今回は人間ドラマが長くなってしまったので、戦闘は次回に持ち越しです。
波の音が聞こえる。風も穏やかで、心地よく響いている。それと一緒に笑い声が聞こえてきた。女性の声だ。
「こっちに来てー!」
笑ってこっちに声をかけてくる。この声には聞き覚えがあった。
「こっちこっちー!」
幸せそうにこっちへ手を差し伸べてくる。その人の声を聞くと、何故だか落ち着いてくる。同時に悲しくなってきた。
「姉さん……」
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ゆっくりと目を開けると、そこには女性の姿があった。
「あっ……気が付いたんですね、翔一さん!」
それはヨルだったが、翔一には別の女性の姿に見えていた。その女性を見た瞬間、翔一は勘違いして、体を起こしてヨルをいきなり抱きしめた。
「ふぇっ!?しょしょしょ、翔一さん!?」
ヨルはいきなりのことで動揺し、顔を真っ赤に染めた。
しかし、それでも翔一は離さなかった。そして、一言呟いた。
「姉さん」
その一言に、ヨルの真っ赤になった頬が段々と元に戻っていった。
「姉さん……!」
翔一はもう一度呟いた。今度は涙ぐむような声で。その声を聞き、ヨルは翔一を慰めるように頭を撫でた。
「ん……?ヨ、ヨルさん!?」
その時、翔一は意識を取り戻して我に帰り、すぐさまヨルから離れた。
「す、すいません!いきなりこんな……!」
「い、いえ、私は別に……」
二人とも顔を赤く染めてよそよそしくした。と、その時、
「ふざけるな!」
部屋の外からロイドの怒鳴り声が聞こえてきた。
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翔一が目覚める少し前……
「本当に申し訳ございませんでした!」
その日、フォージャー家に法条とヘンダーソンが来訪していた。昨日のマードックの暴力行為について謝るために。
そして二人とも、ロイドに向かって深々と頭を下げている。
「……なぜマードッ……あの男が来ていないんですか?あの男が直接謝るのが礼儀ではないのですか?」
ロイドは名前も言いたくないのか、マードックの名前は呼ばず、彼がこの場にいないことを指摘した。
「マードックは今朝方クビにしました。イーデン校にとって、あの男は汚点でしかありませんから……もう、学園の寮からも退去させています。」
「それで、ワシが代わりに来たということだ……本当にすまないと思っている。」
ヘンダーソンはマードックに代わってもう一度頭を下げた。
しかし、ロイドは態度を変えなかった。
すると、ヘンダーソンが口を開いた。
「教頭から話は聞いている。マードックの凶行だけでなく、教頭を庇った津上翔一という男の雄姿を!その男が我が校の生徒であれば、すぐにでも
「そこで、ヘンダーソン先生とも相談したのですが……今回の件のお詫びに、アーニャくんの
法条の一言に、ロイドは目を見開いた。ロイドにとって、それは願ってもないことだった。ドノバンに近づくためには
もちろん、そのことは法条も承知していた。
(この条件なら、黄昏だって飲むはずだ。)
しかし、法条の予想に反し、ロイドはテーブルを強く殴りつけた。
「ふざけるなっ!!」
そして大声で叫んだ。
その反応に、法条とヘンダーソンは驚愕した。
(俺は何をしているんだ……!?
ロイドは自分でも何をしているのか分からなかった。ただ、怒りのままに叫び始める。
「翔一君は危うく死にかけたんだぞ!?それを、こんな賄賂のような形で済ませるのか!?かのイーデン校が賄賂を行うなど……恥の上塗りでしかないぞ!!」
(何を考えているんだ、黄昏!こんないい条件を飲まないなんて!任務を捨てる気か!?)
(な、なんとエレガントな……!)
ロイドの返答に、法条は信じられないといった顔をし、ヘンダーソンは密かに感動していた。
「出てけ……さっさと出ていけ!」
ロイドは二人に向かって叫んだ。
その時、部屋のドアがガチャと開いた。
「ダメですよ、ロイドさん。」
部屋から翔一が出てきて、ニコッと笑いかけた。
「翔一君……」
「前に言ってたじゃないですか。アーニャちゃんを特待生にしたいって。だったら、その条件受けないと……」
「だが……!」
「お願いします。」
それでも否定するロイドに、翔一は頭を下げて懇願した。それを見てロイドはいたたまれなくなり、コクリと頷いた。
(エ、エェェェェェレガントッッッ!!な、なんとエレガントな男!自分のことより、あくまでアーニャ・フォージャーのことを気に掛けるとは!こんな素晴らしい男がこの世にいたとは……!!)
