SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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Part.15 最後の審判(前編)

 

「……来たか。ノコノコと。」

 

貨物船内部の最奥……エンジンルームにギアンはいた。目の前に現れた者達を見て素敵な笑みを浮かべた。

グリム、ショウマ、ロゼッタ、ロイドは静かに怒りに燃えながらギアンを睨みつけている。

 

「なんだその顔は?あぁ……弟を手に掛けたか。野蛮人め……」

 

次の瞬間、ロイドは懐に隠した拳銃を抜き、ギアンに向けて放った。咄嗟の行動だが、ロイドの弾丸はギアンの心臓を射抜いた……が、ギアンは倒れずニヤリと笑った。

 

「心臓を狙ったのなら、正確だな……」

(バカな、確かに心臓を射抜いたはず……!)

「ロイド、またロゼッタを頼む……俺はもう、自分を抑えられる気がしねぇ……」

「俺も……怒りを抑えられない……!」

 

グリムとショウマは怒りの目でギアンを睨む。そして、ファイズフォンとゴチゾウを手にする。

 

《Standing by.》

《EATグミ!EATグミ!》

「変身!!」

 

グリムはベルトにファイズフォンを装填し、ショウマはハンドルを回し、反対側のスイッチを叩く。

 

《Complete.》

《ポッピングミ〜!ジューシー!》

 

グリムはファイズに、ショウマはガヴへと変身。それを見たギアンは腹の口からミミックキーを取り出し、人間態から元のグラニュート態へと姿を変えた。

 

「お前らが何をしようが、私には勝てない……!」

 

ギアンは自分の身体の鱗を引き抜いた。すると鱗は形を変え、古代中国で使われた武器「(げき)」に変わった。

向こうが戦闘態勢に入ったと分かると、ファイズとガヴはすぐさま襲い掛かった。

 

「むんっ!!」

 

二人が間合いに入ってきた瞬間、ギアンは戟を横に一閃。二人はそれをスライディングで身を低くしてかわす。攻撃をかわし、ファイズは低い姿勢のまま蹴りを繰り出し、ガヴは起き上がりと同時に剣で斬りかかる。ギアンは蹴りを腕を使って防ぎ、剣の方は戟で防いだ。

 

「オラッ!」

 

しかし、ファイズは起き上がりと同時にアッパーカットを繰り出し、ガヴもそれに合わせて剣で斬りあげる。ギアンは戟で防ぐが後ろに押し飛ばされる。

 

「なかなかやるな……ずいぶん強くなったなぁ……ショウマ。それがランゴやグロッタ……兄妹を殺して得た力か?」

「っ!」

 

ギアンの言葉にガヴは剣を握る力を強くした。

 

「さぞ気分がよかっただろうな……兄妹はお前のことを邪険に扱っていたからな……私もそうだ……さんざん手伝ってやったのに、奴らは私を『無能』だの『役立たず』だのと罵った!」

 

その時、ギアンの脳裏に流れるストマック家の兄妹達の姿と声……

 

《ぼくらに近づかないでくれるかな、叔父さん。》

《汚らしい……》

《ぼくの研究を手伝う?……いや、いいです。叔父さんと関わりたくないので。》

《私に何の用?用がないならどっかに行って。》

《こんな簡単な仕事もこなせないんですか……チッ、ショウマの方がまだ可愛気がある……》

 

思い出した瞬間にギアンは戟を強く握りしめた。しかし途端に落ち着きを見せ、ショウマの方を見る。

 

「私はお前と同じだ……ストマック家の嫌われ者……分かるだろう……家族から嫌われる者の気持ちが……同じ嫌われ者同士、ここは仲良く……」

「一緒にするな。」

 

ギアンからの誘いを、ショウマは冷たい言葉で切り捨てる。

 

「お前は、ロゼッタさんを傷つけた……酷いことをした……!お前は知らないだろ……ロゼッタさんがどれだけ優しい人で、どれだけグリムのことを好きなのか……」

「ショウマくん……」

「ロゼッタさんに酷いことをしたお前を、許せるわけないだろ!!」

 

怒りの叫びとともに取り出したのはケーキングゴチゾウ……それを赤ガヴへとセットし、ハンドルを回してスイッチを押した。

 

《ケーキング!アメーイジング!》

 

それと同じく、怒りを隠せないファイズ……左手に持ったファイズブラスターを握りしめる。

 

「ショウマがお前と同じ……?ざけんじゃねぇぞ……ショウマはな……優しいんだよ。会って間もない俺とロゼッタのことを気遣ってくれるぐらいな……!お前がショウマを語ってんじゃねぇーぞ!!」

《Awakening.》

 

ベルトからファイズフォンを取り外し、ファイズブラスターに装填し、ブラスターフォームへと姿を変える。

二人の怒る姿に、ギアンは戟をかつぎながら呆れたようなため息を吐いた。

 

「ふん、命知らずが……思い知らせてやろう……!!」

 

ギアンは啖呵を切った後に戟を前に構え、2人に向けて一気に突進する。

しかし次の瞬間、自分達の間合いに入ったギアンの両腕を二人は斬り落とした。

 

「ぐ、ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

(な、なんだ?今の……)

(あっさりと腕を切らせた……?)

