(あの男は、結局何者だったんだ……?)
早朝、ロイドはコーヒーを飲みながら考え込んだ。
それは先日の深夜、任務中にロイドを助けたあの金色の戦士のことだった。
戦士は怪物を倒した後、ロイドを見つめたかと思いきや、何をするでもなく立ち去っていった。
その後、ロイドは任務中の出来事を、自身が所属する組織「WISE」に報告した。ありのまま見たものを報告するしかなかった。もし、「自分が全てやった」と言ったとして、不自然にねじ曲がった死体や爆発の説明がつかない。
しかし、「WISE」はロイドの報告をすんなり信じた。ねじ曲がった死体も爆発も、全てロイドの作戦によるものということで落ち着いた。
(上官達は何か知っているのか?あの男や、怪物のことを……)
謎はまだ残されていた。あの怪物のことだ。あの怪物は何者なのか、皆殺しにする理由はなんだったのか、あのサインは一体なんだったのか、怪物が言った「アギト」とは、金色の戦士との因果関係は……?
(ダメだ!判断材料が少なすぎる……!!)
今の段階では何も整理できない。
ロイドは頭を掻きむしった。
「ロイドさん、どうしたんですか?難しい顔して……」
ヨルが心配そうに声をかけてきた。ロイドはハッと我に帰り、微笑んだ。
「ああ、大丈夫ですよ。ちょっと仕事のことで……」
(落ち着け黄昏……忘れよう。あんなものは……)
ロイドは昨日のことは忘れようと、心の中で頷いた。
(ちち、きのういろいろあった……わくわく!)
アーニャはそんなロイドの心を読み、一人で興奮していた。
「じゃあ俺、バイト行ってきます!」
その時、翔一はエプロンに鞄を持ち、出かけようとしていた。
「そうか、今日はパン屋の日だったか。」
翔一は週4回、少し遠くのパン屋でアルバイトをし、残りの週3日は近所の農家の老夫婦の手伝いをしていた。
その上、フォージャー家の家事全般も行っていた。本人曰く、「家事は好き」とのことで率先してやっている。
「アーニャちゃん、お土産に美味しいパン持って帰ってくるから!」
「うぃっ!」
翔一は挨拶代わりにアーニャの頭を撫で、家を出た。
翔一が家を出たのを見送り、ロイドはフッとため息をついた。
「翔一さんって、不思議ですね。」
「えっ?ああ、そうですね。」
その時、ヨルが一言呟き、ロイドはそれに返事をした。
「不思議…というよりかは、掴みどころがないというか……正直、俺の苦手なタイプです。」
「そうですか?私は面白い人だと思いますよ?翔一さん。」
「アーニャも!」
ロイドは翔一を「苦手なタイプ」と判断したが、ヨルとアーニャはその逆だった。
二人の答えにロイドは目を丸くした。
「そう、ですか……」
(あれが面白い…?女性の感性はわからないな……)
──────────────────
「ふぅ・・・」
夕方、ヨルは公務員の仕事を終え、帰路についていた。
(夜から
ヨルは深夜から本業、殺し屋としての仕事が一件入っていた。早めに帰って準備しようと、足を速めた。
その時、ヨルは見覚えのある人影を見つけた。
「あれ…?翔一さん?」
目の前にいたのは翔一だった。古めのバイクを押しながら歩いていた。
「翔一さーん!」
「あ、ヨルさん!」
ヨルは翔一に声を掛け、駆け寄った。
「どうしたんですか?このバイク。」
「いやー、実はもらったんですよ。パン屋の店長から!『新しいの買ったからあげる』って言ってくれて。」
「へぇ、よかったですね!でも……どうして乗らないんですか?」
ヨルは不思議に思った。バイクがあるなら乗って帰ればいいのに、と思ったのだ。
「それが、ガス欠で!動かなくなっちゃって!」
翔一は理由を話してタハハと笑った。それを見てヨルも笑った。
「ウッカリさんですね!」
「はい、ウッカリさんです!」
二人は声を出して笑い合った。その後、ヨルも一緒になってバイクを押した。
「そういえば翔一さん。どうして農家さんの手伝いをしようと思ったんですか?」
