SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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Chapter.8 曲がりなりで良かったらそばに居させて

 

「ガァウッ!!」

「シィッ!!」

 

ギルスとカッシスワームの拳がぶつかり合う。するとギルスはカッシスワームの腕を掴んで取っ組み合いになった。

 

「こう近づけばクロックアップとやらは使えないな!」

 

そう言いながら、背中から伸びる赤い触手「ギルススティンガー」を差し向ける。

 

「それはどうかな……?」

 

不利な状況であるにも関わらず、カッシスワームは不敵に笑った。

 

「やってみるがいい……どんな攻撃も返してやろう!」

 

拘束されているのに、何故こうも余裕そうに、自信満々でいられるのかギルスは不思議に思った。

しかし、ギルスはチャンスを逃すまいと、カッシスワームを上空に投げ飛ばした。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

そして、そのまま右腕のクロウとともに手刀を突き出し、カッシスワームの腹に突き刺した。

 

「やった!」

「ボフッ!」

 

ギルスがカッシスワームの腹を貫いたのを見て、勝利を確信しアーニャとボンドは声を上げた。しかし……次の瞬間、ギルスの右腕は斬り落とされた。

 

「………!!?」

「が……ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「フハハハ……!!」

 

笑うカッシスワームの左腕からブレードが伸びていた。そのブレードでギルスの右腕を斬り飛ばしたのだ。さらに不思議なことに、腹に突き刺さっていたギルスの右腕はそのままカッシスワームに吸収されていった。

 

「フフフッ……私は相手からの攻撃をエネルギーに還元吸収できるのだ。そして!」

 

その時、カッシスワームの右腕から毒針状の針が伸び、紫色の稲妻のような光が走った。

 

「ライダースティング!!」

 

毒針とともに右腕が勢いよく突き出された。咄嗟にギルスはかわしたが、後ろにあった柱に大穴が開いた。

 

「相手の技をコピーできるのだ!」

「コピーだと!?」

(というか俺の技、勝手に「ライダースティング」ってつけられてる……!!)

 

勝手に技名がつけられたことに疑問を感じながらも、ギルスは切り飛ばされた腕を掴み、付け直した。ギルスの不死身の能力の応用で腕はあっという間に元通りになった。

しかし次の瞬間、カッシスワームは左腕のブレードで斬りかかってきた。

ギルスは背中から伸びる触手を天井に向かって伸ばして突き刺し、そのままギルスは触手が戻る動きを利用して跳び上がった。

 

「距離を置くつもりか?だが、遠距離攻撃を持たない貴様に何ができる!?」

「そうだな……できるのはこの触手を利用することぐらいかな。」

 

ギルスは一旦床に降りると、すぐに触手をカッシスワームに向けてミサイルのように発射した。直線なので、カッシスワームはたやすくその攻撃をよけた。

よけられた触手は後ろの壁に突き刺さった。ギルスの狙いはこれだった。

 

「こういう利用法もあるんだ!!」

 

天井の時と同様、戻る動きを利用して勢いよくカッシスワームに突進した。しかし、カッシスワームはこれもたやすくよけてしまった。

 

「これが貴様の策か!そんなもので私が倒せるものか!」

「そうかな?」

 

ギルスは触手を使って縦横無尽に部屋中を飛び回る。飛び回りながら、隙を見てカッシスワームに攻撃するが、その尽くを防がれ、よけられる。

 

「ええい、しつこい!!ライダースティング!!」

 

次の攻撃が来た瞬間、カッシスワームはかわしてギルスの腹部に毒針を突き刺した。

 

「うぐっ!?」

 

そしてそのまま拳を叩きつけ、殴り飛ばした。

殴られたギルスは床に転がった。

 

「こんなものか……なんと脆弱な……期待した私がバカだったか。」

「そうかな……?」

 

その時、ギルスはフッと笑いながら立ち上がった。

 

「言ったはずだ、『こういう利用法もある』とな!!周りをよく見てみろ!!」

 

ギルスは叫び、天井を指差した。そこには部屋全体を、カッシスワームを取り囲む触手の結界があった。

ギルスは最初からこれを狙っていた。この結界を作るために部屋中を飛び回っていたのだ。

ギルスは床に落ちていたゴミを結界に向けて投げた。ゴミが触手に当たった……瞬間、触手から鋭いトゲが生え、ゴミを貫いた。

 

「アギトの力は進化の力……俺だって、ただ日々を過ごしていたわけじゃない!!」

「こんなもの、当たらなければどうということも……!!」

 

