フータロスのおかげで辛くも危機を脱したロイド達……喫茶シオンの地下室へ戻ったが、静寂に包まれていた。
それも仕方のないことだった。ソラの正体が、ロイドとヨルの息子、シエルの未来の姿だと知ってしまったのだから。
「……お前、知ってんだろ?」
最初に口火を切ったのはグリムだった。グリムは声を低くしてフータロスに尋ねた。フータロスはさきほどのやり取りを見る限り親しげに見えた。
「どうなんだよ!?てめぇ、いつからアイツのこと知ってんだ!!」
「落ち着けって!」
掴みかかってきたグリムの手を振り払い、フータロスはフーッとため息を吐いた。
「……いいか、落ち着いて聞けよ?今から10年後……お前らがこの国……いや、世界中が崩壊してる。」
「は……!?」
フータロスの言葉に皆は驚いた。それに構わず、フータロスは構わず続けた。
「崩壊の原因は、さっきお前らも見たショッカーの大首領……ビッグマシン。奴が赤ん坊の頃のシエル……この時代のシエルを利用して、世界を手中に納めた。」
「ちょっと待ってください!どうしてシエルちゃんが……!?」
「それは……」
ヨルからの質問に答えようとしたフータロスだったが、その時……
「そこから先は、私が話そう。」
どこからともなく低い男の声が聞こえてきたかと思うと、部屋の景色が、空間が歪み始めた。
「な、なんだ!?」
「部屋が……!!」
だんだんと部屋の景色が変わり、テーブルやソファがあった部屋が、草木も生えない荒野に変化してしまった。
その奥にある禍々しくも神々しい玉座に、ライダーと思われる金色と黒の鎧を纏った赤い目の戦士がいた。
アーニャは夢の中で、その戦士に見覚えがあった。
「だ、誰だ!お前は!?」
「私は王の中の王……オーマジオウ。」
オーマジオウ……そう名乗った男が現れた瞬間、ロイド達は一斉に背筋が凍るのを感じた。
ひと目見ただけで、一声聞いただけで、その気配に気づいただけで、目の前にいる男は只者ではないと感じ取ることができた。
「お、王様……?王様が何の用だ?」
「この世界に危機が迫っている。」
「あなたは何か知ってるんですか!?」
「語る前に……まずはこれを見ろ。」
オーマジオウは手を上の方へかざした。すると、景色が暗くなり、上空には小さくなった青い地球が現れた。
「これはお前達が住む世界……いや、”元になった世界”というべきか。」
「元になった?」
疑問の声を上げると、今度は地球の隣にもう一つ地球が出現した。
「元々世界は一つだった。だが、ある現象をきっかけにもう一つの世界が出来上がり、パラレルワールドが誕生した。」
「ある現象って……?」
「時間が破壊される現象……タイムクラッシュだ。」
タイムクラッシュ……つい最近、この単語をどこかで聞いた気がしたことにロイド達は気付いた。しかもついさっきのことだった。
「あっ!」
その時、ユーリが声を上げた。
「さっきのバーコード頭がそんなこと言ってた気がする!」
ディケイド、ジオウと戦う前、変身者である士が「ここがタイムクラッシュの爆心地か」と言っていたことを思い出した。
その言った本人とソウゴは喫茶シオンに着いた時にはすでにいなくなっていた。
「そのタイムクラッシュってなんなんだ?」
「世界そのものの歴史に大きな影響を及ぼす出来事がきっかけで起こる、世界の分離現象……それが”タイムクラッシュ”だ。」
タイムクラッシュとは何か、その説明をしたオーマジオウだったが、肝心の皆は頭の中に「?」を浮かばせ、首を傾げていた。
『……………どういうこと?』
「………この世界も元々は一つだった。」
(無視したな……)
疑問を浮かべる皆を無視し、オーマジオウは話を続けた。
「さらに言えば、元の世界には仮面ライダーは存在しなかった。」
オーマジオウはそう言うと、今度は2つの地球の下に四角い枠を出し、その枠から映像が流れた。その映像には、アーニャの実の父親アベルがアギト・津上翔一とテオスと初めて出会った場面が映っていた。
「パパ……!」
「アベルのジジイ……!」
「仮面ライダーアギトはテオスとの戦いの影響でこの世界へ来た……だが、これが原因でこの世界は2つに分かれたが、この時はまだ分裂を止めることができた……だが……」
映像が切り替わった。今度はアーニャの実の母親、ソニアが倒れている場面だ。この映像は、この光景は覚えている。アーニャにとって忘れることのできない一幕……
