SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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今回から破章がスタートします!
そして、今回ようやくあのキャラが登場します!


破章「燃え上がる想いは炎の如く」
第17話「暴走する思い」


 

ある日のこと……

 

翔一はソファに座っていた。その向かいにはロイド達が座っていたが、妙に緊張している顔だった。

 

「ど、どうぞ……!」

 

ヨルは緊張しながらお茶を出した。しかし緊張しすぎているのか手がカタカタ震え、しまいにはお茶を手から落としてしまった。

 

「あっ!?」

「ア、アーニャ、布巾!」

「うぃっ!」

 

3人は慌ててこぼれたお茶を拭きとった。

その光景に翔一は苦笑いを浮かべた。

 

「よ、よしてくださいよみんな。お見合いじゃないんだから……」

「す、すまない。では……しょ、翔一君。君はアギト、ということが分かったワケだが……」

 

翔一がアギトであるという事実に、まだ動揺を隠せていないのか、ロイド達の態度はどこかよそよそしかった。

 

(改めて考えてみれば、こいつ、あのアギトなんだよな……)

(でも、いつもの翔一さんとの差が激しすぎて……)

(いわかんがすごい・・・!!)

 

ロイド達はいつもの翔一とアギトの差を比べ、そのギャップの違いに戸惑っていた。

 

「し、しかし、大変だな。アギトッ…!であることは……!ある意味悲劇的だ。そんなわけのわからない運命に翻弄されてしまって……」

「いや、普通ですけど……」

『ふつう。』

 

翔一の一言に、ロイド達は思わず声を上げた。

するとロイドは咳払いをし、口を開く。

 

「さ、参考までに聞きたいんだが……君は、どんな理想をもって生きてるんだ?」

「理想、ですか……うーん……あ、快食快便です!」

 

翔一は少し考えるとニコッと笑って答えた。

 

『えっ?』

「えっ?」

 

翔一の返答にロイド達は目を丸くして声を上げた。その反応に翔一も声を上げた。

 

「ま、まぁ、それも大事なことだな、うんっ。じゃ、じゃあ、アギトとして何か特別な訓練とかは……?」

「うーん、俺そういうのどうも苦手なんですよね~!訓練なんてやめてくんれん!なーんて!あはははっ!!」

 

久々に寒いダジャレを繰り出し、翔一は声を上げて笑った。しかし、真面目に聞いているロイドは笑えず怒りで青筋を立てた。

 

「バカにしてるのかお前は……!」

「い、いや違いますよ~!」

 

翔一が慌てて言い訳しようとしたその時、家のインターホンが鳴り響いた。

 

「あ、私出ます。」

 

ヨルは立ち上がり、玄関のドアを開けた。

 

「はーい、どなたで……あ、あなたは……」

「どうも……」

 

ヨルは思わず顔をしかめた。そこに立っていたのはフィオナ・フロスト。

ロイドが務める病院で事務仕事についている女性。

 

「フィオナくん?」

(夜帷……!?なぜここに……!?)

 

フィオナの正体はロイドと同じ「WISE」に所属する女スパイ「夜帷」だった。

 

「え?誰ですかあの人?」

「あ、ああ……俺が務める病院で事務を担当してるんだ。」

「へぇ~、美人だなぁ~!」

 

翔一は初めてみるフィオナの姿に興味津々だった。

そんなフィオナの手にはテニスラケットが入っていると思われるバッグが下がっていた。

 

(今日こそ、この怪力ゴリラ女にリベンジする……!!そして、先輩を我物に……!!)

 

以前、フィオナはヨルとテニスで勝負をしたことがあった。しかしヨルの圧倒的なパワー(物理)に負けて以来、リベンジを誓っていた。

そして今日、再度挑戦に来たというわけだ。

 

「すいません先生。今日用があるのは奥さ・・・」

 

フィオナは一度ロイドに目をやり、再度ヨルの方に目をやった・・・と同時にいつの間にか翔一がヨルの前に移動していた。

 

「どうも、居候の津上翔一です!どうも~♪」

(は、速い!?いつの間に……!)

 

突然のことに驚くフィオナ。しかしポーカーフェイスは崩さない。それに対し、翔一はニコニコ…というよりデレデレと笑いながら握手をしようと手を差し出した。

 

「どうも……フィオナです。」

 

戸惑いながらもフィオナは翔一と握手をかわした。

その後フィオナはリビングのソファに座り、ロイド達とお茶を飲んだ。

 

「へぇ~、フィオナさんテニスが好きなんですね!実は俺も、前からテニスには興味がありまして!」

(初耳なんですが……)

 

翔一はフィオナの隣に座り、ペラペラと喋っている。

その様子をフィオナを含め、ロイド達はじとっとした目で見ていた。

 

(もしかして翔一君、美人には弱いのか?)

