「落ち着いたか?ショウマくん……」
「……はい……」
戦いの後、喫茶シオンにショウマとロゼッタを連れて行ったグリム。そこでロイドが淹れてくれたココアを飲み、ショウマはようやく落ち着いた。
それと同時に、地下室からヨルが上がってきた。
「ヨル先輩……ロゼッタは……?」
「ようやく落ち着いたみたいです……でも、一人だと怖いみたいで、今はアーニャさんとボンドさんと一緒にいます。」
「そっか……」
ヨルの言葉を聞き、グリムはホッと胸をなで下ろした。しかしすぐに気まずそうな顔でショウマに尋ねた。
「……なぁ、ショウマ……お前、会ったことあんのか?ロゼッタに……」
ショウマは何も言わずにコクリと頷いた。それ以上は何も聞けなかった。聞けばショウマを傷つけてしまうと思ったからだ。だが……ショウマは自分から話し始めた。
「俺……昔はグラニュートの世界にいたんです……」
ショウマは洗いざらい話してくれた……自分の本名はショウマ・ストマックであり、ストマック家の末っ子で、グラニュートと人間の間で生まれた子どもであること……母親を異母兄弟達に殺されたこと、その後にグラニュート界を脱出し人間の世界に来たこと、そして仮面ライダーとして戦い仲間と出会ったことを……
「……それで、いつロゼッタと出会ったんだ……?」
「俺が……まだ小さい時……」
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母さんと、俺の父さんがお話しするって部屋を出てってから全然戻ってこなくて……俺、心配になって部屋をこっそり出て探しに行ったんだ。
そしたら……部屋のドアが一つ開いてたんだ。
「母さん?」
そこに母さんがいると思って、俺はその部屋に入ったんだ。部屋の中は薄暗くて……目が慣れないと見えないくらいで……やっと目が慣れてきた時、見えたのは……
『ハハハハハハハハハハハハッ!!』
「さぁ、みなさん!どんどん賭けてください……腹の中は男か!?女か!?」
円を描くように椅子が置かれてて……そこに立派な服をきたグラニュートがいっぱいいて、その円の真ん中には……お腹が大きい人間の女の人がいたんだ……よく見たら、壁の方にもお腹が大きな人がいて……人間だけじゃなくて、グラニュートの女の人も……俺はすぐにわかった……あの人達は妊婦だって……!
そしたら……エージェントがその妊婦さんのお腹に刃物を突き立てて……!!
悲鳴が部屋中に響いてるのに……周りのグラニュート達はみんな笑ってた……!!
「あーっ、クソ!中身は女か!」
「私の勝ちですな!」
「ワシもです!100万の勝ちですな!」
目の前で大変なことが起きてるのに、みんな笑ってた……!
すると……
「お〜、ショウマじゃないか〜?」
俺に話しかけてきたのは、ギアン・ストマックっていう父さんの弟……つまり俺の叔父に当たる人……
ギアン叔父さんは俺より少し上くらいの女の子を抱きながら俺に向かって、何をしてたのか教えてくれた……
「今なぁ、女の腹の中に入っているのは男の子か女の子か当てっこするゲームをしてるんだ……」
叔父さんと、部屋にいるグラニュート達は妊婦さんを使って賭け事をしてたんだ……!
