SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

119 / 159
PART.21 決戦Ⅳ:その目が青く染まる時

 

古城の最上階、キンッ!キンッ!と刃と刃がぶつかり合う音が響く。

 

「うおぉぉぉっ!!」

《CHARGE》

 

ユーリは持ち手をバイクのハンドルの様に捻りながら剣を振るう。しかし、ウォルターはそれを避け、鞘から刀を抜き、一閃する。

だが、ユーリは後ろに跳んで攻撃を避け、床に剣を刺した。さらに専用銃「GM-01」を手に取り、ウォルターに向かって銃弾を撃った。

しかし、ウォルターは一度刀を鞘に納めた。

 

「シャッ!」

 

次の瞬間、目にも止まらぬ居合術で刀を連続で振るった。そして再度刀を鞘に納めた。

すると、ユーリが撃った弾丸が床に落ちた。銃弾は真っ二つに斬られていた。

 

(さすがは先輩……!でも、これなら……!!)

《MAX CHARGE》

 

剣のランプが3つ、全て赤く光った。その瞬間剣が炎を纏った。

 

「チェストォォォォッ!!」

 

炎の剣を手に、ユーリはウォルターに向かって突っ込んだ。対し、ウォルターは変わった行動に出た。

刀を鞘から抜いた……かと思いきや、刀を自分の身体に隠すように下に下ろし、刃先を床に突き立てた。すると、そのまま刃先を床に擦りつけながら駆け出した。

 

「オォォォォォォォォォッ!!」

 

次の瞬間、ウォルターの刀は摩擦熱によって炎が点火し、それが刀全体に燃え広がった。

両者は互いに炎の剣を同時に振るった。2つの炎が、まるで演舞でも踊るかのようにぶつかり合い、それが薄暗くなっていた外の景色とよく合った。

 

「くっ……!」

「強くなったようだな、ユーリ……だが、まだ甘い……」

「まだ……これからだ!!」

 

その時、ユーリは背中のジェットブースターを点火し、加速してウォルターを押し出した。

 

「チッ……!」

 

ジェットブースターの勢いに、ウォルターはどんどん後ろに押されていき、ついに壁にぶつかりそうになった。しかし次の瞬間、ウォルターは地面と後ろの壁を蹴り、空中できりもみ回転しながら刀を振るって炎を払い、鞘に納めた。

 

「ハァァァァ……」

 

居合の構えに入り、腰を深く落としながら鞘についたトリガーに手をかけ、同時に駆け出した。

ユーリの懐に入った瞬間、鞘についたトリガーを引いた。銃弾の様に刀が発射され、その刀を掴み、高速の居合斬りを繰り出した。

 

「!!」

 

ユーリは咄嗟に剣で防いだが、ウォルターの強力な一撃に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。同時に、剣にヒビが入り……真っ二つに砕けてしまった。

 

「剣が……!」

「もらったぁ!!」

 

隙ありと言わんばかりに、ウォルターは刀を両手で持って斬りかかった。

もはや絶体絶命……と思った次の瞬間、ユーリは腰の後ろに携帯した、タイクーンから受け取った刀「武刃」を手に取り、鞘から抜いて攻撃を防いだ。

 

「なんだと……!?」

「くぅ……!だあっ!!」

 

ユーリは力を込めてウォルターを突き飛ばし、さらに刀で斬りかかった。しかし、ウォルターは攻撃を後ろに下がって避け、刀を構え直す。

両手で刀を持ち、その手を顔の横に移動させ、刃の向きは上にする……霞の構え。

対し、ユーリは剣術の基本の構え、初歩中の初歩、正眼の構え。

2人は互いが得意とする構えを取り、互いに睨み合った。

 

『…………』

 

互いに無言になり、風だけが音を立てて吹いていた。それはさながら、カウボーイの早撃ち勝負のようだった。

そして次の瞬間、どこからか銃声が鳴り響いた。まるで、戦いのゴングを鳴らすように……

銃声が鳴り響いた瞬間、2人は互いに刀を振り上げた。

 

「ウオォォォォォォォォッ!!!」

「ハアァァァァァァァァッ!!!」

 

ガキィィィィィンッ!!