ヘンダーソンは翔一に対して強く感動し、打ち震えていた。
その後、二人はフォージャー家を後にし、家の中に静寂が訪れた。
「いや~、すいません!なんか迷惑かけちゃったみたいで!お詫びに今日、ごちそう作っちゃいます!」
ニコニコ笑う翔一に対し、ロイド達の表情は暗かった。
「いや……翔一君、ちょっと話がある。座ってくれ。」
「え?はい……」
翔一は首を傾げ、言われるままソファに座った。
「……君は、アギトだったんだな。」
「……見たんですね。」
ロイドに言われ、翔一は一瞬笑顔がなくなったが、すぐに元に戻った。
「すいません、今まで言えなくて。」
「いや……こんなこと、言えないだろうからな。気にしてない。」
「俺もスパイだし」と言いかけたが、それは言わないようガマンした。
フッとため息をつき、ロイドは振り絞るように口を開いた。
「実は……3人で話して決めたんだが……翔一君、君はここにいるべきじゃないと思う。」
「え……?」
翔一は唖然とした。そんな表情は見たことがなかった。
ロイドはその顔を見ないよう目を伏せ、話を続けた。
「君は記憶を失ってる。いつか、その記憶を取り戻さなければいけない。でも、いつまでもここにいたって、記憶は戻らないだろう?」
「で、でも!長い時間をかければいつか……!」
「翔一君!」
反論しようとする翔一に、ロイドは大声を上げて止めた。そして、翔一の肩を掴んだ。
「君はアギトだ!この意味が分かるか!?君の力はもっと大きなことに使わないと!例えば、世界平和や、戦争の根絶にだ!そのために君の力はあるんじゃないのか!?」
ロイドの真剣な眼差しと叫びに、翔一は何も言えず、ただ黙って聞いていた。
「君なら、もっと多くのものを救える。いつまでもこんな家でくすぶってたらダメだ……」
ロイドは真剣に翔一の目を見ながら言った。その真剣さに、翔一はフッと笑った。
「……わかりました。すぐに荷物まとめます。」
翔一はそう言って荷物をまとめ始めた。その後ろ姿はなんとも寂しげだったが、ロイド達は何も言えなかった。
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「あーあ、これからどうしようかなぁ……」
フォージャー家を出た翔一は、しばらくバイクで走り回っていたが、すぐにガス欠になりあてもなくバイクを押して街を歩いていた。
その時、腹がグーッと鳴り響いた。財布を取り出して中を確認すると、小銭はあるが紙幣はない。食事代とガソリン代を差し引くと、宿泊代がなくなる。
「……野宿できる場所探すか。」
「あれ?津上?」
その時、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。振り向くと、そこにはユーリ、アイネ、リョーマの未確認生命体対策班の3人がいた。
「あ、ユーリさん!それに、アイネさんと……リョーマさん?」
「よっ!」
「久々ね。何してるの?」
「いやー……実は……」
翔一は言いづらそうに苦笑いを浮かべた。
何やら事情があるのだと思い、ユーリ達は行きつけの鉄板焼きの店で話を聞くことにした。
「……は?追い出された?」
「はあ・・・そんな感じです。」
「ビールおかわり!で?なんでそうなったの?」
アイネはビールの追加を頼みつつ、翔一に尋ねた。
「……俺、記憶喪失なんですけど、ロイドさんは『この家にいても記憶は戻らない』って。それに、『君なら多くの人を救える、こんな家でくすぶってたらダメだ』って……」
「なるほどなぁ、お前のこと考えて追い出したってことか。」
「……あれ?」
翔一の話を聞き、ユーリは一つ疑問が浮かび、声を上げた。
「お前、ロッティの異母兄弟っていってなかった?」
「あ。あー……すいません!それ、嘘です!」
翔一は冷や汗を掻きながら、3人に一礼して謝った。そして、世間体を気にしているロイドから、自分と翔一は異母兄弟ということにしてほしいと言われたことを話した。
(まぁ、ロッティの気持ちも分からなくもない……血のつながりのない男を居候させてるなんて奇妙だからな……)
「それで、落ち込んで歩いてたワケね。」
「ええ、まあ……でも俺、悲しいわけじゃないんです。」
翔一は俯きながら一言呟いた。
「悲しいっていうより、なんか……スカスカしてるんです。」
「スカスカ?」
「ロイドさん達に拾われてから、俺の心の中はロイドさん、ヨルさん、アーニャちゃん、それとボンドでいっぱいになって、それがなくなった分だけスカスカしてるような気がして……」
