夏の合宿が終わり、アーニャ達は元の日常へと戻った。相も変わらず仮面ライダーとして怪人騒動を解決したり、ゴミ拾いや炊き出しなどのボランティアに参加した。以前と違うのはロイド達に「やめろ」と言われなくなったことだ。だが……それでも世間の仮面ライダーに対する評価は変わらなかった。オルフェノクの差別も続いた。そんなとき、テレビで連合国政府がこんな声明を発表した。
「我々、連合国政府は『
「R法案」とは、連合国政府にいる仮面ライダーを取り締まる法案だった。ライダーの活動を制限し、政府側で管理するために作られた。
そのニュースは連合国中で話題になった。もちろんロイド達もそのニュースを見ていた。
「R法案……?そんなのが作られたら、仮面ライダーはどうなっちゃうの……?」
「こいつが法案を作った政治家か……」
テレビの画面に「R法案」を提案した人物が映る。白い制服に整ったオールバックの金髪に鋭い瞳をした男だった。男はマイクの前に立ち、ゆっくり口を開く。
「はじめまして……私は、アレックス・セグラー。最初に申し上げますと……私は仮面ライダーには感謝をしています。10年前のアンノウン騒動……その後のショッカー事変に対し、仮面ライダー達は解決し、皆様に平和をもたらしました。しかし、今は時代が違います!昔は仮面ライダーがこの国の”見張り役”を担っていました。だが、誰が見張りを見張らなければならないか……そのために『R法案』があるのです。この法案によって、連合国政府は仮面ライダーを管理し、行動を制限させます。皆様、どうか……このアレックス・セグラーに清き一票を。」
アレックスは次の大統領候補とも言われており、今度の選挙に参加する予定だった。
「……政治家なんか信用なんねーぜ。」
「でも、この人最近すごく有名ですよね。」
久方ぶりに全員で喫茶シオンに集まったロイド達。皆、テレビでアレックスの演説を聞いていた。
すると、法条が口を開く。
「有名どころではありませんよ。彼はほぼ100%当選確実と云われた男ですよ。」
「どういう意味だ?」
「実は、前にWISEの命令で彼の調査をしたことがありまして……」
法条はゆっくり語り始める。
「彼が政界に現れたのは7年前……ちょうどオルフェノクの数が増えてきた時です。ずっと引きこもりだった彼は一念発起して日本へ留学。そこで政治と経済を専攻、卒業後はこっちに戻って政界に……そして今年、大統領選挙に立候補……後は選挙に当選するだけですが……まぁ、あの男なら確実でしょう。」
「だから、その理由を聞いてるんだろう?」
ユーリの疑問の声に法条はフッと笑う。
「わかりませんか?彼は人間側の支持を集めています。しかも、彼自身かなりのカリスマ性……つまり、人気があります。」
「人気?」
「幼稚なことを言ったと思いますか?選挙というのは人気が全てですよ。」
「でもなぁ、人気って言われても……アレックスってやつけっこう若そうだぞ?そんな若造の言う事なんて……」
グリムの一言に、法条は嘲笑する。
「たしかにアレックスはまだ30にもなっていない若造ですが……なんといっても、顔がいい。彼のカメラ写りは評判がいいですからね……」
「写真映りってそんなに大事?それより演説の内容の方が大事なんじゃないの?」
「わかってませんね……演説の内容も大事ですが、それを言ったのが”誰“なのか……あなた方だって、汚い顔した男と、小綺麗な顔した女……どっちにつきたいか分かるでしょう?」
法条の言葉に、皆は「うーん」と唸る。唯一フリッドだけは「言っていることで判断したい」と答えた。
「今は怪人と人間が暮らす時代だし、顔なんて関係ないだろ?」
「それはそうかもしれませんが……」
「というか……法条、お前いつここに入ってきた?」