 

耳が破裂しそうな金属音が鳴り響いた。早撃ちならぬ”早斬り”……その勝者は、ユーリ・ブライア。

 

「なっ……!?」

「ハアッ!!」

 

驚くウォルターの隙を突き、ユーリは鋭い突きを繰り出した。しかし、ウォルターは鞘で攻撃を防ぎながら後ろに下がった。

 

「……お前を甘くみていた。」

 

取り乱すかと思いきや、ひどく落ち着いた様子で、ウォルターは部屋の最奥……後ろにある玉座に腰掛けた。

 

「非礼を詫びて……全力で相手をしよう。」

(全力……!?今まで、本気じゃなかったのか……!?)

 

ユーリは内心驚いた。刀の使い手であるウォルターの武器を砕き、ユーリは勝ったつもりでいた。なのに本気を出していなかったとなれば……戦いは終わっていない。

すると、ウォルターはマスクの耳に指を当てた。

 

「クリス、装置を起動する。」

『ああ……わかった……』

 

耳に当てた通信機からクリスの声が響く。

そして次の瞬間、古城全体が揺れ始めた。

 

「な、なんだ!?」

「見せてやろう……究極のG4を……」

 

───────────────────────

 

時間は少し遡り、ダンスホールでは……

 

「クッソ……!ちょこちょこ動きやがって!」

 

グレアと対峙していたロイド達は、グレアが操る5基のビット「ヒュプノレイ」に苦戦していた。

ビット自体が硬い上にすばしっこく、攻撃が当たらない。当たったとしても装甲に弾かれてしまう。

 

「だったらこいつだ!」

 

ギルスは背中から伸びる赤い触手「ギルススティンガー」を床下に潜り込ませ、グレアの足元から飛び出し、攻撃する。

しかし、本体を攻撃しようにもグレア自身もかなりの手練れだった。ギルスの攻撃を軽々かわした。

ギーツとロイドが背後から銃で攻撃すれば、ビットが作るバリアによって防がれる。

ギルスやカイザが接近戦に持ち込もうとすれば、ビットを光線で繋げ、まるで鞭のようにして攻撃してくる。

苦戦するロイド達を見て、グレアはフッと笑った。

 

「クフフ……無駄はよせ。君達が使ってるベルトや装備は旧式……最新式の私には到底およばない!」

「何が最新式だ……どうせそれも盗んだ物だろ!盗品使ってイキってんじゃねぇぞ!!転売野郎!!」

 

鼻で笑うグレアに、カイザは大声で罵倒した。

その時、ギルスがロイドに声をかけた。

 

「ロイド君、ここは俺達3人で抑えるから、アーニャちゃんを!」

「頼む!」

 

ギルスの提案にすぐさま従い、ロイドは装置に向かって駆け出した。当然、グレアがビットを使って妨害してくるが、それは残った3人が対応し、ロイドを守る。

 

「アーニャ!!」

 

ロイドは貼り付けにされているアーニャに大声で呼びかけるが、眠らされているのか返事がない。

ロイドはアーニャを助けようと装置に手をかけた。

 

「ッ!!?」

 

その瞬間、装置から高圧電流が流れ、G3のスーツに流れた。

電流の痛みに耐えかね、ロイドは思わず手を離した。

 

「な、なんだ……!?」

「おっと……迂闊に触れない方がいい。その装置には簡単に壊されないように高圧電流が流れるようにしてある。」

「お前……!!」

 

得意気に話すグレアにロイドは怒りで拳を握った。その怒りを代弁するように、ギルスはグレアに向かって叫んだ。

 

「お前の目的はなんなんだ!?こんな小さい子を、こんな変な機械に括りつけて……!!なんのつもりなんだ!!」

「フッ……クフフフフフッ……!!」

 

その時、グレアは突然笑い始めた。

 

「私がなんのために、あんなシスコンと手を組んだと思っている?……操りやすいと思ったからさ。」

「なんだと……?」

 

グレアは笑いながらロイド達に自身の目的を話し始めた。

 

「私の目的は、デザイアグランプリ……私がいた世界で行われた命を賭けたゲームの復活だ。だが、ただ単にデザグラを復活させてもつまらない……そこで思いついたのが、G4だ。大量のG4に襲われながら、最後の一人になるまで戦い続ける新しいサバイバルゲーム……!盛り上がると思わないか?」

 

グレアの話を聞いて、4人は怒りを覚えた。元からクリスに対して怒りを感じていたが、グレアの発言でそれがさらに怒りが湧いた。

グレアは話を続けた。

 