(こいつが津上翔一……先輩からの報告書にあった……しかし、男前ではあるけど、先輩に比べたら雲泥の差!よって無視!)

 

フィオナは心の中で翔一を無視しようと決めた。

すると翔一は突然立ち上がった。

 

「そうだ!これからみんなでテニスしましょうよ!」

「な、何を言い出すんだ急に……?」

「ほら、記憶を失う前の俺はテニスの選手……だったかもしれないじゃないですか!」

 

翔一はそう言って半ば強引にロイド達とテニスをしに、近所のテニスコートへ向かった。

 

────────────────────────

 

「さすがによく手入れされてますね!よーし、フィオナさん!さっそく勝負です!」

 

テニスコートに着いた翔一はさっそく道具を取り出してコートに立った。

 

「ちょっと待った!あなたのソレ……何?」

 

その時、フィオナは声を上げた。それもそのはず、翔一が手にしていたのはテニスラケットではなく、フライパンだったからだ。

すると、翔一は笑い出した。

 

「イヤだな~、フィオナさん!フライパンを知らないんですか?フライパンは食べ物を炒める道具で……」

「じゃなくて!なんでフライパンを持ってるのって話!」

「実は・・・俺ラケット持ってないんですよ。だから、代わりに一番使い慣れたコイツでやろうと思って!」

 

翔一は笑いながらそう言うと、得意気にフライパンをラケットのように振るった。

すると、フィオナは近くにいたヨルに近づいた。

 

「・・・いつもああなんですか?」

「すいません、あーいう人なんです。」

「・・・ご愁傷様です。」

 

真顔かつ、何かを諦めたような表情で言うヨルに、「色々あったんだろうな」ということを察し、フィオナは初めてヨルに同情した。

 

「さぁっ、バッチコーイッ!!」

 

翔一は大真面目な顔でフライパンを構える。周りにいたテニスプレイヤー達がその様子を見てクスクスと笑っていた。

 

(くっ、恥ずかしいぞこの状況……!!)

 

この状況を恥ずかしいと思ったロイドは顔を赤らめた。その隣にいたヨルも同様に顔を赤らめた。

すると、ロイドはフィオナに近づいた。

 

「フィ、フィオナくん、早々に終わらせてやってくれ。多分彼も諦めがつくから……」

「わかりました。」

(本当はあの女とやりたかったけど、先輩の頼みなら仕方ないわね……)

 

ロイドからの頼みで、フィオナは仕方なく翔一の向かいのコートに立った。

 

「じゃあ、いきます!」

 

フィオナはそう言うと、テニスボールを軽く投げ、それをラケットで叩いて飛ばした。

 

(所詮は素人。私のボールを返せるワケが……)

「ほいっ!」

 

フィオナは返せるワケないと高を括っていたが、翔一はフライパンでアッサリ返した。

 

「え。」

 

フィオナは咄嗟に反応が遅れ、ボールは白線の内側に落ちた。

 

「やったー!一点とりましたよー!」

(わ、私が、負けた……?)

「いや~、意外に弱いんですねー!」

 

翔一は悪気なく毒を吐いた。それを聞いたロイド達は、

 

(ああ、また悪い癖が出た……)

 

と思い、頭を抱えた。そしてそんな翔一の性格を知らないフィオナはカチンときていた。

 

(こ、この男……!)

「冗談じゃないわ、もう一回!後、フライパンはやめなさい!卑怯よ!」

「ま、まぁ確かにそうだな。翔一君、俺のを使いなさい。」

 

ロイドは自分のラケットを翔一に手渡し、翔一もフライパンをロイドに渡した。

そして、二人はもう一度コートに立った。

 

(さっきのはまぐれ……それを、思い知らせてやるわ!!)

 

その後、フィオナは完膚なきまでにテニスで翔一をボコボコに叩きのめした。

所詮素人の翔一とプロ並みの腕を持つフィオナとでは実力が違いすぎた。

 

「つ、強いですね~!」

「当たり前です。」

(さて、本来の目的を果たす!)

 

翔一をあしらったフィオナは、今度はヨルの前に立った。

 

「奥さん、もう一度私と勝負しませんか?」

「え?」

(ま、まさかフィオナさん、ロイドさんを狙って……!?)

