少し遅くなりましたが、対ライド完結です
ライド•イスルギ……東国最大のマフィア「ブリッツファミリー」の
その男が目の前にいる。自分と拳をぶつけている……
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そのまま力比べに入るが、ライドの方が力は強く、グリムは投げられ倉庫の壁に叩きつけられる。
「らぁっ!!」
「!!」
すかさずライドが蹴りかかってくるが、グリムは咄嗟にその足をつかんだ。
「この……どりゃあ!!」
両腕でつかんだその脚をそのまま捻じるようにライドを投げる。しかし、ライドは両手を地面について着地し、逆にグリムの胸に膝を食らわせる。
「がふっ…!」
「場数が違うんだよ……!」
倒れるグリムを無理やり起こして立ち上がらせる。そして、ふらつくグリムに向かって……
「ちぇりゃあぁぁぁぁ!!」
顔面に一発、胸に二発、腹部に二発の正拳を叩き込む。
「正中線五段突き……!」
「か、空手も使えんのかよ……」
「てめえの頭は鳥か?言っただろ……」
正拳突きを5発食らってまたふらつくグリムの胸倉を掴むライド。
「場数が違うってなぁ!!」
胸倉を掴んだまま、グリムを倉庫に向かって投げ飛ばした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
倉庫に激突した反動で屋根の上に転がるグリム。ライドは追い打ちをかけるため倉庫の壁を走って登っていく。
「まずい……!グリム!!」
このままではグリムが危ないと察したショウマは、自分の腹部の赤ガヴからガヴガブレイドを出現させ、取り出した。
「これ使って!!」
ショウマは剣を思い切り投げ飛ばし、剣は屋根の上めがけて飛んでいった。
「!!」
飛んできた剣を見て、グリムは咄嗟に手に取った。
同時に背後からライドが剣を持って襲いかかってくるが、グリムはショウマから受け取った剣で攻撃を防ぐ。
互いの剣がぶつかり合い、火花が散っていく。
「剣の扱いなら俺が……!」
「上……だと思ったか?」
グリムとの鍔迫り合いの最中、ライドはゴチゾウを取り出し、剣の口の部分に押し付けた。ゴチゾウは剣の中に吸い込まれた。
それを確認したライドは剣を押し出してグリムを突き飛ばす。そして、剣先から「サクッ」という擬音を出現させ、それに向かって剣を振るう。すると、擬音が爆発し剣に爆炎を纏わせながらグリムに斬りかかる。
「なにっ!?」
爆発と斬撃の波状攻撃……続けざまに繰り出される多段攻撃にグリムは防ぐので精一杯だった。
「これが全力か……グリム……!!」
「んなわけ……!」
その時、グリムは左腕につけた時計型のマシン「ファイズアクセル」に気がついた。
「ねぇだろ!!」
ファイズアクセルからメモリを抜き取り、グリムはファイズフォンのメモリを取り替えた。
《Complete.》
ファイズフォンから音声が鳴り響き、ファイズの胸の装甲が開いて肩に移動。さらに目の色が赤に、身体に走る赤いラインが銀色に変わった。
「後10秒で終わらせてやる……!」
《Start up.》
腰を深く落とし、ファイズアクセルのスイッチを押した。すると、グリムが駆け出したと同時に10秒のカウントダウンが始まった。
アクセルフォームに変わったことで10秒の間だけ高速移動が可能になった。
高速で走り回りながら、背後からライドに襲いかかる。
「ぐっ!」
(よし、これならいける!)