カッシスワームの言う通り、動かなければ触手には当たらない。ギルスの苦労も徒労に終わる。しかし、カッシスワームが腕を少し動かしたその瞬間、触手から生えた鋭いトゲが弾丸のように発射され、カッシスワームの腕に突き刺さった。

 

「ぐぉぉぉぉぉぉっ!!?な、なにぃっ!?」

「この結界は、お前の動きを手に取るように感知できる!!このまま針串刺しにしてやる!!」

 

ギルスの叫びに呼応して、触手から無数のトゲが生えカッシスワームに向けられた。

 

「くらえっ!!360度全方位からのトゲの弾丸をッ!!」

 

その言葉通り、触手から放たれるトゲの弾丸が、360度ありとあらゆる方角からカッシスワームに襲いかかる。

普通ならばコレをよけられるはずがない。そう、普通ならば……

 

「クロックアップ!!」

 

その瞬間、全ての物の動きがスローモーションになった。

 

「こんなもの……なんの意味ももたない。私の勝利は揺るがない!!」

 

カッシスワームは高笑いを上げ、遅くなる空間の中でただ一人、普通に動けるカッシスワームはギルスに突進していった。

 

「ライダーキック!!」

 

突進した勢いとともに飛び上がって必殺の蹴りを繰り出した。

キックがギルスに命中した瞬間、空間が元に戻り、ギルスは吹き飛んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「せんせーっ!!」

 

吹き飛ばされたギルスは壁に激突し、そのまま床に倒れてしまい、そのまま動かなくなってしまった。

その光景に、アーニャは首を横に振った。信じられない、まさかこんなことでギルスが負けるわけがない……とでも言うように。

 

「さて、次は貴様だ……」

 

カッシスワームはアーニャの方を向くと、左腕のブレードを向けた。

 

「ひっ……!」

「ヴゥゥゥ……!!」

 

刃を向けられ、アーニャは思わず後ずさった。ボンドはアーニャを守るように立ち塞がり、唸り声をあげる。

 

「安心しろ、一瞬で……!?」

 

カッシスワームがブレードを振りかぶろうとした、その瞬間、カッシスワームは動かなくなってしまった。

 

「な、なんだこれは……!?身体が動かん……!!」

「……敵を知り、己を知ること……それが戦いの中で一番重要なこと……と、俺は思うな。」

 

困惑の中で、静かに語る男がいた。

その男の名は、仮面ライダーギルス!

 

「貴様……!私に何をした……!?」

「さっき言わなかったか?俺は『切り離した触手を操れる』とな。」

 

カッシスワームの中で驚きと困惑が渦巻いた。確かにギルスはカッシスワームの目の前で切り離した触手を操ってみせた。しかし、今この状況で切り離した触手は見えない。

困惑していると、ギルスは説明を始めた。

 

「さっき、お前の腕に刺さったトゲの弾丸……あれも”触手の一部”さ。」

「なんだと……!?」

「寄生虫を知ってるかな?」

 

ギルスは唐突に話題を変えた。

 

「寄生虫は生物の中に侵入し、養分を吸い取って成長する。トゲの弾丸にも、その寄生虫と同じ役割を与えた!お前の体の中に侵入し、お前の体内エネルギーを食って成長する!」

「ぐっ!ぬおぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

その時、カッシスワームは全身に痛みが走るのを感じ、叫び声を上げた。

 

「名付けて『スティンガーワーム』!お前がどれだけクロックアップとやらを使おうと、内側から食い破れば関係ない!!」

 

ギルスはクロックアップに対抗する術を持たない。だからこそ、知恵と発想が必要だった。ギルスには、フリッドにはそれがあった。ロイドと同等の頭脳があった。

すると、ギルスはアーニャに語りかけた。

 

「アーニャちゃん、人間というのは弱さを知ることで強くなる……俺がそうだ。俺はユーリ君ほど手数はないし、グリムやヨルさんみたいに怪力があるわけじゃない、ロイド君みたいに何でもできるわけでもない……メンタルだって強い方じゃない。それに……そして、過去に大きな失敗をした。」

 

その語りは、アーニャに対する、生徒に対する授業だった。語りの内容はフリッドの人生観、フリッドが思う「強さ」だった。

 

「俺は自分の弱さを知った。弱さを知るということは、自分を知るということ。そこから人間は強くなれる……!喰らい尽くせ、スティンガーワーム!!」

「キシャアァァァァァァ!!」

 