「いい機会だ……お前もどうだ?社会経験の一環で……!」
「う……うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は、怖くなって逃げた……その女の子がどうなったのか、妊婦さん達もどうなったのかも……
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ショウマの話が終わり、空気は静まり返っていた。
ギアン・ストマックという男の、鬼畜のような所業と一部のグラニュート達の趣味の悪い遊びに一同引いていた。
その時、フリッドが壁を殴った。
「………!!」
怒りのあまり何も言えない……といった様子だった。他の皆も同じ様なもので、怒りを覚えながらもそれを口には出せなかった。
「思い返したら、あの時の女の子がロゼッタさんだった……俺……ロゼッタさんに会わせる顔がない……!」
ショウマは今にも泣きそうな声で呟いた。気持ちは分からないでもない……ギアン・ストマックはショウマの叔父で、ストマック家の一人……同じ家の者として、申し訳なくなったのだろう。
その時、
「ショウマくんのせいじゃないよ。」
地下室の方からロゼッタが上がってきた。悔いるショウマに一言呟いた。
ロゼッタの姿を見て、ショウマはいきなりその場に座り込み、頭を下げ始めた。
「ご……ごめんなさい……!!」
頭を床に押し付け、ショウマはひたすらロゼッタに謝り続けた。
「ストマック家のせいでロゼッタさんは……ごめんなさい……ごめんなさい……!!」
謝り続けるショウマに皆は何も言えない。自分達が同じ立場なら同じことをするだろう。
すると、ロゼッタは膝をつきショウマの頭を上げさせた。
「だから……ショウマくんのせいじゃないってば……」
「でも……!」
「私も……私だって、みんなに自分のこと全然話さなかった。だからみんなを心配させて……こんなふうになっちゃったんだから……」
ロゼッタは静かにそう言った後、皆の方を振り返ってニコッと笑ってみせた。
「あははっ!みんな心配しちゃいました?もうなーんともありませんから!」
そう笑顔で言っているロゼッタだったが、グリム達にはその笑顔は無理して作っているように見えた。
「もう〜!なんでみんな静かになっちゃってるんですか?普段はみんなにぎやかじゃないですか〜!」
「……ロゼッタ。」
笑うロゼッタにグリムは声をかけた。しかし、ロゼッタは構わず笑った。
「あっ、そうだ!さっき行き損ねたデザートの店だけど……」
「ロゼッタ!! 」
途端にグリムが大声を上げた。その声にロゼッタは驚き、笑うのをやめた。
「……お前、過去に何があったんだ?」
「……私の過去なんて、つまんないよ。」
「俺は……過去なんてどうでもいいと思ってた。今を楽しく生きれれば、それでいいって……でも、お前が“あんな風“になっちまったのを見たら……」
グリムは脳裏にロゼッタがパニックで叫んでいた時の光景を思い返した。
「……あんな風になっちまった原因を知りたい……お前を助ける手がかりになるかもだしな。」
「……」
ロゼッタは黙り込んだ。
「あの、ロゼッタさん……言いたくなかったら……」
ヨルは心配して声をかけたが、ロゼッタは首を横に振った。
「大丈夫です……話します……まず、私の名前……ロゼッタは本名じゃないんです。本名は、ロージー・フォン・バルドナク。」
「バルドナク……!?」
「あなた、バルドナク家のお嬢様だったの……!?」
ロゼッタの本名を聞き、ロイドとフィオナは驚き目を見開いた。
「なんだよ、知ってんのかよ?」
「バルドナク家は東国に存在する資産家の一つだ。バルドナク家の持っている隠し財産は1億……いや、それ以上はあると噂されてる。」
「確か……当主であるファズ・フォン・バルドナクが妻と事故で他界した後、弟が資産と事業を引き継いだって……」
その時、フィオナは何かに気づきハッと手で口を抑える。それに答えるようにロゼッタは続けて言った。
「はい……その弟……バートンは私の叔父。里親になった男です。」
それからロゼッタは自身の過去を話し始めた……
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「いいか、ロージー。バルドナク家に生まれたからには……」
「ロージー!あなたはバルドナク家の長女なんですよ!」
父も母も厳しい人で、父からは数学とか歴史とか、勉強をたくさん教えられて……母からは花嫁修行をやらされました。
厳しい毎日だったけど、屋敷から眺める景色はよかったし、ご飯は美味しいし、自由がほとんどないだけで生活に困ることはありませんでした。
でも……ある日、父と母は叔父さんといっしょに西国の僻地へ仕事に行くことになりました。
でも、その道中……三人は事故に遭って……叔父さんだけが助かりました。
それから全てが変わりました……
「やめてください叔父様!」
「黙れ!!」
事故が遭って以来、叔父様はすっかり変わってしまいました。前は優しい人だったのに、父の仕事を受け継いで、遺産と屋敷も受け継いでからは人が変わって……私に対して毎日暴力を振るうことになりました。
どうしてこんなに変わったんだろうと思いました……兄弟が亡くなったせいなのか、仕事を継いだことによる重圧なのか……私にはわかりませんでした。
でも……私は見たんです。叔父様は、叔父様じゃなかったんです……!