死角からの奇襲ならば攻撃は当たる……グリムは確信しながら次々と攻撃を与えていく。
残り1秒になったところで剣を突き出し、トドメの一撃を繰り出した。しかし……
「甘いんだよ……てめぇは……」
《Time out.》
ライドはこのタイミングを、時間切れになる瞬間を狙っていた。
「かはっ……!?」
「人間、一芸に秀でてると……行動がワンパターンになるんだよな……お前みたいにな。」
ライドが攻撃を食らっていたのはグリムの行動パターンを読むためだった。グリムは死角からまっすぐ突っ込んで攻撃するだけだった。軌道さえ読めれば反撃は容易い……
「ちく、しょう……!」
みぞおちに鋭い一撃を食らい、グリムは思わず膝をついてしまう。そこにライドは容赦なく蹴り飛ばし、グリムを転がす。
「むぅん!!」
さらにライドは顔面めがけて拳を突き出す。倒れているグリムは咄嗟に頭を傾けて寸前で拳をかわす。ライドの拳はそのまま屋根に当たり、屋根にヒビが入った次の瞬間、大きな穴が開いて二人はそのまま倉庫の中へ落ちた。
「うわっ!?」
「ちっ!」
二人が落ちた先は粉が入った大袋の上。どうやら粉倉庫のようで大量の大袋が積み上げられていた。
「ほぉ……」
ライドは周りの粉を見てニヤリと笑い、剣を振って「サクッ」の擬音を出現させた。
「まさか……!」
周りは大量の粉……しかも二人が不時着したことで粉袋の一つが破け、粉が舞っている。もし、この状況で火でもついたら……
「弾けろ。」
ライドは静かに呟き、剣で擬音を切り裂いた。その瞬間、粉倉庫全体で大きな爆発が発生し、粉倉庫そのものを吹き飛ばしてしまった。
「粉塵爆発……!」
「グリムが巻き添えに……!」
「ダーリン!」
3人はグリムの安否を気遣った。その時、倉庫の残骸が燃え広がる中、一つの人影が炎の中から現れた。
それを見た瞬間、3人はほっとため息を吐いて笑顔を浮かべた……だが、その笑顔はすぐに消え去った。
炎の中から現れたのは……ライドだった。
「そんな……グリムくんは……!?」
「さぁな……かなり近距離で爆発したからな……吹き飛んだかもな。」
本当にグリムはやられてしまったのか……と、三人が思った次の瞬間、倉庫の残骸の中から何かが蠢き、立ち上がった。
「……生きてやがったか、グリム……」
「ハァ……ハァ……!」
もうボロボロになっていて、立ち上がることがやっとの状態のグリム。それでもグリムは地に足をつけ、ライドを睨みつける。
「タフな野郎だ……半端者のくせに……」
「ああ、確かに俺は半端者だ……俺は、自分がやるべきことをアンタに押し付けようとした……本当は、俺自身がやらなきゃいけないなんだ……俺が、みんなに夢を見せなきゃいけなかったんだ……!!」
心情の吐露とともに足を一歩前に踏み出すグリム。
「俺はみんなを腹いっぱいにする……人間だけじゃない、オルフェノクのみんなも!だから、俺はみんなの夢になる……それが中途半端だと言われても、半端者の夢だと笑われても、俺はそれを突き進む!」
もうそこには、情けなく落ち込んでいた少年はいなかった。ライドの目の前にいるのは、夢に向かって突き進むことを決めた一人の少年……否、男の姿があった。
「それを邪魔するなら……たとえアンタでも叩き潰す!アンタという壁を打ち壊す!!」
グリムのその言葉を聞いたライドは、仮面の下でフッと笑っていた。自分でも気が付かない内に。
「……はっ、バカガキが……」
「そんなこと、先刻承知なんだよッ!!!」
グリムは叫びとともにライドに向かって突進していく。それと同時に、ファイズアクセルのスイッチをもう一度押した。
《Start up.》
(また同じように死角からの攻撃か……芸のない野郎だ!)
先ほどと同じように死角から攻撃がくると思い、後ろを振り返った。だが、そこにグリムの姿はなかった。
「なっ……うぐ!」
不思議に思っていた矢先、背後から一撃を食らった。
(バ、バカな……今の軌道は死角からのはず……!!)
ライドは負けじと拳を繰り出した。
《Start up.》
しかし、グリムはファイズアクセルのスイッチをもう一度押し、再加速を始めた。
(こいつ、まさか……!)
ライドは何かに気づき始めた。だが、また死角から来ると思い振り返るが、グリムはおらず、また背後から一撃を食らってしまう。
《Start up.》
そしてグリムはまたファイズアクセルのスイッチを押して加速した。
その瞬間、ライドは気付いた。
(やはりそうだ……!こいつ、スイッチのオンとオフを切り替えて……!!)
グリムはファイズアクセルのスイッチをオンオフを何度も切り替えていた。そうすることで1秒だけ、0.5秒だけ……と瞬間的な加速を可能とした。
この作戦で、グリムはライドの死角に潜り込む……と見せかけて正面から、正面と見せかけて背後から……という攻撃を繰り出してきたのだ。
(考えやがった……このガキが……!)
