SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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Part.12 獅子の目覚め

 

「この間は……本当にごめん!!」

 

喫茶シオンに逃げ込んだ四人は、仲間達と合流。その中で、グリムは皆に頭を下げた。

ついこの間まで不貞腐れて皆に酷いを態度を取ってしまったことへの謝罪だ。

 

「いや……お前がちゃんと元に戻ってくれただけでも嬉しいよ。そうだろ、みんな。」

 

真っ先にフリッドが謝罪を受け入れ、他の皆もアレは仕方なかった、とグリムの態度を許した。

しかし、

 

「ぼくは許さない!」

 

ただ一人、ユーリだけは謝罪を許さなかった。

 

「ぼくらが心配して来てやっても門前払いするような奴……簡単に許せるわけがない!」

「ユーリ君、それは……」

「……いいぜ。」

 

グリムは仲間の言葉を遮り、ユーリの前に立った。

 

「殴って気が済むなら、気が済むまで殴ってくれていい。一発でと、2発でも……何十発でも……」

 

グリムは両手を後ろに回し、頬を差し出す。

その言葉に従って、ユーリは拳を握りしめ……グリムの頰に炸裂させた。頰に一撃を食らってグリムはふらついたが、倒れず、足を床に踏みしめる。

 

「……今のでだいぶ溜飲は下がったよ。」

 

殴られても倒れず立ち続けるグリムの姿に、ユーリはフッと笑い手を差し出した。

 

「おかえり、グリム。」

「へっ……お前がそんなこと言うなんてな。ただいま!」

 

差し出された手を取り、ユーリと握手を交わした。

 

「それにしても、ギアンはロゼッタさんの遺産が目当てだったのか……」

 

グリム達はライドから聞いた情報を皆に伝えていた。ギアンがロゼッタを狙っていた理由は、ロゼッタの両親が遺した推定10億の遺産……

 

「ギアンは10億を手に入れて何をする気なんだ?」

「単に私腹を肥やすためか、それか別の目的か……」

「それと……レーゲンファミリーがギアンの味方についたのも問題だ……」

 

ギアンはライドに見切りをつけ、レーゲンファミリーを味方につけた。レーゲンファミリーは西国でも最大のマフィア組織……その兵隊(構成員)の数は3000……軍ほどではなくとも、その武力は圧倒的だ。

 

「シルヴィアさん、WISEの構成員を兵隊として使えませんか?」

 

フリッドはシルヴィアにアイデアを進言した。だが、シルヴィアは首を横に振った。

 

「無理だ……WISEはスパイ組織であって、軍隊ではない……それに、WISEは……昔からグランツに資金援助を受けている。今、WISEがレーゲンファミリーとギアンに敵対すれば、それこそWISEが壊滅する……!」

 

相手はギアンだけでなく、レーゲンファミリーと西国保安局署長グランツ……もしこれらと敵対すれば、それが再び東西戦争を起こすきっかけになるかもしれない……

 

「じゃあ……八方塞がりじゃないですか……」

「いや……策はまだある。」

 

皆が意気消沈する中、グリムが声を上げた。

 

「シルヴィア、WISEは今までどれぐらい援助してもらってたんだ?」

「……推定だが、1億ほどだ。」

 

シルヴィアから援助額を聞くと、グリムはロゼッタの方に顔を向けた。

 

「ロゼッタ……お前の10億、俺に預けてくれ。」

「えっ?」

「シルヴィア、俺がアンタに……WISEに5億渡す!」

 

グリムの一言に皆は目を見開いて驚いた。いきなり5億渡すというのだから当然だ。それも、ロゼッタの遺産から……

 

「もうアンタらはグランツから援助を受ける必要はない……俺がグランがアンタらに援助した5倍の額を払ってやる!」

「だが、いきなりそんなこと……」

「アンタらはグランツのために働いてんのか?!」

「!」

 

グリムの言葉にシルヴィアは目を見開いた。グリムは続けて言った。

 

「違うだろ!アンタらはアンタらなりのやり方で、西国の平和……いや、世界平和を望んでたんだろ!!だったら、グランツとかいうギアンとつるんでるような、限りなくブラックな奴を気にしてる場合じゃねぇだろ!!それとも何か?自信ないのか?自分達のやり方に!」

「……あんまり私を侮るなよ。」

 

シルヴィアは静かに呟き、グリムを怒鳴る……かと思いきや、

 

「WISEの意地を見せてやる。グランツに……いや、ギアンに目に物見せてやる!」

「その調子だ……」

 