ヨルは翔一に気になっていたことを尋ねた。翔一は農家の手伝いをしているが、給料はもらっていなかった。もらうものといえば野菜ぐらいだった。つまり、ボランティアでやっていたのだ。
ヨルからの質問に翔一はうーんと唸った。
「もしかして、記憶を失う前は農家さんだったとか?」
「それは・・・ノウかな!はははっ!」
「え?」
翔一は「農家」と「NO」をかけたダジャレを繰り出したが、ヨルは笑うことなく、ただ目を丸くした。
(い、今のは笑うべきだったんでしょうか…)
ヨルは何も言えず、ただ愛想笑いを浮かべた。
「まぁ、なんというか…おじいさんとおばあさん、人手足りてなくて困ってたし。それに、俺が手伝うことであの二人の居場所が守れるなら……なんて思っちゃって。」
「居場所、ですか?」
「はい!あの二人にとって、農場って大切な場所です。守りたい場所です。だから、俺もそれを守るのを手伝えたらいいなあって。」
「守りたい、場所……」
ヨルはキュッと胸が締め付けられる感覚を覚えた。ヨルが殺し屋になったのは、弟がいたからだ。幼くして両親を失ったヨルにとって、弟はただ一人の家族だった。それを守るためにヨルは殺し屋になった。
翔一の言葉はヨルの胸の奥に響き渡った。
「ヨルさん?どうしました?」
「いえ……きっと翔一さんは記憶を失う前も、優しい人だろうなって、思っただけです!」
「えっ?な、なんかそんな風に言われると、照れちゃうなぁ~!」
二人は笑い合い、家までバイクを押していった。
──────────────────
深夜、ヨルはとある建物の前に立っていた。そこは殺害対象がいる暴力団の事務所だった。
ヨルは中に入り、玄関で厚手のコートを脱ぎ捨て、黒いドレス姿になった。両手に金色の
「…おかしいですね。」
ヨルは中の異様さに気づいた。見張りが一人もいなかった。
殺害対象の暴力団は少しは名の知れた組織だった。護衛や見張りがいてもおかしくない。それなのに、人っ子一人いる気配がない。
ただ、代わりに血の匂いだけはしていた。
(ここから血の匂いが……)
とある部屋の前で足が止まった。そこが一番血の匂いが強かった。
ヨルは扉を少し開けて中の様子を見た。
そして中の様子を見た瞬間、ヨルは目を見開き、一気に扉を開けた。
「これは・・・!」
そこには異様な光景が広がっていた。死体が転がっていたのだ。
しかもその死体は全て両目が抉られていた。
それ以外に外傷はない。
(一体誰が……)
ヨルは困惑しながらも、現場の電話を借り、自身が所属する暗殺組織「ガーデン」に連絡した。
とにかく今の状態を知らせなければならなかった。
「はい、すでに殺されて…全て目が抉られて……!?」
その時、ヨルは全身に鳥肌が立つのを感じた。
上の方から殺意を感じた。チンピラや殺し屋が醸し出すソレとはワケが違う、純粋な殺意。
それが上の方、屋上から出ているのをヨルは感じた。
「すいません、また掛け直します!」
ヨルはすぐさま電話を切り、武器を持って屋上へ駆けあがった。
屋上に上がると、そこには銀色の亀の姿をした怪物、そして光に包まれて見えないが、一人の男が立っていた。
互いににらみ合い、すぐにでも戦闘が始まろうとしている。
「あれは…?」
ヨルは物陰から様子を見た。すると、男の方が動いた。
男が構えを取ると、腰にベルトのバックルのようなものが突然現れた。
「ハアァ……変身ッ!!」
男は掛け声とともにベルトの両側のスイッチを同時に押した。すると男の体は光に包まれ、怪物が「アギト」と呼ぶ金色の戦士へと姿を変えた。
「アギト…!」
「変わった……!?」
アギトの姿を見た怪物は唸り声を上げ、物陰から見ていたヨルは驚きのあまり目を丸くした。
「グオオオオッ!!」
怪物は亀である特性を生かし、甲羅を繰り出した。
しかし、アギトはそれをひらりとかわし、怪物の後頭部に裏拳を叩き込んだ。
怪物はよろけたが、それでも果敢にアギトへ攻撃を繰り出す。アギトはその攻撃をことごとく防ぎ、受け流し、怪物のボディに一撃を与えていく。
アギトの戦いに、ヨルは生唾を飲んだ。
(あの人…強い……!)
