SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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Part.10 未完成(半端者)だって何度でも言うんだ(前編)

 

「ロゼッタさんが連れ去られたって本当ですか!?」

 

ロゼッタが去ったことを聞き、慌てて帰ってきたショウマは喫茶シオンに現れた。

閉店された喫茶シオンの中は静まり返っていた。

 

「ああ……というより、ロゼッタさんが自分から行った……」

「そんな……どうして……?」

「たぶん、俺達をこれ以上巻き込まないためだ……今回の事件で、一番責任を感じているのはあの人だ……」

 

皆が意気消沈する中、ショウマは辺りを見回した。

 

「グリムは……?」

 

皆の中にグリムがいないことに気がついた。

その理由を、ヨルが暗い声で話し始めた。

 

「グリムくんは……家に……」

 

そのころ、グリムの方は……

 

「一人……一人だ……」

 

誰もいない部屋の中で、電気もつけずにソファに背もたれを預けて座っていた。

 

「ロゼッタは……俺が嫌いだった……嫌いだったんだ……ずっと……あんなに、あんなに……!!」

 

頭の中に流れるのはロゼッタとの日々だった。共に暮らし、共に生活し、毎晩のように抱き合い愛し合った。だが、それが全部嘘だった……

 

「俺の人生……なんなんだよ……!!」

 

同時に自分の今までの人生を振り返った。母親が死に、父親代わりのニコルが死に、復讐も叶わず、初恋も叶わず、挙句の果てにロゼッタから裏切られた……失ってばかりの人生だった。

 

「なんで……なんでこうなるんだよ……!!」

 

ソファの上で寝転び、うつ伏せになってクッションに顔を埋めて子どものように泣きじゃくった。

 

「誰でもいい……誰でもいいから……一人にしないでくれよ……!!」

 

孤独に寂しく泣きじゃくることしか、今のグリムにはできなかった……

 

─────────────────────────

 

義姉(ねえ)さんを攫ってきた!?何してんだアンタ!!?」

「俺は俺の仕事をしただけだ。」

 

ギアン達の方では、ライドがロゼッタを連れ去ったことを聞いたミゲルが憤っていた。

ミゲルはライドの胸倉を掴み、今にも殴りかかりそうだった。そこにギアンが間に入ってきた。

 

「何をしている?」

「ギアン……アンタがライドさんに義姉さんを攫うように指示したのか!?」

「指示するも何も……私の目的は最初からロージーだ。ロージーがいなければ、私の欲しいものは手に入らん。」

「だけど、こんな勝手なやり方……!!」

 

ミゲルはギアンのやり方に反論しようとしたが……

 

「お前だって自分のやり方で兄を追い込んだじゃないか。自分の目的のために……」

「!!」

 

ギアンのその一言に声が詰まった。ギアンの言っていることは真実だからだ。ミゲルはミゲルで目的がある。その目的のためにグリムを精神的に追い込んだ。

 

「……わかった。ここで義姉さんを攫ったことはとやかく言わない……でも、もし義姉さんに手を出そうものなら……ぼくは容赦しない!!」

 

ミゲルは2人に向かって吐き捨てるように言うと、部屋から出ていった。そして、その足でロゼッタのいる監禁部屋へ行った。

 

「お義姉さん……」

「ミゲル…くん……」

 

部屋に入ると、ロゼッタはベッドの上で足枷をつけられていた。足枷はベッドの足とつながっており、当然逃げられないようになっている。部屋に入ってきたミゲルを見て、ロゼッタは思わず身構えた。

すると、ミゲルはいきなり膝をついて頭を下げてきた。

 

「ごめんなさい……!ごめんなさい義姉さん!!」

「え……?」

 

ロゼッタは思わず戸惑ってしまう。それもそのはず、敵であるはずのミゲルが自分に頭を下げて謝罪をしているからだ。

 

「怖かったよね……怖い思いをさせてごめんなさい……!でも、なるべく早く解放するから……我慢させてごめんね……!」

 

こうしてまじまじと見ると、ミゲルはグリムとそっくりだった。同じ顔なので見た目はもちろん似ているが、グリムの内面に秘めた臆病さ、怖がりな面も似ている。2人は兄弟なのだと簡単にわかった。

