「話は10年前に遡る……」
「怪人が人間社会に溶け込んでいく中で、オルフェノクだけは孤立していった……人間か怪物なのか分からないオルフェノクは差別の対象だった。それを憂いたグリムは、彼らのための安住の地を求めた。そこで見つけたのが……この地下だ。ここは昔、戦争の時に防空壕として作られた。それをグリムが見つけて、地下街に作り変えた。何年もかけてな……」
「地下街を作ったって……車も走ってたし、電気だって通ってた!生活インフラも、グリムの兄貴が……?」
困惑するダミアンの疑問に、トネールは丁寧に答える。
「慌てんな……グリムはシノギで得た金の半分をこの街を作るために使った。」
「……それにアンタは同意したのか?シノギで得た金はアンタら組織の活動費でもある……その半分は痛いんじゃないのか?」
ソウゴの言う通り、マフィアにとって上納金は大事な資金源……シノギで得た半分を別のことに使うとなれば、いくらグリム個人が稼いできたものでも、痛手になるはず……
だが、トネールはフッと笑った。
「あの小僧……俺に許可を貰う際、『ここで生活したオルフェノクは俺に感謝して組織に力を貸してくれるはず』……って言ったのさ。それが嘘か本音か分からんが、面白いと思ってな……許可を出したまでさ。」
「その話……ロゼッタさんも知ってる?」
「あいつの女か……そりゃあ知ってるさ。なんせグリムの奴は自分の給料の一部をこの街に使ってるからな。その許可だって取ってる。つくづくいい女を持ったな。」
トネールはゴホンと咳払いし、話を戻した。
「グリムの計画は少しずつ進んでいた……ようやく生活インフラが整い、街ができ始めた……だが、ここで問題が起きた。地上の人間とオルフェノクとの小競り合いだった。外に働きに出るオルフェノクは、よく人間に絡まれた。オルフェノク達も黙っちゃいない……暴力沙汰まで発展することもあった。そこでグリムの奴は考え……街に使う金の一部をユーリ・ブライアに手渡した。」
トネールの言葉に、皆は目を丸くした。
「どうしてそこでユーリおじさんが……?」
「ユーリに渡された金は、そのまま上層部に賄賂として渡される。条件付きでな。」
「条件……?」
「治安の強化だ。人間と怪人の諍いが起きた際、すぐに警察が飛んでいけるようにすること……それがユーリとグリムが提示した条件だ。結果、この国では仮面ライダーが必要なくなるほど治安が強化され、イクサシステムが作られた……まぁ、結果として仮面ライダーが生きづらい時代になっちまったがな……」
トネールの説明で、アーニャ達は合点がいった。グリムとユーリはこの国の、オルフェノク達の平和を守るために仮面ライダーを犠牲にした。結果として仮面ライダー達の活躍は注目されなくなり、逆に恐怖の対象になってしまった。
「……そういうことだったんだ……」
「理解したか?治安強化のおかげでこの街の平和は守られ、グリムの計画は続いた……だが、その計画の裏である事件が起きた。そこの……タスクが5歳ぐらいの時だ。坊主……アギトなんだろ?それもかなり強力な……」
タスク意外の全員は目を見開く。トネールの言う通り、タスクはアギトだった。それも、アーニャよりも強力なアギトの力を秘めていた。だが、タスクはその力を暴走させた。
「その顔……俺が言わなくてもわかってるみたいだな。」
まだ5歳だった当時のタスクに、アギトの力は大きすぎた。早すぎる進化は幼い子どもには負担だった。結果……タスクは暴走。異形の化け物に変わってしまった。グリム、フリッド、ソウゴの3人でようやく抑えることができた……そして、グリムは苦渋の決断を決めた。
タスクを改造人間にすることで、アギトの力を封印することにしたのだ。それが今のタスク……仮面ライダーアマゾンJrである。
「……でも、それがタスクとどう関係してるの?」
アーニャが呟いたことは、皆も気になっていた。灰色の街とタスクにはなんの接点もない……
トネールはフッと笑い、そのことを話そうとし始めた。だがその時、ドアが外からノックされた。
入ってきたのは屋敷の執事だった。
「トネール様、お客様です。」
「誰だ?」
「グリム様です。」
執事の一言に、皆はざわめいた。それを制すようにトネールは言った。
「俺が連絡しておいたんだ。倅が街にいるってな。」
グリムは5分もせずに部屋に飛び込んできた。そして、タスクの姿を見るなり目を見開いた。対し、タスクは父が来てくれたことを喜んでいる。
「父ちゃん!」
「タスク……!」
グリムはタスクの元に近づく……ことはなく、鬼の形相で側にいるソウゴの胸ぐらを掴んだ。
「お前かっ!!うちのガキをこんなとこまで連れてきたのは!!」
「……偶然だ。お前がこんなことをしてるとは予想外だった。」
「なんだその態度……俺を舐めてんのか!?」
今にも首を絞めそうな勢いで掴みかかるグリム。対し、ソウゴは何もせず黙っている。他の皆は慌て、なんとか止めようとする。そんな空気を読まず、2人の間に割って入る者がいた。
「父ちゃん!」
グリムの息子、タスクだった。タスクは嬉しそうにグリムの服をつまんで引っ張る。
「オイラね、オイラね!合宿でいろんなことやった!プールで泳いだり、
「もう帰るんだ、タスク。」
楽しそうに話すタスクを黙らせるようにグリムは言い放った。タスクは目を丸くするが、すぐにまた笑顔を見せる。
「でも、オイラまだ遊びたい!」
「帰れ。」
「それでね、オイラもっと強くなって、みんなを……」
次の瞬間、パチンッと叩く音が部屋に響いた。皆は目を見開き、信じられない光景を見るような顔をしていた。
