SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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Chapter.6「灰色の街 Part.1」

 

「ロイド!!」

 

銃声と大声が響く中、ロイドは咄嗟に身をかがめてよけた。

だが、デルタは間髪入れずに何発も撃ってくる。

 

「やめろエイン!!なぜこんな……!!」

「どうした?戦場じゃこんなこと日常茶飯時だったろ!それとも、腑抜けたか、───……いや、黄昏ェェェ!!」

 

怒号とともにデルタは再び銃のトリガーを引こうとした。だが次の瞬間、ヒュンッとナイフのような刃物がデルタに襲いかかる。

 

「っ!!」

 

デルタは咄嗟に後ろに飛んでよけた。刃物は地面に突き刺さる。刃物の正体は……銃剣。

 

「銃剣……まさか!」

 

ロイドとフランキーは銃剣が降ってきた方向に顔を向けた。そこには、鉄骨の上に乗っている神父姿のイグニスがいた。

 

「イグニス!」

 

イグニスは鉄骨から降り、地面に着地すると同時に刺さった銃剣を引き抜いた。

 

「街でお二人を見かけて……様子が変だったから追いかけたんです。そしたら……」

 

銃剣を握りしめ、イグニスはデルタを睨みつける。対し、デルタはフッとほくそ笑む。

 

「ずいぶんお友達が増えたみたいだなぁ……戦場で散っていた同胞を忘れて……!」

「……お前がロイドさんとどういう関係なのかは興味ないけど……お前は危険だと判断した!!」

 

イグニスは服の袖口から何本もの銃剣を取り出し、指の間に挟んで爪のようにして構える。

 

「シャッ!!」

 

遠距離からデルタに向け、指に挟んだ銃剣を投げた。デルタは銃弾を放って飛んでくる銃剣を全て弾く。しかし、銃剣はリードで繋がっており、イグニスは銃剣を鎖鎌のように振るって中距離からデルタに攻撃を仕掛ける。

 

(見たところ、相手は遠距離が得意……なら、こちらから近距離でたたみかければ……!!)

 

相手が近距離武器を持っていないところを見て、イグニスは遠距離が得意だと解釈し、そのままリードで繋がった銃剣を振るい、曲がりくねる銃剣は四方八方からデルタに襲いかかる。

 

「Slash.」

《Blade mode》

 

その時、デルタは銃の持ち手についたマイクに向けて静かに呟く。すると銃口から青い光を放つビームブレードが出現し、銃剣を弾いていく。

 

「なにっ!?」

「こいつはいわゆるバージョンアップ版ってやつでな……銃撃だけじゃないんだよ。」

 

デルタはビームブレードでリード線を切り裂き、銃剣を空中へ弾く。しかし、イグニスは負けじと空中へ跳び上がり、弾き飛んだ銃剣を空中で掴み、そのまま落下とともにデルタに襲いかかる。

 

「甘いんだよ……Bind」

《Whip mode》

 

デルタがまたマイクに向けて呟くと、ビームブレードが蛇のようにくねり、鞭のように伸びる。

 

「はっ!」

 

デルタは光の鞭を襲いかかるイグニスに伸ばし、そのまま巻きつけて拘束する。

 

「うっ!?」

「ふんっ!!」

 

拘束して動けないイグニスを振り回し、壁に叩きつけた。

 

「がはっ!!」

「イグニス!!」

「邪魔者は消えたってことで……続きといくか、───」

 

デルタはイグニスを倒したと思い、銃を構えてロイドへ……

 

「灼熱!!」

 

その時、火柱が上がりイグニスを包み込んだ。炎が消えた頃にはイグニスは怪人…火焔プロメテスへと姿を変えた。

 

「へぇ、お前怪人だったんだな。」

「この姿を見た以上……もう生きては帰れないぞ……!!」

 

プロメテスとなったイグニスは唸り声を上げながらデルタに近づく。プロメテスは確信していた。「こいつはそんじょそこらの奴らよりも強い」と。舐めてかかってはこちらがやられる……本気でぶつかる他ないと判断した。

