SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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夏バテになってしまい……だいぶ遅くなりました。申し訳ありませんでした……


Chapter.9「獅子の壁 Part.1」

 

グリムは灰色の街の屋敷……客室にいた。そこで電話をかけている。

 

『はっ!?アーニャ達が灰色の街(グレイタウン)に来た!?』

「ああ……俺がやってたこともバレた。」

 

電話の相手はユーリだった。ユーリは受話器の向こうでため息をついている。

 

『……前にも言わなかったか?ずっと隠し通せるものじゃないんだ……いつかバレるってわかってただろ?』

 

グリムは無言で返した。ユーリの言う通り、いつの日かバレると思っていた。だが、できることなら別の形で伝えたいと思っていた。

 

『……とにかく、ロッティ達にこのこと伝えるからな。』

 

ユーリはそう言うと電話を切った。ツー、ツーと通話が切れた音が部屋に鳴り響き、グリムはしばし立ち尽くした。

受話器を戻すと、部屋の隅にある金庫の鍵を開ける。中に入っている物を悲しそうな目で見つめた。

 

「木場……俺、間違ってたのかな……」

 

金庫の中に入っているのは、オーガドライバー……10年前、乾巧から預かったものだ。それを木場に見立て、問いかけるようにグリムは話しかける。

 

「俺は、俺は……ただ、人間とオルフェノクが……生きていける世界を作りたかっただけで……家族を……傷つけるつもりは……」

 

どれだけ語りかけてもベルトはただの物……返してくることはない。ただ愚痴を言っているだけに過ぎない。

その時、部屋のドアがノックされた。グリムは慌てて金庫に鍵をかける。

 

「なんだ?」

「グリム様!さきほどの子ども達がまた……」

「追い返せ!」

「それが……」

 

使用人は口ごもる。すると次の瞬間、

 

「グリム・ハワーーーード!!」

 

どこか幼さの残る女の子の声が外から響いてくる。ベランダに出てみると、入り口の前でアーニャ達4人が立っていた。

それを見て、グリムはため息をつきアーニャに向かって叫ぶ。

 

「何しにきやがった!?」

「パイセンをぶん殴りにきた!!」

「……これは大人の問題だ!子どもはすっこんでろ!」

 

グリムは子どもを叱りつけるようにアーニャ達に叫んだ。すると、屋敷の中から警棒を持った使用人達が出てきた。

 

「お前ら、奴ら追い出せ!少し痛めつけても構わねぇ!」

 

グリムの命令で、使用人達は一斉にアーニャ達に襲いかかる。

 

「セイッ!」

 

使用人の一人が警棒を振り下ろした瞬間、アーニャの拳が顔面に炸裂した。使用人は怯み、その隙にアーニャは回し蹴りで使用人を蹴り飛ばす。

他の面々の方も……

 

「シエル!合わせろ!」

「うん!」

 

シエルとフータロスは息の合ったコンビネーションを繰り出す。フータロスが攻撃を防いだかと思えば、シエルがフータロスの背中を飛び越えて使用人を蹴り飛ばし、さらにそこにフータロスが拳を繰り出して殴り飛ばす。

 

「いきますわ!飛燕連脚!」

 

マールはヴァルバラッシャーを縦に振るう。攻撃はかわされるも、地面に武器を突き刺しその反動を利用して使用人に連続蹴りを繰り出して蹴り飛ばした。

 

「………来い。」

 

ソウゴはその場で動かず、刀を構えることもなく、そのまま仁王立ちになる。使用人達は4人がかりで警棒を振りかざした。だが次の瞬間……閃光が走る。ソウゴは目にとも止まらぬ速さで刀を抜き、襲いかかる使用人達の警棒を真っ二つに切り裂いたのだ。

 

「死にたくないなら……動くな。」

 

使用人達は動揺し、萎縮する。たった5人の相手に、人間態とはいえオルフェノク達が負かされている。その状況に、グリムは苛立った。

 

「何してんだ、てめぇら!!変身してでも追い返せ!!」

 

グリムの命令を聞き、使用人達は顔に半透明の模様を浮かべ、オルフェノク態へと姿を変えた。

それを見て、アーニャ達は変身しようと身構えた。だが、

 

「待て。こいつらの相手は俺がする……」

 

