今回も前回のギルス回同様、前後編構成です。
ちょっと文章量多くなったので、戦闘は後編になりました。
「じゃあ、ダミアンさんはもう大丈夫なんですね!」
「はい!」
「じなん、ちゃんとがっこうきてた!」
翔一とアーニャはダミアンが無事に退院し、学校に登校したことをヨルに伝えていた。
それを横目に、ロイドは考え事をしていた。それは、フリッドに仕掛けていた盗聴器のことだった。
(盗聴器に記録されていたのは、奴の掛け声と「変身」の一言、それに・・・野獣のような唸り声・・・)
ロイドはフリッドがギルスだということを知らなかった。盗聴器から聞こえた唸り声と、前に聞いたアギトの掛け声を比べると違うということがわかった。
(アギトは二人いるのか?だとすると、フリッド・リードはアギト・・・?)
ロイドは頭の中で考えを巡らせたが、やはり答えは出ない。そんな時、
「ボフッ!」
フォージャー家のペットであるボンドがロイドに向かって吠えた。その口には新聞が咥えられていた。
「どうした?ボンド。新聞になにかあったか?」
ロイドはボンドに問いながら新聞を受け取った。
「……あっ!?」
新聞の記事を見て、ロイドは声を上げた。
ロイドの声に、他の3人は顔を向けた。
「どうしたんですか?」
「こ、これを見てくれ!」
ロイドは新聞の記事を3人に見せた。新聞の一面に、青い装甲を身に纏った戦士、G3の姿が掲載されていた。
見出しには「保安局が開発したG3システム、アンノウンと激闘!」と書かれていた。
「えーっと、『保安局は正式に対アンノウン用の強化スーツ"G3"の存在を公表した。未確認生命体対策班と全世界の科学力が総決算されたG3に今後の活躍が期待される。』……」
翔一は新聞記事の一文を読み上げた。
(まさか保安局が動くとはな……しかも、その装着者というのが……)
「あれ?『なお、G3の装着者はユーリ・ブライア。今後が期待される若き保安局員である。』……」
「え?」
翔一は再び記事の一文を読み上げると、真っ先にヨルが声を上げた。同時にロイドは冷や汗を掻いた。
「ユーリ?ユーリが・・・・保安局員・・・・?」
ヨルは目を点にして固まった……と思いきや、
「あ・・・あばばばばばば・・・・・」
声を上げてその場から泡を吹いて倒れてしまった。
「は、ははーっ!!?」
「ヨ、ヨルさん泡吹いてる!!」
「白目も向いてる!!は、早くベッドに寝かせて!!」
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「な、なんで僕に黙ってこんなこと公表するんですかー-っ!!?」
そのころ、ユーリは対策班本部でアイネに向かって叫んでいた。この新聞の公表はユーリも知らなかったのだ。
対し、ユーリの叫びに耳を塞いでいたアイネはため息をついた。
「私に言わないでよ。上層部が勝手に言っちゃったのよ!市民には分かりやすい希望が必要だって。それに、保安局の名も上がるからって。」
「まぁ、アギトはいるけどアギトもアンノウンの可能性あるしな。」
そう言ったリョーマは呑気にパズルを組んで遊んでいた。そこにユーリの平手が飛び、パズルを吹っ飛ばした。
「アギトさんがアンノウンのはずありません!そんなことより、これが姉さんに知れたら……!!」
ユーリは自分が保安局で働いていることをヨルに隠していた。保安局は何かと汚れ仕事が多いため、姉に心配をかけてしまうと思い、表向きは外交官と嘘をついていた。
その時、対策班本部の電話が鳴り響いき、近くのリョーマが受話器を手に取った。
「はい、対策班本部。・・・ああ、ちょい待って。ユーリ、事務からお前にだって。」
「はぁ?誰ですかこんな時に……」
「お姉さんからだって。」
そのリョーマの一言を聞いた瞬間、ユーリは一気に滝のような汗を掻いた。いつもなら喜ぶところだが、今回ばかりは状況が違う。
おそるおそる、震える手で受話器を受け取った。
「も、もしもし……?」
『ユーリ?』
聞こえてきたのはヨルのことだった。声色は優しかったが、それが逆に怖く感じてしまう。
「姉さん?も、もしかして新聞を……?」
ユーリはいつもより高い声でヨルに問いかけた。
しかし、ヨルは質問に答えず、話を続けた。
『明日、私の家に来なさい?その日は私も有給取るから。』
「えっ?で、でも、僕も仕事が……」
『き・な・さ・い?』
「はい……」
ヨルの有無を言わさぬ声のトーンに、ユーリはただ返事をするしかなかった。
そして、ガチャッと通話で切れる音が鳴り響き、ユーリは受話器を持ったまま立ち尽くした。
「僕、人生終わったかも・・・・」
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翌日、
「お、お邪魔しまーす……」
ユーリはフォージャー家に訪れた。アイネとリョーマも一緒に来ていた。
「いらっしゃい、ユーリ!」
「い、いらっしゃい……」
「お、おじ、ひさびさ……」
「ど、どーも……」
ユーリ達の来訪に、ヨルはニコニコ笑って出迎えたが、他の3人は苦笑いを浮かべていた。
その様子に、ユーリはますます不安がこみ上げた。
(み、みんなビビってる……!やっぱり姉さん怒ってるんだ……!!)