 

「そっくり……」

「えっ?そりゃあそうだよ……兄弟なんだから……」

 

ロゼッタは自分の隣を手でポンポンと叩いた。座っていいと理解し、ミゲルは隣に座った。

 

「ミゲルくんさ……君、もしかしてすごくいい子なんじゃない?」

「そんなことないよ……ぼくは兄さんに悪いことした……ぼくは兄さんを苦しめた……こんなぼくがいい子なわけない……」

「それなら……どうしてあんなこと言ったの?」

 

ロゼッタはあの時、レストランでミゲルがグリムに言ったことを問う。ミゲルは罰の悪そうな顔でそっぽを向いたまま何も答えなかった。

 

「……お兄さんのこと、嫌い?」

 

その一言にミゲルは即座にロゼッタの方に顔を向けた。

 

「そんなことない!ぼくは兄さんが好きだ……むしろ愛してる……愛してるから、ぼくは兄さんにひどいことを言ったんだ。」

 

ミゲルのその言葉は、ロゼッタの胸に深く突き刺さった。ミゲルの行動と言動はグリムのため……ロゼッタも同じことをした。グリムを守るために……

 

「……私達、なんか似てるかもね……」

「……出会い方が違えばよかったのにね。」

 

二人とも、大好きな人のために行動した。だが、それが結果として傷つけてしまった。やり方が違えば、出会い方が違えば、二人はグリムと一緒にいられたかもしれない……

 

────────────────────────

 

それから1週間……

 

「ロゼッタ……ロゼッタ……」

 

グリムは街の中をあてもなく歩いていた。しかし、その足はおぼつかなくフラフラしていた。

そんな足取りで歩いているせいで、通行人とぶつかってしまう。

 

「おい、なんだよお前!?」

「人にぶつかったんだから謝るのが先じゃねーの!?」

 

ぶつかったのは運悪くチンピラ達だった。チンピラはぶつかってきたグリムに因縁をふっかけようとした。

だが、グリムはただ項垂れるだけ……

 

「何シカトしてんだよ!!土下座しろ土下座ぁ!!」

「……いい……」

「あ?」

「どうでもいい……好きにしろ……」

 

グリムは自暴自棄になっていた。胸倉を掴まれても抵抗せず、されるがまま……それをいいことにチンピラ3人はグリムを地面に叩きつけた。

 

「オラッ!どうだ!」

「へへっ、俺一回人間をサッカーボールにしてみたかったんだよなぁ!ドリャ!!」

「マジで抵抗しないでやんの!おもしれー!!」

 

チンピラ3人はグリムが抵抗しないことを面白がり、殴る蹴るの暴行を加える。3人の暴行は飽きるまで行われ、周りの人間は遠巻きに見て、通り過ぎるだけだった。

 

「はー、スッキリした。」

「二度と俺らに顔見せんな!」

「またボコボコにしてやるからな!」

 

去っていくチンピラ3人にグリムはただ倒れているだけで動こうとしない……そんなグリムの元に一人の男が現れた。

 

「グリム!!」

「ショウ…マ……」

 

現れたのはショウマ。後ろにはヨルの姿もあった。

 

「家にいないから心配したんですよ……」

「大丈夫……?怪我してる……それに、すごい痩せてる……!」

 

たったの1週間でグリムは痩せていた。痩せて頬がこけていた。

 

「ご飯…食べていないんですか……?」

「……食べる気になれない……」

 

あの大食いのグリムが何も食べる気にならないレベルにまで落ち込んでいる。その事実に二人は戸惑った。

 

「と、とりあえず人のいないところに……怪我を手当てしないと……」

「そうですね……」

 

ショウマとヨルはグリムを抱えてその場を離れた。そして連れて行った先は港にある倉庫だった。

 

「ごめんなさい、こんなところで……今のグリムくんの姿……誰にも見られたくないと思って……」

「……別にいいよ……もう、どうだっていい……俺にはもう何にも残ってない……」

 

静かに呟きながら、グリムは俯いた。そのグリムの言葉に対し、ヨルは首を横に振った。

 

