貨物船内部の薄暗く、拾い空間の中……3人のライダーがぶつかり合った。
一人はファイズ、対するは
「オラァ!」
「ダァッ!」
ファイズが振るうファイズエッジとルデスの振るうトマホークがぶつかり合い、火花を散らす。
「ハァッ!」
その間をガヴが割って入り、二人の戦闘を妨害する。
「邪魔しないでよ……ショウマくん!!」
ルデスは2つのトマホークの背を合わせて1本の巨大な斧に変え、それを思い切り振るって二人を吹き飛ばす。
「うわっ!?」
吹き飛ばされたガヴは壁に激突した。
「くっ……うおっ!?」
斧を振るった衝撃波で、ファイズも吹き飛ばされる。
「グリム!」
《ふわマロ!ふわふわ〜!》
その時、ガヴは体の鎧をマシュマロのような白い鎧に変え、マシュマロのような柔らかく弾む鎧でファイズを受け止めた。
「ミゲルーーー!!」
《Complete.》
ファイズは左腕のファイズアクセルのメモリをベルトに装填し、アクセルフォームへと姿を変える。
《ザクザクチップス!ザックザク〜!》
ガヴも鎧をポテチのような装甲に変え、両腕に剣を携える。
《Startup.》
《チャージミー!チャージミー!》
ファイズアクセルのスイッチが押され、ガヴもハンドルを回す。
《ザクザクチップス!フィニーッシュ!》
ファイズは高速移動を始めルデスの周囲を走り回り、同時にガヴは両手の剣の刃を砕いて飛ばす。
刃の破片はルデスの周囲を円を描くように飛んでいき、同じく周囲を回るファイズは蹴り飛ばしてルデスの方へ飛ばす。
全方位から刃が飛んでくる……が、ルデスはその刃を全てをよけ、受け流していく。すると、ルデスに飛ばしていたはずの刃が一瞬消え、ファイズとガヴの前に現れて飛んでいった。
『ぐわぁぁぁ!!』
自分達の技を逆に食らい、二人は吹き飛ばされるがすぐに着地。
《チョコダン!パキパキー!》
チョコでできたポンチョを身にまとい、板チョコでできた銃で遠距離攻撃を繰り出すガヴ。ファイズもベルトのファイズフォンを引き抜き、銃に変形させて光線を放った。
しかし、ルデスは2つのトマホークの柄の部分をつなげて1本のハルバードに変え、回転させて銃撃を防いだ。
「……もっと本気で来てよ……これじゃあ、ぼく、全然やる気でないよ……!」
ルデスはため息をつきながら武器を下ろした……かと思うと、すでに変身しているにも関わらず、グリムから奪ったカイザのベルトを取り出した。
「俺のベルト……?」
すると、ルデスはそのベルトを自分の腰に巻き、カイザフォンを開いた。
「お前……いったい何を!?」
「さぁね……こればかりは……」
《Standing by.》
「どうなるか分からないよ!」
《Complete.》
「9.1.3」のキーと「Enter」キーを押し、カイザフォンをベルトに装填した。すると、ルデスの身体に紫色の電流が走る。
「うっ!?あっ……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
とてつもない痛みが身体に走り、ルデスは悲痛な叫び声を上げた。同時に金色に光るラインを身体に纏い、カイザのスーツが装着されていく。
「あれは……!」
「混ざった……!?」
目の前にいるのは、ルデスでも、カイザでもない
「ハァ、ハァ……これが、ぼくの新しい力……フフッ、アハハハ……身体中痛いけど、すっごくいい気分だよ!!」
カイザールデスは高笑いとともに右手にカイザブレイガン、左手にトマホークを持ってファイズとガヴに突っ込んでいった。
《ブリザードソルベ!ヒエヒエ!》
《パッキーン!》
「ハッ!」
その時、ガヴはアイス型のゴチゾウを使ってアイスのコーンを模したローブとアイスクリームのような鎧を装着したフォームへと姿を変えた。そのまま口から超低温の冷気を放ち、目の前に氷の壁を作った。
しかしカイザールデスは銃撃で氷の壁にヒビを作り、そのままトマホークで粉々に砕いた。
「ヤァッ!!」
氷の壁が砕かれたと同時にファイズが前に出て拳を繰り出す。ガヴも後に続いて拳を繰り出す。するとカイザールデスは両手の武器を上に放り投げ、二人の拳を腕で止めた。
(武器が目の前に降りてきたところで武器を掴んで攻撃か?)
