SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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第20話「裏切り」

 

「アギト捕獲作戦?」

「ああ、法条の奴が上層部に提案したらしいぜ。」

 

ロイドはフランキーの元を訪れ、法条が考えた作戦のことを聞いていた。

 

「内容としては、アギトを捕まえて政府に引き渡す・・・ってのが主な目的だな。」

「引き渡してどうするんだ?兵器として扱うのか?それとも解剖か?」

「まぁ、少なくとも色々実験は受けるだろうな。アギトなんて未知の存在がいたら、実験して色々やらせたいっていうのが普通だからな。」

 

フランキーの話を聞き、ロイドは脳内で実験台にされ実験を受けている翔一の姿を思い浮かべた。

 

(翔一君に話せば、彼は素直に応じるか・・・?いや、言ったらオペレーション(ストリクス)が台無しになる可能性がある・・・言わないでおくか。)

 

ロイドは翔一を「WISE」に引き渡そうと考えたが、今の生活やオペレーション(ストリクス)が終わる可能性を考慮し、その案を却下した。

 

「そういや、アギトってもう一人いるんだろ?緑色の……」

「ああ・・・」

「夜帷の奴、そいつの正体分かったんだとさ!」

「なにっ!?」

 

ロイドは思わず驚いた。緑色のアギト、ギルスの正体はロイド自身もまだ掴んでいなかった。それをフィオナが掴んでいたとなれば、興味も湧いてくる。

 

「ちょうど今日の夜、作戦が始まるらしいぜ。」

「どこでだ?」

「ほら、前にお前が夜帷と一緒に地下テニスに出た……」

「……あそこか!」

 

フランキーの一言を聞き、ロイドはある場所を思い出した。

以前、ロイドは任務の一環で地下テニス大会"キャンベルドン"に(変装&偽名で)出場したことがある。

そこは街の地下にある会場で行われていた。

 

(しかし、そこでどうやって緑のアギトを捕らえる気だ・・・?)

 

疑問が浮かびながらも、夜になるのを待ち、ロイドはそこへ向かうことにした。

しかしその前に、ロイドは公衆電話で家に電話をかけた。

 

『はい、もしもし!』

「翔一君か。ロイドだ。」

『あ、ロイドさん!どうしたんですか?』

 

元気よく電話に出た翔一に、ロイドは「仕事で遅くなる」と伝えた。

 

「・・・というわけだから、夕食は3人で食べてくれ。」

『そうですか……せっかく今日、"フライドチキン・翔一スペシャル"を作ったのに……』

「はははっ、また"翔一スペシャル"か。」

 

ロイドは笑った。翔一は時折、突拍子もないアレンジ料理、又はオリジナル料理を作ることがある。

翔一自身はそれを"翔一スペシャル"と呼んでいた。

 

『はい!今日のは美味しいですよ~!なんといっても、発案はアーニャちゃんですから!』

「へぇ、どんな料理だ?」

『フライドチキンの衣に、細かく砕いたピーナッツを混ぜるんです!それを肉につけてジュワーッて揚げるんです!ピーナッツの香りと食感が癖になりますよ!』

 

聞いているだけで涎が出そうな料理だった。

それを聞いたロイドは涎を垂らすことはなかったが、楽しそうに話す翔一の声を聞き、ロイド自身も楽しくなっていた。

 

「それは美味そうだな!今日食べられないのが残念だが。」

『大丈夫!ロイドさんの分も残しておきますから。』

「ありがとう。それじゃあな。」

 

ロイドは礼を言いながら電話を切った。その時、ロイドは電話を終えても、自分がまだ微笑んでいることに気が付いた。

 

(・・・俺もだいぶ、彼に毒されてきたということか?)

 

翔一の影響で自分は変わったのか、と思った。しかし、特別嫌な気分にはならなかった。

そしてロイドはその足で、以前地下テニスをした会場へと向かった。

 

────────────────────────

 

地下の会場は前と同様、観客の歓声と熱気に包まれていた。前と違うところといえば、会場にテニスコートがないことぐらいだった。

 

(どうなってる・・・?テニスはやらないのか?)