ある日の夜……私はトイレに行って部屋に戻る最中……叔父様の部屋のドアが少し開いてて光が漏れてるのが見えました。
私は気になって中を覗きました。部屋の中にいたのは……お腹にもう一つの口がついた、イモリみたいな怪物でした……
「見、た、な?」
「!!」
私に気づいた叔父様は、私の腕を掴んで部屋に引きずりこんできました。
「見られたからにはしょうがない……このまま闇菓子の材料に……」
「ま、待ってください!!」
私を殺そうとする叔父様に向かって、私を叫んで、上着を脱ぎ捨てて下着姿になりました。
「わ……私を、叔父様の奴隷にしてください……!!」
私は死にたくない一心でそう言いました。それから私は本当に叔父様の奴隷になりました……炊事、洗濯、料理……家事はお母様から教わってたから苦ではありませんでした。逆に辛かったのは……
「やだっ!やめてください叔父様!!」
「ハハハハハハ……奴隷が何を言っているのやら……」
嫌がる私に対して、笑っている叔父様……その周りには叔父様が呼び出したエージェント達……
「エージェント……ロージーを可愛がってやれ。壊さないように、な……」
『了解』
叔父様の命令を受けて、エージェント達は私に群がって……
「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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「私は、エージェント達に身体中弄られて……大量の手が私の身体を這い回って……!」
身体を震わせながら叔父に何をされたのかを話すロゼッタ……
「それだけじゃなくて、他の化け物達に私の身体を隅々まで見せたり、他の金持ち連中の慰めものにしたり……!」
「もういい……ロゼッタ……その後は?」
グリムはそんな震えるロゼッタの手を握り、落ち着かせた。落ち着いたロゼッタはその後のことを話し始めた。
「……私はもう限界でした。そんな時、東西戦争が起きて……そのドタバタで私は屋敷から逃げ出しました。それからは戦場の男の人達に身体を売って、娼婦になってなんとか安定した生活を手に入れました……」
「……で、その後に俺に会ったのか……」
グリムの一言にロゼッタはコクリと頷いた。するとロゼッタはグリムに向かって頭を下げてきた。
「ダーリン……隠しててごめんなさい……嫌われたくなくて……!」
過去を話せば嫌われると思っていた。ロゼッタからしてみれば、自分は汚い身体をした汚い女……それを話せば最愛のグリムから嫌われると思ったのだ。
だが、グリムは……
「どうして、俺がお前を嫌うと思うんだよ。」
「だ、だって……私は……」
「俺もお前と似たようなモンだ。いや……ひょっとしたらお前よかマシかもな……」
過去を話さなかったロゼッタと同じく、グリムもロゼッタに話していない過去がある。そのことをロゼッタとショウマに話し始めた。
父親に捨てられたこと、育ててくれた養父がいたこと、その養父が腹違いの兄達に殺されたこと……そして、
「ショウマ、俺もお前と同じで……母ちゃん死んじまったんだ。」
「え……」
「お前の母ちゃんみたいに殺されたわけじゃねぇんだ。……自殺したんだ。寝室で首吊って……」
「そんな、どうして……」
ショウマの疑問の声にグリムは首を横に振った。
「わかんねぇ……俺はその時、外で遊んでた……帰ってきたら、母ちゃんが死んでて……意味わかんなかった……遺書もなかったし……」
グリムの手は震えていた。グリム自身、まだ信じられないのかもしれない。幼い頃、大好きだった母親が自分で命を絶ったなど……
「だからその……俺が何を言いたいかっつーと……誰にだって言いたくない過去はあるってことだ。」
「……そうだな。」
グリムの言葉に賛同するように、フリッドは口を開いた。
「俺だって人に言えない過去はある。大なり小なり、そういうのは誰にだってあるんだよ。」
「はい……そうですよね……」
フリッドの言葉に続いて他の皆はうんうんと頷いた。
自分だけではない……それを理解したロゼッタは思わず泣きそうになったが、必死にこらえて安心したようにホッとため息を吐いた。
その後、
「じゃあな。」
「お世話おかけしました……」
グリムとロゼッタは一言挨拶して自分達の家に戻っていった。
ショウマの方は喫茶シオンに泊まることになった。
「空き部屋があるから遠慮なく使ってくれ。」
「案内しますね、ショウマくん。」
「すいません……ありがとうございます!」
ヨルの案内に従い、ショウマは上の階に上がっていった。
「それじゃあ、ロッティ。僕らもおいとまするからな。」
「失礼します、先輩。」
「待ってくれ。」
他の皆も帰ろうとしたその時、フリッドが声を上げた。
「さっき、グリムは『母親は自殺した』と言ってたよな……どうして自殺したのか……俺達で探らないか?」
「フリッド?」
突然の提案に他の皆は困惑した。それをよそにフリッドは続けた。
「実は、去年の家庭訪問の時、デズモンド家の屋敷に行った時……メリンダさんから聞いたんだが……」
『グリムくんのお母さん?ヘレンさんのことね……』
