊な物だ。それをこいつは盗んで、誰にでも使えるように不正改造してバックルと一緒に売っていたんだ。」

「……元の世界じゃ売れなかったが、こっちじゃ大儲けだ。需要があったんだ。」

「需要だと……?」

「そうだ、需要と供給だよ。みんな、力を欲しているのさ。力を手に入れ、誰かに認められたいという承認欲求……仮面ライダーのようになりたいという変身願望……私は弱者の願いを叶えているだけだ。」

「ふざけるな!」

 

その時、フリッドは叫びながらクリスに掴みかかった。

 

「お前がやっていることは、弱い人達を煽って戦いに駆り出させているだけだ!人の心を弄ぶな!!」

「おやおや……私がやっているのはただの商売だ。問題なのは買った本人達じゃないのかな?」

「貴様……!」

 

フリッドは怒りに身を任せ、殴りかかろうとした。すると、

 

「この店の周りに爆弾を仕込んだ。」

『っ!?』

「もし私を殴れば……その瞬間、私は起爆スイッチを押す。」

 

クリスの一言にフリッドの手は止まり、皆驚愕してしまう。

そしてクリスは上に上がる階段に足をかけた。

 

「できないだろうな。この店は君達にとって大事みたいだからな……」

「……本当に爆弾を仕掛けてるなら、わざわざ公言する必要なんてない。」

 

ロイドは負けじとクリスに向かって言い放つ。しかし、クリスは毅然とした態度で返す。

 

「確かにそうだが……君達相手にはこれで十分なんだよ。」

 

クリスはそう言うと、懐からボタンが一つだけついたリモコンを取り出した。それを見て、誰もが爆弾のスイッチだと分かった。

爆弾を仕掛けたというのはウソかもしれない……しかし、万が一ということもある。万が一、本当に爆弾が仕掛けられていたら、クリスのさじ加減一つで店が吹き飛んでしまう。

 

「今日は宣戦布告にきたんだ。今から一週間……私達ブラックサレナは究極のG4を完成させ、東国と西国を手中に収める。止められるものなら……止めてみたまえ。」

 

クリスは捨て台詞を吐くように言うと、そのままその場から立ち去ろうとした。

そこに、フリッドはクリスに向かって叫んだ。

 

「待て!なんで俺達にそんなことを言う?何を企んでる!」

「フフッ……企みなど……私はそこにいる狐と違う。」

 

クリスはそう言うと、英寿の方を指差した。

 

「私は正直者なんだよ。例えば、ネオプラーナとか。人間の死体を溶かして液体にしたものだが……自然は傷つけない。”自然”や”空気”を傷つけないクリーンエネルギー……ほら、嘘は言ってないだろう?」

 

クリスは笑いながら言い終え、高笑いを上げ、ロイド達の前から姿を消した……

 

───────────────────

 

「……どうだった?」

「いえ、爆弾は見つかりませんでした。」

 

クリスが去った後、喫茶シオンに本当に爆弾が仕掛けられたかどうか、全員で家探しをした……が、結果として爆弾は見つからなかった。皆は一旦店内に集まって、そのことを報告し合った。

 

「……やっぱしハッタリだったのか……」

「ちくしょう!舐めやがって!!」

 

向こうは完全に自分達のことをおちょくっていた。クリスはロイド達に自分達ブラックサレナは倒せない……そう言っていたのだ。

 

「このまま舐められたままじゃ終われねぇ!すぐにでも殴り込みにいこうぜ!」

「ダメだ!何があるか分からないんだぞ!」

 

憤るグリムの肩を掴み、フリッドはなんとか宥めようとしている。

それに同意するようにロイドが声を上げた。

 

「その通りだ。奴の言い分から察するに、一週間後にブラックサレナは東西両国を攻めるつもりだ。」

「いや、一週間以内の可能性もある。」

 

その時、英寿が口を開いた。

 

「奴の言動を思い出してくれ。奴は”一週間後”とも”一週間以内”とも言ってない。ただ”一週間”とだけ言っていた。つまり……」

「二通り考えられるってことか。」

 

英寿の言葉に続くようにユーリが言葉を続けた。対し、英寿はコクリと頷いた。

 

「あーっ、もう!じゃあどうすんだよ!?」

「何はともあれ、早く助け出さないとな……」

 

何かアーニャを助け出すのに有効な作戦はないか……と皆が思い始めた時、アイネがスッと手を上げた。

 

「アーニャちゃんの救出……3日後にできるかしら。」

「3日後……?」

「どういうことですか?」

「実はね……さっきユーリ君とエース君が戦ってるところを見て、思いついたの。G3-Xの強化プランを……!」

「強化プラン……!」

 

アイネのその一言に、皆はゴクリと唾を飲んだ。そして、アイネはニヤリと笑い、語り始めた。

 

「強化版のG3-Xなら、G4と互角……いや、それ以上よ。ただし、どう見積もっても、最低3日はかかるわ。」

「なら、俺も手伝うぜ。力なら自信あるぜ!」

「私達もお手伝いします!」

 