ギルスの触手が変異した寄生虫「スティンガーワーム」がカッシスワームの体を突き破って出てきた。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!き、貴様ぁぁぁぁ!!よくも、こんなぁぁぁぁ!!」

「ウォォォォォォォォォォォ!!」

 

ギルスは牙をむき出しにしながら獣のような雄叫びを上げた。同時に踵のヒールクロウを伸ばし、そのまま右足を振り上げ、カッシスワームの肩にかかと落としを食らわせた。同時にヒールクロウを背中に突き刺す。刺さったヒールクロウはさらに伸び、心臓に突き刺さった。

 

「ウオォォォォォォォォォォッ!!!」

 

フリッドは叫ぶと同時にもう片方の足で怪人を蹴り飛ばし、刺さった爪で切り裂いた。

 

「お、の、れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!ぐおぉぉぉぉぉ!!」

 

断末魔の叫び声を上げ、カッシスワームは爆散して消えた。

 

「アーニャちゃん、無事か!?」

 

カッシスワームを倒し、ギルスはすぐさまアーニャの元に駆け寄った。

すると、アーニャも笑顔を浮かべてギルスの元に駆け寄った。

 

「うぃっ!アーニャへいき!せんせーのおかげ!」

「ボフッ!」

「よかった……そうだ、エレベーターのことみんなに伝えよう。これで移動が楽に……」

 

ギルスは耳元につけた通信機で皆にエレベーターのことを伝えようとした。その時、どこかで爆音が聞こえ、部屋全体が揺れた。

 

「キャッ!」

「な、なんだ!?」

 

─────────────────────

 

時間は少し遡り、カイザとガッチャードはウェザードーパントと戦いを繰り広げていた。だが、形勢は圧倒的にウェザーの方が有利だった。

その理由はウェザーの能力にあった。

 

「ちくしょう……!コソコソしやがって……!」

 

部屋の中は濃い霧で覆われていた。ウェザーはその霧の中に消えてしまい、2人は見つけられずにいた。

ウェザードーパントの能力は、天候を操る能力。相手の周囲に雨雲を発生させたり、手から猛吹雪を放ったり、部屋に濃霧を発生させるなどお手の物だ。

 

「ホータロー!風だ!風起こせるか!?」

「風……そっか!カマンティス!オドリッパ!力を貸して!!」

 

ガッチャードはカードホルダーから2枚のカードを取り出した。一枚はカマキリのようなモンスターが描かれたカード、もう一枚は青い肌の踊り子が描かれたカードだ。

ガッチャードはその2枚をベルトに装填した。

 

《カマンティス!》《オドリッパ!》

 

ベルトから音声が流れ、ガッチャードはベルトのレバーを引いた。

 

《ガッチャーンコ!!》

《オドリマンティス!!》

 

ガッチャードはカマキリと風のような意匠が入ったフォームに姿を変え、その場で高速回転を始めた。すると突風が巻き起こり、濃霧を消し飛ばした。

 

「ほぉ、単細胞かと思ったらやりますねぇ……」

 

姿を現したウェザーは慌てることなく、笑い飛ばしていた。

 

「余裕かましてんじゃねぇぞ!!」

 

カイザとガッチャードはすぐさま銃をウェザーに向けて発射した。弾丸はまっすぐウェザーに向かって飛んでいき直撃……したかと思いきや、弾丸は当たらずに弾かれた。

 

「えっ!?」

「なに!?」

 

ウェザーは仁王立ちのまま……手で弾いたわけではない。空中で勝手に弾丸が弾かれたように見えた。

カイザは続けざまに銃を乱射するが、その全てが弾かれてしまう。

 

「何がどうなってんだクソッ!!」

「クククッ……よーく見てください。何か見えるのではないですか?」

 

挑発するように言うウェザーにイラつきながらも、2人は目を凝らした。その瞬間、2人はハッと目を見開き、何故か弾が弾かれたのかを理解した。

ウェザーの周囲に……巨大な半透明の氷の結晶が張り巡らされていた。これが弾丸を弾いた正体だった。

 

「こ、氷!?」

「だったら、近づいてぶちのめす!!」

《Ready.》

 

カイザはメモリをカイザブレイガンに装填し、ブレードを展開する。ガッチャードもエクスガッチャリバーを手にウェザーに突っ込んだ。

対し、ウェザーも攻撃を繰り出すかと思いきや、二人に向かってあるものを投げてきた。

 

「!!」

 

それは袋だった。カイザは思わずその袋を切り裂いた。すると中から出てきたのは、白い粉だった。

 

(粉……?)