 

前と違う会場の様子に、ロイドは観客席に座りながら不思議に思っていた。

するとそこに、

 

「お隣、よろしいですか?」

「法条!」

 

そこに法条が現れ、ロイドの隣に座った。

 

「あなたも作戦を身に来ましたか。」

「まぁな。夜帷は?緑のアギトの正体が分かったと聞いたが。」

「控室にいますよ。緑のアギトと一緒にね。もうすぐ出場するころでしょう。」

 

法条は腕時計で時間を見ながら言った。

ロイドの頭の中ではまだ疑問が浮かんでいる。ここで何が始まるのか、緑のアギトの正体は誰なのか、夜帷はその緑のアギトに何をさせるつもりなのか……

 

「……ここはテニスだけじゃないのか?」

 

その時、ロイドは思わず疑問をこぼした。

 

「ええ。ここはテニスだけじゃなく、他にも使われています。これから行われるのがその一つ……地下格闘技大会"コロッセオ"です。」

「地下格闘技?」

「その通り。資産家コロイド氏が主催する賭け試合。財界の大物や地下の住人が集まり、巨額が動く非合法イベント。出場する選手はセレブ達の用心棒ですが、中には死刑囚や犯罪者もいます。」

 

法条は地下格闘技についての説明をした。それを聞いたロイドはなるほど、というように頷いた。

 

(まぁ、テニスよりは分かるな。)

 

「逆になんでここでテニス?」と思い始めたその時、

 

『さぁっ!いよいよ第一試合です!』

 

大会のMCが声を張り上げた。

 

『赤コーナー!その両手で屠った相手は数知れず!"暴れ牛"の異名を持つ男!バイソー--ンッ!!』

 

会場の端、赤く塗られた入り口から筋骨隆々で2mはある巨漢の男が入場した。

 

『青コーナー!正体不明のマスクメン!果たしてその正体は!?その名は、ギルスー--ッ!!』

 

そして反対側の青く塗られた入り口から、黒いコートに身を包み、舞踏会で使うマスクをつけた短い茶髪の男が現れた。

その男を見た瞬間、ロイドは目を見開いた。

 

「なっ!?あれは、まさか・・・!!」

「やはり気が付きましたか。」

 

ロイドはその男に見覚えがあった。なぜなら、彼はアーニャの家庭教師、フリッドだからだ。

そしてよく見ると、青コーナーの入り口のところにフィオナが立っていた。

 

「まさか、緑のアギトの正体は・・・!」

「そうです。フリッド・リードです!」

 

────────────────────────

 

時間は少し遡り、選手控室にて……

 

「ごめんなさい、フリッド。こんなことお願いして……」

「いいんだよ、フィオナ。賞金を手に入れて、一緒に逃げよう。」

 

フリッドは慰めるようにフィオナに言うと、拳に革のグローブをはめた。

しかし、フリッドは知らなかった。これはフィオナの策であることに。大会の前、フィオナはフリッドにこう言った。「賞金を手に入れて、海外に逃げましょう!」と・・・

 

フリッドはその提案に二つ返事で承諾した。フリッドは嬉しかったのだ。一緒に逃げようと言ってくれたフィオナの気持ちが。それが策であることも知らずに……

 

そして現在へ至り、フリッドは試合会場に経った。

 

『オッズはバイソン選手が4!ギルス選手が10です!』

「へっ!生憎だったなぁ、新入り!最初の相手が俺なんてよぉ!」

 

バイソンはニヤニヤ笑いながら、余裕そうにフリッドを睨みつけた。

しかし、フリッドは気にすることなく手を差し出した。

 

「フェアな戦いをしよう。」

「・・・ふんっ!」

 

握手を求めるフリッドに、バイソンは手を叩き、握手を拒否した。

そして二人は会場の中央に向かい合うように立った。

 

「法条、どんな作戦でいくんだ?」

「フリッド・リードには連戦に次ぐ連戦で戦ってもらいます。いくらアギトとはいえ、連戦続きなら体力がもたないでしょう。疲れ切ったところを捕らえます。」

『それでは、試合開始ー--ッ!!』

 

法条がロイドに向けて説明する中、試合開始のゴングが鳴り響いた。

 

「死ねぇぇぇぇ!!」

 

バイソンはフリッドに向かって闘牛のような突進を繰り出した。

しかし、その突進が直撃する瞬間、フリッドの姿が消えた。

 

