SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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今回も前回のギルス回同様、前後編構成です。
ちょっと文章量多くなったので、戦闘は後編になりました。



第12話「強くなりたい 前編」

 

「じゃあ、ダミアンさんはもう大丈夫なんですね!」

「はい!」

「じなん、ちゃんとがっこうきてた!」

 

翔一とアーニャはダミアンが無事に退院し、学校に登校したことをヨルに伝えていた。

 

それを横目に、ロイドは考え事をしていた。それは、フリッドに仕掛けていた盗聴器のことだった。

 

(盗聴器に記録されていたのは、奴の掛け声と「変身」の一言、それに・・・野獣のような唸り声・・・)

 

ロイドはフリッドがギルスだということを知らなかった。盗聴器から聞こえた唸り声と、前に聞いたアギトの掛け声を比べると違うということがわかった。

 

(アギトは二人いるのか?だとすると、フリッド・リードはアギト・・・?)

 

ロイドは頭の中で考えを巡らせたが、やはり答えは出ない。そんな時、

 

「ボフッ!」

 

フォージャー家のペットであるボンドがロイドに向かって吠えた。その口には新聞が咥えられていた。

 

「どうした?ボンド。新聞になにかあったか?」

 

ロイドはボンドに問いながら新聞を受け取った。

 

「……あっ!?」

 

新聞の記事を見て、ロイドは声を上げた。

ロイドの声に、他の3人は顔を向けた。

 

「どうしたんですか?」

「こ、これを見てくれ!」

 

ロイドは新聞の記事を3人に見せた。新聞の一面に、青い装甲を身に纏った戦士、G3の姿が掲載されていた。

見出しには「保安局が開発したG3システム、アンノウンと激闘!」と書かれていた。

 

「えーっと、『保安局は正式に対アンノウン用の強化スーツ"G3"の存在を公表した。未確認生命体対策班と全世界の科学力が総決算されたG3に今後の活躍が期待される。』……」

 

翔一は新聞記事の一文を読み上げた。

 

(まさか保安局が動くとはな……しかも、その装着者というのが……)

「あれ?『なお、G3の装着者はユーリ・ブライア。今後が期待される若き保安局員である。』……」

「え?」

 

翔一は再び記事の一文を読み上げると、真っ先にヨルが声を上げた。同時にロイドは冷や汗を掻いた。

 

「ユーリ?ユーリが・・・・保安局員・・・・?」

 

ヨルは目を点にして固まった……と思いきや、

 

「あ・・・あばばばばばば・・・・・」

 

声を上げてその場から泡を吹いて倒れてしまった。

 

「は、ははーっ!!?」

「ヨ、ヨルさん泡吹いてる!!」

「白目も向いてる!!は、早くベッドに寝かせて!!」

 

────────────────────────

 

「な、なんで僕に黙ってこんなこと公表するんですかー-っ!!?」

 

そのころ、ユーリは対策班本部でアイネに向かって叫んでいた。この新聞の公表はユーリも知らなかったのだ。

対し、ユーリの叫びに耳を塞いでいたアイネはため息をついた。

 

「私に言わないでよ。上層部が勝手に言っちゃったのよ!市民には分かりやすい希望が必要だって。それに、保安局の名も上がるからって。」

「まぁ、アギトはいるけどアギトもアンノウンの可能性あるしな。」

 

そう言ったリョーマは呑気にパズルを組んで遊んでいた。そこにユーリの平手が飛び、パズルを吹っ飛ばした。

 

「アギトさんがアンノウンのはずありません!そんなことより、これが姉さんに知れたら……!!」

 

ユーリは自分が保安局で働いていることをヨルに隠していた。保安局は何かと汚れ仕事が多いため、姉に心配をかけてしまうと思い、表向きは外交官と嘘をついていた。

 

その時、対策班本部の電話が鳴り響いき、近くのリョーマが受話器を手に取った。

 