「そんなことないです……!グリムくんには私達がついてます……!」

「俺には……俺にはもうロゼッタしかいないんだよ……!」

 

ヨルの言葉はグリムの耳に届いていなかった。その場で泣き出し、蹲った。

 

「でも……どこにもいないんだ……ロゼッタが……!!」

「グリムくん……」

 

今のグリムは「情けない」と言っても過言ではない。しかし、その一言で済ませるにはあまりにも残酷すぎる……そう思ったからこそ、ヨルは何も言えなかった。

しかしその時、ショウマは立ち上がった。

 

「……かわいそうだな、ロゼッタさん……お前みたいな情けない奴と一緒にいて……」

 

その言葉に、グリムの涙は引っ込んだ。

 

「……今、何て言った?」

「な……情けない奴だって言ったんだ!!お前みたいにメソメソ泣いてる奴と一緒に暮らしてたなんて……ロゼッタさんがかわいそうだって言ったんだ!!」

 

ショウマの声は震えていた。自分でも酷いことを言っているという自覚があるのだろう。しかし、グリムはその発言に激怒した。

 

「お前に何が分かんだ!!?」

 

次の瞬間、怒号とともにショウマの頬を殴った。

そのまま馬乗りになって続けてショウマに殴りかかったが、ヨルがそれを止めた。

 

「グリムくんダメです!やめなさい!!」

「うるせえ!!ショウマ……お前に何が分かるんだよ!!?俺は今まで失ってばっかだった!!母ちゃんに、親代わりになってくれた人、憧れの先輩も俺の前から消えた……俺の命を救ってくれた恩人も、すでに死んじまった……!!そして今度はロゼッタ!!失ってきた俺の気持ちが分かんのかよ!!?」

 

グリムは今までいろんなものを失ってきた。それを分かる人間など少ないだろう。だからこそ、ショウマは叫ぶ。

 

「分かるよ!!俺も……母さんを失ったから分かる!!でも……失った以上に、得たものがある!グリムだってそうじゃないの!?」

「!!」

 

ショウマの言葉にグリムの振り上げた手が止まった。すると、すかさずショウマは起き上がり胸倉をつかんだ。

 

「グリムにだって、得たものはいっぱいあったでしょ……?ヨルさんに、ロイドさん、アーニャちゃんに他のみんな……その人達と出会えたこと、全部嘘だっていうの?忘れちゃうの!?」

 

ショウマの続く言葉は、グリムの目を開かせた。その時グリムの脳裏には今まで出会ってきた多くの人々の顔が浮かんでいた。

確かに失うものが多かった。だが、それ以上に多くの人々と出会った。グリムはそのことを忘れていた。忘れてはいけない人達を、ミゲルやロゼッタのショックが大きすぎたせいで忘れていた。

 

「俺は……みんなを……」

「ようやくマシになってきたか……グリム……」

 

その時、聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。

後ろを向くと、そこにいたのはライドだった。

 

「ライド……!」

「それに……ロゼッタさん!?」

 

ライドの傍らにはなんと、腕を掴まれているロゼッタの姿があった。捕まっているはずのロゼッタが何故ここにいるのか、3人は混乱を隠せなかった。

 

「何故……って顔してんな……」

 

困惑する3人をよそに、ライドはフッと笑いロゼッタに顔を向けた。

 

「こいつはなぁ……ギアンの野郎を刺したんだよ。」

 

ライドの一言に3人はまた驚いた。それをよそにライドは語り始めた。

 

─────────────────────────

 

昨日の夜だった……俺は仕事(シノギ)を終えてアジトに戻った……女が監禁されてる部屋を通りがかった時……

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 

中からギアンの声が聞こえて、俺はドアを開けた。そこには……ベッドの上でのたうち回るギアンと、血だらけのテーブルナイフを持った女がいやがった……

 

「ハァ…ハァ……私の身体に……指一本触れるなっ!!この身体は、ダーリンの……グリムの物なの!!」

 

そう叫んだ女はナイフを自分の首元に突きつけた。

 

「アンタに汚されるぐらいなら……死んだ方がマシ!!」

 

女の目は覚悟に満ちていた……それを見ちまった俺は……思わず笑っていた。

そんな俺に、ギアンはすり寄ってきやがった。

 