「私の目的のために……ウォルターは実によく働いてくれたよ。クフフフ……!追い詰められた人間は哀れだよなぁ!写真を見せただけで簡単に心が壊れるんだからな!」

「写真……?」

「そうさ。奴の両親が不倫や不正を働いているところを撮影したものだ。」

「……それは、本当に両親が不正をしていたのか?」

 

すると、グレアはその質問に対して即答はせず、顎に手を当てて考え込んだ。

 

「うーーーん……どうだったかな?まぁ、どっちだっていいだろう?心が壊れかけている男の心を壊すには、写真1枚あればこと足りる。」

 

グレアの話を聞いて、4人はおおよそ何があったのかを察した。恐らく…ウォルターはこの男に騙されたのだ。そしてクリスはウォルターをいいように利用したということだ。

 

「お前……クソだな……!」

 

皆の意見を代弁するように、カイザが吐き捨てた。しかし、グレアは気にしていないようで、ビットの銃口を向けてきた。

 

「フフッ、これから負ける君達に何を言われようと……何も感じないさ。死ね……ライダー!」

 

グレアは4人に向かって叫ぶと、光線を発射しようとした……が、ビットから光線は出なかった。

 

「な……!?」

「あ、あれ?」

「何故だ!?何故攻撃が出ない!?」

 

グレアはビットが突然動かなくなったことに動揺し声を上げた。さらにビットは独りでにグレアの身体に戻った。

すると、ステージの舞台袖から一人の男が姿を現した。

 

「脇が甘いですね、クリス社長。」

「お前は……!?」

 

その男は、先ほどクリスとウォルターに放送のことを知らせた部下だった。

 

「なぜお前がここにいる!?お前の持ち場はここじゃないだろう!!」

「フッ……まだ分からないんですか?」

 

部下の男はフッと笑うと、自分の顔をガシッと掴み、そのまま引っ張った。男のその顔はマスクになっており、その下に隠された真の顔が姿を現した。

 

『あっ!?』

「お、お前は、いったい……!?」

「法条……!?」

 

皆の前に現れたのはロイドがよく知る人物……「WISE」のスパイの一人、法条だった。

 

「アナタのベルトに細工させてもらいましたよ。まぁ、未知の機械でしたが……機械というのは部品一つでも抜いてしまえば故障を起こすものです。本当は装置やG4も細工したかったのですが……時間が足りませんでした。」

「貴様……!スパイだったのかぁ!!」

 

法条はクリスが使うヴィジョンドライバーに細工をしていた。そのせいでビットが故障を起こしたのだ。

そのことを知ったグレアは、さっきまでの飄々とした態度が嘘のように逆上した。

 

「おやおや……ベールが剥がれましたか。」

「法条……お前、いつの間に潜入していたのか?」

「元々スパイというのは影の存在……潜り込んでてもおかしくはないでしょう。むしろおかしいのはアナタの方ですよ、黄昏。」

 

法条はそう言いながら、G3のスーツを着込むロイドをじろじろと軽蔑するような目で見てきた。

 

「そんなスーツを着て、ヒーロー気取りですか。ずいぶん目立ちたがりになりましたね。」

「相変わらず口が減らないな……」

 

ネチネチと小姑のように嫌味を言う法条にため息を吐くロイドだったが、いつも通りな態度の法条に安心していた。

 

「それでも助かったよ、法条。」

「別に……私は上からの命令に従ったまでです。まぁ、アナタに恩を売れたのは……”良し”としましょうか。」

「まったく……お前らしい。」

 

変わらぬ後輩の姿に、ロイドはマスクの下で微笑んでいた。

 

「き……貴様らァァァァァァッ!!」

 

その時、怒りでグレアが叫び声を上げた。

 

「許さん……!許さんぞ貴様らァァァァァァ!!」

「へっ、とうとう本性現したか、クソ野郎!」

「貴様ら全員、生かして帰さん!!例えビットが使えなくとも、スーツの性能は私の方が上だァッ!!」

 

豹変したようにグレアは叫ぶと、両手を広げて構えた。だがその時、グレアは耳につけた通信機に通信が入ったことに気づいた。

 

『クリス、装置を起動する。』

 

通信機から聞こえたのはウォルターの声だった。グレアはその一言を聞き、ニヤリと笑った。

 

「ああ……わかった……」

 

返事をするとともに、グレアなどこからか小さいリモコンを取り出し、それについているボタンを押した。すると、古城全体が揺れ始めた。

 

「な、なんだ!?」

『みんな、聞こえてる!?』

 

揺れと同時に、アイネから通信が入った。

 