そうファイズは思ったが、次の瞬間カイザールデスは瞬間移動で姿を消した。
「こっちだよ!」
カイザールデスは先に武器を瞬間移動で二人の背後に飛ばし、その後に自分自身も瞬間移動で背後に回った。
2つの武器に深緑色のエネルギーを纏って背中を斬りつけ、二人を吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
「うぐっ!」
「ショウマくん!」
「ダーリン!」
必殺の一撃を食らった二人は床に倒れるも、起き上がってカイザールデスを睨む。
「フフッ、ぼくはライドさんと違ってゴリラじゃないから……搦め手が得意なんだよ。瞬間移動がぼくの超能力……それをフルに活用させてもらったよ。」
「くっ……!」
「悔しい?悔しいよね……弟のぼくに、片割れだったぼくに……兄さんにくっついてるだけだった弟に勝てなくて悔しいねぇ……その気持ちを抱えたまま殺してあげるよ。母さんの時みたいにね!!アハハハハハハハハハ!!」
カイザールデスは狂ったような笑い声を上げ、グリムを煽るように愚弄した。だが、グリムは……なぜかベルトのファイズフォンを外して変身を解いた。
「グリム……?」
「何のつもり……?兄さん……」
「……ごめんな……ミゲル。」
「は……?」
グリムはその場で頭を下げ、ミゲルに対して謝罪を始めた。
その光景に、グリムのことを知る皆は驚いて目を丸くした。
「俺の、せいなんだよな……お前がそうなっちまったのは……もっと早く、お前のことを思い出せればよかった……!」
「……やめてよ……」
「俺を攻撃することで、お前の気が済むなら……好きなだけ攻撃していい。だから……もうやめよう。こんな戦い……」
「やめろよ!!」
グリム自身も、本当のことを言えばミゲルと戦いたくはなかった。グリムの目からはミゲルが演技をしているように見えていた。わざとやられるために道化になろうとしている……そう見えていた。
しかし、ミゲルはグリムの申し出に声を荒げた。
「謝らないでよ……!!でなきゃ……ぼくが今まで頑張った意味がないじゃないかっ!!ぼくを恨んでよ!ぼくは母さんを殺した!ロゼッタ義姉さんを攫った一味の味方になった!ぼくは兄さんにひどいことをしたんだよ!!?なんでぼくを恨まない……?恨め、恨め、恨め恨め恨め恨め恨め恨め恨め!!!」
ミゲルはグリムに、自分のことを恨んでほしいと思っていた。そのためにグリムに対して酷いことをしてきた。それを理解してくれない、それどころか謝ってくるグリムに怒りが湧いてくる。
「あ“あああああぁぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、まるでミゲルの怒りに呼応するように身体に紫色の電流と痛みが走る。
「まさか、暴走……!?」
「2つの力を無理やり使ったせいか!?」
ファイズやカイザのベルトは本来オルフェノク用の装備……それをアギトの力で無理やり抑える形で変身した。その無理が祟ってしまったのだ。
「うっ、うぐぅ……!」
「もうやめろ、ミゲル!このままじゃお前の身体が……!!」
「うるさぁい!!」
カイザールデスは雄叫びを上げるとトマホークをブーメランのように投げた。
「グリム!」
《グルキャン!》
トマホークはグリムに向かって飛んでくるが、咄嗟にガヴがキャンディを模した巨大なフォームへ姿を変え、強固な鎧で攻撃を防いだ。
「うぐぅ……!ああぁぉぁぁぁ!!」
全身に痛みが走り、両手で頭を抱えるカイザールデス……その姿を見てグリムは胸が苦しくなった。
「ミゲル……!ロゼッタ!!」
グリムは遠くで見ているロゼッタに向かって叫んだ。
「例の……タクミから受け取った奴をこっちに!」
「!!」
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ここに来る数分前……グリムとロゼッタはある人物と会っていた。その人物とは……
「タクミ……」
仮面ライダーファイズこと、乾 巧だった。
「よぉ、久々だな。俺からの贈り物……ちゃんと使ってるみたいだな。」