「も、もういい……!この女を殺せ!!」

 

自分を刺したことが許せねぇって感じだったな……もう目的なんてどうでもよくなってたみたいだ。

だが、俺は何も言わなかった。

 

「お、おい!早くやらないか!何のためにお前を雇ったと思ってる!?」

「黙れ。」

「は……?」

「誰に向かって命令してんだ?」

 

気付いた時には、俺はギアンの野郎を殴り飛ばしてた。顔面にパンチ一発……それでギアンの奴は気絶しちまった。

 

「い、いったい……?」

 

その光景を見た女は動揺してた。まぁ、無理もねぇ……突然目の前で仲間割れが起きちゃあな……

 

「……おい、女。お前……自分が死んでもいいって思うくらい、あの半端者(グリム)が好きか?」

「……当たり前じゃん……でも、私はダーリンに酷いことを言った……もうあの人に会わせる顔なんてない……」

「だから死ぬってか?」

 

女は頷いた。俺は興味が湧いた……この女に、そしてこの女にここまでさせたグリムっていう人間にな……

 

────────────────────────

 

「そして俺は、こいつの足枷を解いて連れ出した……」

「ア、アンタ……いったい何したいんだよ……?」

 

グリムの言い分はもっともだった。敵であり、ギアンに従っているはずの男がロゼッタの拘束を解き、自分の前に連れ出しているのだから。

 

「言ったはずだ。この女に死ぬ覚悟をさせたお前という人間に興味が湧いたってな……お前は単なる半端者じゃない……違う何かがある……そいつを俺に見せてみろ……!」

 

ライドはそう言うとロゼッタを後ろへ突き飛ばした。それと同時に腹の黒ガヴから剣を抜き、地面に向けて振るい一本の線を引いた。

 

「その線から出るんじゃねぇぞ。生きてダーリンと会いたいならな……」

 

剣を向けてくるライドに、ロゼッタはコクリと頷き従った。続けてライドはグリムの方に剣を向けた。

 

「女を返して欲しけりゃ、俺と戦え……そうすりゃお前だってやる気出んだろ。」

 

構えるライドに対し、グリムはチラッとロゼッタの方を見た。ロゼッタはバツの悪そうな顔で俯き、グリムと顔を合わせようとしなかった。

 

「……ショウマ、お前のおかげで目ぇ覚めた……」

 

グリムは静かに呟き、自分の手にツバを吐く。

 

「俺はこんなところで泣いてるわけにはいかねぇんだ……今まで出会ってきた奴らのためにも、そして……」

 

濡れた手で髪をかきあげ、一時的に髪をオールバックに整え、ライドを睨みつける。

 

「俺の前から消えてった奴らのために、俺が出来ることを……!!」

 

そして、固く拳を握りしめ……それを構える。

 

「そのために……ライド•イスルギィ!!てめぇをぶっ倒して、ロゼッタを奪い返す!!」

 

グリムは戦う覚悟を固めた。不貞腐れていた自分を恥じ、今まで出会った人達のため、死んでいった人達のため、そして自分のために……目の前の敵を倒すためにグリムは動く。

 

「……ハッ、ようやくやる気になったか……来いっ!!グリムゥゥゥ!!」

「おおおおおおおおおおお!!」

 

雄叫びとともにグリムは駆け出し、握った拳を突き出した。同時にライドも拳を突き出した。

2人の拳は互いの顔面を捉えていたが、二人は顔を傾けてそれをよけ、そのまま互いの頭突きをぶつけた。

 

「ぐぅぅぅ……!!」

「ぬぅぅぅ……らぁっ!!」

 

ライドが頭を強く押し出し、グリムを突き飛ばし、回し蹴りを繰り出した。グリムはすかさず腕で防いだが、ライドの蹴りは強く、膝をつきそうになる。

 

「くっ……!」

「なんだ……啖呵切ってその程度か!!」

 

ライドの蹴りは本気ではない。グリムならば簡単によけ、防ぐことのできる一発だった。だが、今のグリムには体力が残っていなかった。その原因は……

 

「まさか……グリムくん、ご飯食べてないから体力が……!!」

 

1週間もロクに食べていなかったせいで、馬力が出なかった。

 

「オラァ!!」

「ぐっ!」

 

ライドに蹴られ、さらに殴り飛ばされたグリムは地面に転がった。だが、なんとか起き上がる。

 

(倒れてられっか……ロゼッタを取り戻す……だから、今、目の前の壁を……越えてやるんだ……!)