 

何故、粉が入った袋を投げてきたのか分からず、カイザはウェザーの方を見た。その時、ウェザーの手には雷を凝縮した球体が浮かんでいた。

 

(……まさか!?)

 

その瞬間、ウェザーは何をする気なのかカイザは気がついた。

白い粉、雷……否、”発火源”……ここから導き出されるのは一つだけ。

 

(粉塵爆発!!)

「ホータロー!!逃げろぉ!!!」

 

すぐさま逃げるようにガッチャードに呼びかけたが遅かった。ウェザーの手から、雷の光弾が放たれた。

 

「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

カイザはガッチャードを体当たりで跳ね飛ばし、身代わりになった。そして次の瞬間、雷の弾は着弾し発火……そして、同時に激しい爆音とともにカイザは爆発に飲み込まれた。

 

「グリム……!グリムーーーッ!!」

 

爆発によってできた煙が収まり、煙の中からグリムが出てきてそのまま倒れてしまった。爆発の拍子にベルトが外れたようで、変身が解除されていた。

 

「グリム……俺をかばって……!」

 

自分を爆発から庇ってくれたグリムに、ガッチャードは感謝するとともに申し訳がこみ上げた。

 

「おや……これはなんですか?」

 

その時、ウェザーはグリムのポケットから落ちてきたものを拾い上げた。それは写真のようだった。

 

「お美しいですねぇ……あなたの恋人ですか?」

 

写真に写っていたのはロゼッタだった。お守りとして入れていたようで、グリムは目を伏せた。

 

「なんとも美しい……ドーパントになればさらに美しくなるでしょうねぇ……!」

 

そう言ったウェザーは表情は分からないが不気味に笑っていた。

 

「あぁ……彼女にメモリを挿してみたい……!」

「ふざけんな……!ロゼッタに、手ぇ出すな……!!」

 

不気味に笑うウェザーを見て、怒りを滲ませながらグリムは立ち上がろうとした。

 

「ロゼッタは……俺の……!うぐっ!」

「負け犬は寝ていなさい。」

 

立ち上がろうとしたその時、ウェザーは思い切り踏みつけ、無理やり床に寝かせた。さらにそのままグリグリと足の裏を押しつけていく。

 

「やめろ!!」

《マーベラスオカルト!》

 

ガッチャードはエクスガッチャリバーをベルトに装着し、さらにカードを装填した。

 

《UFO X!スーパーーー!!》

 

UFOのようなアーマーを身に纏い、ガッチャードは回転しながらウェザーに突進し、跳ね飛ばす。

 

「チッ……!」

 

跳ね飛ばされたことでウェザーは写真を手放した。グリムは咄嗟にそれを取り返し、写真に写るロゼッタを見つめた。

 

(ロゼッタ……!あの時、お前に言えなかったことがあるんだ……!)

 

あの時、ロゼッタに「愛してる」と言った日……ロゼッタのことを愛してることに嘘はない。だが、もう一つ、言わなければならないことがあった。

 

(初めてお前が俺の家に押しかけて来た時のこと……よく覚えてる。)

 

瞬間、脳裏に浮かんだのは、ロゼッタがグリムの家に押しかけてきた時の光景……

 

『てめぇどこまで追いかけてくんだ!?いい加減にしろよ!!』

『えーっ、だってぇ……好きになっちゃったんだもん♪』

『すり寄ってくんな、このクソビッチが!!』

 

あまりにしつこいロゼッタに怒り、グリムは思わず手を上げそうになった。

その時だった。ロゼッタは怯えた表情を見せた。だが、その怯え方は異常だった。動悸が激しくなっている上に、すぐにでも泣いてしまいそうになっている。

あまりの変わりようにグリムは振り上げた手を思わず下げた。すると、ロゼッタはその手を掴んで自分の大きな胸に押しつけた。

 

『んっ……!』

 

胸を触られ、ロゼッタはピクリと反応した。グリムも驚いて思わず胸を触れている手を動かしてしまった。

するとロゼッタは恍惚と……というより、安心したような顔を浮かべていた。

その瞬間、グリムは思った。ロゼッタが娼婦をしているのは、”安心”を得ようとしていたからではないかと。さきほど殴られそうになった時の怯えようと、胸を触られた時の安心したような表情……