ソウゴはそう言って刀の鞘を握る。ソウゴの一言に、アーニャ達は驚く……ことはなかった。ソウゴの強さは理解しているからだ。

「お前達はあのバカにお灸を据えてやれ。」

 

ソウゴは右手の指をちょいちょいと動かしてオルフェノク達を挑発する。

 

「こっちでやるぞ。脇役は舞台袖だ。」

 

挑発に対し、オルフェノク達はベランダにいるグリムに目をやる。グリムは顎をクイッと動かして「いけ」と促している。それに従ってソウゴの方へ、アーニャ達の後ろへと下がっていく。 そしてグリムは、ベランダから飛び降りて着地。アーニャ達の前に立つ……

 

「もう一度聞くぞ。なんでここまできやがった?」 「パイセンをぶん殴りにきた!そんでタスクに謝って!」

「親子の問題に口挟むんじゃねぇ!!」

グリムは怒鳴り、カイザのベルトを取り出し腰に巻こうとする。だが、巻く直前になってグリムの手が止まった。

「……!!」

 

頭の中で声が囁く。「今のお前に変身する資格があるのか」、「お前はまだ仮面ライダーのつもりなのか」……内なる自分がそう語りかけてくる。

 

「……お前らごとき、ベルトなんか必要ねぇ!!おおおおおお!!」

 

グリムも使用人達と同様に顔に半透明の模様を浮かばせ、ライオンオルフェノクへと変身した。

対し、アーニャは腰にアギトのベルトを出現させる。

 

「フータロス!」

「っしゃ、いくか!」

 

シエルも腰にベルトを巻き、電車のパスのようなものを取り出す。横にあるボタンを押すと、音楽が流れ出す。

同じくマールもベルトを巻くと、2枚のカードを取り出しベルトに装填した。

 

《マッハウィール!イグナイト!》

《ダイオーニ!イグナイト!》

 

三者三様……それぞれのやり方で変身の準備を整え、叫ぶ。

 

『変身!!』

 

アーニャはベルトの両横にあるスイッチを叩き、シエルはベルトの真ん中にパスを通す。

 

《SLASH FORM》

 

マールはベルトのレバーを展開する。

 

《ガッチャーンコ!!バースト!》

《ヴァルバラド!!》

 

変身音声とともに、仮面ライダーアギト、仮面ライダーシエル、仮面ライダーヴァルバラドの三人が参上した。

 

「ケッ、見た目だけはいっちょ前だな……」

 

グリムは四つん這いになると、そのまま駆け出して三人に襲いかかる。あくまで追い出すため、本気は出さずに拳を繰り出す。

だが次の瞬間、アギトの拳が顔面にクリーンヒットする。

 

「うぐっ!?」

「本気、出さなくていいと思ってる?舐めないでよ!」

「この、ガキども……!!」

 

─────────────────────────

 

その頃、

 

「青髪の兄さん、カッコつけて私らの相手を買って出たのはいいが……」

「オルフェノク相手に生身は無謀では?」

 

屋敷から離れた広場でソウゴはオルフェノク化した使用人達と対峙していた。

生身でオルフェノクに挑もうとするソウゴの姿に、使用人達はクスクスと笑っていた。いつの間に集まっていた野次馬達もニヤニヤ笑っていた。

 

「軽く捻ってや……」

「鳴噛(なるかみ)・弾(ハジキ)……」

 

使用人の一人、オウルオルフェノクが爪で攻撃しようとした。だが次の瞬間、ソウゴは刀の鍔を指で弾き、刀を弾丸のように発射してオウルオルフェノクをはじき飛ばす。

 

「うぐっ!?」

 

さらにそのまま鞘でオウルオルフェノクを殴りつけ、そのまま空中に放り出された刀を掴んで頭に峰打ちを繰り出す。連撃を食らったオウルオルフェノクはそのまま地面に倒れる。

 

「俺は人は殺さない……だが、オルフェノク相手ではどうなるかわからんぞ。本気で来い……」

「こ、この……!」

 

他の使用人……ワームオルフェノクは頭から生えた触手をソウゴに差し向ける。

 

「鳴噛・鏡月……!」

 

ソウゴは刀を円を描くように、扇風機のように回転させて触手を斬り裂く。そのままジリジリとワームオルフェノクに近づく……が、その瞬間横からスコーピオンオルフェノクとオクラオルフェノクが襲いかかってくるが……