 

今のギアンの攻撃は全くと言っていいほど、無防備だった。まるで「攻撃してください」と言わんばかりの……その不気味さに二人は戸惑った。

ギアンは痛みで叫び声を上げた……が、すぐに叫ぶのをやめ、不敵に笑い始めた。

 

「ふふふふふ……」

 

すると次の瞬間、斬り落とされたはずのギアンの両腕がズルリと新たに生えた。

 

『!!?』

 

その光景に2人だけでなく、ロイドとロゼッタも目を見開いて驚いた。

 

「ふふふっ……これが私の能力……自己再生。私の身体には小さな(コア)がある……それを壊されない限り、私の身体はどんな致命傷を受けても再生できる!そして……」

 

ギアンが自身の能力を説明していると、斬り落とされた腕がピクピクと動き始めた……と思いきや腕の断面から新しい身体が形成され始めた。

 

「な、なんだ!?」

「離れた身体の一部も再生し……私の分身を作り出す!」

 

ギアンの言葉通り、斬り落とされた腕から新たなギアンが生まれ、分身となって立ちあがった。

分身達も自身の鱗から戟を作り出し、2人に襲いかかる。

 

「チッ!」

「くっ!」

 

ファイズはファイズブラスターで頭を撃ち抜き、ガヴはケーキングホイッピアで分身を真っ二つに切った……しかし、分身は再生とともにまた分身を作り上げる。

 

「これじゃあキリがねぇ!」

「分身だけでもなんとかしないと……!」

 

その時、ガヴはハッとあることに気がついた。

それは、ファイズが倒した分身だけ新しい分身を作らず、再生だけを行なっていた。

 

「もしかして……!グリム!」

 

ガヴはグリムの側に寄り、耳打ちを始めた。

 

「……そうか、わかった!」

《ホイップパーティー!》

 

ファイズが頷いたのを見て、ガヴはホイッピアからホイップ兵を召喚した。

 

「数には数を……か?そんなことをしても無駄だ!」

 

ギアンが大声を上げると、分身達は一斉に襲い掛かった。それに対し、ホイップ兵も槍で応戦する。

ホイップ兵が分身を相手にしている隙に、ファイズとガヴは本体のギアンの方に襲いかかる。

 

「ふっ……好きにするがいい!」

 

襲いかかってくる2人に対し、ギアンは何もせず、ただ両腕を広げた。

2人の攻撃は容赦無くギアンの身体を切り裂いた……だが、切り裂いてもその傷は治り、身体を切り落とせば再生だけでなく分身も作り出す。

これでは相手の数を増やすだけ……だが、ガヴはホイッピアの絞り袋を何回も押した。

 

《ホイップパーティー!》

 

ホイッピアからホイップ兵が姿を現す。それも1体や2体ではなく、10体以上……新たに現れたホイップ兵は円陣を組むようにしてギアンの分身を取り囲む。

 

「なんだ……?」

 

ホイップ兵の行動に首を傾げるギアンをよそに、ファイズはガヴの手を引いて空中に……

そして、ホイップ兵は槍を前に突き出した状態で一斉に分身達に突進。1体や2体だけなら対処はできただろうが、十数体が一気に襲いかかってくるとさすがに対処しきれない様子だった。分身達はホイップ兵に押し込まれ、中心へ……

 

「今だ!!」

《Exceed charge.》

《ケーキングブレイキング!!》

 

その時、空中からファイズとガヴが武器から光線を放ち、分身達をまとめて消滅させた。

 

「わ、私の分身が……!」

「やっぱり……分離させずに消滅させればいいんだ!」

「でかした、ショウマ!」

 

斬撃ではなく、光線や爆発によって消滅させる……それがショウマが見つけた回答。これで本体の方も……と思った矢先、ギアンは急に笑い始めた。

 

「ククク……そんな小手先の作戦で私に勝てると思ったか?」

「なんだと……?」

「あ、あれ!」

 

