SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

2 / 159
第2話「二人目の邂逅」

 

(あの男は、結局何者だったんだ……?)

 

早朝、ロイドはコーヒーを飲みながら考え込んだ。

 

それは先日の深夜、任務中にロイドを助けたあの金色の戦士のことだった。

戦士は怪物を倒した後、ロイドを見つめたかと思いきや、何をするでもなく立ち去っていった。

 

その後、ロイドは任務中の出来事を、自身が所属する組織「WISE」に報告した。ありのまま見たものを報告するしかなかった。もし、「自分が全てやった」と言ったとして、不自然にねじ曲がった死体や爆発の説明がつかない。

しかし、「WISE」はロイドの報告をすんなり信じた。ねじ曲がった死体も爆発も、全てロイドの作戦によるものということで落ち着いた。

 

(上官達は何か知っているのか?あの男や、怪物のことを……)

 

謎はまだ残されていた。あの怪物のことだ。あの怪物は何者なのか、皆殺しにする理由はなんだったのか、あのサインは一体なんだったのか、怪物が言った「アギト」とは、金色の戦士との因果関係は……?

 

(ダメだ!判断材料が少なすぎる……!!)

 

今の段階では何も整理できない。

 

ロイドは頭を掻きむしった。

 

「ロイドさん、どうしたんですか?難しい顔して……」

 

ヨルが心配そうに声をかけてきた。ロイドはハッと我に帰り、微笑んだ。

 

「ああ、大丈夫ですよ。ちょっと仕事のことで……」

(落ち着け黄昏……忘れよう。あんなものは……)

 

ロイドは昨日のことは忘れようと、心の中で頷いた。

 

(ちち、きのういろいろあった……わくわく!)

 

アーニャはそんなロイドの心を読み、一人で興奮していた。

 

「じゃあ俺、バイト行ってきます!」

 

その時、翔一はエプロンに鞄を持ち、出かけようとしていた。

 

「そうか、今日はパン屋の日だったか。」

 

翔一は週4回、少し遠くのパン屋でアルバイトをし、残りの週3日は近所の農家の老夫婦の手伝いをしていた。

その上、フォージャー家の家事全般も行っていた。本人曰く、「家事は好き」とのことで率先してやっている。

 

「アーニャちゃん、お土産に美味しいパン持って帰ってくるから!」

「うぃっ!」

 

翔一は挨拶代わりにアーニャの頭を撫で、家を出た。

翔一が家を出たのを見送り、ロイドはフッとため息をついた。

 

「翔一さんって、不思議ですね。」

「えっ?ああ、そうですね。」

 

その時、ヨルが一言呟き、ロイドはそれに返事をした。

 

「不思議…というよりかは、掴みどころがないというか……正直、俺の苦手なタイプです。」

「そうですか?私は面白い人だと思いますよ?翔一さん。」

「アーニャも!」

 

ロイドは翔一を「苦手なタイプ」と判断したが、ヨルとアーニャはその逆だった。

二人の答えにロイドは目を丸くした。

 

「そう、ですか……」

(あれが面白い…?女性の感性はわからないな……)

 

 

──────────────────

 

「ふぅ・・・」

 

夕方、ヨルは公務員の仕事を終え、帰路についていた。

 

(夜から本業(おしごと)が一件……寄り道せずにまっすぐ帰りましょう。)

 

ヨルは深夜から本業、殺し屋としての仕事が一件入っていた。早めに帰って準備しようと、足を速めた。

その時、ヨルは見覚えのある人影を見つけた。

 

「あれ…?翔一さん?」

 

目の前にいたのは翔一だった。古めのバイクを押しながら歩いていた。

 

「翔一さーん!」

「あ、ヨルさん!」

 

ヨルは翔一に声を掛け、駆け寄った。

 

「どうしたんですか?このバイク。」

「いやー、実はもらったんですよ。パン屋の店長から!『新しいの買ったからあげる』って言ってくれて。」

「へぇ、よかったですね!でも……どうして乗らないんですか?」

 

ヨルは不思議に思った。バイクがあるなら乗って帰ればいいのに、と思ったのだ。

 

「それが、ガス欠で!動かなくなっちゃって!」

 

翔一は理由を話してタハハと笑った。それを見てヨルも笑った。

 

「ウッカリさんですね!」

「はい、ウッカリさんです!」

 