「やっぱり……ファイズのベルトを貸してくれたのはアンタだったのか……」
ライドとの対決の時、ファイズのベルトを投げてくれたのは巧だった……そのことにグリムは感謝しつつも、不思議に思っていた。
「でも、なんでお前がこっちに……元の世界に帰ったんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったがな……途中で声が聞こえてきたんだ。……木場の声がな。」
「キバが……!?」
木場はグリムにとって恩人の一人……すでに亡くなってしまっていたため、声を聞いたという巧の言葉に驚いてしまった。
「『グリムくんが危ない……助けてあげて』……そう言ってたんだ……すげーよな、アイツ……死んでんのに、俺に届けようとしてよ……」
「だから、お前はここまで……」
グリムの一言に、巧はコクリと頷いた。
「それと……こいつも。」
巧はあるものをグリムに差し出した。トランクボックスの型をした新たなアイテムだった。
グリムは目を丸くしながらそれを受け取った。
「なんだこれ……?」
「パワーアップアイテムだよ。使い方は直感で分かるはずだ。じゃあな……」
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そして現在……ロゼッタは巧から受け取ったトランクボックスを思い切り投げてグリムに渡した。
「ミゲル……待ってろ、すぐに助けてやるからな……!」
《Standing by.》
「変身!」
《Complete.》
グリムはまずファイズに変身し、そのままもう一度ファイズフォンを取り外し……トランクボックスの側面にあるテンキーの「5」を3回押した。
《Standing by.》
音声が流れると、続けてファイズフォンをホルダーにセットした。
《Awakening.》
すると、ファイズの赤いラインが金色に発光し、さらに全身が赤い光に包まれた。それがファイズに変化を及ぼした。赤い光とともにファイズの黒い身体が真っ赤に変わり、赤いラインも金色に、目も金色に変わった。アーマーの形状も変化し、ファイズは「ブラスターフォーム」への変身を完了したのだった。
「赤く……変わった……」
ブラスターフォームに姿を変えたファイズは、トランクボックス型のユニット「ファイズブラスター」の「5.2.4.6」のキーを押し、さらに「Enter」を押した。
《Faiz Blaster Take Off.》
「ハッ!」
音声とともに背部の飛行ユニットが起動し、白い煙を噴き出してファイズは飛行しながらカイザールデスに突っ込み、着地と同時に蹴り飛ばした。
完全に不意を突かれたカイザールデスは怯みながらもトマホークで斬りかかる。
《Blade Mode.》
「1.4.7」のキーを押し、ファイズブラスターを展開し、大剣モードへと変形させ、トマホークの攻撃を防いだ。
「らぁっ!」
攻撃を防いだ瞬間、空いてる方の拳をカイザールデスの腹に叩き込む。一発当て、ひるんだところで顔面に拳を繰り出して怯ませる。
「ダァッ!」
そこにさらに大剣でカイザールデスを突き飛ばす。吹き飛ばされたカイザールデスは、今の戦闘でできたであろう床に落ちているガラス片や床の破片に目をつけた。
「いけっ!」
カイザールデスはその破片と武器を投げると同時に瞬間移動させ、ファイズの目の前に移動させる。破片と武器はまっすぐファイズに向かってくるが、ファイズは飛行ユニットで宙を舞って回避。
《Faiz Blaster Discharge.》
ファイズの背部の飛行ユニットが展開し肩に小型のキャノン砲「ブラッディキャノン」が装備され、銃口から光弾をマシンガンのように発射する。
カイザールデスはそれを瞬間移動でかわし、ファイズの背後に回って羽交い締めにした。
「この……!」
飛行ユニットの出力を上げ、壁の方へ突っ込んでいく。このままではぶつかると思ったカイザールデスは瞬間移動で回避。ファイズは身体を反転させて壁に足をつける。
(待ってろ、ミゲル……!そんな醜い姿……俺が解放してやる……!)