「はい、対策班本部。・・・ああ、ちょい待って。ユーリ、事務からお前にだって。」

「はぁ?誰ですかこんな時に……」

「お姉さんからだって。」

 

そのリョーマの一言を聞いた瞬間、ユーリは一気に滝のような汗を掻いた。いつもなら喜ぶところだが、今回ばかりは状況が違う。

おそるおそる、震える手で受話器を受け取った。

 

「も、もしもし……?」

『ユーリ?』

 

聞こえてきたのはヨルのことだった。声色は優しかったが、それが逆に怖く感じてしまう。

 

「姉さん?も、もしかして新聞を……?」

 

ユーリはいつもより高い声でヨルに問いかけた。

しかし、ヨルは質問に答えず、話を続けた。

 

『明日、私の家に来なさい?その日は私も有給取るから。』

「えっ?で、でも、僕も仕事が……」

『き・な・さ・い?』

「はい……」

 

ヨルの有無を言わさぬ声のトーンに、ユーリはただ返事をするしかなかった。

そして、ガチャッと通話で切れる音が鳴り響き、ユーリは受話器を持ったまま立ち尽くした。

 

「僕、人生終わったかも・・・・」

 

 

────────────────────────

 

翌日、

 

「お、お邪魔しまーす……」

 

ユーリはフォージャー家に訪れた。アイネとリョーマも一緒に来ていた。

 

「いらっしゃい、ユーリ!」

「い、いらっしゃい……」

「お、おじ、ひさびさ……」

「ど、どーも……」

 

ユーリ達の来訪に、ヨルはニコニコ笑って出迎えたが、他の3人は苦笑いを浮かべていた。

その様子に、ユーリはますます不安がこみ上げた。

 

(み、みんなビビってる……!やっぱり姉さん怒ってるんだ……!!)

「さっ、どうぞ座って?」

 

ヨルは笑いながら来訪した3人をソファーに座るよう促した。

 

「翔一さん、お茶を。」

「は、はーい……」

 

翔一はいつものにこやかな雰囲気を出す余裕もなく、ヨルに従って紅茶を客人に出した。

そしてヨルはロイドとともにユーリ達の向かいのソファに座った。

 

「あ、あの、ヨルさん……俺ここにいない方がいいんじゃ……?」

「いいえ、いてください?抑え役がいないと困るので。」

(抑え役!?何のっ!?)

 

ヨルの一言に戸惑いながら、ロイドはただウンと頷いた。

 

「ア、アーニャ、へやにいる……」

 

アーニャはこの空気に耐えられず、自分の部屋へ逃げようとした。

 

「そうですね、アーニャさんは部屋にいた方がいいですね。私のちょっと怖い部分が出るかもしれないので。」

(ちょっと!?)

 

アーニャもまたヨルの一言に戸惑いながら、そそくさと自室へ逃げた。

 

「じゃ、じゃあ俺、アーニャちゃんと遊んでますから!」

 

翔一はそう言って、アーニャと一緒に部屋へ逃げた。

 

「え、えーっと……ね、姉さんは会うの初めてだよね?この二人は僕の上司で……」

「未確認生命体対策班班長、アイネ・スミスです!G3の開発者でもあります。」

「俺はリョーマ・シンです!G3の整備と火器の手入れを担当してます。」

 

アイネとリョーマは軽く自己紹介をした。

 

「……ユーリの姉のヨル・フォージャーです。」

「お、夫のロイドです……」

 

ヨルとロイドも自己紹介をした。

そこからしばらく沈黙が続き、シン…と空気が静まり返った。

すると、ヨルはフッとため息をついた。

 

「……ユーリ、なんで隠してたの?」

 

ヨルはさっそくユーリに問いかけた。しかし、その話し方と顔つきからは怒気を感じず、むしろ心配しているような表情だった。

 

(あ、あれ?怒ってない……?)