ガヴはギアンの足元を指差した。なんと、ギアンの下半身が船の床と同化していた。

 

「私の再生能力のちょっとした応用だ……分身もその一つだが、もう一つ……私は物体を取り込むことで自分を強化できる……!」

 

ギアンが説明していると、船の壁や床がグニャグニャと生き物のように変形を始めた。

 

「すでにこの船全てとの同化を完了した!!フハハハハハハハハハ!!私を敵に回したこと……後悔させてやろう!!」

 

ギアンは高笑いとともに姿を消し、それと同時に壁が触手が変化し、ファイズ達に迫っていく。

 

「マズイ……!ロゼッタ!ロイド!」

 

ファイズは飛行ユニットで飛行し、ロゼッタを抱きかかえてブラスターで天井に穴を開け、そのまま地上へ。ガヴはブリザードソルベで天井に向けて階段を作り、ロイドとともに上へと上がった……

 

─────────────────────────

 

そのころ、甲板の上ではフリッド達は戦い続けていた。

 

「どうした……?レーゲンファミリーはこんなものか?」

「く、くそ……!」

「ヘ、ヘイルのアニキが押されてる……」

 

ヘイルが変身したビターガヴ相手に優勢に立ち回っている。

ギルスは両腕から爪を伸ばし、ビターガヴにじりじりと近づく。ヘイルはマフィアとしての腕はいいのかもしれない……だが、ライダーとしての経験はまったくない……ライドの場合は卓越した戦闘センスと経験があったからこそフリッド達を圧倒できた。

ヘイルにはそれがない……そんな状態で今まで戦ってきたフリッド達に勝てるはずもなかった。

 

「こ、この俺が負けるなんて……ありえるかぁぁぁぁぉ!!」

 

ビターガヴは叫び声を上げ、剣を振り上げた。ギルスは身構え応戦……しようとしたその時、船全体がガタンと揺れ始めた。

 

「な、なんだ!?」

「あ、あれを見ろ!」

 

マフィアの一人が船の後部を指差した。そこには甲板の床が変形し、巨大な肉体が生えている光景があった。その肉体は、巨大なギアンだった。

 

「ギアン!?なぜあんな姿に……!」

「みんな!」

 

その時、甲板に穴が空き、そこからファイズ達が現れた。

 

「グリム!」

「みんな、ここから脱出しろ!奴は俺とショウマでケリをつける!」

「逃げろって……ここは船の上なんだぞ!?」

 

逃げろというファイズに、ユーリは声を荒げた。だがその時、船の警笛音が聞こえてきた。音がした方を見てみると、軍艦と思わしき船がこちらに近づいてくるのが見えた。船の側面には「ブラックベル」と書かれていた。

 

「ブラックベル……まさか、ベッキーちゃんのところの……!」

 

その時、耳の通信機から幼い声が聞こえてきた。ベッキーの声だった。

 

「アーニャちゃんとフリッド先生に頼まれて、特別にパパの会社から引っ張ってきたの!」

「よし!俺がみんなをあっちの船まで運ぶ!」

「その間に、俺が足止めをする!」

 

グリムに続き、ショウマが叫ぶ。それと同時にショウマは紫色の小さい瓶を取り出した。それを180°回転させて赤ガヴの口に咥えさせる。

 

《マスター!》

「変身!」

《マスターテイスト!!》

 

ハンドルを回し、反対側のスイッチを叩く。オレンジ色のスーツの上にグラデーションのかかった紫色の鎧が装着された。

 

「ハァー……ハッ!」

 

マスターモードに変わったガヴはクラウチングスタートの様に身をかがめたかと思うと、虹色の残像を残してギアンの周りを高速移動して撹乱する。

その隙にファイズは飛行ユニットを活用して仲間達をベッキーが用意した船へと運ぶ。

 

「ええい、小賢しい……!これならどうだ!」

 

ギアンは自分が船と一体化しているのを利用し、床や壁から先の尖った柱を出現させてガヴを攻撃する。しかし、ガヴはその攻撃をかわし、逆に柱を利用して跳ね回り、ギアンの眼前まで来る。すると、ガヴはゴチポッドを180°回転させる。

 

《オーバーエナジー!》

 

紫色の鎧がオレンジ色の鎧に変わり、さらに両腕に巨大なナックルが装備される。

 

「ハァッ!!」

 

ガヴは勢いよく拳を突き出し、ギアンの頬を殴り飛ばした。オーバーモードの力は凄まじく、一撃加えただけでギアンの頬を削り取った……だが、ギアンの能力によってすぐに再生された。