「ハァァァァァァ!」
カイザールデスは腰を落とし、床に深緑色と紫色が混じった紋章を浮かばせた。
ファイズもファイズブラスターの「Enter」キーを押した。
《Exceed charge.》
ファイズブラスターの刀身が輝き、力が蓄積されていく。同時に、カイザールデスも両足に紋章エネルギーを蓄積させていく。
そして、両者離陸。
「ハァァァァァァァァァァァ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
カイザールデスは飛び立つと同時に両足での飛び蹴りを繰り出した。ファイズの方は大剣を脇に構えたまま突っ込んでいく。
カイザールデスの必殺の蹴りはファイズの顔面に炸裂……しかし、ファイズが頭を横に傾けたことで頬を掠めただけで終わり、代わりにファイズの振るう一撃がカイザールデスの腹に繰り出され、そのまま一閃。赤いΦの紋章が浮かび、カイザールデスは床に落ち、倒れた。
床に落ちたと同時にカイザのベルトは粉々に砕け散り、ミゲルの変身は解けた。
「や、やった!」
「ミゲル……」
グリムも変身を解き、元の姿に戻った。すると、倒れたミゲルは立ち上がり……笑い始めた。
「アハハハ……やったね、兄さん……これで母さんの仇が取れるね……さぁ、早く……ぼくを殺して……」
「殺さない。」
ミゲルの言葉を遮り、グリムは言った。その言葉にミゲルは耳を疑った。
「どうして……!?」
「俺がお前を殺したりするわけないだろ……俺とお前は双子……いや、ただの双子じゃねぇ……結合双生児として生まれた兄弟なんだから!」
それが、グリムとミゲルの間に隠されていた謎の答えだった。幼いミゲルの左半身がなかったのは、グリムの身体からミゲルの部分を切り離したから……
「……そうだよ……母さんはそのことでずっと悩んでた……結合双生児だから母さんとぼくらはグランツに捨てられた!今のままじゃ、世間から笑われる……ぼく達は幸せになれない……だから母さんは、ぼくをドノバンに売った!手術費を払ってもらう条件つきでね!だからぼくは母さんを……!」
「お前に殺せるわけないだろ!母さんが死んだのは、俺が幼かった時……その時、お前はアベルの研究室にいたんだろ!それでどうやって殺せんだ……母さんは自殺で間違いないんだ……」
グリムの言う通り、時系列的に考えてもミゲルに母親を殺すことなど不可能だった。だが、ミゲルはブンブンと首を横に振って否定する。
「それが答えじゃないか!!母さんはぼくを売ったことに罪悪感を持ってた……それに押しつぶされて自殺した!ぼくのせいなんだ!!だから兄さん!ぼくを殺してよ!!殺せ、殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!」
ミゲルは自分のせいで母が自殺したと思い込んでいた。
「どうしてぼくを殺してくれないんだよ!!これじゃあ……ペルランって人を傷つけたことも、ロゼッタ義姉さんをさらったことも、ギアンに協力した意味ないじゃないか!!」
ミゲルの今までの行動は、全て自分が殺されるための行動だったのだ。悪いのは全て自分……だからこそピエロを演じることで殺されようとした……
「兄さんが殺してくれなきゃダメなんだよ!悪い子のぼくを殺すことができるのは……兄さんだけなんだよぉ!!」
「……そんなのズルいよ。」
その時、慟哭するミゲルに変身を解いたショウマが静かに呟いた。
「悪いことしたから自分を殺してほしいなんて……そんなの卑怯だよ……それでグリムが悲しむとは思わないの!?」
「そ、そんなの……仕方ないじゃないか……自殺したって意味ないって思ったから……」
「本当に悪いって思ってるなら、死んでおしまいにしないでよ!生きて償いなよ!そんなの悲しすぎるよ……」
「うるさい!君に何が分かるって言うんだ……」
ミゲルはショウマに噛みつこうとした。だがその時、ロゼッタがミゲルの元に歩み寄っていった。
「ロゼッタ、義姉さん……?」
自分に近づいてきたことに不思議に思っていると、ロゼッタはミゲルのことをギュッと抱きしめた。