二人は声を出して笑い合った。その後、ヨルも一緒になってバイクを押した。

 

「そういえば翔一さん。どうして農家さんの手伝いをしようと思ったんですか?」

 

ヨルは翔一に気になっていたことを尋ねた。翔一は農家の手伝いをしているが、給料はもらっていなかった。もらうものといえば野菜ぐらいだった。つまり、ボランティアでやっていたのだ。

ヨルからの質問に翔一はうーんと唸った。

 

「もしかして、記憶を失う前は農家さんだったとか?」

「それは・・・ノウかな!はははっ!」

「え?」

 

翔一は「農家」と「NO」をかけたダジャレを繰り出したが、ヨルは笑うことなく、ただ目を丸くした。

 

(い、今のは笑うべきだったんでしょうか…)

 

ヨルは何も言えず、ただ愛想笑いを浮かべた。

 

「まぁ、なんというか…おじいさんとおばあさん、人手足りてなくて困ってたし。それに、俺が手伝うことであの二人の居場所が守れるなら……なんて思っちゃって。」

「居場所、ですか?」

「はい!あの二人にとって、農場って大切な場所です。守りたい場所です。だから、俺もそれを守るのを手伝えたらいいなあって。」

「守りたい、場所……」

 

ヨルはキュッと胸が締め付けられる感覚を覚えた。ヨルが殺し屋になったのは、弟がいたからだ。幼くして両親を失ったヨルにとって、弟はただ一人の家族だった。それを守るためにヨルは殺し屋になった。

翔一の言葉はヨルの胸の奥に響き渡った。

 

「ヨルさん?どうしました?」

「いえ……きっと翔一さんは記憶を失う前も、優しい人だろうなって、思っただけです!」

「えっ?な、なんかそんな風に言われると、照れちゃうなぁ~!」

 

二人は笑い合い、家までバイクを押していった。

 

 

──────────────────

 

深夜、ヨルはとある建物の前に立っていた。そこは殺害対象がいる暴力団の事務所だった。

ヨルは中に入り、玄関で厚手のコートを脱ぎ捨て、黒いドレス姿になった。両手に金色の(スティレット)を持ち、階段を登っていく。

 

「…おかしいですね。」

 

ヨルは中の異様さに気づいた。見張りが一人もいなかった。

殺害対象の暴力団は少しは名の知れた組織だった。護衛や見張りがいてもおかしくない。それなのに、人っ子一人いる気配がない。

ただ、代わりに血の匂いだけはしていた。

 

(ここから血の匂いが……)

 

とある部屋の前で足が止まった。そこが一番血の匂いが強かった。

ヨルは扉を少し開けて中の様子を見た。

そして中の様子を見た瞬間、ヨルは目を見開き、一気に扉を開けた。

 

「これは・・・!」

 

そこには異様な光景が広がっていた。死体が転がっていたのだ。

しかもその死体は全て両目が抉られていた。

それ以外に外傷はない。

 

(一体誰が……)

 

ヨルは困惑しながらも、現場の電話を借り、自身が所属する暗殺組織「ガーデン」に連絡した。

とにかく今の状態を知らせなければならなかった。

 

「はい、すでに殺されて…全て目が抉られて……!?」

 

その時、ヨルは全身に鳥肌が立つのを感じた。

上の方から殺意を感じた。チンピラや殺し屋が醸し出すソレとはワケが違う、純粋な殺意。

それが上の方、屋上から出ているのをヨルは感じた。

 

「すいません、また掛け直します!」

 

ヨルはすぐさま電話を切り、武器を持って屋上へ駆けあがった。

 

屋上に上がると、そこには銀色の亀の姿をした怪物、そして光に包まれて見えないが、一人の男が立っていた。

互いににらみ合い、すぐにでも戦闘が始まろうとしている。

 

「あれは…?」

 

ヨルは物陰から様子を見た。すると、男の方が動いた。

男が構えを取ると、腰にベルトのバックルのようなものが突然現れた。

 

「ハアァ……変身ッ!!」

 

男は掛け声とともにベルトの両側のスイッチを同時に押した。すると男の体は光に包まれ、怪物が「アギト」と呼ぶ金色の戦士へと姿を変えた。

 

「アギト…!」

「変わった……!?」

 

アギトの姿を見た怪物は唸り声を上げ、物陰から見ていたヨルは驚きのあまり目を丸くした。

 

「グオオオオッ!!」

 

怪物は亀である特性を生かし、甲羅を繰り出した。

しかし、アギトはそれをひらりとかわし、怪物の後頭部に裏拳を叩き込んだ。

怪物はよろけたが、それでも果敢にアギトへ攻撃を繰り出す。アギトはその攻撃をことごとく防ぎ、受け流し、怪物のボディに一撃を与えていく。

 

アギトの戦いに、ヨルは生唾を飲んだ。

 

(あの人…強い……!)