「わ、わかりました!」

 

ヨルはゴクリと唾を飲み、コクリと頷いた。

その様子にロイドはため息をついた。

 

(また面倒な・・・)

 

と、その時、

 

「なんか面白そうですね!じゃあ、ダブルスでやりましょうよ!フィオナさんは俺とペアを組みましょう!」

「は?」

 

突然の翔一からの提案にフィオナは声を上げた。

フィオナが翔一と組んでしまえば、自然にヨルはロイドと組むことになってしまう。それはフィオナの気持ち的に許せなかった。

 

「だって、ヨルさんそんなにテニス上手くないだろうし、ロイドさんがサポートしてくれれば色々フォローできるじゃないですか。」

「ま、まぁ、確かにそうだが……」

 

翔一の言い分にロイドは納得したように頷いた。すると、ヨルがロイドの服を掴んだ。

 

「ロ、ロイドさん!よ、よろしくお願いします!私もロイドさんがいいです!」

 

ヨルは緊張気味に懇願した。その様子にロイドは戸惑いながらも同意し、フィオナは心の中で歯ぎしりを立てた。

 

(距離が・・・ち・か・いィィィィィ!!私と代われェェェェェ!!)

 

フィオナのジェラシーが燃えまくっていた。しかし、そんな気持ちを知らない翔一は……

 

「よーしじゃあ行きますよー!お二人のラブラブパワーに負けませんよー!!」

『ラ、ラブラブ!?』

「な、なななな、何を言ってるんですか翔一さん!」

「バ、バカなことを言うんじゃない!!」

 

翔一の言動にロイドとヨルは顔を真っ赤にしながらも、どこかまんざらでもなさそうだった。その様子を微笑ましく思っているのか、翔一はニコニコ笑っていた。が……

 

(津上翔一ィィィィィ!!こいつは一体なんなの!?私を怒らせて、一体何をどうしたいワケ!?)

 

フィオナは心の中で怒り狂っていた。

 

(ショーイチ、ひとをおこらせる"てんさい"……)

 

フィオナの心を読んだアーニャは翔一の素で相手を怒らせる、(ある意味で)才能に呆れていた。

そして、いよいよダブルスによる試合が始まった。

 

「じゃあ、翔一君のサーブからだ!」

「はい!いきますよ~!」

 

翔一は元気よく返事をし、宙にボールを放った。

 

(津上翔一……こいつ絶対ぶっ殺してやる……!最悪「WISE」の力を総動員してでも……!!)

 

フィオナは翔一をいっそ殺してやろうかとラケットを壊れそうなほど強く握りしめた。

その時、翔一がサーブしたボールが勢いよく……フィオナの後頭部に激突した。

 

『あ。』

 

フィオナ以外の、その場にいた全員が声を上げ、冷や汗を流した。

そしてフィオナの怒りは頂点に達し……

 

────────────────────────

 

ズゾゾゾ……ぐぁつ、ぐぁつ……ゴキュ、ゴキュ……

 

その後、フィオナはロイド達を巻き込み、近所のレストランに入った。

そしてそこでフィオナは大盛のパスタとカルパッチョを食べ、さらに大ジョッキに入ったジュースを飲んだ。

その様子をロイド達は気まずそうに見ていた。

すると、ジュースを飲み干したフィオナがグラスをドンと置いた。それにロイド達はビクッと反応した。

 

「フーッ……あなた、卑怯者ね。」

 

フィオナは翔一を睨みながらゆっくり呟いた。

 

「私に勝てないからってあんなことして……やりかたが卑怯よ。」

(夜帷にこんな一面があったとは……)

 

フィオナの意外な一面に、ロイドは冷や汗を掻きながら見ていた。

 

「い、いや、違いますよ~!アレは決してわざとじゃ……」

 

翔一は必死に弁明しようとした。とその時、翔一の耳に例の音(・・・)が鳴り響いた。

 

「すいません、俺用事思い出しました!」

 

翔一はそう言って慌ててレストランから飛び出していった。

 

「あっ!?ちょっと待ちなさい!」

 

フィオナは逃がすまいとすぐさま後を追おうとした。が、すぐにロイドとヨルがその腕を掴んだ。

 

「ま、まぁまぁ!翔一君も色々忙しいんだ!」

「そ、そうですよ!今日はいっぱいお話しましょう!」

「アーニャもおねーさんとおはなししたい!」

 

ロイド達は翔一がアギトであることを隠していた。故にフィオナを行かせまいとした。

その様子に、フィオナは思わず怪しんでいた。

 

(怪しい……3人とも急にどうしたの……?)