「さっ、どうぞ座って?」
ヨルは笑いながら来訪した3人をソファーに座るよう促した。
「翔一さん、お茶を。」
「は、はーい……」
翔一はいつものにこやかな雰囲気を出す余裕もなく、ヨルに従って紅茶を客人に出した。
そしてヨルはロイドとともにユーリ達の向かいのソファに座った。
「あ、あの、ヨルさん……俺ここにいない方がいいんじゃ……?」
「いいえ、いてください?抑え役がいないと困るので。」
(抑え役!?何のっ!?)
ヨルの一言に戸惑いながら、ロイドはただウンと頷いた。
「ア、アーニャ、へやにいる……」
アーニャはこの空気に耐えられず、自分の部屋へ逃げようとした。
「そうですね、アーニャさんは部屋にいた方がいいですね。私のちょっと怖い部分が出るかもしれないので。」
(ちょっと!?)
アーニャもまたヨルの一言に戸惑いながら、そそくさと自室へ逃げた。
「じゃ、じゃあ俺、アーニャちゃんと遊んでますから!」
翔一はそう言って、アーニャと一緒に部屋へ逃げた。
「え、えーっと……ね、姉さんは会うの初めてだよね?この二人は僕の上司で……」
「未確認生命体対策班班長、アイネ・スミスです!G3の開発者でもあります。」
「俺はリョーマ・シンです!G3の整備と火器の手入れを担当してます。」
アイネとリョーマは軽く自己紹介をした。
「……ユーリの姉のヨル・フォージャーです。」
「お、夫のロイドです……」
ヨルとロイドも自己紹介をした。
そこからしばらく沈黙が続き、シン…と空気が静まり返った。
すると、ヨルはフッとため息をついた。
「……ユーリ、なんで隠してたの?」
ヨルはさっそくユーリに問いかけた。しかし、その話し方と顔つきからは怒気を感じず、むしろ心配しているような表情だった。
(あ、あれ?怒ってない……?)
ヨルの態度に拍子抜けしながら、ユーリはゆっくり答え始めた。
「だ、だって、保安局はただでさえ汚れ仕事が多いから……言ったら、姉さんに心配かけると思って……」
「でも、一言ぐらい言ってもよかったでしょ?」
その一言にユーリは何も言えなかった。何も言えず、その場で頭を下げた。
「……ごめん。ごめんよ姉さん……」
「反省してる?」
「してる……」
「そう、わかった……」
ヨルのその一言に、ユーリはパアッと笑顔を浮かべ、頭を上げた。許してくれたと思ったのだ。
しかし……
「もう保安局を辞めて。」
「え……?」
姉からの衝撃的な一言に、ユーリは困惑した。さっきまでの態度と違い、ヨルは明らかに怒気を感じさせた。
「私は許しませんよユーリ……!保安局で働いているだけだったらまだしも、G3なんてもの着てアンノウンと戦ってるなんて!」
ヨルはギリギリと拳を握りしめ、アイネの方に目を向け、睨み始めた。
「どうしてユーリが戦わなければいけないんですか!?弟が命を懸けた戦いに身を投じるなんて……私は許しません!アンノウンの相手なら、アギトに任せればいいじゃないですか!!」
ヨルは思わず声を荒げた。そんなヨルに対し、アイネは冷静に対応をした。
「……お言葉ですが、現時点でアギトが人類の味方とは断定できません。」
「それでも!わざわざユーリが戦う必要なんてないじゃないですか!他の人にG3を託せばいいじゃないですか!!」
しかし、ヨルも引かなかった。だが、それはアイネも同じだった。
「申し訳ありません。今のところ、G3にふさわしい装着員は、ユーリ君しかいません。」
「……ッ!!」
アイネの一言に、ヨルは目をカッと開き、思わず足を振り上げそうになった。
それを察知したロイドは止めにかかった。しかしその時、
「姉さんっ!!」
ユーリは声を上げた。その一声にヨルは動きを止めた。
「もう……僕は守られてばかりの子どもじゃないんだ!!僕はずっと姉さんに守られてきた……だから、今度は僕が姉さんを守るんだって、心に決めた!保安局に入ったのだって、姉さんを守るためだ!!そして、G3の装着者に選ばれて……僕は、やっと力を手に入れたと思った!姉さんを守れる力が……!!」
ユーリはそう言って自分の手を見つめ、ギュっと握りしめた。
「だから……僕からG3を取らないでよ、姉さんッ!!お願いだから……!!」
ユーリは深々と頭を下げ、ヨルに許しを乞う。
すると、
「・・・・わかったわ、ユーリ。」
ヨルは微笑み、ユーリの頭を撫でた。
「姉さん……」
「あなたの気持ち、よくわかったわ。話してくれてありがとう。」
ヨルは慰めるようにユーリの頭を撫で続ける。そんな姉に、ユーリは泣きそうになった。
しかし、ヨルはすぐさまアイネの前に立ち……拳を勢いよく突き出した。
「姉さん!?」
「ヨルさん!!」
しかし、その拳はアイネの眼前で止まった。
「……もし、ユーリが死ぬようなことがあったら、私はあなたを殴ります。」
ヨルは拳を突き出したままアイネを睨みつけ、さらに拳を握った。