 

ヨルは少し見ただけでアギトの強さを理解した。アギトは徒手空拳で戦うが、その動きはまるでドラマなどである"殺陣"のようだった。もちろん、殺陣など実際の戦闘では役に立たない。しかし、アギトはその殺陣のような動きで着実にダメージを与えている。

それだけでアギトの強さが理解できた。

 

「ハアァァァァ…!」

 

アギトは右手で手刀を作り、力を込めた。すると、右手に光が集まった。

その時、怪物は左腕を振り上げ、攻撃しようとした。その瞬間、アギトは光が集まった手刀で怪物の左腕を斬り飛ばした。

 

「グ、グオアアアアア!!」

(手刀だけで斬った!?)

「ハァッ!デヤァァァ!!」

 

アギトは怯んだ怪物の体に手刀を3発叩き込んだ。

攻撃を喰らった怪物は後ろへと吹き飛んでいった。そして、

 

「ハアァァァァ……!!」

 

あの時(・・・・)と同じく、必殺の構えをとった。地面に紋章が浮かび上がり、右足にそれが吸い込まれていく。

 

「ハッ!!」

 

空中へ飛び、一回転。

 

「タアァァァァァァァッ!!」

 

雄たけびを上げながら必殺の飛び蹴りを繰り出した。

しかし、怪物も負けじと背を向け、甲羅で飛び蹴りを受け止めて防いだ。

だが、アギトの攻撃はそれで終わらなかった。飛び蹴りが甲羅に当たった瞬間、反動を利用してもう一度宙に舞い上がり、その場で反転して再度必殺の飛び蹴りを繰り出した。

アギトの反転キックは甲羅を突き破り、怪物を蹴り飛ばした。

 

「グッ!?ヌアアアアアッ!!」

 

予想外の攻撃を喰らい、怪物は吹き飛び倒れた。

アギトはその場で着陸し、あの時(・・・・)同様、構えて"残心"をとった。

 

「ウッ、グッ!!ウグアァァァァァ!!」

 

そして怪物も同様に頭の上に光の輪を浮かび上がらせ、断末魔を上げながら爆発した。

アギトはその爆発を背に静かに佇んだ。

 

圧巻の光景だった。ヨルは声が出せず、茫然としていた。

すると、アギトはその場を立ち去ろうとした。

その時、ヨルはハッと我に帰り飛び出した。

 

「待ってください!貴方は何者ですか?下の階の死体は、貴方がやったのですか?」

「……」

 

ヨルからの質問に答えることなく、アギトはただ背を向けた。

 

「答えなさい!」

 

ヨルは叫び、(スティレット)を投げた。(スティレット)はアギトの背に命中した。

しかし、そのアギトには効かず、キンッと音を立てて地面に落ちた。

 

(効いてない……!?)

 

攻撃が効かなかったことに、ヨルは驚いた。すると、アギトはクルリとヨルに顔を向けた。

そして、一言だけ呟いた。

 

「……ヨルさん。」

「!!」

 

アギトが呟いたのはヨルの名前だった。しかし、ヨルはそれだけで驚いていた。ヨルは殺し屋「いばら姫」として名が知れていた。本名を知る者は「ガーデン」の者だけのはずだった。

なのに、アギトは知っていた。

 

驚くヨルをよそに、アギトは立ち去ってしまった。

 

「どうして、私の名前を……!?」

 

ヨルはただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。

アギト…あの男が何者なのか、あの怪物がなんなのか、疑問だけが頭をよぎるが、ヨルには何もできなかった。

ただ、アギトが自分の名を知っていた。それだけは事実だった……

 

 

 





戦闘で使った手刀技は「平成ジェネレーションズForever」で雑魚相手に使っていた技です。さらにトドメの2段蹴りは「仮面ライダーV3」の必殺技、「V3反転キック」を参考にしました。

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。