アギトが母を殺したと勘違いした自分が、力を暴走させて研究所を焼け野原にしてしまった……忘れるはずもない。
「これが2度目のタイムクラッシュ……この事件がきっかけで、この世界は完全に2つに分かれてしまった。」
「……アーニャのせい……?」
「アーニャちゃんのせいじゃないよ!だってそんなの……仕方なかったじゃないか!」
映像とオーマジオウが語りを聞いて、世界が変になったのは自分が暴走したせいではないかと思い始めてしまったアーニャ。フリッドは頭に手を置き、必死に慰めた。
オーマジオウは構わず続け、新しい映像を流し始めた。
次に流れたのは、アギトと黒テオス……ミラージュアギトとの最終決戦の映像だった。最終決戦でアギトは世界中の人間達のアギトの力を吸収して進化した。その力で見事、神である黒テオスを倒した。
「この時、3度目のタイムクラッシュが起きた。その影響で仮面ライダーの世界との道が作られてしまった。」
「まさか……神さんやタクミくん……エースくんがこっちの世界に来たのは……」
「そうだ。この3度目のタイムクラッシュの影響だ。」
これで説明がついた。この世界に仮面ライダーが現れたのも、他の世界からも仮面ライダーが来たのも、タイムクラッシュの影響だった。
そして、タイムクラッシュを引き起こしたのは自分達……
「タイムクラッシュの影響はこれだけではない……アーニャ・フォージャー。」
オーマジオウはアーニャの方に顔を向け、静かに語りかける。
「この世界でのお前の両親はアベルとソニアということになっているが……元々の世界……私は”オリジン”と呼んでいるが、そのオリジンでは、お前の両親は別の人間だ。」
「えっ……!?」
アーニャは目を見開いた。それもそのはず、自分の両親だと思っていた2人が、元々の世界では違うと言われれば誰でも困惑するだろう。
アーニャの疑問を代弁するように、ロイドが声を上げた。
「ちょっと待て!どういうことなんだ!?」
「パラレルワールドは元の世界とは違う別世界。全てが同じというわけではない。東西戦争が起こらない世界線もあれば、お前達の両親が生きていた世界線もある。パラレルワールドとはそういうことだ。」
オーマジオウの言葉に反論しようとしたが、妙に納得してしまい、反論できなかった。オーマジオウは構わず話を続けた。
「そして今、4度目のタイムクラッシュが引き起こされようとしている。ショッカーの手によってな……」
「ショッカーは……何をするつもりなんだ?」
「ショッカーはタイムクラッシュを無理やり引き起こし、仮面ライダーをこの世界から消すつもりだ。」
仮面ライダーさえいなくなれば、この世界はショッカーのもの……なんともショッカーの連中が考えそうなことだ。しかし、納得できないことがある。
「待てよ、それがシエルが攫われたこととどう関係あるんだ?」
グリムの疑問はもっともだった。今までの話の中で、シエルと関係していることが見当たらない。その疑問に答えるようにオーマジオウが声を上げる。
「シエル・フォージャーは……”特異点”だ。」
「特異点?」
聞き慣れない単語に首を傾げると、オーマジオウに代わってフータロスが答えた。
「歴史改変の影響を受けない、特異体質の人間のことだ。たまーに生まれてくんだよ。」
「大首領はシエル少年をタイムクラッシュの余波を防ぐ盾として使うつもりなのだ。」
「盾」とオーマジオウは確かにそう言った。まさか文字通り盾にするとは思えないが……
「もしタイムクラッシュが起これば、大首領とてただではすまない。そこで大首領はシエル少年をバリア発生装置に繋げ、さらにギーツが持つ創生の力……ブーストMark.IXレイズバックルを合わせ、タイムクラッシュから身を守るバリア……『特異点バリア』を完成させようとしている。」
(センスのかけらもねぇ名前……)
思わず「マジメに考えてそれか?」と言いたくなるネーミングセンスだったが、今はそこには触れなかった。
「シエルちゃんをそんなことの為に利用するなんて……許せません!」
「報いを受けさせてやろう!」
「だが、どうやって救い出す……?」
意気込んだものの、シエルを助けるための術が思い浮かばず、頭を抱えた。その時、皆は一様にオーマジオウの方を見た。
「そうだ……そうだよ!アンタが手伝ってくれれば楽勝じゃん!」