 

「へぇ、まだやる気かよ……」

 

デルタも同じことを考えていた。目の前にいるのはかなりの強敵……こちらも全力でぶつかる必要がある……

互いに身構え、じりじりと間合いに入っていく。

だが次の瞬間……

 

「エインさん。」

 

暗闇の中から声が響く。カツン、カツン…という足音とともに暗闇の中からアステカ文明を模した怪人……十面鬼カウィールが現れた。

 

「……カウィールか……」

「エインさん、ボスがお呼びです。」

「チッ、こっからだったのに……」

 

デルタはデルタムーバーをベルトに戻し、トリガーを引き抜いて変身を解除した。

 

「じゃあな、怪人……それと、黄昏……」

 

エインはそう言うと、カウィールとともに闇の中へ消えていった……

 

「イグニス、無事か!?」

「ええ……」

 

イグニスも変身を解除し、フッと息を吐く。

 

「まさか変身することになるなんて……アイツ、相当強いですよ……ロイドさん、奴と知り合いなんですか?」

「……エインは、俺がまだ新兵だった頃……一緒に戦った仲間で……俺が、殺した男だ……」

 

────────────────────────

 

その頃……

 

「ゼェ……ゼェ…」

「ハァ…ハァ……」

 

アーニャ達はソウゴに稽古をつけてもらっていたが、一撃も与えることができず疲れ果ててしまっていた。しかも、ソウゴ自身は疲れてもいなければ汗も掻いていない。

 

「情けない……そんなことではやられるな、簡単に。」

「だ、だって、師匠(センセイ)強すぎ……!」

 

アーニャ達が使っているのは木刀……対し、ソウゴが使っているのはただの木の棒……戦力的にもハンデを与えてもらっているにも関わらず、アーニャ達は勝てていない……

 

「しかたあるまい……さらなるハンデをやろう。この合宿中……俺に一撃でも与えてみろ。そしたらもう修行はなし。夏休み中、好きなように過ごすといい。」

「ホントに!?」

「約束ですからね!」

 

ソウゴの提案に声を上げるアーニャ達。すると、ソウゴは修行に参加していないダミアン、ベッキー、エミールとユーインに顔を向ける。

 

「お前達も来るがいい。どうせ暇だろう。俺に一撃与えたら……そうだな、お前らの言うことをなんでも聞いてやろう。」

「な、なんでもって……」

「でも面白そうじゃない!」

 

これはアーニャ達にとってチャンスだった。ハンデつきとはいえ、一撃さえ与えられれば休みを満喫できる。それに加え、ソウゴに恥ずかしい目に合わせることだってできる。

特訓後、アーニャ達はすぐに行動を起こすことに……

 

「ふーむ……こんな大きな屋敷で作るプラモは格別だな……」

 

しみじみと噛み締めながら大広間でプラモを作るソウゴ……背後から影が近づいていることに気がついていない。

 

「隙あり!!」

 

次の瞬間、背後からアーニャが木刀を振り下ろしてくる。だが、ソウゴはその攻撃を振り向かず、背を向けたまま持っていたニッパーで止めてしまった。

 

「げえっ!!?」

「アーニャ……腕立て伏せ30回!」

「ぎぇぇぇぇぇ!!」

 

場所は変わり、ソウゴは庭で座禅を組む……物陰にはシエル、フータロス、マールが隠れていた。

 

(座禅を組んでいる時なら……)

(俺らに気づかないはず……)

(一本いただきますわ!)