それは、ロゼッタにとって「快楽」とは「暴力」から逃れ、「安心」を得るための手段なのではないか……

それからというもの……グリムはロゼッタを引き離すことなどできなくなった。

 

(たぶんお前……昔になんかあったんだろうな……言わなくてもいい……知られたくないだろうからな。)

 

ロゼッタは何も言わなかったが、きっと辛い過去を抱えている……グリムにはそれが分かった。自分がそうだから……

あの日、グリムは彼女の境遇を変えたいと思った。かつて、父がそうしてくれたように……だからこそロゼッタとの同棲を始めた。

 

(お前は覚えてないかもしれない……あの時のお前の顔、嬉しかった……)

 

同棲を始めてから変化があった。それは、ロゼッタと夜を共にした時、ロゼッタが「安心」の表情ではなく「悦び」の表情を浮かべたのだ。

その表情を見て、グリムは嬉しく思った。ほんの少し、ほんのちょっぴりかもしれないが、彼女を助けられたと思ったからだ。

 

(もう……「安心」なんか求めなくていい……!)

 

グリムは爆発で受けた痛みに耐えながら立ち上がった。

同族同士慰め合ってるだけとでも、傷のなめ合いだと蔑まれてもいい……

 

(俺が傍にいてやる……!お前が求めるなら、いくらでも抱いてやる!!)

 

大事な人に、愛の言葉だけでなく、本当に大事なことを伝えるために……

 

(だから……「ずっと俺を見てろ、ロゼッタ」!!)

「ウオォォォォォォォォォォッ!!!」

 

獣のような叫びとともに顔に半透明の模様を浮かばせ、グリムはライオンオルフェノクへと姿を変えた。

 

「えっ!?グリム……!?」

「ほぉ……」

 

オルフェノクへと姿が変わったグリムを見て、ガッチャードは驚き、ウェザーは笑みを浮かべた。

 

「アナタも同類でしたか……同じ化け物だったようですねぇ。」

「テメェと一緒にすんな……クソ野郎。」

 

唸るような声で呟いたグリムは、その場で四つん這いになり、獲物を狙うような目でウェザーを睨みつけた。

 

「さっき……俺の女に何挿したいって言った……?ヤれるもんならヤッてみろや……!だがその瞬間、テメェの全身細切れにして生ゴミにして捨ててやる!!このタンカス野郎が!!」

 

その時、不思議なことが起こった。グリムの怒りとロゼッタに対する想いが混ざり合い、疾走する本能が、オルフェノクの肉体に変化を起こした。

手足は獣そのものになり、長い尻尾が生え、タテガミが伸び、グリムの姿はライオンそのものになった。

 

ライオンオルフェノク・疾走態……それがグリムが得た新たな力だった。

 

「変わった……!」

「ほぉ、土壇場で新しい力を得ましたか……」

 

次の瞬間、グリムは突然姿を消した。

 

「何っ!?」

「ゴァァァァッ!!」

 

グリムは目にも止まらぬ速さでウェザーの背後に回り込み、右腕に噛みつき、そのまま引きちぎってしまった。

 

「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「言ったろ、細切れにしてやるってな!!」

「おのれ……!」

 

右腕をちぎられた痛みに苦しみながらも、ウェザーは左手で雷雲を呼び出して攻撃しようとした。

 

《ガッチャーンコ!!ファイヤー!!》

《スチームホッパー!アチーッ!!》

「ハァッ!!」

 

しかし次の瞬間、ガッチャードはファイヤーガッチャードに変わり、背中のブースターで高速で飛びながらウェザーの背中を斬った。

 

「ぐおっ!?」

「いこう、グリム!!」

「おうっ!!」

 

グリムとガッチャード、2人は高速で動き回りながらウェザーの変幻自在の攻撃をよけていく。さすがのウェザーの攻撃も相手が高速で動いていれば狙いがつけられないようだ。

 

「チョコマカと……!」

「ホータロー!合わせろっ!!」

「うん!」

『ハァッ!!』

 

タイミングを合わせ、2人は同時攻撃を繰り出した。しかし、ウェザーは氷のバリアを作ってその攻撃を防いだ。

 

「それなら……これでどうだっ!!」

 

途端にガッチャードは背を向け、背中のブースターから炎を放った。高温の炎があっという間に氷のバリアを溶かしていく。

 

「小癪な……!」

 

ウェザーは氷の強度を強くしようと、左手を出した。だが、手を出したのが命取り。次の瞬間、グリムの鋭い爪がウェザーの左腕を斬り飛ばした。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!?」