「ビールおかわり!それで?」
アイネはさらにビールの追加を注文し、続けて翔一の話を聞いた。
「後ろや周りを見ると、いつもそこには3人の笑顔と笑い声があったんですけど、それが……今はどこ向いても聞こえなくて……寂しいんです。」
「要するにポッカリ穴が開いてるってことね。で、どうするの?君はその穴をどうやって埋めるの?」
「……まだわかんないです。」
翔一はそう言って、苦笑いを浮かべた。
そんな翔一を見て、ユーリは可哀想に思ったのか、熱々の鉄板で焼けた肉を翔一の皿に乗せた。
「・・・食えよ。ここのは美味いから。」
「ありがとうございます……俺、探してみます。」
「ん?何を?」
「この穴を埋める方法です。今はまだわかんないですけど、でも絶対見つけて、この穴を絶対に埋めます!」
翔一は先ほどのアイネの質問に力強く答えた。
その返答に、アイネはウンと頷き、翔一の肩を叩いた。
「その意気よ!頑張りなさい!今日はいっぱい食べなさい!」
「はい!いただきます!」
翔一は手を合わせて一礼し、鉄板焼きを食べ始めた。
「津上、だっけ?お前寝るとことかどうすんの?」
「あ、お金ないんで今日は野宿しようと思ってます。」
リョーマは翔一の返答を聞き、顎に手を当て何か考え込んだ。
「ユーリ、お前の家に泊めてやれよ。」
「はっ!?」
「そうね、それがいいかも。」
リョーマの意見に、アイネが賛同した。しかし、ユーリは拒否するように首を横に振った。
「なんでですか!?嫌ですよ僕は!こんなやつと!」
「ユーリさん、ありがとうございます!」
「いや、まだ泊めるとは言ってねぇよ!!」
「ヨルさんにちゃんと伝えておきますよ!ユーリさんが泊めてくれたって!」
「よーし津上!今日は泊まっていいぞ!」
最初は拒否したユーリだったが、ヨルの名前が出た途端、秒で承諾した。
その変わりように、アイネとリョーマは、
(うわっ、チョロ……)
と、思った。
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そのころ、フォージャー家では、
『……』
3人とも沈黙を守ったまま食事をしていた。
「ごちそうさま……」
「アーニャ、もういいのか……?」
食事中席を立ったアーニャに、ロイドは声を上げた。アーニャの皿にはまだ料理が半分ほど残っていた。
「しょくよくない……」
アーニャはそれだけ言い残し、自分の部屋へ戻っていった。
「・・・すいません、私もちょっと・・・」
ヨルもそう言ってフォークを置いた。
「食器は流しに置いておいてください。後で私が洗っておきますから……」
ヨルはそう言い残し、アーニャと同様自分の部屋へ戻った。
一人リビングに残ったロイドは静かにため息をついた。
「……一人いなくなっただけでこれか……」
その時、ロイドは自分の胸が痛くなるのを感じ、胸を抑えた。
(……俺の判断は間違っていないはずだ。彼がここにいても、いずれオペレーション
ロイドは今まで口に出さなかったが、翔一のことを良い人間だと思っていた。昨日のパーティーでの一件や、普段から農家の老夫婦を無償で手伝ったり、そして今まで人を助けるために戦ってきた翔一に、ロイドは敬意を表していた。
だからこそ、ロイドは翔一にはその力をもっと多くの人のために使って欲しいと思っていた。
「間違ってない……俺の判断は、間違ってないはずだ……」
口で「自分は間違ってない」と言い聞かせた。しかし、そう言う度に胸が苦しくなっていくのを、ロイドは痛感した。
ヘンダーソンが歴代ライダーの主人公見たら、全員「エレガント」判定しそう。
五代雄介やタケル殿とか聖人認定しそう。たっくんは微妙かな・・・?ちょっとガラ悪いし・・・・いいヤツではあるけど。
作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します
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アギト編(翔一+フォージャー一家)
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G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
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ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)