「もう終わりか……やっぱてめぇは……半端者だな!!」

 

起き上がろうとするグリムに近づき、ライドは両手を合わせてハンマーのように振り上げる。

 

「グリム!」

「グリムくん!!」

「……っ!!ダーリン!!」

 

このままではグリムの頭が粉砕される……だが、その時だった。

 

「グリム!こいつ使え!!」

 

どこからか聞こえてきた声とともに、グリムの目の前にある物が投げ込まれた。

 

「!!」

 

グリムは咄嗟に転がって攻撃をよけ、それを手に取った。

 

「これ、タクミの……!!」

「あれはタクミさんの……!まさか……」

 

ヨルは辺りを見回したが、誰もいなかった。だが、グリムはそれを投げ込んだのが誰か分かった。かつて共に戦った仲間が使っていたベルト……

グリムはそれを腰に巻いた。

 

「使わせてもらうぜ……タクミ……」

《Standing by...》

 

ケータイを開き、「5」のキーを3回押し、「Enter」キーを押して閉じた。

 

「奥の手を隠してたとはなぁ……」

《クッキー!》

 

ライドの方も、ゴチゾウを取り出し、黒ガヴの口を開けて舌にセットした。

 

「別に隠してたわけじゃねぇ……これは、仲間が貸してくれた力だ……」

「なら、見せてみな……仲間が貸してくれた力って奴と……半端者の意地をなぁ!!」

《BITEクッキー!BITEクッキー!》

 

ハンドルを回転させ、自分の周りに半透明で巨大なチョコチップクッキーを出現させ、グリムもまた、ケータイをベルトに装填する。

 

『変身!!』

《Complete.》

《ブレイクッキー!ヤミー!》

 

出現したチョコチップクッキーが砕け、黒スーツの上に装着され、ライドはビターガヴに変身し、そしてグリムは身体に赤く光るラインが走り、黒と銀色の鎧へと変わり……仮面ライダーファイズへと変身した。

 

「ファイズ……グリムくんがファイズに……!」

「さぁ、とことんやろうぜ……ライド!!」

「ああ……やるか……グリムッ!!」

 

2つの眼光が輝き、2人の戦士が振るう拳がぶつかり合う。

そして、グリムは見せる。半端者なりの意地を……大切なものを取り戻す男の拳を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ「意外な一面」

ある日のこと、ロイドはグリムとともにボンドの散歩に出ていた。

「すまないな、散歩につき合わせて……」
「いいって。暇だったし。」

二人はボンドをドッグランへと連れて行った。そこには意外な人物がいた。

「げっ、アニキ!?」
「おぉ……グリムか……」

ドッグランにはなんとライドの姿があった。グリムは思わず駆け寄った。

「なんでアニキがここに……犬飼ってたのか?」
「いや……犬なんて飼ってねぇ。別のを飼ってる……あそこにいるだろ。」

ライドはドッグランにいる自分のペットを指差した。

「えっ、いやアレって……」
「……亀……?」

走る犬達に紛れて歩いているのは、なんと亀だった。

「ああ、俺のペット……リク亀の『ゾンビ』だ。」
「ゾンビ……?」
「ゾンビみてーに遅いからゾンビだ。おい、ゾンビ!一秒でも遅かったら高い餌はやらねぇからな!!」

ベンチに座りながら亀のゾンビに呼びかける。ゾンビはその一声に応えたのか、気持ち足が早くなった……ように見えた。

「やりゃあできんじゃねぇか……さすがは俺のペットだ。」
「ペット飼ってたんだな……雷狼のライド……」
「しかも亀をな……」

その後、ライドはゾンビに高級餌を与え、脇に抱きかかえて帰っていったのだった……
あの雷狼とも呼ばれた男が亀を飼っていて、ドッグランで走らせていたという、なんともいえない事実に二人は誰にも言わないことにしたとか……

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