 

「鳴噛・双(ふたえ)!」

 

即座に鞘を用いた擬似二刀流となり、鞘で喉仏、刀の方で両腕の関節を峰打ちする。そして、そのまま刀を鞘に収め……

 

「鳴噛……」

 

居合の態勢に入る。ワームオルフェノクは隙ありとばかりに三日月型の剣を振り上げた。だが次の瞬間、ソウゴの姿が消えた。

 

「なっ……!?」

「疾風(ハヤテ)……」

 

ソウゴはすでにワームオルフェノクの背後にいた。その時、ワームオルフェノクの腹部に激痛が走る。今の一瞬で刀を抜き、すれ違いざまに鋭い峰打ちをたたき込んだのだ。一撃を食らったワームオルフェノクは地面に倒れた。

 

「つ、強い……たった一人の人間がオルフェノク4人を……」

「あ、あいつ本当に人間か……!?」

 

ソウゴの人間離れした強さに、オルフェノク達は慄いている。その時、遠くから声が聞こえてくる。

 

「先輩ー!!ウォルター先輩ー!!」

 

その声はソウゴにとって聞き馴染みのある声だった。野次馬達の群れを掻き分け、中から出てきたのはユーリだった。

 

「……誰のことだ。そんな奴は知らん。」

「あ……すいません……」

 

ソウゴにはその昔別の名……否、本名があった。だが今はその名を使うことは決してない……

 

「それにしても……ずいぶんお早い到着だな。」

 

ソウゴはユーリの方をチラリと見た。ユーリの後ろにはロイドにヨル……アーニャ達の親が一緒に来ていた。

 

「WISEに無理言って、ヘリを飛ばして来たんだ……それより、子ども達は……」

「奥であのバカと戦ってる。」

 

ソウゴの一言に、ロイド達は目を見開いた。

 

「た、戦ってるって……なんてバカなことを……!止めないと…」

「止めてどうする?」

 

ソウゴを素通りしようとした瞬間、ソウゴは鋭い一言を放ち、ロイドの足を止めた。

 

「いや…どう止める?何と言って止めるんだ?」

「それは……い、いや、これは家族の問題で……」

「あのバカがやってることは間違いじゃない……自分の同族を助けたいと思うのは当然だ。だが……お前らはこのことをガキどもに伝えたのか?」

 

ソウゴの言葉に、皆は黙った。ロイド達はグリムがやっていることを知っている。だがこのことを子ども達に伝えなかった……子どもだから、分かるはずないとタカを括っていた。

 

「……お前らのガキどもは難しいことは分からないかもしれん。だがそれでも、やってはいけないことの線引きぐらいは分かる。それに、お前らは家族であると同時に……仲間でもあるはずだ。」

 

ソウゴはそう言って、ロイド達よりも先に屋敷の方へ向かう。

 

「追いかけよう……」

 

───────────────────────

 

「タスクちゃ〜ん……お部屋から出てきて〜……」

 

その頃、屋敷の方ではダミアン達が部屋に閉じこもったタスクを元気づけようと奮闘していた。

 

「タスク様!ハンバーグはお好きですか?おいしくてジューシーなハンバーグを用意しております!」

「最高級牛肉をひき肉に使用したぜいたくなハンバーグですよ〜!」

 

屋敷の使用人達もタスクを元気づけようと奮闘……負けじとダミアン達も呼びかける。

 

「タスク!兄ちゃん達と遊ぼうか!」

「鮫山師匠(センセイ)が置いていったマンガあるぞ!」

「あと、プラモデルも何個か!」

「お姉ちゃんがだっこしてあげよっか!」

 

だが、どれだけ声をかけても……タスクは出てこなかった。

 

「ダメかぁ……」

「飯やおもちゃぐらいじゃ出てこないか……」

「どうします?もう手は……」

 

どうするか考えていると、中の方から物音が聞こえてくる。

ガタガタという音と、窓が開く音、そして風が吹く音……

 

「……タスク?」

 

屋敷のマスターキーを使ってドアを開けた。ゆっくり開けて中の様子を見ると……そこはもぬけの殻だった。

 

「タスク……?」

 

窓だけ開いていて、風が吹いていた。「キキーッ!」という獣のような雄叫びだけが、遠くに響いていた……

 

 

 

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