グリムの術中にハマり、ライドは対応できずに次から次へと攻撃を食らっていく。
(だが、グリムは俺から受けたダメージが残ってる……体力は残っていないはず……それに、所詮は10秒しか使えない力……もう何度も使えねぇはずだ……!!)
ライドの考え通り、グリムの身体にはライドから受けたダメージが残っており、体力が落ちている。さらに、ファイズアクセルの加速も……残り0.3秒……後1回分しか残されていない……
(残り0.3秒……後1回……!)
(次が……!次の一撃で……!)
(全部決める!!)
泣いても笑っても、次の一撃が全てを決める……
グリムは駆け出した。スイッチを押し、今度は真正面から突っ込んでいき、渾身の拳を繰り出した。
だが、ライドはその行動を読んでいた。グリムの拳を片手で受け止めてしまった。
「もうこれで……ネタ切れだろ……!」
「くそっ……!」
「死ね、グリムゥゥゥ!!」
ライドはトドメを刺すべくもう片方の拳を振り上げた。
「グリム!」
「グリムくん!!」
誰もがグリムの死を、敗北を連想した。ライドの拳がだんだんとグリムの顔面に伸びていく……だが次の瞬間、
「ダーリン!!負けないでーーーー!!」
愛する者の叫びがこだました。その叫びに応えるように、グリムは顔を横に傾け、寸前のところで攻撃をかわした。
そして、代わりにグリムの拳がライドの黒ガヴに命中した。
「なっ……!」
「おおおおおおおおおおおおおお!!!だぁりゃあぁぁぁぁ!!」
その一撃は、体力が限界の人間から出されるものとは思えなかった。強力、強烈、最高、最速、最善の、現時点のグリムが繰り出せる最大の一撃。
「ぬ…ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
渾身の一撃を食らったライドは悲鳴とともに吹き飛び、転がっていき、コンクリートの地面に倒れた。
「か……勝った……!!」
「ええ……グリムくんが勝ちました……!!」
グリムの勝利に、ヨルとショウマは喜んだ。すぐさまグリムの元に駆け寄ろうとしたが、それよりも早くロゼッタが駆け出した。
「ダーリン!!」
フラフラの状態で変身を解除するグリムに、ロゼッタは抱きつき、抱きしめた。
「ごめんね……!ひどいこと言ってごめんね……!!」
「俺の方こそ……情けない夫でごめんな……」
二人は久々に抱き合い、互いに涙を流し再会を分かち合った。
その様子を見て、ショウマは安心してホッと胸を撫で下ろし、ヨルは安心のあまり号泣していた。
「くっ……!グリム……!」
倒されたライドの方はビターガヴの変身が解け、元の姿に戻っていた。倒れながらもなんとか立ち上がり、グリムを睨みつける。
「俺を……殺さねぇのか……!?完治したら、またお前の前に現れるぞ……!」
「……だとしても、俺はアンタを殺さない。」
「なんでだ!?目の前の壁をブチ壊すんじゃなかったのか!?」
自分を殺さないことに疑問を抱くライド。しかし、グリムの答えは単純だった。
「……アンタがカッコいいからだ。」
「……は?」
「俺は、アンタに憧れた。俺をぶっ飛ばしたアンタに、めちゃくちゃ強いアンタに……だから殺せない。」
その返答に呆然とするライド。しかし、すぐに笑い始めた。
「くくっ……くはははははは!!」
「また半端者って笑うか?笑いたいなら笑えよ。」
「……見る目ねぇよ、お前……俺はそんな人間じゃねぇ……」
ライドはフッと笑い、その場に腰を下ろして静かに語り始めた。
「俺は……人を殴るのが好きでな……相手がムカつくから殴るんじゃない……一方的に殴るのが好きだから、殴るんだ……東西戦争に参加したのも、
「そうだったのか……」
ライドの隠された秘密に、陳腐な返答しか出てこないグリム。他の三人も固唾を呑んで見守っている。
「マフィアは天職だと思った……殴りたい奴を好きなように殴れて、給料だってもらえる……だが、そうしていく内に……俺はいつの間にか幹部になってやがった。幹部になっちまうと、今までみたいに好きなようにはできなかった。下の奴らに示しがつかなくなっちまうし、