オーマジオウがかなりの……否、最強とも言える雰囲気を出しているのは分かる。それこそ大首領を簡単に捻り潰せるほどには……
しかし、オーマジオウは首を横に振った。
「残念ながらそれはできん。確かに私ならばビッグマシンぐらいなら簡単に倒せる。だが、私の力は強すぎる……お前達の前にいるのは私の思念体だが、もし私の本体がこの世界に現れれば、その時点でタイムクラッシュが発生し、この世界そのものが崩壊する恐れがある。」
「マジかよ……」
「そう上手い話はないか……」
残念がる皆をよそに、オーマジオウは右手の人差し指を立てて見せた。
「この事態を回避できる方法はたった一つ……特異点であるシエル少年が、死ぬことだ。」
その瞬間、部屋の空気が冷たく静まり返った。全員息を呑んだ。それほど恐ろしい一言だった。
「まさか……!」
その時ロイドは、何故シエルが未来からわざわざやってきたのか、何故ソラという偽名を使っていたのか……その理由を理解してしまった。
「そうだ。シエルは自分で過去の自分を、赤ん坊の頃の自分を殺そうとしている。偽名を使ったのは、恨まれるのは自分だけでいいと思ったからだ。」
「そんな……!シエルちゃん……!!」
ヨルは思わずその場に崩れ、泣きじゃくった。他の皆も、うっかりすると泣いてしまいそうだった。皆、シエルの覚悟を知ったのだ。
最悪の結果を回避するにはシエルを殺さなければならない……だが、この時代のシエルは赤ん坊。誰も好き好んで赤ん坊を殺すことなどできない……だから、未来から来たシエルは過去の赤ん坊だった頃のシエルを殺すという、手の込んだ自殺をすることを覚悟した。
そして、偽名を使ったのは、皆にシエルがシエルを殺したという悲しい事実を知られないようにするため……あくまで、「ソラがシエルを殺した」という事実を印象付けるためだ。
「なんて子だ……10歳の子どもが考えつくことじゃないぞ……」
「さすがはロイド君とヨルさんの息子さんだ……」
「でも……でもよぉ……!こんなのあんまりじゃねぇか……!!」
仲間達の慟哭が聞こえる中、オーマジオウは玉座から立ち上がった。
「このままいけば、4度目のタイムクラッシュが起こるのは必然……後はお前達の選択次第だ。幼子を犠牲にして未来を得るか、全てを助けようと滅びの道を行くか……それとも、そのどちらでもない新しい道を選ぶか……懸命に選ぶがいい。」
玉座から立ち上がったオーマジオウは皆に背を向け、天を仰いだ。
「だが、振り返ってみるがいい。偽の家族関係から始まった、お前達の物語を。目に見えぬ心の繋がり……それが何を意味するのか……もしかすればそれが、最後の希望になるやもしれん。」
それを捨て台詞に、オーマジオウは消えてしまった。オーマジオウが消えると同時に部屋も元の光景に戻った。
部屋は静寂に包まれた。しばしの静寂の後、ロイドは静かに呟いた。
「……シエルを助ける。」
その呟きとともに、ロイドは本棚の後ろに隠されたスイッチを押した。すると、部屋の壁の一部がスライドし、隠し部屋が露わになった。その隠し部屋の中には、黒いスーツに赤い十字形のバイザーがついたマスクが2セット(一つは女性用)置かれていた。
「自分で自分を殺そうとする悪い子には……説教をしてやらないとな。」
「確かに……子どもがそんな覚悟させるわけにはな!」
フリッドの一言に続き、皆はうんと力強く頷いた。
すると、グリムは笑いながら宝太郎の肩を叩いた。
「よぉ、お前は来なくてもいいんだぜ?俺等とは無関係なんだからな。」
「そんなこと言わないでよ!俺……ソラ君……いや、シエル君と一緒にいたのに、なんの助けにもなれなかった!でも、今度こそあの子の助けになってみせるよ!!」
シエルを助けたいのは宝太郎も同じだった。宝太郎の言葉を聞き、ロイドはフッと微笑んだ。
「ありがとう、宝太郎君……」
「話は決まったようだな。」
その時、シルヴィアが声を上げた。
「シルヴィアさん!」
「そういえばアンタもいたな。」
「ああ、さっきから異次元的ことばかり起きて何も言えなかったんだ。」
不可思議な現象ばかりで物を言えなかったシルヴィアだったが、それがなくなり、ここぞとばかりに話し始めた。
「お前達に最終ミッションを与える。目的は2つ……一つはシエル・フォージャーの救出。もう一つはタイムクラッシュの阻止だ。だが、今はなんのヒントもなくて八方塞がりだ……」
「それなら心配ねぇ!」