「えっ……?」
「辛かったね……頑張ったね……本当は大好きなお兄ちゃんと戦いたくなかったはずなのに、無理してたんだよね……でも、もういいんだよ。」
ロゼッタはミゲルを抱きながら頭を撫でた。母親が子どもをあやすように……
すると、ミゲルから体の力が抜け、瞳が潤む。
「……ダメだよ……義姉さんが許しても、ぼくは……」
その時だった。後ろからグリムがロゼッタごとミゲルを抱きしめた。
「もういいんだって……!俺は、お前を恨んでない……殺さない……だって、お前は俺の大切な弟なんだから。」
その瞬間だった。ミゲルは両目からほろりと涙がこぼれた。そこからミゲルは大声で泣き始めた。
「ぼく……責任取りたくて……!償いたくて……でも、やり方わかんなくて……!ギアンが、誘ってきて……!ぼくも必死に考えて……!」
「ああ……俺のために考えてくれてたんだよな。ありがとうな……」
「ミゲルくんはいい子だね。よしよし……」
子どものように泣きじゃくるミゲルにグリムとロゼッタは泣き止むまで抱きしめ、頭を撫で続けた。
その様子に、ショウマとロイドはホッと胸をなで下ろした。これで兄弟同士の無益で悲しい争いは終わった……これからは兄弟で手を取り合っていける……そう思った。
「これからは一緒だ。これまで一緒にいられなかった分、一緒にいてやるからな!」
「遊園地行ったり、一緒に美味しいもの食べたりしようね!」
「うん……!楽しそ……ゴホッ!」
その時、ミゲルは咳き込み口からあるものを吐いた……それは、血だった。
「ミゲル……!」
「あれ……やばっ、もう……時間切れ……?」
口から吐いた血を見て、ミゲルは何かを察し……そのまま倒れてしまった。
「ミゲル!!」
グリム達はすぐさま倒れたミゲルの元に駆けつけ、グリムは抱き上げた。
「いったいどうしたんだよ……!?」
「ぼくの左半身は……人工物で……心臓も人工物だ……」
ミゲルの言葉に、ロイドはアベルが遺した日記のことを思い出した。ミゲルの身体は人工物で補われている。心臓も……
「まさか、人工心臓の寿命が……!?」
「そうだよ……ぼくの人工心臓はもう限界……今までは、アベル博士がスペアを作ってくれてたけど……博士が死んで、そのスペアがなくなった……今まで保ったのが、奇跡だった……ロイド、さん……通信、借りていいですか……アーニャちゃんと、話したい……」
ロイドは少し黙った後、耳につけた通信機を取り外し、ミゲルの耳につけてやった。
「アーニャ、ちゃん……」
『ミゲル……ぱいせん……』
「先輩って、呼んでくれるんだ……ぼくね……君のお父さんのおかげで、今まで生きてられたんだよ……」
『うん……』
「君のお父さん、すごいね……」
『うん……!』
通信機越しのアーニャは涙ぐんでいた。アベルのことを思い出したことと、このままミゲルが死に、グリムがまた悲しい想いをしてしまうことに耐えきれず泣いたのだ。
「ショウマ、くん……無関係なのに、ぼくを気にかけてくれて……ありがとう……」
「ミゲル……死んじゃダメだよ!これからグリムやみんなと一緒に生きなきゃ!」
「ぼくだって……そうしたい……みんなで、お菓子……食べたかった……」
グリムの言葉にハッと目を見開き、ショウマは自分の服のポケットを探った。その中に入っていたグミをミゲルに差し出した。
「生きて!生きて、みんなと一緒に食べよう!?」
「そうだね……そう、できたらいいなぁ……」
「死ぬな……死ぬな、ミゲル!」
そう言ったはいいものの、グリムはどうすればミゲルが生きられるか分からなかった……だが、あることを思いついた。
「そうだ……!」
グリムは半透明の模様に顔に浮かばせ、オルフェノクへと変身し灰色の槍を取り出した。
「お前もオルフェノクになれ!そうすれば……!!」
槍をミゲルの胸に向け、刃を心臓に突き刺した。これは賭けだった。ミゲルがオルフェノクとして復活すれば人工心臓無しでも生き永らえる……
(頼む……!頼む、ミゲル……!生きてくれ……!!)