シルヴィアの決断にグリムはグッと右手の親指を上げてみせた。

 

「ところで……残りの5億はどうするんですか?」

 

ヨルがグリムに尋ねると、グリムはフーっと息を整え、ヨルの顔を見つめた。

 

「……ヨル先輩、アンタに頼みがある。少しの間だけ、”いばら姫”に戻ってくれ。」

「?」

 

───────────────────────

 

東国内にある大きな屋敷……ここが、東国最大のマフィア「ブリッツファミリー」の本部……そこにブリッツファミリーの首領(ボス)、トネールの姿があった。さらには副首領(アンダーボス)相談役(コンシリエーレ)幹部(カポレージム)といった役職についているメンバー達もそろっていた。

 

「……で、ワシら全員が揃っているこの場で何を話すつもりだ?小僧……」

 

役職のある連中が揃い踏みの中……グリムはその場の床に座っていた。皆は椅子に座っているが、グリムは床に正座していた。

 

「チッ、これはゴルフどころじゃなくなっちまったな。なぁ、トルエーノ。」

 

片手に持った胡桃を砕き、食べている中年の男、副首領(アンダーボス)グロームはボヤきながら隣にいる長髪の男を目をやった。

 

「ええ……こんな昼間から、私らを集めた理由……話してくれるんでしょうな?」

 

糸目で長髪の男、相談役(コンシリエーレ)トルエーノは前髪をいじりながらグリムを睨む。

 

皆が皆、独特な威圧感を放っており、グリムでさえも少し震えていた。

 

「……単刀直入に申し上げます。あなた方ブリッツファミリーを兵隊として雇いたい。」

「……ほぉ、敵は?」

「あなた方の天敵、レーゲンファミリー全員です。」

 

その言葉に、構成員達はざわめいた。しかし、トネールは冷静に対応する。

 

「なんでお前さんはレーゲンファミリーと敵対してんだ?」

「……話せば長いことながら……端的に言ってしまえば、ライドのアニキの敵討ちです。」

 

その時、副首領(アンダーボス)のグロームは立ち上がり、声を上げた。

 

「おい、じゃあ……ライドはレーゲンファミリーに殺されたってのか!」

「死体が見つかったんですか!?」

「警察はまだ公表してませんが、港で死体が見つかったそうです。」

 

トルエーノの話を聞き、グリムは思わず俯いた。予想はしていたが、やはりライドは死んでしまった……その事実に打ちのめされそうだった。

 

「実は……ライドのアニキが死んだのは、俺のせいでもあるんです……」

 

グリムは事情を話した。ライドがブリッツファミリーとは関係無しに個人でギアンの味方になったこと、ロゼッタをさらったこと、自分と戦ったこと、その後にレーゲンファミリーに襲われたこと……

 

「……まさか、ワシの相談無しにライドがそんなことをしてやがったとはな。」

首領(ボス)!仇討ちをしようぜ!やられっぱなしじゃいい笑い者だ!」

「待ってください、グロームさん。仇討ちもそうですが、ライドが抜けてしまった穴をどうやって埋めるかも重要です。」

 

憤るグロームに対し、トルエーノは冷静な言葉を投げかける。

 

「ライドは約6割の上納金(シノギ)を納めてきました。ライドがいなくなったとなれば、損害は大きい……であれば、今後を考えて後釜を……」

「確かに……ウチはライドの存在に甘えて、それに追随する後釜が育たなかった……恥ずかしい話だがな。」

 

ライドはブリッツファミリーにとっては大きな存在……その抜けた穴も大きい……そんな時、グリムは声を上げた。

 

「今回、私がここに来たのは、あなた方を兵隊として雇う……それだけではなく、この私……グリム•ハワードをブリッツファミリーに入れていただきたく、直談判に来ました!!」

 

グリムは大声でそう言った。グリムは本気だった。身代わりになってくれたライドに報いるために、自分が必死になって考えて出した答え……

しかし、しばしの沈黙の後、トネール達は急に笑い始めた。

 

「ギャハハハハハハハハ!!お、お前みたいなガキがブリッツファミリーに入れると思ってんのかよ!!」

「ホホホ……!これはとんだお笑い草ですねぇ……」

 

グロームとトルエーノが笑う中、トネールも笑っていたがすぐに真顔に戻った。

 

「……悪いな、坊主。ブリッツファミリーはお前みたいなガキが入れる場所じゃねぇんだよ。帰りな。」

 