「これでもう攻撃できねぇな!!」

「決めよう!グリム!!」

 

最後のトドメをさすため、2人は一端後ろに下がった。

 

「ホータロー、乗れ!!」

 

グリムの言葉に従い、ガッチャードはライオンと化したグリムの背に乗った。同時に背中のブースターを点火し、さらにチェーンが発射され、床に突き刺さった。

 

『ハァァァァァァァッ!!』

 

次の瞬間、ブースターの火力が最大まで高まったところで鎖は解かれ、グリムも駆け出した。

グリムのスピードとガッチャードの火力が合わさり、音速による突進が繰り出される。

その音速を破ることなど、誰にもできない!

 

「これが俺達の!!」

「勝利のガッチャだぁぁぁぁ!!」

《スチームホッパー!バーニングフィーバー!!》

 

ガッチャードが起こした炎によって、グリムは炎を纏った突進を繰り出し、ガッチャードもエクスガッチャリバーを手に、グリムの速度をのせた突きを繰り出した。

そして、2人の合体攻撃はウェザーの体を貫いた。

 

「またしても……!仮面ライダーなぞに……!!」

 

体を貫かれたウェザーはその場に崩れるように倒れ、爆発して消えていった。

2人は変身を解除し、グリムは落ちたカイザドライバーを回収した。

 

「やったね、グリム!……グリム?」

 

グリムは浮かない表情をしていた。それもそのはず、また知人に自分が怪人の姿を見られたのだ。

 

「お前……なんとも思わねぇのかよ?俺、化け物なんだぞ?」

「でも……グリムはグリムでしょ?」

 

宝太郎はニコニコ笑っていた。グリムがオルフェノクだということなど気にしていないようだった。そんな宝太郎を見て、グリムはキョトンと目を丸くしていた。

 

「それに、あの時……グリム、ロゼッタさんのために怒ったんでしょ?大切な人のために戦えるグリム……すっごくカッコいいと思う!!」

「あ……」

 

急に褒められて、グリムは頬を赤く染めた。と思いきや、宝太郎の頭に腕を回し、ヘッドロックをかけた。

 

「えっ!?イタタタタ!!」

「ナマイキ言ってんじゃねぇ、新参者!!……ありがとな。」

 

礼を言いながら、グリムは腕を離した。すると、宝太郎の前に拳をスッと突き出した。

その意味が分かった宝太郎は同じく拳を突き出し、握手するように拳と拳をぶつけた。

 

「へへっ……さて、行こうぜ!」

「うん!」

 

2人は笑い合い、先へと進み始めた。

グリムが笑ったのは、単に嬉しさが強かった。また1人、怪人である自分を受け入れてくれる友ができたことに……

 

 




おまけ「ロゼッタの裏設定」

ロゼッタはグリムと出会う以前、娼婦になる前は没落した貴族の娘だった。その時はロゼッタはロージーという名前だった。
13歳の時に両親が他界し、叔父に引き取られたが、その叔父は両親が残した資産を全てむしり取り、ロージーに暴行を働くようになった。
その際、ロージーは叔父に身体を許すことで暴力から逃れるようになった。この時から自分の身を守るため、「安心」を得るために「快楽」を求めるようになっていった。
叔父の虐待に耐えかねたロージーは東西戦争のゴタゴタに紛れて家出した。しかし、13歳の少女であるロージーが出来る仕事など限られていた。それは、戦場の男達の慰み者に……娼婦になることだった。ロージーにとって肉体への快感こそ、暴力や恐怖から逃れるための手段だった。
その時からロゼッタを名乗り、「安心」を得るために必死に愛想を振りまき、無理に笑顔を作っていった。
戦争が終わり、娼館「ベロニカ」の娼婦になったロゼッタは、その後グリムと出会い、初めての恋をした。

ストーリー中にこの過去を描こうと思ったものの、エグすぎるのと、詳細に描くとR-18になってしまうため裏設定としてここに記す。
ちなみにロゼッタの年齢は20歳。グリムより3つ上。

SPY×AGITΩのオリキャラで好きなキャラは誰?(6月半ば頃に集計します)

  • フリッド・リード
  • グリム・ハワード
  • イグニス・ブレイズ(グレン)
  • ニコラス・ハワード(ニコル)
  • ウォルター・クロフォード
  • ロゼッタ
  • ノエル・アスール
  • シエル・フォージャー(ソラ)
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