「やぁぁぁぁぁ!!」
屋敷の前でアーニャ達はグリムと戦っていた……10年経っても、グリムの強さは健在だった。ストームフォームに変わったアギトのハルバードの突きを、腕で絡め取って止め、顔と胸に拳を食らわせて怯ませた後、ハルバードごとアギトを持ち上げて投げ飛ばす。
「フータロス!」
「任せな!」
シエルはブーメランのように武器化したフータロスを投げる。グリムは片手で弾くが、弾かれた瞬間にフータロスは元の姿に戻ってグリムに襲いかかる。だが……グリムは読んでいた。逆にフータロスの足を掴んで地面に何度も叩きつける。シエルも一緒に襲いかかってくるが、フータロスをシエルの方に投げつけて一緒に壁に叩きつける。
「百裂鮮烈突き!」
ヴァルバラドは剣を突き立てながら連続の突きを繰り出す。だがグリムは全ての攻撃を軽々よけ、代わりに腹に一撃拳を叩きつけ、そのまま身体を空中に浮かせて回し蹴りで蹴り飛ばした。
「つ、強すぎますわ……!」
「たぶん、
「さすがパイセン……全然強さ変わってないんだ……でも、アーニャ負けらんないから!」
アギトはベルトの横のスイッチを押し、ベルトから飛び出した剣を掴んで取り出し、フレイムフォームへと姿を変える。
「ハァァァ……」
「どんだけ来たって無駄だっての……」
「
真っ向から剣を振り下ろした。しかし単純な軌道だったためグリムは軽々身体を横に反らしてよける……が、その後すぐに下から掬い上げるように剣を振るう。咄嗟に反応できなかったのか、グリムはよけきれず腕に傷をつける。
「チッ……そうだった……確か、お前らアイツの弟子だったな。」
「即興で技マネさせてもらったけど……上手くいったかも。」
アギトは剣を地面に突き刺すと、ポキポキと拳を鳴らし……また剣を取る。
「パイセン……いや、グリム!タスクを泣かせたこと……許さないから。逆にボコボコにして泣かせてやる!!」
「さんをつけろ、このクソガキがぁ!!」
アギトとグリムは互いに攻撃を繰り出し、ぶつかり合い火花を散らす。そこにシエルとヴァルバラドが参加し、四方から攻撃が繰り出される。
「この街を作った理由、さっき聞いたよ!グリムらしいし、差別を受けるオルフェノクのために動けるのはスゴイって思うよ!でも……だからって
「これは大人の問題だ!子どもがしゃしゃり出てくんな!!」
「自分だって昔は子どもだったじゃん!!」
その言葉を聞いた瞬間、グリムの動きが一瞬止まった。その隙に三人は一撃を食らわせて吹き飛ばす。
「チッ……!」
「グリムだって、昔は親のことで苦労したじゃん!嫌な思いしたじゃん!それをタスクにも同じ思いをさせていいわけ!?」
またグリムの動きが止まり、顔を反らした。その隙にまた三人は攻撃を繰り出す。グリムはなんとか防ぐが後ろに下がってしまう。
「くっ……!」
その時、三人とグリムが戦っているこの場にソウゴとロイド達が駆けつけてきた。
「アーニャ!もうよせ!」
ロイドは戦いを止めようとするが、アギトは聞かずグリムと戦い続ける。
「アーニャ、聞こえないのか!?シエル!」
今度はシエルを呼びかけるが……
「……お父さんごめん!ぼく、戦う!」
「シエル……?」
「ごっこ遊びって言われるかもしれない、仮面ライダーは昔とは違うかもしれない……でも、ぼく達はそれでも仮面ライダーになりたい!5年前のネオショッカーとの戦いで……仮面ライダーがどれだけカッコよくて強いのか分かった!だから、ぼくは仮面ライダーになりたいんだ!!」