 

ヨルの態度に拍子抜けしながら、ユーリはゆっくり答え始めた。

 

「だ、だって、保安局はただでさえ汚れ仕事が多いから……言ったら、姉さんに心配かけると思って……」

「でも、一言ぐらい言ってもよかったでしょ?」

 

その一言にユーリは何も言えなかった。何も言えず、その場で頭を下げた。

 

「……ごめん。ごめんよ姉さん……」

「反省してる?」

「してる……」

「そう、わかった……」

 

ヨルのその一言に、ユーリはパアッと笑顔を浮かべ、頭を上げた。許してくれたと思ったのだ。

しかし……

 

「もう保安局を辞めて。」

「え……?」

 

姉からの衝撃的な一言に、ユーリは困惑した。さっきまでの態度と違い、ヨルは明らかに怒気を感じさせた。

 

「私は許しませんよユーリ……!保安局で働いているだけだったらまだしも、G3なんてもの着てアンノウンと戦ってるなんて!」

 

ヨルはギリギリと拳を握りしめ、アイネの方に目を向け、睨み始めた。

 

「どうしてユーリが戦わなければいけないんですか!?弟が命を懸けた戦いに身を投じるなんて……私は許しません!アンノウンの相手なら、アギトに任せればいいじゃないですか!!」

 

ヨルは思わず声を荒げた。そんなヨルに対し、アイネは冷静に対応をした。

 

「……お言葉ですが、現時点でアギトが人類の味方とは断定できません。」

「それでも!わざわざユーリが戦う必要なんてないじゃないですか!他の人にG3を託せばいいじゃないですか!!」

 

しかし、ヨルも引かなかった。だが、それはアイネも同じだった。

 

「申し訳ありません。今のところ、G3にふさわしい装着員は、ユーリ君しかいません。」

「……ッ!!」

 

アイネの一言に、ヨルは目をカッと開き、思わず足を振り上げそうになった。

それを察知したロイドは止めにかかった。しかしその時、

 

「姉さんっ!!」

 

ユーリは声を上げた。その一声にヨルは動きを止めた。

 

「もう……僕は守られてばかりの子どもじゃないんだ!!僕はずっと姉さんに守られてきた……だから、今度は僕が姉さんを守るんだって、心に決めた!保安局に入ったのだって、姉さんを守るためだ!!そして、G3の装着者に選ばれて……僕は、やっと力を手に入れたと思った!姉さんを守れる力が……!!」

 

ユーリはそう言って自分の手を見つめ、ギュっと握りしめた。

 

「だから……僕からG3を取らないでよ、姉さんッ!!お願いだから……!!」

 

ユーリは深々と頭を下げ、ヨルに許しを乞う。

すると、

 

「・・・・わかったわ、ユーリ。」

 

ヨルは微笑み、ユーリの頭を撫でた。

 

「姉さん……」

「あなたの気持ち、よくわかったわ。話してくれてありがとう。」

 

ヨルは慰めるようにユーリの頭を撫で続ける。そんな姉に、ユーリは泣きそうになった。

しかし、ヨルはすぐさまアイネの前に立ち……拳を勢いよく突き出した。

 

「姉さん!?」

「ヨルさん!!」

 

しかし、その拳はアイネの眼前で止まった。

 

「……もし、ユーリが死ぬようなことがあったら、私はあなたを殴ります。」

 

ヨルは拳を突き出したままアイネを睨みつけ、さらに拳を握った。

 

「一発だけでは終わりません。何度も何度もあなたの顔面にに拳を食らわせます。あなたの顔がぐちゃぐちゃになっても終わりません!歯がボロボロになろうと、頭蓋骨が砕けようと、原型がなくなろうと、私はあなたを殴り殺す!!ユーリを戦いに行かせるというのは、そういうことです!!」

 

ヨルはアイネの前で啖呵を切った。本当は許せるわけがなかった。弟を戦いに行かせたくなかった。

しかし、ユーリの意思を尊重したいと思った。姉を守ろうとする弟の意思を、無下にしたくなかった。

これはその覚悟の現れだった。

 