 

次の瞬間、3人は一斉に立ち上がってソウゴを奇襲……した次の瞬間、ソウゴは目を見開き、落ちていた石を指で弾いて3人の額に当てた。

 

『ぐはっ!?』

「シエル、フータロス、マール……スクワット30回!!」

『鬼っ!!』

 

さらに場所は変わり、テラスにて……ソウゴはメイドが淹れた紅茶と菓子を楽しんでいる。

 

「いかがですか、ソウゴ様……最上級のアールグレイになります……」

「ああ、味の濃い菓子にピッタリだ……」

 

お菓子を食べながら優雅にお茶を楽しむソウゴに……ユーインとエミールが静かに、気づかれないように迫る……

 

(俺らがソウゴさんに一撃入れるなんて絶対無理!)

(ならせめて、こっそりお菓子を取っちゃえば、一本取ったってことになる……はず……)

 

両サイドからこっそり近づく2人。懐に隠したフォークをお菓子に伸ばし……た、次の瞬間、ソウゴは2人の鼻にデコピンを繰り出した。

 

「いだっ!?」

「はぐっ!」

「二人とも、腹筋30回!」

『は、はいぃ〜!』

 

さらにさらに場所は変わり……ソウゴは庭でタコ焼きを作って食べている。

 

「はふっ、ほふっ……うーむ、こんな屋敷で食べるタコ焼きも最高だな……」

 

美味しそうにタコ焼きを食べるソウゴに、一人の影が近づいてくる……ベッキーだ。

 

「鮫山師匠(センセイ)〜♪私〜、タコ焼きに合うマヨネーズを持ってきたんですよぉ〜♪」

 

ベッキーは一本のマヨネーズを取り出し、ソウゴに差し出した。マヨネーズには「からしマヨネーズ」と書かれていた。

 

「ほぉ、からしマヨネーズか……」

(ウフフ……そのからしマヨネーズ……普通よりからしが7割くらい多い、ほぼからしのマヨネーズなのよ!!もしそれを食べたら……)

 

ベッキーは頭の中でこのマヨネーズをかけたタコ焼きを食べたソウゴの姿を想像する。

 

『ほぼろげぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

(……ってなること間違いなし!)

 

後はソウゴがタコ焼きを食べるのを待つだけ……なのだが、

 

「おい、食ってみろ。」

「………はい?」

「俺は人から差し出された物はあまり食べたくなくてな……お前が毒味してくれないか?」

(いやアンタ屋敷の料理パクパク食べてましたよね!!?)

 

差し出してきたタコ焼きにはベッキーのマヨネーズがこれでもかとたっぷりかけられていた。明らかにわざと……だが、ここで食べないと自分が細工したことがバレる……

 

「い、いただきまーす…」

 

ベッキーは仕方なくタコ焼きを食べることに……

 

「ほ、ほーら、おいしいおいし、い……いぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

口から火が噴き出しそうなほどの辛さが口の中に走り、ベッキーは悲鳴を上げ、その場に倒れた。

 

「階段を10往復!」

 

倒れるベッキーにそう言い残し、近くにいたエイラスに声をかけた。

 

「おい、今日の晩飯におでんが食べたいんだが……作れるか?」

「お、おでんですか……?なんですかそれ……」

 

夕食のリクエストをするソウゴ……その頭を、ダミアンが狙っているとも知らずに……

 

(へへっ、遠くからなら向こうも気づかないだろ……)

 

ダミアンは自分の部屋からスナイパーライフルのような水鉄砲でソウゴに狙いをつける。

 

(くらえ!!)

 

狙いをつけ、いざ水鉄砲を発射した。だが次の瞬間、ソウゴはエイラスが持っていたトレイを奪い取り、飛んでくる水を防いだ。さらに、そのままトレイを部屋にいるダミアンに向かってブーメランのように投げた。

 

「へぶっ!?」

 

見事ダミアンの顔面に命中し、ダミアンはバランスを崩して倒れた。

 

「ダ、ダミアン様ー!!?」

「ダミアン、スクワット30回!!」

 

それからアーニャ達は何度も何度もソウゴに一撃を与えようとするが、上手くいかず……

 

「ん……?そういえばタスクは……?」

 

ただ一人、タスクがまだ来ていないことに気づき、ソウゴは屋敷の中を探した。

 