シエルの心からの叫び……シエルは本気だった。決して姉に感化されたわけでも、友達との付き合いのノリで参加したわけでもない。仮面ライダーが、自分のなりたい姿……それは、マールも同じだった。
「お父様!お母様!私も仮面ライダーになりたいですわ……今はまだ明確な答えなんて出てませんけど……戦いの中で、答えを見つけてみせますわ!!」
「マール……」
「……見えないところで成長していたんだな……」
お遊びではない……目指すべき姿は見えないものの、その気持ちだけは変わらない。
三人はその想いをグリムへとぶつける。
「……ロイドさん、私達、過保護すぎたんじゃないでしょうか。」
「ヨルさん……?」
「そうだな……俺達は守ってるつもりだったが、いつまでも子どもじゃないんだ……」
ヨルとフリッドがまるで過去の自分を諌めるようにしみじみと呟いた。だが、ロイドは納得できないのか声を荒げる。
「何を言ってるんだ!今は昔と違う……仮面ライダーが英雄扱いされる時代は終わったんだ!」
「終わってなんかない!!」
その時、ロイドの言葉に反論するようにアギトが戦いながら叫んだ。
「アーニャ、知ってるよ……仮面ライダーは、いつだってみんなの
叫びとともに剣を振るい、グリムを吹き飛ばす。
「そうじゃなきゃ……アギトの銅像なんてとっくに壊されてる!!」
アギト…アーニャの言葉に、ロイドはハッと目を見開く。
アンノウンとの戦いの後、東国と西国両方に平和の証としてアギトの銅像が建てられた。10年経った今もなお、その銅像は変わらぬ状態を保っている。それこそ、ライダーが今もなお英雄として認められていることの証明……アーニャはそう言いたいのだ。
「だからアーニャ達は仮面ライダーになる!いつか、堂々と『仮面ライダーはみんなの味方』だって言える日まで!!」
アーニャは雄叫びとともに、ベルトの両側にあるスイッチを勢いよく叩く。すると、アギトの身体に変化が起きる。右肩と右腕が炎のフレイムフォーム、左肩と左腕が風のストームフォームに変わる。その姿は、かつて
アギトはベルトからフレイムセイバーとストームハルバードを抜き、両手に構える。
「だぁぁぁぁ!!」
グリムに向かって突進しストームハルバードを振り下ろす。
(ケッ、やっぱガキだな……こんな長物なら縦に振るより横薙ぎや突く方が……)
リーチのある武器を持っていながら愚直に縦に振るって攻撃してくるアギトに鼻で笑うグリム……しかし、これはアギトの策だった。縦に振るったハルバードはよけられて地面に……しかしそれを利用して棒高跳びのようにアギトは空中へ跳び上がってフレイムセイバーを振りかざす。
「もらったぁ!」
「そう来やがったか……!」
不意を突かれたグリムだったが、灰色の槍を取り出して攻撃を防ぐ。通常よりも高い位置から繰り出される攻撃は威力が高い……だがグリムは防ぎ、逆に剣を弾き飛ばした。
「成長したのは図体だけだな、アーニャ!」
「……だと思った?」
その時だった。青い閃光が走り、グリムの身体に一撃を与えた。
「なっ……!?」
そこにいたのは、ストームハルバードを持ったシエルの姿があった。
(ま、まさか、跳躍するために武器を使ったわけじゃなくて……渡すために……!?)
