ソウゴ発案の肝試しが開始され、アーニャから順番に森の中を回っていく。とはいえ、そこまで広い森ではない上に道に迷わないようにテープが木々に貼られて道ができている。
「なーんだ、楽じゃん。」
肝試しとはいえ、そこまで気を張る必要はないだろうと森の中を進み続けるアーニャ。しかし次の瞬間、
「ミィーンミンミンミィーン!!」
木の陰からセミの怪人が突然大声をあげて現れた。
「ギャーッ!!?」
「へぶっ!?」
突然現れたセミの怪人に、アーニャは驚いて思わず顔面に拳を叩きつけた。そのまま続けざまに攻撃しようとすると、怪人が待ったをかけた。
「ま、待った!お、俺はセミミンガ……鮫山さんに脅かし役として雇われた野良怪人なんだ……」
「の、野良……?」
「ああ……今どきの怪人は仕事に食いっぱぐれてね……力仕事しかできねぇ奴はこうしてバイト掛け持ちしないといけなくてね。この先、他にもバイトで雇われた怪人いるから……この先気ぃつけてな。」
セミミンガの言う通り、この先を進むと蜘蛛男やトカゲロンといった元ショッカー怪人達が脅かし役として現れた。他にこれといった仕掛けなどはなく、この肝試しは単なる余興……ただの遊び程度のものだと分かる。
「肝試し…なんて言ってたわりに……
ソウゴの思惑を察しながら、アーニャはコースを一周しスタート位置まで戻ってきた。
「おかえり!」
「帰ってきたか……よし、次はシエルだ。」
「はい!」
それから順番ずつ回っていった。最初こそ皆、驚いて声を上げていたが、だんだん慣れていったのかそんな声はなくなっていた。
「
「まぁな、単なるガス抜きだ。」
「そのために野良怪人雇うのはどうかと思うけど……」
順番はタスクに回り、森の中を悠々と進んでいく……が、30分経っても戻ってこなかった。
「おかしい……コースは30分もかからないはずなんだが……」
「様子見に行く?」
と、次の瞬間……
『ぎゃあああぁぁぁぁ!!』
森の中から雄叫びが聞こえてきた。しかしその雄叫びはシエルのものではない。しかも複数……かと思いきや、森の中から脅かし役の怪人達が一斉に飛び出してきた。
「あれ!?なんで!?」
「さ、鮫山さん……もう勘弁して……」
「あはは、楽しかった〜!」
飛び出してきた怪人達はボロボロ……対しタスクは楽しそうに笑っていた。
「……何があった?」
「いや、森の中でタスクくんを脅かしたんですけど……」
セミミンガは倒れながら語り始めた……
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「わはーっ!かくれんぼしてたの!?オイラもやる!オイラ鬼やる〜!」
「いや、これはかくれんぼじゃなくて……」
タスクくん乗り気だからしかたなく隠れたんですけど……
「みーつけた!!」
見つかった次の瞬間、タスクくんがロケットみたいに飛んできて蹴り飛ばされたんです……
蜘蛛男のときは鬼ごっこで……
「来るなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「わーい!待って待って〜!」
ターザンみたいに木々を高速移動しながら蜘蛛男追い詰めて……俺と同じく吹き飛ばして……
トカゲロンも同じで……
「だるまさんが……」
「ターーッチ!!」
「ギャァァァ!!」
だるまさんがころんだをやってるときに……(以下略)
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「……というわけで……」
『あー……』
なんとなく状況を察したアーニャ達。タスクはただ遊んでいただけ……ただ勢いがあまっただけだ。
「……悪かったな。バイト代はちゃんと払うから安心しろ。」
『あ、ありがとうございまーす……』
怪人達は傷の手当てをした後、その場から去っていった……
「肝試し楽しかった〜♪またやろうね!」
「タスク……お前がやってたの肝試しじゃないからな?」
その時、タスクは何かを思い出し声を上げた。
「そういえば……森の中で変なの見つけた。」
「変なの?」
「こっちこっち!」
タスクは皆を引き連れて森の中へ……ついた場所には岩があった。どこにでもある岩だが、タスクはクンクンと鼻を動かしてニオイを嗅いでいる。
「ここ、他のところとニオイが違う。」
「確かに……よく聞いてみろ。隙間風が空いてる。」
岩の下からスーッと風が吹く音が聞こえてくる。
「動かせるの?」
「おそらくな……下がただの土ならここまで隙間風の音は聞こえてこない。どこかにスイッチ……」
その時、ダミアンがふと足を後ろに下げ、小石を踏んづけた。その小石を踏んづけた瞬間、小石は地面のなかに深く沈んだ。すると目の前の石がゴゴゴゴ……と横にスライドして動いた。
「階段!?」
岩の下に隠されていたのは階段だった。地下の奥深くまで続いていた。
「……どうする?」
「入ってみるか……」
ソウゴは先んじて階段を下っていく。他の皆も後に続いて下っていく。壁にある出っ張りを押すと、階段を隠していた岩が動き出し、元の位置に戻った。
「明かりがある……」
壁には電球が取り付けられており、それが道を照らしていた。アーニャ達はその光に導かれるように前に進んでいく。やがて、3mはありそうな巨大な扉に行きついた。
ソウゴは意を決し、扉に手をかけて開けた。次の瞬間、アーニャ達は度肝を抜かれた……
「なに、これ……?」
目の前に広がっていたのは、街……いや、都市。地下都市が広がっていた。街灯やネオンの光で彩られ、都市をバイクや車が闊歩している。
「街…?こんなところに街なんてあったの……?」
「なんでこんなところに……」
「楽しそう!オイラ見てくる〜!!」
「あっ、コラ!タスク!!」
ダミアンの静止を聞かず、タスクは地下都市へ飛び出していった。しかたなくアーニャ達は後を追いかけた。
タスクを追いかけるついでに、辺りを見渡す……住んでいるのは怪人ではなく、人間……一見普通の人間達に見える。
「人間のようだが、なぜ地下に……それに……」
不思議なことに、街の住人達はアーニャ達の方をチラチラと見ていた。それは、よそ者を見る目とはまた違っていた。
「なんか……私達、部外者?」
「すごくアウェイですわ……」
(それだけとは到底思えん……なんだ?)