そう言って笑うライドだったが、その笑みはなんとも寂しそうに見えた。
「それ以来俺は満たされなかった。クソ高い酒を飲んでも、女を抱いても……虚しくなるだけ……もう少し、お前みたいにバカだったらよかったのかもな……」
ライドはずっと自分の生き方に迷っていた。望まぬ出世のせいで、自分の生き方を曲げてしまったライド。だが、今さらマフィアをやめるわけにもいかず、ただ惰性で生きるしかなくなった。
もしかすれば、ライドは夢見るグリムに憧れに近い感情があったのかもしれない……
「……俺だって、そんなにバカ正直に生きられたわけじゃない……でも、俺には親父が、ヨル先輩が、津上先輩やみんなが……俺にたくさんの生き方を見せてくれた。そいつらの生き方を見て、俺もそうなりたいって、思ったんだ。」
「……ラッキーだったんだな、お前は……」
もし、ライドにも出会いが……グリムのように自分の人生を動かす人間と出会うことができれば、変わっていたかもしれない……
そう思ったのか、ライドは立ち上がった。
「……何故、ギアンの野郎がいまさらその女を狙ったと思う。」
グリムの傍らにいるロゼッタをチラリと見て、グリムに尋ねた。しかし、グリムは答えられずまごついた。
「おかしいと思わねぇか?なんで今になってギアンがこの女の前に現れたのか……それはな、その女の親が遺した遺産が目的だ。」
ライドの言葉に、一番に驚いたのはロゼッタだった。
「い、遺産って……私、あの人に全部取られたはずなんですけど……」
「表向きはな。だが、ギアンが言うにはロゼッタの両親は他の誰にも分からない……別の遺産を用意したらしい。その額は……10億。」
『じ……10億!?』
途方もない金額にグリム達は驚愕し、思わず口を開けてしまう。
「その10億を使って……ギアンは何をする気なんだ!?」
「それは……っ!!」
その時、ライドは目をカッと見開いたかと思うと、グリムに向かって駆け出した。そしてそのままグリムとロゼッタを突き飛ばした……と、次の瞬間、銃声が響き渡り、ライドの身体を貫いた。
「ぐっ……!」
「ライド……!?」
ライドはグリム達の盾となった。そんなライドを撃ったのはライドと同じくマフィア風の男達だった。
「ククッ……いい様だなぁ、”雷狼”さんよぉ」
「て、てめーら……まさか、『レーゲンファミリー』の……!」
ライドの言葉に男達はニヤニヤと笑い、拳銃を向けながら口を開いた。
「そうさ……俺等は西国最大のマフィア『レーゲンファミリー』!」
「バートンさんが俺等を雇ってくれてなぁ……お前は用済みだとさ!」
ギアンはライドに見切りをつけたようだ。ライドの代わりにレーゲンファミリーのマフィア達と契約を交わしたのだろう。そしてライドは用済みとして処分される……
「なめやがって……!」
いつもならこの程度の相手は簡単に倒せるが、今は戦った後で心身ともに疲弊している。加えて、グリムからの一撃で黒ガヴにヒビが入ってしまい、変身できるかどうか分からない状態だった。
考えている内に、マフィア達はさらに増え、十数人程度まで増えていった。
「きたねーぞ……弱った相手狙いやがって!」
「なんとでも言いな!こっちは千載一遇のチャンスを逃すつもりはねぇのよ!」
「”雷狼”を討ち取りゃあ、俺等の名も上がる!実質、『レーゲンファミリー』の天下だ!!」
マフィア達は一斉に銃を構え、グリム達は身構えた。
だがその時、ライドは仁王立ちになってグリム達の前から一歩も動かなかった。
「グリム……いけ!」
「な、何言って……!」
「……自分の限界ぐらい、分かってんだよ……」
その言葉にグリムは目を見開いた。すでに満身創痍のライド……今のマフィア達からの凶弾で、その身体は限界に達しようとしているのだ。
すると、ライドは自分の上着を掴んだ。
「知ってっか?日本の
次の瞬間、ライドは上着を勢いよく、破るように脱ぎ捨てた。
「雷……」
「狼……!」
雷の中を走る一匹の狼の勇姿が、そこにあった。ライドの背中に刻まれていた。
「グリム……人間なんてのは、所詮遅かれ早かれ死ぬんだ……だったらよ……!自分の道を……まっすぐ進めや……」
「ライド……!」