トネールは優しく語りかけるように言っていたが、目は笑っていなかった。それに対し、グリムは言った。

 

「俺……前から思ってたんですよ。」

「あ?」

「レーゲンファミリーの構成員が3000に対して、ブリッツファミリーはたった500で圧倒的差なのに、なんでレーゲンの奴らはブリッツファミリーを潰さないのかって。」

 

グリムの言う通り、レーゲンファミリーがその気になればブリッツファミリーを潰せるはずなのに、なぜ潰しに来ないのか……

 

「もしかして……ライドのアニキがいたからじゃないスか?レーゲンの奴ら、ライドのアニキが怖かったんじゃないですか?ライドの強さは圧倒的……たぶん東国の中でも有数だろうな……さっき、そっちの糸目の人も言ってたじゃないですか。ライドのアニキは6割の金を納めてる……つまり、稼ぎ頭でしょ。アニキはマフィアとしての才覚と強さがあった……そんな人がいなくなったとなれば……この組織が潰れるのは目に見えてる。」

 

グリムのその言葉を聞いた瞬間、今まで笑っていたグロームやトルエーノ達は素に戻った。

すると、グリムはフッと笑って続けて言った。

 

「トネールさん、アンタはブリッツファミリーの首領(ボス)という誰もが畏怖する立場にいながら……その最期は惨めなもんになる。今のままだとな。」

「……てめぇ、口の聞き方を知らねぇようだな……」

 

トネールは表情こそ変わっていないが怒っているようで、杖を強く握りしめた。同じくグロームも拳を固く握りしめ、トルエーノも腰に携えたサーベルに手をかけた。

他の皆も懐に手を入れている。これ以上グリムが何か言おうものなら、即座に殺すつもりなのだ。

だがその瞬間、部屋の外から騒がしい声が聞こえてきた。

 

「お、おい!勝手に入るな!」

 

下っ端の警告を無視し、そのドアは勢いよく開かれた。現れたのは、ヨルを含めたガーデンのメンバー全員だった。

 

「こいつら……」

「俺を含め、ここにいるのは殺し屋組織”ガーデン”のメンバーです。俺がブリッツファミリーに入った暁には……」

「我々ガーデンはブリッツファミリーの傘下に加わります。」

 

グリムの言葉に続くように、ガーデンの”店長”はハッキリと言った。

店長の言葉にブリッツファミリーの面々はどよめいた。ガーデンといえば知る人ぞ知る殺し屋組織……その実力は折り紙付き……そのガーデンが傘下に入れば、ブリッツファミリーは天下無敵といえよう。

 

「ガーデンがウチに……?」

「それに加えて、5億ダルク……あなた方に献上します。」

「5億だと……なぜそうまでして……?」

 

トネールは疑問の声を上げた。トネール達から見れば、グリムはただの青年。マフィアに入るような素行の悪い人間には見えなかった。それが、自分がすでに所属している組織を売るような行為をし、さらに大金を払うつもりでいる。

 

「こうでもしないと……アニキに報いることができないからです。それに……俺が入ればアンタらにはいいことだらけなはずですよ。5億の収入に、ガーデンっていう戦力の追加、そして……」

 

静かに語りながら、グリムは顔に半透明の模様を浮かばせ……オルフェノクへと変身した。

 

「俺はオルフェノク……ぶっちゃっけバケモンです。だが、俺がファミリーに入れば、そのバケモンの力をアンタらは手に入れることができる。それに、俺はこっちに迷い込んでるオルフェノクを仲間に引き入れる。それと……ショッカー壊滅の影響であちこちで野良怪人どもがのさばってる。そいつらも巻き込むつもりです。」

 

オルフェノクから元の人間の姿に戻り、グリムは説明しながらフッと笑った。

 

「想像してみてください……たった500の兵隊しか持たなかったブリッツファミリーが、どんどん兵隊が増えていくとこを……その中にはガーデンとオルフェノク、それに怪人ども……誰にも手が出せない最強のマフィアになる……!」

「……フッ」

 

その時、トネールは笑った。

 

「お前さん……想像以上にマフィアの股開かせんのが上手いらしい。その挑発……乗ってやる。」

「じゃあ……!」

「ただし、お前さんがファミリーに入れるかどうかは保留とさせてもらう。」

「ありがとうございます……!!」

 

グリムとガーデンのメンバー一同は深々と頭を下げた。

こうしてグリム達は兵隊を手に入れた。後はギアンとレーゲンファミリーを倒し、ロゼッタの父、ファズ•フォン•バルドナクが遺した遺産を……10億を見つけ出すのみとなった……