自然に会話していたので気にしていなかったが、法条は今回の集まりに呼ばれていなかった。あくまでいつものメンバーで過ごしていた。それがいつの間にか法条が混ざっていたのだ。
「ああ、実は今日はWISEのメンバーとして、長官からあなた方に任務の協力を仰ぎにきました。ロイドさん、ヨルさん、フィオナ、フリッドさん、ユーリさん、グリムくん……聞いていただけますか?」
「あれ、アーニャ達は?」
法条はアーニャをはじめとした子ども達の名は呼ばなかった。そのことにアーニャは待ったをかけた。対し、法条はため息を吐いた。
「ここからは大人の話です。子どもは街の平和でも守ってなさい。」
「えー!?」
───────────────────────
「……で、不貞腐れてここに来たわけか。」
アーニャ達は喫茶シオンから、ソウゴが運営する「便利屋シャークマン」の事務所に来ていた。
「不貞腐れてなんかないもん。ヒマになったから来ただけ。」
「せっかくお父様方に何も言われずに活動できましたのに……」
「ぼく達は除け者だもんね……」
仮面ライダーとしての活動を否定されることはなくなった……が、てっきり任務を手伝ってほしいと言ってくると思っていたため、アーニャ達は不満に感じていた。
「もう、こうなったら追いかけちゃお!」
アーニャの一言に、その場にいた皆は目を丸くした。
「追いかけるって……どこに行くかわかっていますの?」
「フッフッフ〜、ジャーン!発信器〜♪」
アーニャが得意げにポケットから取り出したのは小さい、コインのような黒い物体……発信器だった。
「実は、ははの鞄に仕込んどいたんだ〜♪」
「よくそんなもの持ってたな。」
「前にモジャに作ってもらったの。これでみんなを追いかけられるよ!」
アーニャ、シエル、タスク、マールの4人は発信器の信号を頼りにロイド達の後を追いかけることに……ソウゴも、4人が心配ということで同行することに。
──────────────────────
「……うっひゃ〜……」
「ここ、大統領府じゃん……」
発信器が示した座標は、大統領府……テーマパークぐらい広い土地にドカンと大きい屋敷と、いくつかの建物が見える。
「ロイド達は?」
「反応は……あの大きな屋敷の中みたい。」
「じゃあ行こう!」
そう言ってタスクは考えなしに屋敷へ向かおうとするが、「待て」とソウゴが服の襟をつかんだ。
「正面から行くなんてバカだろ。少しは考えろ。」
ソウゴは何かないかと辺りを見回す。足元に目を向けると、マンホールがある。
「えっ、マンホールに入るんですの?不衛生ですわ……」
「我慢しろ。」
マンホールの蓋を開け、中へ侵入する一同。予想通り……汚水の匂いが充満している。ソウゴ以外は鼻を抑えながら奥へ進んでいく。
「……クサイな……」
「うん、臭い。」
「いや、そうじゃなくて。ここは大統領府……こんな場所にも監視カメラを設置していると思ったんだが……見当たらない。」
まるで誘われているよう……そう思った矢先、上に続くハシゴが見えた。どこに出るかは分からないが、一行はハシゴを登って蓋を開けた。
「ここは……屋敷の裏側みたいだな。」
近くの窓を覗いてみるとトイレが見える。ソウゴは窓のクレセント錠を囲むようにテープを貼り、刀の柄でガラスを割った。
「……なんでテープなんて持ってんの?」
「探偵七つ道具だ。」
窓を割って手をいれると、クレセント錠を開けて窓を開け……中に侵入する。
「ここ……男子トイレじゃないですか!」
「文句言うな。いくぞ。静かにな……」
静かにトイレを出て、周りを確認する……その時、様子がおかしいことに気づいた。
「やはり変だ……大統領府なら中にも警備はいるはずだ……なのに、人気がない……」
変だと思いつつも、先へ進む。発信器の反応は2階の一室……