これは予想していなかったグリムは面食らった。だが、予想していなかったことがもうひとつある。弾き飛ばしたフレイムセイバー……その剣は今、ヴァルバラドの手に。
「しまっ……!」
「炎陣閃光斬!」
フレイムセイバーに炎を纏わせ、縦、左斜め、右斜め、横薙ぎに斬り、さらにバツ印を描くように斬る。
「ぐぅぅぅ!!」
「今だ!ハァァァ……」
グリムが攻撃を受けている隙に、アギトは地面に紋章を浮かばせ、それを両足に吸収し空中へ飛び上がる。
「やぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びとともに、必殺の両足キックを繰り出す。グリムは腕を交差させて防御しようとするが……あえなく蹴り飛ばされ、後ろの壁に激突した。
「がはっ!!」
「や、やった……グリムのお父さん倒しちゃった……」
「ま、まさかグリムが……」
ロイド達大人組がアーニャ達がグリムを倒したことに驚いていると、グリムは変身を解いてその場に壁にもたれながら座り込んだ。アーニャ達も同様に変身を解いた。
「……俺の、せいなんだよ。あの子がああなったのは……」
何かを観念したように、グリムは語り始めた。
「10年前……ギアンとの戦いで俺は、生まれる前の……まだロゼッタの腹にいたタスクから力を借りて、なんとかギアンを倒した。その時わかった……タスクがアギトだって。でも……それが原因だった……」
思い詰めた顔をしながら、グリムは手で顔を押さえ、項垂れた。
「あれは、早すぎたアギトの進化だった……子どもが持つには、進化したアギトの力は大きすぎた……そのせいで……3年前……!」
その時、グリムの脳裏によぎったのは、怪物になってしまったタスクの姿だった。タスクが6歳になった時、ついに彼の中のアギトの力が暴走し、化け物になってしまった。10年前のアーニャやグリムと同じように……
「今でもあの子の声が聞こえてくる……泣き叫んで、助けを求めてくる、タスクの声が……」
あの日のタスクは化け物になりながらも自我が残っていた。大きな赤い目から涙を垂れ流し、「父ちゃん!父ちゃん!」と泣き叫び、助けを求めた。
「……
またも脳裏にタスクが泣き叫ぶ姿が浮かぶ。改造された自分を見て愕然とし、絶望する姿……それは6歳の少年が背負うにはあまりに大きく、重たいものだった。
「……俺のせいなんだ!俺がギアンなんかに苦戦したから……あの子はあんなことになったんだ!!だから俺は……あの子を愛しちゃいけないんだ!!子どもを愛しちゃいけないんだよ!!」
グリムは叫んだ。自分が不甲斐ないせいでタスクを化け物にしてしまった、仮面ライダーにしてしまった……だから、自分は息子から遠ざかっておかなければならない……グリムの心情は分からないでもないが……
「ふざけんなぁ!!」
次の瞬間、アーニャの拳がグリムの顔面に炸裂した。そしてすぐに胸ぐらをつかんだ。
「自分のせいだから愛しちゃいけない……!?そんなの身勝手じゃん!!タスクに一言でも聞いたの!?『父ちゃん嫌い』って一言でも言った!?タスクは今でも……!!」
アーニャが叫ぼうとした瞬間、「キキキキーッ!」と奇怪な鳴き声が聞こえてきた。
声がした方へ顔を向けると、そこにはアマゾンJr.がいた。
「タスク……」
「父ちゃん……喧嘩しよっ!」
アマゾンJr.……タスクはいきなり意味が分からないことをグリムに向かって言い放った。
「前に父ちゃん言ってたよね?話し合っても分かり合えなかっあら、思い切りぶつかってみるしかないって!だから喧嘩!オイラと喧嘩してっ!」
タスクの言葉に、グリムは目を丸くした。グリムが言った「思い切りぶつかる」とは、喧嘩するという意味で言ったわけではないのだが……だが、グリムは立ち上がり、もう一度オルフェノクの姿へと変わった。
グリムとタスクは互いに拳をぶつけ合った。その光景は、本気の喧嘩にも、親子同士にもじゃれ合いにも見える。2人の人生で、最初で本気のぶつかり合いだった。
「はぁ…はぁ……」
「やっぱり……父ちゃん強いね……」
グリムはアーニャ達との戦いで疲れていた。タスクもここまでの移動と、単純に実力が足りてないこともあって疲れていた。
疲れ果てた2人は、変身を解除してその場に座り込んだ。
「………いくぞ。」
その時、ソウゴがロイド達とアーニャ達に向かって言い放った。