 

──────────────────────────

 

ブリッツファミリーとの邂逅を終えたグリムとガーデンメンバー一行はガーデンのアジトへと戻った。

 

「ヨルさん、グリム!無事だったか……」

 

アジトにはロイドやロゼッタなど他の仲間達の姿があった。

喫茶シオンでは敵に見つかる可能性があったため、急遽アジトを借りることになったのだ。

 

「女のために我らがガーデンのアジトを使うなど……」

「店長の決定ですからね。」

 

店長の命令に納得がいかないのか、弟切は不服そうだった。

それを見かねてか、ロゼッタは店長に頭を下げた。同じくグリムも頭を下げる。

 

「すいません!私のために秘密のアジトを使ってしまって……」

「俺の方もすまねぇ……ガーデンがブリッツファミリーの傘下に入るなんて提案しちまって……」

 

2人の謝罪に対し、店長は首を横に振った。

 

「いいのですよ。他でもない我がエースのグリム君の頼みです。それに……ブリッツファミリーは東国裏社会の中ではトップクラス……その後ろ盾を手に入れたのは我々としても有益です。」

「恩に着るぜ……よーし、後はギアンの隠れ家を見つけて……」

「グリム君。」

 

ギアンの所在を突き止めようと意気込むグリムに、店長は声をかける。

 

「あなたとロゼッタさんはここで休んでください。」

『えっ』

「部屋を用意してありますから。」

 

いきなり休むように言われ、二人は困惑してしまう。

店長の言葉に続くように、シルヴィアが2人の肩を叩いた。

 

「積もる話もあるだろう。少しは休め。」

「そうですね……休んだ方がいい。」

 

店長とシルヴィアの言葉に、他の皆も察して2人に部屋で休むように促した。

 

「お二人とも、こちらへ……」

「ちょっ、おい!」

「Kさん待って……!」

 

さらには”K”も2人の腕を掴み、用意された部屋へと連れて行った。

部屋の中には高級そうなシルクのベッドが部屋の真ん中にドカッと置かれていた。

 

「うわっ、高そうなベッド……」

「では、ごゆっくり……」

 

ペコリと頭を下げ、Kはドアを閉めた。

部屋に入れられた二人は、とりあえずベッドに隣り合って座った。

 

「……あー……その、なんつーか……」

「えーっと……」

『ごめん。』

 

二人同時に謝罪の言葉を発し、互いの顔を見合わせた。

 

「私……ダーリンにひどいこと言っちゃった……私のせいで、ダーリンが傷ついて……」

「……アレはマジで傷ついたぞ。」

「ごめんなさ……きゃっ!」

 

次の瞬間、グリムはロゼッタをベッドに押し倒し、その胸に顔を埋めて抱きついた。

 

「でも……また会えた……夢じゃない……!」

「ダーリン……ごめんね……」

 

抱きついてくるグリムに対し、ロゼッタは優しく抱き返し、頭を撫でた。するとグリムはフッとため息を吐いた。

 

「……俺、マジでお前にぞっこんになっちまった……お前がいないと生きられないくらい、お前のことが好きで好きで仕方なくなってる……」

「嬉しいよ……ダーリン。私も……”グリム”がいないと、生きていられない……」

 

その時、グリムは顔を上げて目を丸くしてロゼッタの顔を見つめた。

 

「今……俺の名前……」

 

ロゼッタは間違いなく、グリムの名前を言った。いつもは「ダーリン」と呼んでいるのに名前を言ったのだ。

そのことを指摘するとロゼッタは顔を真っ赤にして両手で自分の顔を隠した。

 

「だ、だって、自分の旦那様だから……名前で呼んでみたくて……恥ずかしいからあんまり見ないで……」

(いや、ダーリン呼びの方が恥ずかしいだろ……)

 

そう思ったが、目の前で名前を呼んで恥ずかしがる自分の恋人の可愛らしい一面に、なんとも言えない気持ちになり、思わずニヤけてしまう。

 

「なんか……今日のお前、カワイイな……」

 

グリムはロゼッタの胸に顔を埋めるのをやめ、顔の方に移動し、頰や首筋にキスをした。

 

「ダーリン……実はね、ちょっとしたプレゼントを用意したの。」

「プレゼント?」

 

首をかしげるグリムに、ロゼッタが用意したのはY型の部品のような金具だった。

 