ヨルは少し見ただけでアギトの強さを理解した。アギトは徒手空拳で戦うが、その動きはまるでドラマなどである"殺陣"のようだった。もちろん、殺陣など実際の戦闘では役に立たない。しかし、アギトはその殺陣のような動きで着実にダメージを与えている。
それだけでアギトの強さが理解できた。
「ハアァァァァ…!」
アギトは右手で手刀を作り、力を込めた。すると、右手に光が集まった。
その時、怪物は左腕を振り上げ、攻撃しようとした。その瞬間、アギトは光が集まった手刀で怪物の左腕を斬り飛ばした。
「グ、グオアアアアア!!」
(手刀だけで斬った!?)
「ハァッ!デヤァァァ!!」
アギトは怯んだ怪物の体に手刀を3発叩き込んだ。
攻撃を喰らった怪物は後ろへと吹き飛んでいった。そして、
「ハアァァァァ……!!」
「ハッ!!」
空中へ飛び、一回転。
「タアァァァァァァァッ!!」
雄たけびを上げながら必殺の飛び蹴りを繰り出した。
しかし、怪物も負けじと背を向け、甲羅で飛び蹴りを受け止めて防いだ。
だが、アギトの攻撃はそれで終わらなかった。飛び蹴りが甲羅に当たった瞬間、反動を利用してもう一度宙に舞い上がり、その場で反転して再度必殺の飛び蹴りを繰り出した。
アギトの反転キックは甲羅を突き破り、怪物を蹴り飛ばした。
「グッ!?ヌアアアアアッ!!」
予想外の攻撃を喰らい、怪物は吹き飛び倒れた。
アギトはその場で着陸し、
「ウッ、グッ!!ウグアァァァァァ!!」
そして怪物も同様に頭の上に光の輪を浮かび上がらせ、断末魔を上げながら爆発した。
アギトはその爆発を背に静かに佇んだ。
圧巻の光景だった。ヨルは声が出せず、茫然としていた。
すると、アギトはその場を立ち去ろうとした。
その時、ヨルはハッと我に帰り飛び出した。
「待ってください!貴方は何者ですか?下の階の死体は、貴方がやったのですか?」
「……」
ヨルからの質問に答えることなく、アギトはただ背を向けた。
「答えなさい!」
ヨルは叫び、
しかし、そのアギトには効かず、キンッと音を立てて地面に落ちた。
(効いてない……!?)
攻撃が効かなかったことに、ヨルは驚いた。すると、アギトはクルリとヨルに顔を向けた。
そして、一言だけ呟いた。
「……ヨルさん。」
「!!」
アギトが呟いたのはヨルの名前だった。しかし、ヨルはそれだけで驚いていた。ヨルは殺し屋「いばら姫」として名が知れていた。本名を知る者は「ガーデン」の者だけのはずだった。
なのに、アギトは知っていた。
驚くヨルをよそに、アギトは立ち去ってしまった。
「どうして、私の名前を……!?」
ヨルはただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。
アギト…あの男が何者なのか、あの怪物がなんなのか、疑問だけが頭をよぎるが、ヨルには何もできなかった。
ただ、アギトが自分の名を知っていた。それだけは事実だった……
戦闘で使った手刀技は「平成ジェネレーションズForever」で雑魚相手に使っていた技です。さらにトドメの2段蹴りは「仮面ライダーV3」の必殺技、「V3反転キック」を参考にしました。
作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します
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アギト編(翔一+フォージャー一家)
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G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
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ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)