「一発だけでは終わりません。何度も何度もあなたの顔面にに拳を食らわせます。あなたの顔がぐちゃぐちゃになっても終わりません!歯がボロボロになろうと、頭蓋骨が砕けようと、原型がなくなろうと、私はあなたを殴り殺す!!ユーリを戦いに行かせるというのは、そういうことです!!」
ヨルはアイネの前で啖呵を切った。本当は許せるわけがなかった。弟を戦いに行かせたくなかった。
しかし、ユーリの意思を尊重したいと思った。姉を守ろうとする弟の意思を、無下にしたくなかった。
これはその覚悟の現れだった。
「……わかりました。」
そんなヨルに、アイネは冷や汗ひとつ掻かず答えた。
「お姉さんの覚悟、受け取りました。もし、弟さんに何かあれば、迷わず私を殺してください。」
「アイネさん……!!」
アイネも同様に啖呵を切った。
「……そろそろ失礼します。またいつアンノウンが現れるか分からないので。」
「……わかりました。」
ユーリ達はそそくさと帰り支度をし、そのままロイド達に一礼し、家から出て行った。
「……もういいですよ、ヨルさん。」
ロイドの一言とともに、ヨルはその場にへたり込んだ。
「はは……」
「ヨルさん……」
同時に、アーニャと翔一も部屋から出てきた。
ヨルはへたり込んだまま俯いていた。俯いて見えなかったが、その目は今すぐにでも泣きそうなくらい潤んでおり、口も声を出すまいと結んでいた。
そんなヨルを見て、3人はヨルを包むように抱きしめた。
「頑張りましたね、ヨルさん。」
「はは、ガマンできてえらい!」
「ドア越しに聞いてましたけど、かっこよかったです!」
その瞬間、ヨルは泣き出した。今まで我慢していたものが吹き出したように、声を上げて子どものように泣いた。
本当は力づくでも止めたいと思った。だが、ユーリの成長を止めなくなかった。それが姉である自分ができることだと思ったのだ。
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「はーっ、あのお姉さんにはビビったわ。」
対策班の3人は帰りの車の中で先ほどのことを話していた。
「ははっ、やっぱビビってたのか。」
「まぁね。」
アイネとリョーマが話す中、ユーリは後部座席でずっと俯いていた。
「……ユーリ、大丈夫か?」
「大丈夫です……」
リョーマの気遣いの一言に、ユーリは小さい声で呟いた。
そんなユーリに、アイネは静かに言い渡した。
「ユーリ君、いいお姉さんを持ったわね。弟のために人を殺す覚悟でいるなんて……そんな姉いないわよ?私、気に入ったわ。」
「ありがとうございます……!」
ユーリは姉を褒めてくれたアイネに礼を言った。しかし、その声は今にも泣きそうだった。
そんなユーリを見かね、リョーマはアイネに続くように言った。
「……たまには思い切り泣いてもいいんじゃないか?」
「え……?」
「これは誰が言ったか知らねえけど……『男は何度か泣いて、本当の男になる』ってな。」
リョーマは誰かが言ったであろう格言を口にした。それを聞いた瞬間、ユーリは目から大量の涙を流した。しかし、声だけは出すまいと歯を食いしばった。
(姉さん……!!本当にごめん……!!でも、僕、強くなるから……!!)
そしてユーリは誓った。誰よりも強くなって、大事な姉を守るため、そして自分自身を越えるために……
まだ原作でも身バレしてないのに、ユーリの職業バラしちゃいました……原作ファンの皆様、本当にすいません。
以下、アイネとリョーマの簡単なプロフィールです。
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アイネ・スミス
職業:保安局・未確認生命体対策班班長
年齢:25歳
身長:168cm
体重:秘密
趣味・特技:発明
好きなもの:鉄板焼き、酒
嫌いなもの:プライドの高い男
特徴:長めの栗色の髪、眼鏡をかけている、物怖じしない性格
リョーマ・シン
職業:整備士→保安局・未確認生命体対策班整備士
年齢:25歳
身長:175cm
体重:70kg
趣味・特技:人間観察、パズル
好きなもの:人間
嫌いなもの:人間
特徴:長めのオレンジ色に近い茶髪(ポニーテールにしている)、気のいい性格、羽尾明(仮面ライダーアギトで謎の青年(テオス)を演じた俳優さん)に似ている
作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します
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アギト編(翔一+フォージャー一家)
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G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
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ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)