 

3人に止められたフィオナは一旦席につき、水を飲んで落ち着いた。

 

「……じゃあ、あの津上翔一という男はどういう人ですか?」

「変人だ。」

「変人です。」

「へんじん。」

(即答……)

 

フィオナからの質問に3人は即答した。あまりに早い即答にフィオナは声が出なかった。

 

「だがまぁ……翔一君は、一言では語れないな。」

 

ロイドはそう言うと、優しく微笑んだ。

 

────────────────────────

 

「う、うわあああああああああああ!!」

「グルルルル……」

 

人気のない港で男の悲鳴がこだまする。

白い豹のアンノウンが作業員らしき男ににじり寄っていた。そして、どこからともなく弓矢を取り出し、弓を引き始めた。

そして、弓からその手が離れ、矢が放たれた。しかし次の瞬間、アギトが現れ、矢を掴んで止めた。

 

「アギト……!」

 

アンノウンはアギトの姿を見るなり構えた。アギトも同様に構え、臨戦態勢を整える。

その隙に、作業員の男は逃げ出した。

アンノウンは男を追おうと走り出した。しかしアギトはそれをさせまいと回し蹴りを繰り出し、顔面を蹴った。さらにそこから連続で腹に拳を叩き込み、最後に思い切り拳を叩きつけて殴り飛ばした。

 

「グッ!」

 

アンノウンは吹き飛ばされるも立ち上がって矢を放った。矢はアギトではなく地面に当たり、その周りに砂埃が立ち上った。

 

「ッ!」

 

砂埃が消えたころ、アンノウンの姿が消えていた。アギトは辺りを見回して探すも見当たらない。

その時、横から矢が飛んできた。アギトは咄嗟に拳でそれを弾いた。

視界の先をよく見ると、アンノウンが高く積まれたコンテナの上で弓矢を構えていた。

そして、もう一度こっちに向かって矢を放ってきた。

すると、アギトはベルトの左側のスイッチを叩いた。ベルトからストームハルバードを抜き、左腕に青い装甲を身に纏って「ストームフォーム」に姿を変えた。

 

「ハッ!」

 

ハルバードを回転させながら飛んでくる矢を次々と弾いていく。そして、距離が近づいてきたところでハルバードを地面に突き刺して、棒高跳びのように空高く飛び上がった。

さらに、空中で今度は右側のスイッチを叩いた。右腕にフレイムフォームの装甲を纏い、「トリニティフォーム」へと変わった。

そして、ベルトからフレイムセイバーを抜いた。

 

「タアァァァァァァァァッ!!」

 

そして、落下の勢いとともにアンノウンを一刀両断した。アンノウンは断末魔を上げることなく爆発して消えて行った。

戦いが終わったアギトはコンテナから降り、元の翔一の姿へと戻った。

 

しかし、翔一は気づかなかった。物陰から3体の豹のアンノウン達が覗いていたことを……

 

『アギト、新たな力得た……』

『戦闘技術も上がっている……』

『早々に始末する必要がある。』

 

────────────────────────

 

「では、失礼します先生。」

「ああ、気を付けてな。」

「さようなら、フィオナさん!」

「ばいばーい!」

 

そのころ、フィオナはロイド達との談笑を終え車に乗り込み、車を走らせた。

帰りの車の中で、フィオナはあることが気になっていた。

 

(先輩のあの微笑み……あれは見覚えがある。ヨル(あの女)に見せたのと同じ……)

 

あの時、談笑の時にロイドが翔一の話をしているときに微笑んでいたことが気になっていた。しかもその笑顔がヨルに向けられていたものと同じだったのだ。

 

(まさか……!?)

 

その時、フィオナの中である答えが浮かび上がった。

 

(先輩、まさか……両刀使い(男もイケる)タイプですか!?)

 

とんでもない結論が浮かび上がった。その後もフィオナの中で暴論は続き、

 

(ヨル・ブライアと津上翔一が、先輩のタイプ……ということなの!?その場合、私はどうすれば……!!?)

 

そして、さらに頭の中で……

 

「今日は寝かさないよ。ヨルさん、翔一君……」

『ロ、ロイドさ~~~ん!!』

 

ロイドが二人を抱こうとしている様を妄想してしまった。

 

(い、嫌すぎるぅぅぅぅぅ!!)

 

その後パニックになって暴走運転をし、危うく事故になりかけた。

そして、フィオナの中で津上翔一はヨルと並んで「許せない奴」の一人になったのだった……

 

 

 

 





ようやくフィオナが登場した回、かつ破章のスタートなのにこんなギャグみたいな回でよかったんだろうか…と、今更ながら悔いてます。


作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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