「正面エントランスの階段は危険だ。人がよく通る場所だ。」
「
シエルはエントランスに続く廊下の先を指差した。そこには、灰色の馬のような怪人……オルフェノクが見えた。
「オルフェノク……!?」
オルフェノクは世間的には嫌われている存在……それが大統領府にいるのは不自然……そう考えている間に、ホースオルフェノクはエントランスの方に消えていく。
「追いかけよう!」
「待て、お前ら!」
ソウゴの静止を聞かず、アーニャ達は後を追いかけた。エントランスに出ると、階段の上からホースオルフェノクがアーニャ達を睨みつけている。
「あなた……何者?」
ホースオルフェノクは何も答えない。変わりに……どこからか剣を出現させ、手に持って構えた。
「……気をつけろ、こいつ……できるぞ……」
ソウゴは腰に下げた刀を手に取って身構えた。初めて見るホースオルフェノクに、並々ならぬ強さを感じ取った。
「……
師匠が身構えるほどの相手……それを理解したアーニャ達も変身の体勢に入る。
『変身!!』
それぞれのベルトを使い、仮面ライダーへと変身する。
「仮面…ライダー……」
ホースオルフェノクは静かにつぶやくと、じわじわと階段を降りて近づいてくる。先に仕掛けたのは……タスクだった。
「キキーッ!」
アマゾンJr.は上空からホースオルフェノクに襲いかかり、両手の爪で斬りかかる。ホースオルフェノクは剣で攻撃を防ぐ。だがアマゾンJr.は二の手で大口を開けて牙を使って噛みつきにいく……が、ホースオルフェノクはそれを読んで後ろの方へ投げ飛ばす。
「鳳牙斬!」
その時、ヴァルバラドがヴァルバラッシャーを下からすくい上げるように連続で振り回す。しかし、ホースオルフェノクはヴァルバラドの動きに合わせるように剣を振るい、攻撃を次々と弾く。だが次の瞬間、シエルは手に持った巨大な手裏剣になったフータロスをブーメランのように投げ、背後から攻撃する。ホースオルフェノクはそれをよけようと身をかがむ……だが、フータロスは元の姿に戻り羽交い締めにする。
「今だ、お前ら!」
フータロスの声とともに、全員一斉に襲いかかる。しかし……
「むぅぅん……はぁっ!!」
ホースオルフェノクの身体が白く光ったかと思うと、下半身が馬のようになり、ケンタウロス状態になったホースオルフェノクは拘束を振りほどき、フータロスを後ろ脚で蹴り飛ばし、さらにそのままアギト達を吹き飛ばす。
「あれがオルフェノクの疾走態という奴か……身体がデカくなったことでこちらの攻撃は通りにくい……」
「どうした、仮面ライダー……」
ホースオルフェノクの声に応えるように、アギトはストームフォームへと姿を変え、ストームハルバードを取り出し、リーチを活かして遠間から攻撃する。しかし簡単に通るはずもなく、剣で弾かれ、前脚で軽くあしらわれる。
ヴァルバラドとシエルの攻撃も似たようなもので、攻撃が通らない。
「キキキキーッ!!」
いつの間にかシャンデリアの上に乗っていたアマゾンJr.は上空から襲いかかり、ホースオルフェノクの背中に乗った。
「むっ!?」
「キキーッ!背中取ったー!」
ホースオルフェノクはアマゾンJr.を振り落とそうと身体を振るが、アマゾンJr.は肩に噛みつき、爪を食い込ませる。
「そのまま動くな、タスク……」
アマゾンJr.の対応に四苦八苦している間に、ソウゴは刀を鞘に収めて腰を落とす。すると次の瞬間、ソウゴはホースオルフェノクに急接近。すれ違いざまに刀を抜き、馬の身体に一撃を入れる。
「くっ……!!」
この一撃が効いたのか、ホースオルフェノクの疾走態が解け、元の姿に戻った。
「今だっ!!クロコダイルスロー!!」
アマゾンはホースオルフェノクの身体を掴み、回転させながら空中へ放り投げる。
そこに、
「崩落刃!!」