「……何してる。」

 

タスクは庭のプールで遊んでいた。

 

「キャハハ!プールで魚の真似してる!」

「……お前は何も理解していないな……」

 

結局、誰一人としてソウゴに一撃を入れることができず、そのまま夜が過ぎた……

 

「まだ誰も俺に一撃を入れられていないとは……バカどもが……!」

『すいませ〜ん……』

「貴様らを鍛え直してやろう……肝試しでな!」

『肝試し?』

 

アーニャ達が口を揃えて呟く。ソウゴは頷くと地図を取り出した。

 

「屋敷の近くに森がある。このマップのルートを一人ずつ森の中を周回する……ただそれだけだ。だが、中には俺と俺の知り合いが仕込んだブービートラップがある。ブービートラップといっても、危険なものはない。せいぜいびっくり箱が飛び出してくる程度だ。戻ってくる場所が分からなくならないよう、焚き火をたいて目印を作っておく。」

「ひ、一人ずつ……ですか?」

 

いつも自信満々で高飛車なマールが不安そうな声を上げた。そこにソウゴは厳しいことを告げる。

 

「こんなことぐらいでビビってどうする。戦いは常に数人で行われるものではない……たった一人で戦うこともある……そんなとき、どんな状況でも対応できるようにならねば、貴様は死ぬだけだ。」

「ううっ……」

 

実はマールは暗いところが嫌いで、寝る時も電気をつけて寝るほどだった。

それを知ってか、シエルはマールの手を握った。

 

「大丈夫、みんな条件は同じなんだから……少し頑張ればみんなとまた会えるから、ね?」

 

密かに気になっているシエルに手を握られ、マールは頰を赤らめた。

 

「ふ、ふん、言われなくてもわかってますわ……!」

「探検だー!探検〜!!」

 

対し、タスクは何も怖いものなどないのか大はしゃぎしている。

 

「よーし、みんな!肝試しなんて早くすませて、明日もまた遊ぼ!」

『おー!!』

 

アーニャは3人の肩を叩き、皆をまとめ上げた。それを見たソウゴは、成長を見届けながらコクリと頷いた。

 

(アーニャがまとめ役として機能しているな……幼い頃の経験……いや、見てきた背中が多かったんだろう……)

 

アーニャが皆をまとめる姿に、ソウゴは彼女がいかに周りの大人達の、ロイド達の背中を見てきたか察した。

かくして、肝試しはスタートした。

この時、アーニャ達は知らなかった……この肝試しがきっかけで、グリムの隠し事……描いてきた夢の形をみることになる……

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ「集中できない」

ソウゴは屋敷の食堂にあるものを用意した。

「こいつはカラオケマシンだ。こいつで修行をする。」
「カラオケで……?」
「どんな時でもデカい声を出すことで、相手を圧倒する……それも大事なことだ。よし、タスクやってみろ。」

ソウゴからマイクを渡されると、タスクはリズムに乗り、音楽に合わせて歌い始めた。

「大空に聞け〜♪俺の〜名は〜♪」
「T・A・S・K!タスク!タスク!」
『え……』

歌の最中にソウゴが大声で合いの手を入れた。突然の合いの手にソウゴとタスクの以外の全員が目を見開いた。いつも冷静なソウゴが突然合いの手を入れるとは予想もつかなかったのだ。

「な、何故合いの手を……?」
「応援にデカい声は必要だろ。」

合いの手は他の面々が歌っている時も続いていった……

「マール!マール!ヘイヘイヘイッ!!」
「シ・エ・ル!フーッ!フータロス!フーッ!」
「L・O・V・E、ラブリーアーニャ!!」

クセたっぷりの大声合いの手を聞き、アーニャ達は……

(めっちゃくちゃ歌いづれぇ……!!)

カラオケ訓練はその後も続き、合いの手を続けたソウゴよりも疲弊したアーニャ達だった……

「修行が足りん。」
(これ修行関係あるのかな……)

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