「……わかりました。」

 

そんなヨルに、アイネは冷や汗ひとつ掻かず答えた。

 

「お姉さんの覚悟、受け取りました。もし、弟さんに何かあれば、迷わず私を殺してください。」

「アイネさん……!!」

 

アイネも同様に啖呵を切った。

 

「……そろそろ失礼します。またいつアンノウンが現れるか分からないので。」

「……わかりました。」

 

ユーリ達はそそくさと帰り支度をし、そのままロイド達に一礼し、家から出て行った。

 

「……もういいですよ、ヨルさん。」

 

ロイドの一言とともに、ヨルはその場にへたり込んだ。

 

「はは……」

「ヨルさん……」

 

同時に、アーニャと翔一も部屋から出てきた。

ヨルはへたり込んだまま俯いていた。俯いて見えなかったが、その目は今すぐにでも泣きそうなくらい潤んでおり、口も声を出すまいと結んでいた。

そんなヨルを見て、3人はヨルを包むように抱きしめた。

 

「頑張りましたね、ヨルさん。」

「はは、ガマンできてえらい!」

「ドア越しに聞いてましたけど、かっこよかったです!」

 

その瞬間、ヨルは泣き出した。今まで我慢していたものが吹き出したように、声を上げて子どものように泣いた。

本当は力づくでも止めたいと思った。だが、ユーリの成長を止めなくなかった。それが姉である自分ができることだと思ったのだ。

 

────────────────────────

 

「はーっ、あのお姉さんにはビビったわ。」

 

対策班の3人は帰りの車の中で先ほどのことを話していた。

 

「ははっ、やっぱビビってたのか。」

「まぁね。」

 

アイネとリョーマが話す中、ユーリは後部座席でずっと俯いていた。

 

「……ユーリ、大丈夫か?」

「大丈夫です……」

 

リョーマの気遣いの一言に、ユーリは小さい声で呟いた。

そんなユーリに、アイネは静かに言い渡した。

 

「ユーリ君、いいお姉さんを持ったわね。弟のために人を殺す覚悟でいるなんて……そんな姉いないわよ?私、気に入ったわ。」

「ありがとうございます……!」

 

ユーリは姉を褒めてくれたアイネに礼を言った。しかし、その声は今にも泣きそうだった。

そんなユーリを見かね、リョーマはアイネに続くように言った。

 

「……たまには思い切り泣いてもいいんじゃないか?」

「え……?」

「これは誰が言ったか知らねえけど……『男は何度か泣いて、本当の男になる』ってな。」

 

リョーマは誰かが言ったであろう格言を口にした。それを聞いた瞬間、ユーリは目から大量の涙を流した。しかし、声だけは出すまいと歯を食いしばった。

 

(姉さん……!!本当にごめん……!!でも、僕、強くなるから……!!)

 

そしてユーリは誓った。誰よりも強くなって、大事な姉を守るため、そして自分自身を越えるために……

 

 

 

 




まだ原作でも身バレしてないのに、ユーリの職業バラしちゃいました……原作ファンの皆様、本当にすいません。


以下、アイネとリョーマの簡単なプロフィールです。

────────────────────────

アイネ・スミス

職業:保安局・未確認生命体対策班班長
年齢:25歳
身長:168cm
体重:秘密
趣味・特技:発明
好きなもの:鉄板焼き、酒
嫌いなもの:プライドの高い男
特徴:長めの栗色の髪、眼鏡をかけている、物怖じしない性格


リョーマ・シン

職業:整備士→保安局・未確認生命体対策班整備士
年齢:25歳
身長:175cm
体重:70kg
趣味・特技:人間観察、パズル
好きなもの:人間
嫌いなもの:人間
特徴:長めのオレンジ色に近い茶髪(ポニーテールにしている)、気のいい性格、羽尾明(仮面ライダーアギトで謎の青年(テオス)を演じた俳優さん)に似ている

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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