ヴァルバラドはホースオルフェノクを追いかけるように空中へ跳び上がり、思い切り武器を叩きつけ、ホースオルフェノクを床に叩きつける。
「シエル!フータロス!いくよ!」
「うん!」
「おうよ!」
立ち上がろうとするホースオルフェノクに、アギト、シエル、フータロスの3人が同時に拳を繰り出し、ホースオルフェノクを殴り飛ばす。
「やぁっ!!」
そこにアギトが跳び上がって跳び蹴りを繰り出してホースオルフェノクを蹴り飛ばした。
「うぐっ!!」
ホースオルフェノクは吹き飛ぶも剣を床に突き立ててブレーキをかけた。
「はぁ…はぁ……まだ動けるんだ……」
「……やるな。」
「お前ら、ここからが本番だ……」
戦いはまだこれから……と、アギト達とホースオルフェノクは互いにじわりじわりと近づく……だがその時、
「もういいだろ!!」
聞き覚えのある声が2階から響いてきた。声がした方向に顔を向けた。そこには、グリムの姿があった。
「グリム!」
「父ちゃん!」
「タ〜ス〜ク〜!!勝手についてきたな!!」
変身を解くと、グリムはタスクを叱ろうと大声を上げた。当のタスクは怒られたことより父と会えた喜びで笑っていた。
「えっ、これ…どういうこと?」
アーニャ達が困惑していると、ホースオルフェノクも人間の姿に戻った。
「えっ!?」
「あなたは……!?」
「アレックス・セグラー……」
なんと…ホースオルフェノクの正体は次期大統領候補、
アレックスは前に垂れた髪を後ろにやると、アーニャ達の方を見てフッと息を吐きながら、静かに呟いた。
「……現アギト、アーニャ・フォージャー……それと他のライダー達……私に強力して欲しい。
おまけ「存在しない記憶」
「スパイファミリーのアニメ、Season4に突入か〜」
「新作映画も制作決まったな!」
アニメの続きと新作映画の制作が決まったことにフリッドとグリムが楽しそうにしていた。そこにロイド達も話に加わった。
「code:whiteの公開がもう3年前……もう懐かしいですね。」
「フリジスじゃ色々大変だったなぁ……まぁ、二次創作キャラであるフリッド達には分からないだろうけどな。」
ロイドのその一言に、フリッドとグリムは目を丸くした。
「何言ってるんだロイドくん。」
「俺等も映画出てたじゃん。」
『えっ?』
ロイドは思わず声を上げた。
「いやいや、思い出して。映画の中でロイドくんとフィオナがキスしちゃったように見えるシーンあるじゃん?そこでヨルさんが目撃してたけど……俺も目撃してたからね?」
「そうだっけ!?」
「あと俺も……」
フリッドに続き、グリムも証言を始めた。
「映画でヨル先輩が戦ってたあの改造人間みたいな奴……先輩が倒したと思ったら、実は生きてて……それを俺がぶっ殺したじゃん。」
「私仕留めませんでしたっけ!?」
「時期的に、俺は本編に出たばっかだったから性格が映画と本編とで違うってファンに言われてたじゃん。」
「ファンの声って誰ですか!?」
まだまだ証言は続き、フリッドは胸を張って言った。
「クライマックスの飛行船止めるシーン、俺も頑張っただろ!飛行船の先頭に張り付いて、触手を遠くの木や建物に突き刺して『うおおおおお!!』って止めようとしたじゃん!」
「そんなスパイダーマン2みたいなことしてたか!!?」
あまりに自分達の記憶との解離に、ロイドとヨルは思わず困惑し、頭がどうにかなりそうになった。
「どうしたんだ2人とも……」
「なんか変だぜ?」
「い、いや、変なのはお前らで……映画にお前らは……いや、出てた……か?」
「出てた……と思います……」
『だろ?』
脳が混乱したまま、ロイドとヨルは「フリッドとグリムも映画に出てそれなりに活躍した」と決定づけた。
後日……
「ロイドさん、やっぱりあの2人映画に出てませんでした。」
「ですよね。」
……The End