「積もる話もあるだろう……部外者は立ち去るぞ。」
ここからは親子同士の対話……それを理解し、皆その場から離れていく。
「……父ちゃん、オイラね……初めてアマゾンになった時……すごくショックだった。痛くて、怖くて……ずっと泣いてた。」
タスクの言葉に、グリムの表情は曇り、俯く。やはりタスクは自分のことを恨んでいる……そう思った。だが、タスクは……
「でも、オイラ思った。泣きたかったのは父ちゃんと母ちゃんだって。父ちゃんと母ちゃんの方が……ずっと痛いって、苦しいって……だからオイラ、強くなりたかった。家族みんなを守るために。」
「……!」
「父ちゃん、オルフェノクのためにこの街を作ったんでしょ?なら、父ちゃんはやりたいことをやって!母ちゃんとバレルはオイラが守るから!!オイラのことは気にしないで!!」
タスクは、グリムが思っていた以上に強くなっていた。タスクは確かに傷ついてはいたが、それ以上に強く……強くなろうとしていた。それどころか、グリムの夢を後押ししようとしている。
「タスク……俺のこと、父ちゃんのこと……恨んでないのか?俺のこと……嫌いか?」
「恨んでなんかない!オイラ、父ちゃん大好き!!」
タスクの一言に、グリムの瞳は潤み、タスクをギュッと抱きしめた。
「タスク……!!ごめんな……俺は、俺はダメで、バカな父ちゃんだ……」
「父ちゃん……うっ、うっ……!」
タスクは今まで我慢していたものが溢れ、涙を流してグリムに抱きついた。やっと訪れた、大好きな父親との触れ合い……もう互いに遠慮することはない……わだかまりは完全に無くなったのだ。
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「ただいま!」
「母ちゃんただいまー!」
タスクはアーニャ達より先に合宿を終え、グリムと一緒に家に帰った。
2人一緒に帰ってきたところを見て、ロゼッタとバレルは目を丸くしていた。
「ダ、ダーリン……?タスクちゃん……?」
「ロゼッタ……その、悪かった。今まで……」
グリムは頭を掻き、申し訳なさそうにロゼッタに謝罪した。
「今までのこと、俺が全部悪かった。実は……タスクとはもう仲直りしたんだ。俺はタスクを守ってるつもりで守ってなかった……俺らの子、想像以上に強くなってた。本当に……ごめんな、ロゼッタ。」
2人の間に何があったか分からないが、2人は完全に仲直りし、昔のように戻った……それを知り、ロゼッタは目に涙を溜めた。
その横で、バレルはおずおずとタスクに近づいた。
「あの……兄ちゃん、あの時のこと……ごめんなさい……」
バレルは以前タスクにひどいことを言ってしまったことを、傷つけてしまったことを反省したようで、申し訳なさそうに謝罪した。しかし、対するタスクはキョトンと目を丸くしていた。
「なにそれ?忘れちゃった!母ちゃん、オイラ腹減った〜!」
「おう、久々にロゼッタの飯食いてぇな。腹ペコだ。」
「……うん!いっぱい作るからね!」
ハワード一家のわだかまりは完全になくなり、ごく普通の……否、最高の家族へと戻ったのだった……
おまけ「敵を増やす男」
「……そういえばアーニャ、さっき……俺の技を使っていたな。」
去りながらソウゴはアーニャに尋ねた。するとアーニャは頰を少し赤らめた。
「み、見てた?あはは……ちょっとマネしちゃった。再現は甘いかもだけど……」
「まったくだ。技を出すタイミングが甘い。剣を振る角度も甘い。鳴噛は上下から牙で噛むように攻撃するのが肝だ。」
師匠というだけあって、アーニャが出した技の精度を容赦なく指摘する。しかし、
「だが……悪くない。」
そう言ってソウゴはアーニャの頭に手を置いて少し撫でる。
「……よくやった。」
「あっ……えへへ……も、もうズルいよそれ……」
アーニャは嬉しいのか、それとも頭を撫でられて恥ずかしいのか、さきほどよりも顔を赤らめて顔を下に向けた。
その光景を見て、ロイドは額に青筋を立ててソウゴの肩をつかんだ。
「おい……娘はやらんからな。」
「いらん。」
しかし、青筋を立てているのはロイドだけではなかった。物陰から見つめていた、ダミアンとシエル……
「
「クソッ、顔がいい……!こ、この怒りどうすれば……!」
まさか身内に敵を作るようなことをしたとは思わず、ソウゴはいつもの態度を貫いたのだった……