『ヘレンさんは……とても肝っ玉が強い人で、誰にでも優しく接することができる人だったわ……とてもドノバン……ウチの主人の愛人になるような人には見えなかったわ……』
『そもそも、なんで主人があの人を選んだのか分からないのよね……ヘレンさん、別にお家が裕福なわけでもないし、由緒正しい家柄でもないし……』
『主人もヘレンさんも亡くなった今となっては何も分からないけど……』
「……って言ってたんだ。」
フリッドからその話を聞き、ロイドや他の皆は考えた。確かに、なぜドノバンはグリムの母親、ヘレンと関係を持ったのか。ヘレンは地位も何も無い一般人……どんな接点があるというのか……
「それと……これは俺の甘い考えだが……いくらなんでも、愛する子どもを残して、遺書もなしに自殺するなんてありえない……何か理由があるはずだ。」
フリッドの言う通り、遺書も残さずに自殺するとは考えにくい。子どもに何も言い残さずに……
「だから、俺達で調べないか?ドノバンがヘレンさんを選んだ理由……自殺した理由を……グリムには内緒でな。」
「……そうだな。フィオナ、“WISE“で手の空いてる奴はいないか?」
「そうですね……ペルランの奴なら手が空いてるはずです。」
「僕も……仕事の合間でよかったら調べてみますよ。」
フリッド達はグリムの母親……ヘレンの死の真相を知るため、内密に調査することを誓い、解散したのだった。
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「ただいま〜!」
家に戻ったグリムとロゼッタは、電気をつけ、上着を脱いでラフな格好になった。
「今日は疲れたね〜……今日はご飯食べたらすぐ寝ちゃう?」
ロゼッタは尋ねながらグリムの方に顔を向けた。グリムはというと、ロゼッタに向けて両手を広げていた。
「ダーリン……?」
「ほら、おいで。いつも俺ばっかだから……たまには俺が抱きしめてやる♪」
グリムは両手を広げながらニカッと歯を見せて笑ってみせた。その笑顔を見て、ロゼッタは少しずつ歩み寄り、彼の腕の中へ飛び込んだ。
「今まで、がんばったな……よく耐えた。えらいぞ……ロゼッタ。」
「う…うっ……」
いつもロゼッタがグリムに対してしていることを、今度はグリムがやってみせた。子どものように抱かれ、頭を撫でられ、ロゼッタは堪えきれず泣き出した。
「怖かった……!ずっと、怖かったよぉ……!!」
「もう大丈夫だ……俺が守ってやる……守って、やるから……!」
泣き叫ぶロゼッタを抱きしめながら、グリムは拳を強く握りしめた。
いつも笑顔を絶やさず、自分に寄り添い愛してくれたロゼッタを悲しませたバートンことギアン・ストマック……その男に対する怒りをグリムは隠せなかった。
(殺してやる……バートン・フォン・バルドナク……いや、ギアン・ストマック……!!)
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(足りない……物足りない……)
暗いオフィスの中で一人、男はたたずんでいた。足元には傷だらけの男達が倒れている。全てこの男一人によって倒されたのだ。
「ラ、ライドさん……も、もう……勘弁……ぶべっ!!」
「あぁ〜〜〜……つまらねぇ……何もかも足りねぇ……!!」
今のライドの中には、風が……嵐が吹き荒れていた。
抜け殻の中に吹きすさぶ荒れ狂う嵐……それがなんなのかライド本人さえも分からない。
(なんで、なんでずっと風が吹いてんだ……)
その時、頭によぎったのはグリム・ハワードの姿……
それを振り払うように、男の声が聞こえてきた。
「ライド・イスルギ……だな。」
「誰だ、てめぇは……」
「君の望みを叶えられる男さ……暴れたくないか?欲望のままに……」
おまけ「教育に悪い」
元の世界に戻ったショウマは、仲間の絆斗と一緒に街を歩き、途中で寄ったアイス屋でアイスを食べていた。
「ねぇ、絆斗。」
「ん?」
「男の人って、みんな赤ちゃんになりたいのかな?」
「…………!!」
絆斗は驚きのあまりアイスを地面に落としてしまった。
「何言ってんだお前……」
「いや、向こうの世界行った時、グリムが……」
『また弟切にイジワルされた〜!』
『あらあら、ダーリンかわいそ……また私が慰めてあげるからね〜♡赤ちゃんになっちゃえ♡よちよち♡』
『なるー!バブー!!』
「……って、部屋でロゼッタさんに抱っこされてたから……絆斗も赤ちゃんになりたいって思ったりするの?」
「ねぇよ!!言っとくけど、それ所長に言ったりすんなよ!?」
「言わないよ〜、俺は赤ちゃんじゃないし。」
その後、
「ウチのショウマに赤ちゃんプレイ見せた奴はどいつだ!!出てこい!!」
怒り狂った絆斗は仮面ライダーヴァレンに変身し、グリムがいる世界へ殴り込みに行ったのだとか……
それからグリムと一悶着あったとかなかったとか……
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おっきいおっぱいのおねーさんがいたら甘えたいと思うのが男の性というもの……