 

(やっぱり、一気に消滅させなきゃダメなのか……でも、こんな巨体をどうやって……)

「邪魔だ、雑魚が!!」

 

考えている間に、ギアンは巨大な腕を振るってガヴを殴る。ガヴは慌てて両腕で防いだが吹き飛ばされてしまう。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

「ショウマ!」

 

このままでは海に落ちてしまう……そう思った次の瞬間、ファイズが飛んできて、ガヴを抱きとめた。

 

「グリム……」

「間一髪だったな……ショウマ……決着つけるぞ。」

「うん……!」

 

空中を飛行しながら、2人はギアンを睨みつける。

今こそ、ギアンと決着をつけるとき……2人はその決意を新たにしていたのだ。

グリムは愛する人を忌まわしき過去から解放するため、弟の仇のため……ショウマは自身のトラウマを克服するため、グリムとロゼッタの安らぎのため……

 

「いくぞ!!」

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

 

 

 

───────────────────────

 

「はぁ、はぁ……!」

 

そのころ、海から一人の男が港に上がった。ビターガヴ……ヘイルだった。

 

「ど……どさくさで逃げられた……!へ、へへ……マヌケな奴らだ……!兵隊なんていくらでも集められる……兵隊がまた集まったその時こそ……あいつらの最後だ……!!ははは……!!」

 

ヘイルはギアンが現れたどさくさに紛れて一人海へ飛び込み、港へ逃げたのだ。そして、このままレーゲンファミリーへ戻って兵隊を集めるつもりでいるようだった……だが、

 

「そうはいかない。」

 

物陰から声が聞こえたかと思うと、白いスーツを着たエージェント風の青年が現れた。

 

「あ……?なんだてめぇは!?」

 

青年は何も言わずにベルトを取り出した。そしてそれを腰……ではなく胸にたすき掛けのように巻いた。さらに、赤色のカプセルを取り出し、ベルトの真ん中にセットした。

 

《インパクト!》

《メツァメロー…メツァメロー…》

 

ベルトが音声とともに光が走る。すると、青年は左手の親指で自分の唇を撫でた。

 

「アイム オン イット……変身!」

 

掛け声とともに親指でカプセルを回転させた。するとベルトが虹色に発光し、青年の身体が暗黒に包まれる。

 

《グッモーニング!ライダー!!》

 

青年の身体が暗闇に包まれるとともに身体が肥大化し、黒いスーツを形成していく。

 

《ゼッツ!ゼッツ!ゼーーーッツ!!》

《インパクト!》

 

黒いスーツに赤いラインが走り、瞳が赤く輝く。ビターガヴの前に現れたのは、紛れもなく仮面ライダー……見たこともないライダーの出現に、ビターガヴは戸惑った。

 

「俺は、仮面ライダーゼッツ……幸せな人達の邪魔をするのは、許せない!」

「チッ……!死ねぇ!!」

 

ビターガヴは雄叫びとともに突進し、剣を振り下ろす。しかし、ゼッツは軽々攻撃をかわし、後頭部に裏拳を食らわせて怯ませる。さらに右腕の筋肉を隆起させ、腹に強力な一撃を食らわせて殴り飛ばす。

 

「うげぇ!!?」

 

殴り飛ばされたビターガヴはコンテナに激突する。その時、ビターガヴ……ヘイルは確信した。このゼッツというライダーは自分とは比較にならないほどに強い……だが、このまま逃げては自分のプライドが許せない……

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

玉砕覚悟でビターガヴは突進した。すると、ゼッツはベルトについたレバーを3回押した。

ゼッツは腰を深く落とし、強力なエネルギーを流し込む。

 

「消えろ……!」

 

静かに呟き、ゼッツは軽く跳んでビターガヴに蹴りを一発。さらに回し蹴りを繰り出してもう一発。

 

《インパクト!》

《バニッシュ!》

 

そして、最後に空高く跳び上がり、必殺のライダーキックを繰り出し、ビターガヴを勢いよく蹴り飛ばした。

 

《ゼ、ゼ、ゼーーッツ!!》

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

蹴り飛ばされたビターガヴは吹き飛び、そのまま海へと落ちていった。そして爆発が起き、巨大な水柱が上がっていった。

 

「……ミッションコンプリート……後は……」

 

戦いが終わり、ゼッツはグリム達が戦っている船の方を見つめた。

 

「後は……彼らの仕事だ……」

 

ここから先は彼らがやるべきこと……そう思ったゼッツは、どこかへ姿を消していった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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