グリムが、タスクの頬を叩いたのだ。
「お前はなんで親の言うことが聞けないんだっ!!帰れって言われたら帰ればいいんだ!!」
「父ちゃん、オイラ……」
「もうウンザリなんだよ!!俺の前から、消え……」
その時、グリムはハッと我に帰った。自分が何をしたのか、何を言おうとしたのか……そして、目の前のタスクは目を潤ませている。
「タスク……ち、違う……違うんだ……!俺は……!」
タスクは目を潤ませえづくようにヒック、ヒックと声を上げたかと思うと、背を向けて部屋から飛び出した。
「タスク!!」
「タスクちゃん!!」
「タスク!!待って……!!」
グリムは慌ててタスクを追いかけようとした。だが次の瞬間、アーニャはグリムの胸ぐらを掴み、思い切り頬を叩いた。
「最っ低……!!今、自分が何を言おうとしたのか分かってんの……!!?」
「放っておけ……タスクを追いかけるぞ。」
いきり立つアーニャをなだめ、ソウゴはタスクの後を追うよう促した。部屋を去る際、ソウゴはグリムを一瞥し……
「変わったな……」
ただ一言だけ言うと、皆を連れて部屋を出ていった。
「……クソッ……!クソォ!!」
こんなはずじゃなかった。泣かせるつもりなどなかった。もっと、笑っていけるようにしたかっただけ……
グリムは怒り、嘆き、大声をあげて壁に拳を叩きつけた……
───────────────────────
アーニャ達はタスクを探し回った。灰色の街、街から出た森の中……そして最後に屋敷へ……
「おお…皆様……さきほど、タスク様が戻ってきたのですが……」
タスクは屋敷に戻ってきたようだ。寝室の方へ向かうと鍵がかかっている。
「タスク…?タスク、いるの?」
ノックしても返事はない。ドアに耳を傾けると、中から泣く声が聞こえてくる。
「タスク……」
泣き声を聞くだけで、タスクの気持が伝わってくる……タスクはきっと、グリムに喜んでほしいから強くなろうとしている、だからそのこともグリムに話そうとした。
なのに、グリムは聞こうともしなかった……
アーニャはふとため息をつき、自分の部屋に戻った。
「アーニャ?」
「お姉ちゃん……?」
部屋に戻ったアーニャは、カバンから指抜きグローブを取り出して着用し、ミニスカートとレザージャケットに着替えて部屋を出た。
「アーニャ、その格好……」
「グリムのパイセンをぶん殴りに行ってくる。」
アーニャの突然の一言に、「はぁ?」と皆は声を上げた。だが、ソウゴだけは違った。
「奇遇だな、俺も同じことを思っていたところだ……」
ソウゴも両手両足にバンテージを巻きつけ、腰に刀を携える。
「
「正直、タスクのことは二の次だ。あのバカには、個人的に借りがあってな……一発ぐらいかましておきたいんでな。」
準備を整えると、ソウゴはアーニャの隣に立ち皆の方を見る。
「他に来たい奴は?無理強いはしない。」
また灰色の街へいくということは、怪人の群れの中に飛び込むのと同じこと。救世主のような存在であるグリムの知り合いとはいえ、敵としてぶつかってくる可能性は非常に高い。
誰もが危険だと分かっているが、2人は行こうとしている。
「……ぼくもいく!タスクは友達だから、何かしてあげなきゃ……」
「シエルがいくのに、俺がいかねぇわけにはいかねぇな。」
その危険な場所に、シエルとフータロスも共に行くことに志願した。さらに、
「私もいきますわ!別に、タスクのためとかではありませんわ!死地に活を見出すための修行ですわ!」
マールも名乗りを上げた。それを見てアーニャとソウゴはコクリと頷く。
「よし、なら5分で支度しろ。」
「ベッキー、じなん、みんな!タスクのことお願い!」
「わ、わかった……でも、気をつけろよ!」
ダミアンの言葉にアーニャは自分の手のひらを自分の拳で叩き、指の骨を鳴らす。
「大丈夫!そう簡単にやられないし、あのバカの褐色童顔をボコボコにしないと気がすまないから……!!」
グリムが街でしたことは理解できる。尊敬もできる……だが、それでも自分の家族を傷つけるのは違う……それを教えるため、アーニャは
おまけ「各陣営の食卓」
今から10年前……かつて存在したアギトを神と崇拝する「神化教団」……教団の最奥に位置する秘密の広間……幹部と司教はそこで食事を取る。
「司教様、大司教様、食事ができました。」
食事を持ってきたのはまだ信徒だった頃のイグニスだった。
「おおっ!グレン君の料理が来ましたか!」
「きたきた、グレンのトマトリゾット!これが美味いんだよな〜」
イグニスは料理をテーブルに置き、皆と一緒に食べ始める。アイゼンはガツガツとトマトリゾットを食べ進め、ペルランは味わって食べる中、大司教……アポロガイストはちびちびと食べていた。
「どうなさいました、大司教様!!まさか身体の具合が……!!」
「いや……お前らこの光景をおかしいと思わんのか……」
アポロガイストは床に目を向けた。床には一面に赤い血で濡れ、隅には教団への支払いを渋り、制裁を終えた信徒が転がっていた。
アポロガイストが言わんとしていることは、こんな殺伐とした状況でよく飯食えるな……ということだ。しかし、他の3人は……
『……え、なんか変ですか?』
「お前らマジか。」
その後3人はペロリとトマトリゾットを平らげた。それを見て、「もしかして自分がおかしいのかな」とアポロガイストは密かに思っていた……
そして現在……
「……なーんてことがあって……4人で同じ釜の飯を食った時が懐かしいな……」
「……その話、笑えばいいの?怖がればいいの?」