「えーっと……これなんだ?」

「私の中に入れてた避妊具。」

「……………はい?」

 

ロゼッタの一言にグリムはしばし黙り込んだ後、目を丸くした。しかし、なんとか落ち着いて言葉を絞り出す。

 

「それって、つまり……」

「グリム……私と一緒に、幸せになってください……!」

 

その言葉は、グリムにとって最高の告白だった。そして、気付いた時にはロゼッタに襲いかかっていた。

両手で大きく柔らかな胸を触り、首筋に舌を這わせれば、ロゼッタはピクッと身体を震わせた。

 

「ダーリン、待って……シャワー……んっ!服も……」

「無理……待てない……」

 

二人は欲望のままに絡み合った。息が止まってしまうのではないかと思ってしまうほど長いキスをし、舌を絡ませ合い、互いの身体を触り合い、そして交わった。

 

「好きだよ……愛してるよ……!」

「俺も……愛してる……!」

 

2人の交わりは1日中続いた。24時間もの間、二人は何度も何度も行為に及び、幸せを噛み締め続けた。

しかし、さすがに1日中は辛かったようで、終わった後、二人は48時間……日数にして2日間も眠り続けた後に目を覚ましたのだった。

 

そして……

 

ぐぁつぐぁつぐぁつ……!ごっきゅごっきゅ……

 

その翌日、グリムとロゼッタは食事をとっていた。ロゼッタは人並みより少し多いぐらいの量だったが、グリムの方は膨大……ざっと見積っても100人前はあった。

 

「うめっ……うめっ……!」

 

料理は和•洋•中……と多種多様な料理が揃っていた。ロイドが作ったものに加え、東国の店中から取り寄せたものもある。

グリムはそんな料理を片っ端から食らっていく。ステーキやハンバーグは雑に切って口に放り込み、刺し身は一度に5枚ほど取って雑に醤油に付けて食べ、麺料理はたったの2、3口で食べ終えてしまう。

しばらくロクに食べてなかった、というのもあってグリムの食べるペースは凄まじいものだった。一皿5分も掛からずに平らげていく。

 

「いつも以上に凄まじいな……」

「食べるペースも、いつもよりすごくない……?」

「あー……ごちそうさん……」

 

100人前の食事を食べ尽くしたグリムは軽くゲップを吐き、爪楊枝で歯を軽く掃除する。

食事を終えて休んでいるグリムに、ロイドは声をかけた。

 

「グリム……バルドナク家の隠し財産はまだ見つかってない……だが、お前が休んでいる間にギアン達の隠れ家を見つけた。」

「ブリッツファミリーの方も兵隊の準備が整ってる。後は……お前の号令一つでいつでも出られる。」

 

続くフリッドの言葉を聞いたグリムは、深く深呼吸して立ちあがった。そして声を大にして叫んだ。

 

「決まってんだろ……向かってくる奴は全員ぶちのめす!!俺らに喧嘩売ったことを後悔させてやらぁな!!」

 

その後、ガーデンの店長はグリムにコードネームがついたことを伝えた。グリムのコードネーム……その名は”獅子王”。

 

今宵、若き獅子の雄叫びがこだまし、その名が轟く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ「風が吹く時」

「はぁ……はぁ……」

あれからどれだけの時間が流れたのか……ライドはいまだ倒れずにいた。
周りにはレーゲンファミリーの連中の死体の山……
ライドは満身創痍になりながらも全員倒したのだ。だが……もはや彼の命は風前の灯火……
腹の黒ガヴは戦闘が終わった段階で粉々に砕け散った……

「グリ…ム……」

頭に浮かぶのはグリムの姿……だが、いつもの姿と違っていた。身長が少し高くなり、いつものコートを肩にかけ、肩で風切って歩く風格のある姿になっていた。そしてその後ろには、グリムに付き従う大勢の同胞達……

「……はっ……」

気がつけば笑っていた。あのバカが、まだまだ小粒なあの男が、自分以上に大きくなっている姿を想像して笑ってしまった。
だが、おかしくて笑っていたわけではない。それとは別の何か……それを感じて笑っていた。
それと同時に、自分の中で吹き荒れていた風が止んでいたことに気がついた。

「……なんだよ……こんな簡単なことでよかったのかよ……」

そして、新しい風が現実世界の風とともに吹いた……

「……いい……風だ……」

ライドは最後まで倒れなかった。たとえ命は尽き果てても、その強さと生き様は消えはしない……ライドは最後の最後までそれを貫いていった……

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