グリムとヨルの一言に賛同し、皆もウンと頷いた。

 

「みんな、ありがとう。」

 

皆の反応を見て、アイネは感謝しながら頭を下げた。

 

「後は……敵の数を減らせればな……」

 

敵の、G4は1000機に増えようとしている。そしてそれを装着するのは、ブラックサレナに賛同する者達……言い換えれば、モルモット、生贄にされる者達だ。

 

「説得できないかな?学校を襲った連中は説得することができたんだ!……その後、クリスに殺されたけど……」

 

フリッドはイーデン校での一連の出来事を思い出し、話し合いで解決できないか提案した。

しかし開口一番、フィオナは否定した。

 

「それは無理。ブラックサレナの連中の全員が、話を聞いてくれるとは思えないし……」

「だよな……」

 

説得に関してはもはや無理……そう思った次の瞬間、店のドアが叩かれた。

 

「誰だ……?もう閉店なのに……」

 

ロイドは懐から抜いた銃を片手に、ドアノブに手をかけた。他の皆も何があってもいいように臨戦態勢に入った。

そして、ロイドは恐る恐るドアを開けた。そこにいたのは……

 

「ごきげんよう、Mr.フォージャー。」

「……何の用だ、”K”。」

 

そこに現れたのはショッカーの一員で、ロボットの”K”だった。その姿を見て、ロイドはため息をつき、他の皆も肩透かしを食らっていた。

 

「実は提案がありまして……一時的に協力関係を結びませんか?」

『協力関係?』

 

”K”のその一言に、皆は声を上げた。すると、”K”の目が突然光を放ち、その光は壁に当たった。

そして、その光は映像として壁に投影された。

 

「私は観測者として、この目でありとあらゆるできごとを記録しています。こんなSCENEも。」

 

壁に映し出されたのは、ガオが赤ん坊を盾にするシーン。

 

「これ、あの時の……!」

 

続けて映し出されたのは、クリス……仮面ライダーグレアが部下のライダー達及びグインを殺害するシーンだった。

 

「本当に全部記録されているのか……」

「……待てよ。これを使えば……」

 

その時、映像を見ながら、ロイドが呟いた。

 

「ロイドさん?」

「みんな、逆転の策を思いついたぞ……向こうがしてきたことを、今度はこっちがやり返す番だ!!」

 

──────────────────────

 

「……勝手なことをしてくれたな……」

 

そのころ、ブラックサレナのアジトでは、ウォルターが戻ってきたクリスに刃を向けていた。

 

「なんのことかな?」

「とぼけるな。俺の許可もなく裏切り者を処断しただろ。」

「フフッ、耳が早いな。だが、私がしたことは組織のため……」

 

次の瞬間、一筋の閃光がクリスの目の前に走った。

ウォルターが眼前で刀を振るい、それを鞘に収めた。すると……クリスのつけていたネクタイが切り落とされ、床に落ちた。

 

「……腕を上げたな。」

「次は外さん。」

 

ウォルターは静かに呟くと、後ろを向いた。ウォルターの背後には、建造中の巨大装置……「ESPシステム」が鎮座していた。

巨大な装置からは無数のチューブが伸び、その真ん中には、まるで生贄を捧げるように貼り付け台が取り付けられていた。

 

「完成までどれほどかかる?」

「……最低でも3日だな。」

「3日か……奴らもただ一週間待ってるワケではないだろう……3日後が、勝負だな。」

 

ウォルターは静かに呟くと、刀の鍔を指で押し出し、鯉口を切った。

ふと、脳裏に浮かぶのは、かつての後輩ユーリの姿と、自ら手をかけた妹メアリと、妹そっくりに作ったノエルの姿……

3人に思いを馳せながら、ウォルターは言った。

 

(……あれからどれほど経ったことか……あの日から全てが変わった。)

 

その時、ウォルターは自身の過去を思い起こしていた……

 

 




おまけ「クリス(ククレス)の経歴」

クリスは元々ギーツ世界の住人で、ジーンやケケラと同じ未来人。デザイアグランプリの脱落者が使っていたドライバー、IDコア、バックルを回収し、IDコアを不正改造し、オーディエンス達に転売していた……が、買い手はおらず在庫だけが残ることになった。
それに加えてデザイアグランプリの運営に通報され、さらにはジーンにも追われる身となり、逃亡の末にこちらの世界に逃れることになった。
その後、クリスと名前を変え、ウォルターと出会い、クレマチス社を立ち上げ、今まで盗んできた盗品を密かに2年もの間転売し続けてきた。さらにその後、ショッカーの「プラーナ」と「ハビタット計画」を手に入れ、ブラックサレナを設立した。さらに「ネオプラーナ」を商品として売り出し、一流企業にまで上場させ、現在に至る。

ちなみに名前の由来は、笑い声の「クククッ」とネット用語の「レスバ」から。

─────────────────

クリスの設定は結構前から考えていて、ギーツの未来世界でも転売ヤーがいるとしたら、ベルトやらバックルやらを売り捌いてそうだなと思いながら作りました。

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