街を散策し、ついにタスクを見つけた。
「タスク!勝手に一人で行ったらダメだろ!」
「見て見て!ラーメン屋がある!」
タスクが指差した先には屋台が見える。
怪人との共存が進むにつれて、食文化も多様化していった。今では外国料理の屋台が街のあちこちで見かけるようになった。ラーメンもそのひとつだ。
「そういえば、ちょっと小腹空いたかも。みんなで食べよっか!」
「ちょっと!晩御飯の後なんだから、太っちゃうわよ!」
ベッキーの静止を振り切り、アーニャは暖簾をくぐる。
「すいませーん、まだやってますか〜?」
「ア〜ブラ〜、はいよ〜」
「……どこかで聞いたような声……」
アーニャは目を凝らしてよく見た。湯気の中に隠れる店主の顔を……
湯気で隠れていたのは、ガマボイラーだった。
「あれ?あなた、グリムパイセンのところにいた……」
「ガマおじさん!」
「げっ!?タスクお坊ちゃん!!?」
ガマボイラーは以前、グリムにブリッツファミリーの一員として入った。なのに、なぜかこんな地下街にいる……
「どうしてここに……新しいシノギ?」
「え、えーっと……あっ、UFO!!」
しどろもどろになったかと思えば突然大声をあげて空を指差し……逃亡。
「あっ!?ちょっと!」
ソウゴは咄嗟に屋台の壁にかけていたお玉を手に取り、ブーメランのように投げつける。お玉は弧を描いて飛んでいき、ガマボイラーの後頭部に直撃する。
「へぐっ!?」
「逃げるとは感心しないな……」
倒れたガマボイラーの両腕を掴み、拘束する。
「ま、待ってくれ!お、俺はもう組織を抜けたんだ!」
「抜けた?ブリッツファミリーを……?なんで?」
「そ、それは……グリムの兄貴が、変わっちまったから……あの事件以来、グリムの兄貴はよくわからなくなった……腑抜けになったり、突然何かに取り憑かれたようになるし……もうついていけなくなった……」
寂しげに語るガマボイラーの言葉を聞き、アーニャ達は首を傾げる。
「あの事件…?」
「タスク坊っちゃんが……化け物になった時の事件だよ!」
その瞬間、タスクを除く他の面々の脳裏にある光景が浮かぶ。アギトに似た異形の怪物……その怪物はずっと「父ちゃん」「母ちゃん」と叫びながら涙を流して暴れている……そして、その化け物は後にアマゾンになった……否、ならざるを得なかった……
「なんだ、なんの騒ぎだ?」
その時、気づけばアーニャ達は住民達に囲まれてしまっていた。住民達は一様にこちらを睨んでいる……
「こいつら……人間か?」
「こんなところまで来て……そこまで私達を追い込みたい!?」
「やっと手に入れた安住の地だ!それを壊すつもりなら容赦しないぞ!!」
住民達の顔に半透明の模様が浮かんだかと思うと、灰色の怪人へと変貌した。
「こいつら……全員オルフェノクか!」
「まさか……オルフェノクの街ってこと!?」
オルフェノクへと姿を変えた住民達はアーニャ達を睨みながらじわりじわりと近づいてくる。
「……戦うしかあるまい……」
ソウゴは静かに呟くと、腰に携帯した刀に手をかける。アーニャ、シエル、フータロス、マール、タスクもそれぞれ構えて臨戦態勢に入った……だが次の瞬間、
「静まれッ!!!」
地下街全体に響きそうな大声が轟き、オルフェノク達の動きが止まった。どこからか足音が聞こえると、オルフェノクは下がって道を作る。その道から出てきたのは、羊のオルフェノク……ゴートオルフェノクだった。
「騒がしいと思ったら……グリムの倅か。」
ゴートオルフェノクは静かに呟くと、人間の姿へと戻った。ゴートオルフェノクの人間態は初老の髭を生やしたダンディな男だった。その時、アーニャはガマボイラーの時同様、その男に見覚えがあった。
「あれ、あなたは確か……ブリッツファミリーのボス!?」
その男の正体は、グリムが所属するブリッツファミリーの
「あなた、オルフェノクだったんですか?」
「フッ……5年くらい前に、レーゲンファミリーの残党にやられてな……その時、グリムにオルフェノクにしてもらったのさ……今じゃ、ここの顔役だ……」
トネールはフッと笑うと、オルフェノク達を一瞥する。
「こいつらの件は俺が預かる……いいな。」
反論する者はいなかった。この街でもボスとして慕われているようだ。
「立ち話もなんだ……こっちへ来な。この街のことを話してやる……」
トネールはそう言うと、アーニャ達を街の奥にある屋敷に連れていった。
「復活した後、俺は世間的には死んだことになった……表の支配はグロームとトルエーノに任せて、俺は裏から組織を統率し、なおかつこの街の顔役に選ばれた……」
「タスクのお父さんに頼まれたんですか……?」
シエルの質問にトネールはコクリと頷いた。
「そうだ……奴は命の恩人であると同時に、この街を作った人間だからな……」
「待って!今、なんて……?」
「……この街を作ったのは、グリム・ハワード……オルフェノクを救うために作った、救いの街……