その時、グリムは声を上げ、ポケットから1枚の紙切れを取り出した。
「それは?」
「ニコルから受け取った。あの時……ドサクサに紛れて渡してくれたんだ。」
メモには、こう書かれていた。
『明日、お前達に情報を渡す。俺を信じてくれ。』
たったそれだけだった。
「信じていいのか?あの人はお前を……」
「それでも、それでも俺はニコルを信じる!」
確かに先ほど、ニコルはグリムのことを攻撃した。しかしグリムは、自分の父を信じている。さっきのは敵を欺くための演技だと信じていた。
「どちらにしても、今は情報に乏しい。ニコルさんの情報を聞くしかなさそうだな。」
「よし、明日全員ここに集合だ。いいな?」
『了解!!』
──────────────────────
そのころ、
「ムゥン……ハッ!!」
ショッカーのアジトでは大首領ビッグマシンが目元の青いバイザーから光を放ち、目の前に3人分の光体が現れ、3体の怪人に変わった。
「ジェネラルシャドウ……」
「お呼びいただき光栄にございます。」
「カッシスワーム、」
「どんな敵も倒してみせましょう!」
「ウェザードーパント。」
「解剖ならお任せを……フフフッ……」
新たに召喚した怪人達の名を呼ぶと、怪人達はその場に膝まづいた。
「お前達の目的は単純だ……タイムクラッシュ成功の為の時間稼ぎだ。」
「それが大首領の望みなら……」
「従いましょう!」
「それから、クモオーグ!」
ビッグマシンが名を呼ぶと、クモオーグは音も無くビッグマシンの背後に現れた。
「貴様にも働いてもらうぞ。パラレルワールドのショッカーの記憶も取り込んだんだ……その価値を見せてもらうぞ。」
「もちろんです……ご期待に応えてみせましょう……」
「フフフッ……さぁっ!!」
その時、ビッグマシンの青いバイザーがカッと光ったかと思うと、黒いモヤのようなものが噴き出した。それは地面に落ちたかと思うと人型になり、無数の戦闘員達に変わった。
「計画の最終段階だ!!」
仮面ライダーとショッカー……最後の戦いが始まろうとしている……
最後に笑うのは、仮面ライダーか、ショッカーか……
おまけ「人気投票再び」
「ついに最終決戦が始まるのか……」
「ラストだってことが、いやでも思い知るな……」
フリッドとグリムはもうすぐ最終決戦が始まり、この物語が終わってしまうということをしみじみと感じていた。
すると、グリムは声を上げた。
「だったらよ……最後にもう一回やんないか?俺達オリキャラの人気投票を!!」
「やるか!」
と、その時……
「その話!」
「俺達も……」
「乗らせてもらうぜ!」
3人の男達が名乗りを上げた。その男は、グレン、ニコル、ウォルターとAfter Storiesで活躍した3名だ。
「オリキャラ総動員ってことか……やってやろうじゃねぇか!」
「やるか!第二回目の人気投票!」
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というわけで、2回目となるオリキャラ人気投票を行います。前回はフリッドとグリムだけでしたが、今回はグレンやニコルなども参戦!集計は6月半ば頃……だいたい最終回手前ぐらいになると思いますので、それまでゆっくり選んで投票してください。
今回劇中で出てきたタイムクラッシュに関してですが、分かりにくいと思うので、分かりやすく纏めるとこんな感じです。
アギトが「スパイファミリー」原作世界に来る(タイムクラッシュ一回目)→世界は2つに分裂し始める→アーニャの力が暴走し研究所崩壊(二回目)→世界が完全に分裂し、異なる歴史が作られる→黒テオスとの最終決戦でアギトが奇跡を起こす(三回目)→他の世界のライダーが来れるようになってしまう……こんな感じです。
他に分かりにくいところがありましたらご質問ください。出来る範囲で答えます。
SPY×AGITΩのオリキャラで好きなキャラは誰?(6月半ば頃に集計します)
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フリッド・リード
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グリム・ハワード
-
イグニス・ブレイズ(グレン)
-
ニコラス・ハワード(ニコル)
-
ウォルター・クロフォード
-
ロゼッタ
-
ノエル・アスール
-
シエル・フォージャー(ソラ)