「いけ、お前は俺の……
その言葉にグリムの目は潤んだ。今までグリムのことを弟分とは認めてくれなかった。認めさせてくれなかった……そんなライドが自分のことを弟分と呼んでくれた……ならば、自分にできることは、ただ一つ……
「……みんな、いくぞ!」
「でも!」
「
ショウマとヨルを説き伏せ、グリムはロゼッタを抱きかかえてその場を離れていく……その前に、グリムは足を止め、ライドに言葉を放った。
「ライドのアニキ……短い間でしたが、今まで……!ありがとうございました……!!」
「……いいからいけっ!!」
それが2人の最後の言葉だった。
グリムは涙ながらにその場を離れ、仲間達も後に続いていく。
そして、残されたライドは一人でレーゲンファミリーのマフィア達の前に立ちはだかる。
「こっから地獄だ……!てめぇら、覚悟を……」
その時、ライドは自分の手に違和感を覚えた。見てみると、いつの間にかゴチゾウが自分の手に来ていた。
「お前……フッ、お前も地獄を見たいってか……」
ライドが笑うと、ゴチゾウはまるで頷くように動く。
「なら……見せてやろうじゃねぇか、地獄を!!」
「な、何言ってんだコイツ……さっさとくたばれや!」
マフィア達は一斉に銃を撃ち、ライドの身体に銃弾の雨を浴びせた……
「うっ……!」
だが、ライドは倒れなかった。口から血を吐いても、身体中が血だらけになっても……
「おおおおおおおおお!!」
雄叫びとともに、ヒビが入った黒ガヴの口を開き、舌にゴチゾウを乗せた。
《BITEクッキー!BITEクッキー!》
ハンドルを回し、自身の周囲に半透明のチョコチップクッキーを出現させ……
「変…身……!!」
黒ガヴのスイッチを叩き、砕けたチョコチップクッキーを鎧として纏い、ビターガヴに変身した。
《ブレイクッキー!ヤミー!!》
黄色から赤色に変わったその目は、まるで血だらけになったライドを表しているかのようだった。
「ぐっ!うあぁぁぁぁぁ……!!」
黒ガヴにヒビが入った影響か、全身に激痛が走った。まるで身体中をノコギリでゆっくりと切り裂かれるかのような激痛……だが、その程度でライドは止まらない……
襲いかかる銃弾の雨の中を、雷狼が駆ける……たとえ、その命が果てようとも、男は拳を振るう。
弟を、バカで中途半端な、小さき獅子を、前へ進ませるために……
おまけ「もしもあの時……」
いつからだったろう……人を殴ることが好きになったのは。このせいで親から「化け物」と罵られ、早々に一人になった。
別に良かったけどな。家族なんて煩わしい。これからは好きに生きればいい。もう止める奴なんていない。殴りたい奴を好きな時に好きなだけ殴ればいいんだ。
それからしばらくして、戦争が起こった。俺は志願兵になって戦争に参加した。戦争は最高だった。敵がどんどん出てきた。相手には困らなかった。
だが、やがて戦争が終わって……俺はまた一人になった。仕事も金もなくて、食うものにも困ったが……俺はなんとか生きてた。
「あ、あの……」
残飯から拾ったパンを食べようとした時、みすぼらしい褐色肌のガキがいた。そのガキは俺のパンを欲しそうに見てやがった。
このバカ……そんな目をすれば俺がパンを渡すと思うのか?おそらく俺と同じ家無しだろうが……誰かに施しを受けようなんて……バカの極みだ。
俺はガキを無視してパンを貪ってその場を去った。
その後、ガキはどうなったのか分からない……多分死んでるだろうが、俺には関係ない。
……だが、もしあの時、あのガキとパンを半分にしていたら……俺は何かが変わっていたんだろうか。俺も少しは、”バカ”になれていたのか?
それから何年も経って、ガキのことも忘れていた頃、俺は「ブリッツファミリー」に入り、そこで出世して幹部になった。
そんな時、アイツが現れた……グリム……
「ライドのアニキー!待ってくれよー!!」
グリムを見た瞬間、昔見捨てたあのガキのことを思い出した。あのガキとよく似ていた……まさか、な……
とにかく、このバカは俺を「アニキ」と呼びやがる。そんな風に呼ばれる義理はねぇ……だが、もしコイツが俺を認めさせる日が来れば、そのときは……