『今、エース君の仲間から報告もらったんだけど……古城を囲んでる池の中から、変なものが出てきたって……!』

「変なもの……?」

「お、おい!なんだありゃ!?」

 

アイネからの通信を聞き、カイザはダンスホールの窓から外を見ていた。窓の外から見えるのは、池の中から姿を現す巨大な柱だった。

 

「なんだよあの柱……!?」

 

その柱は半透明になっていて、まるで水槽のようだった。その水槽は池の水を全て吸い上げ、中に入れてしまった。

 

「何故池の水を……!?」

「フハハハハハッ!ネオプラーナさ!会社から持ってきたネオプラーナを、この池に全てぶち込んだからな!!」

「なにっ!?」

「……バカかテメェ?そんなの、ネオプラーナが薄くなるだけじゃねーか!」

 

グレアの突拍子もない言葉と行動に、ロイド達の頭に疑問が浮かんだ。

カイザの言う通り、池にネオプラーナを蒔けば薄くなってしまう。ジュースが溶けた氷で味が薄くなるのと同じ原理だ。

しかし、グレアは笑った。

 

「お前達はまだネオプラーナの特性を理解していない……簡単な問題を出そう。ミルクティーにミルクを入れたら、どうなるかな?」

「……っ!まさか……!」

 

ロイドは即座にグレアの問いかけの意味に気がついた。

ミルクティーにミルクを入れても、ミルクティーに変わりはない。ネオプラーナにも同じことが言える。ネオプラーナに水を入れたとしても、ネオプラーナに変わりはない……ここから言える、グレアの言うネオプラーナの特性は……

 

「そうだ!ネオプラーナは他の液体をネオプラーナにする特性がある!池の水は全てネオプラーナに変わっている……そしてその量は……推定10万リットルのネオプラーナだ!!」

 

その途方もない量を聞き、言葉が出なかった。その時だった。アーニャを拘束している装置が動き始めた。

 

《……アギト、及び超能力者を確認。装着者との精神リンクを開始……》

 

装置から音声が流れると、アーニャの頭に取り付けられた管がたくさんついたヘルメットが青く光り始めた。

それと同時刻、古城の最上階でも……

 

《ネオプラーナ注入開始》

 

床の下から穴が開き、その中からチューブが伸び、両腕、両肩、両脚についた筒状のアダプターに挿入された。すると、そのチューブからネオプラーナがG4に流れ込んでいく。

 

「な、なにが起きてる……?」

 

その瞬間、G4の目が青く発光した。同じく、G4の身体中に青く光るラインが走った。

 

「……これでお前達とお揃いだ。俺は俺のやり方で世界平和を目指す……この新たなG4で……」

 

「G4システム、ESPシステム、そしてネオプラーナ!3つの力が合わさった究極の戦略兵器……!それが、それこそが!!」

 

『国家殲滅用戦略強化外骨格”仮面ライダーG4-X”』

 

ダンスホールにいるクリスの声と、最上階にいるウォルターの声が重なった。

仮面ライダーG4-X……それは、ユーリが今まで出会った中で、最大の敵だった……

ユーリは味わうことになる。究極のG4の力というものを……

 

 




おまけ「やってみたいこと」

「おっ?ロイド君、今日は服装なんか違うな。」
「ん……あぁ、いつもの服はちょっとくたびれてしまってな。新しく作ってるんだ。これは代わりの服だ。」

この日、ロイドはいつもの服装ではなく、ワイシャツにサスペンダーのついたジーンズを履いていた。

「へぇ……サスペンダーか……」
「なんでサスペンダー触ってんだ、お前。」

フリッドは何故かロイドのサスペンダーに触れ、グイグイ伸ばしていた。

「なぁ、ちょっとサスペンダー限界まで伸ばして、ロイド君のチ◯ビにバッチーン!ってやっていい?一回やってみたかったんだ。」
「やったら今度はお前のチ◯ビを渾身の力でつねるぞ?」
「ごめんなさい。」

その後、ロイドがサスペンダーをつけることは二度となかったのだとか……

(い、言えません……!私もサスペンダー引っ張ってみたかったなんて……!)

ヨルも密かに引っ張りたいと思っていたらしい……

────────────────────

サスペンダーって引っ張りたくなりませんか?ならない?

G4-Xは「HERO SAGA」という作品で実際に存在します。今作に登場するのは名前だけ一緒のオリジナルになります。
スペックや容姿の細かい詳細などはまた次回に……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。