グリムは願った。もうこれ以上家族を失いたくない……悲しい想いはもうたくさんだと……
だが、その願いは届くことはなかった。
「……!!」
ミゲルの身体が灰になって消えようとしていた。ミゲルは選ばれなかった……
「嘘だ……!ミゲル……!」
「兄さん……今まで、ありがとう……!大好きだよ……」
消えゆくその手で、ミゲルはグリムの頰に触れ……完全に灰になって消えていった……
「………!!!」
声が出なかった。自分の選択は間違っていたのか?あのまま余計なことをせず放っておけばよかったのか?自分が弟を殺してしまったのではないか……そんなことが頭の中で交錯する。
「う、う……!うあぁぁぁぁぁぁぁ……!!」
側にいたショウマはまるで自分のことのように泣き叫んだ。アーニャも通信機越しに泣き叫んでいた。
「こんなの……こんなのってないよ……!!」
ロゼッタは両手で灰になったミゲルをすくい上げ、さめざめと泣き崩れる。
(どうして……どうしてだ……!グリムが何をしたんだ……!!)
ロイドは悔しそうに歯ぎしりを立てながら俯き、どうしてグリムばかりがこんな辛い目に遭わなければならないのか、心の中で憤慨した。
そんな中、グリムは……ゆらりと立ちあがった。
「……お前ら……いっぱい泣け……俺の分まで……!!」
グリムは涙を流さなかった。泣いていては、ミゲルに顔向けできないと思ったからだ。そして、向けるべき怒りはギアンのみ……!
「ギアン•ストマック……!!お前だけは……ぶち殺す……!!」
おまけ「あり得た可能性、届かなかった可能性」
「チッ……こいつら手強いな……」
「なんだ?もうギブアップか、グリム。」
「なわけねーだろ!ライドのアニキ!こっからだ!」
群れをなすショッカーの群れ……グリムとライドは取り囲まれながらも立ち向かっていった。だが数は多く、このままでは劣勢は必至……そんな時、
「グリム!」
「グリム兄さん、お待たせ!」
そこに駆けつけてきたのは、父のニコルと弟のミゲルだった。二人が加わったことで戦力が増強され、ショッカーの群れをあっという間に倒してしまった。
「やったー!兄さん、ぼく頑張ったよ!褒めて褒めて!」
「おーっ、頑張った頑張った。さすがは俺の弟!」
ミゲルは兄のグリムに甘えるように抱きつき、グリムはそれに嫌がらずに頭をわしわし撫で回す。そのやりとりをよそに、ライドはプイッとそっぽを向いていた。
「まぁ、うまくやったんじゃないのか?」
「はぁ〜?おじさんには言ってませんけど〜?ぼくはグリム兄さんに言ったんですぅ〜!」
「あ?」
むくれた表情でライドを睨むミゲルに、ライド本人も睨みつけた。そこをニコルが間に入り、諌めた。
「まぁまぁ、二人とも落ち着け。それより、早く帰ろう。ヘレンがご飯作って待ってるぞ。ライド君もどうだ?」
「……ふん、食ってやるよ。」
4人が家に戻ると、そこで待っていたのは母親のヘレンと、テーブルいっぱいに並べられた料理だった。
「おかえりなさい!」
「お母さん、ただいま〜!」
帰ってくるなりミゲルはヘレンに抱きついた。
「お母さん!ぼく頑張ったんだよ!」
「あらあら、ミゲルは頑張り屋さんね、えらいえらい♪」
ヘレンもミゲルを抱きしめ返し、頭を撫でた。
「あ〜、腹減った!」
「今日も美味しそうだな〜」
「ほら、みんな座って座って!」
5人はそれぞれ席に着き、皆手を合わせた。
『いただきまーす!!』
これはあり得た世界の話……だが、これが叶うことはもうない……
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ミゲルは生存する展開も考えたのですが、そうなると時系列的におかしくなってしまうので死亡ルートになりました。
ミゲルの末路はどう思いましたか?
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妥当だと思う
-
作者は人の心とかないんか?
-
もう少し手心を……