「なっ!?」

「き、消えたっ!?」

 

突然フリッドが消えたことに、バイソンだけでなく、客席にいたロイドと法条、入り口で見ていたフィオナも驚いた。

 

「上だ!!」

 

観客の一人が叫び、バイソンは上を向いた。

そこには足を頭上まで振り上げたフリッドがいた。しかし、気づいたときにはもう遅い。

 

「シィッ!!」

 

ドゴッ!!と鈍い音とともに踵落としがバイソンの脳天に直撃。さらにそのまま顔面が勢いよく叩きつけられ、バイソンの顔は床にめり込んだ。

 

「フゥ……」

 

フリッドは終わったように一息ついた。バイソンは地面に顔を叩きつけられたまま、動かなくなった。

 

『し、試合終了ー---!!』

 

MCの一言とともに、観客達が沸いた。

 

『し、試合時間、わずか15秒!!強い!強すぎます!!』

「た、確かに……」

「強すぎる……」

 

フリッドの圧倒的な強さに、観客だけでなく、フィオナ、法条、ロイドも驚いていた。しかし、一番驚いていたのはフリッド本人だった。

 

(明らかに強くなってる……ギルス(あの姿)に変われるようになったからか?ともあれ、これなら優勝も・・・!!)

 

フリッドは自分が明らかに強くなっていることに驚き、喜びに打ち震え、拳を握りしめた。

 

「ほ、法条……確かフリッドの本職は……」

「え、ええ。フリッド・リードの本職は……元地下格闘技の選手です。」

 

フリッド・リードは元々、出版社に勤めるごく普通の男性だった。しかし、田舎に住んでいた母親が病気になり、その莫大な手術代と入院費を稼ぐため、フリッドは地下格闘技の世界に足を踏み入れた。

昔から喧嘩は強かったため、地下格闘技界でもそこそこの強さだった。

フリッドのことを調べていたフィオナも、ロイド法条もそのことは知っていた。しかし、ここまでの強さとは思っていなかった。

 

(アギトになった影響なのか?・・・なんかヨルさんを思い出すな・・・)

 

フリッドが強烈な蹴りを入れる様を見て、ロイドの目にヨルの姿がちらついた。

 

────────────────────────

 

その後も試合は続いた。

 

『第2試合、赤コーナー!二刀流の剣豪、ソウジ!』

 

赤コーナーから、道着と袴を着用し、二振りの刀を持った男が現れた。

 

「ここは武器を使ってもいいのか?」

「ええ、銃以外なら何を使ってもいいことになっています。」

『試合開始ー---ッ!!』

 

ゴングが鳴り響き、ソウジはフリッドに向かって突進した。

しかし20秒後、フリッドのレッグラリアットでソウジはあっさり蹴り飛ばされ、そのまま壁まで叩きつけられた。

 

『だ、第3試合!赤コーナー!槍の名手、リー!』

 

同じく20秒後、フリッドは槍をサマーソルトキックで叩き折り、その勢いのまま顎を蹴り上げて気絶させて勝利。

 

『だ、第4試合!赤コーナー!三節棍の・・・!!』

 

10秒後、フリッドは三節棍を奪い取り、ボコボコに殴った後、延髄切りでとどめを刺して勝利。

 

「……法条。この作戦、あいつを疲れさせてから捕らえるんだよな?」

「……はい。」

「アイツ、全然疲れてないぞ!?むしろヒートアップしてないか!?」

 

ロイドの言う通り、試合が進むにつれてフリッドの動きがよくなっていた。

フリッド自身はヒートアップしたこの状態を維持するため、シャドーボクシングで体を動かしていた。

 

「フ、フリッド、体はどう・・・?」

「大丈夫だ!むしろ体の動きがよくなってきた!」

 

心配しながら聞いてくるフィオナに、フリッドは親指を立てて答えた。

 

「そ、そう……」

(マズい・・・このままじゃ作戦は上手くいかない・・・こうなったら!)

 

このままではダメだと思ったフィオナはポケットからこっそり無線機を取り出した。

 

「こちら夜帷。第2段階を決行して。」

『了解。』

 

フィオナが連絡を取っているとは知らず、フリッドは会場の中央に立ち、次の試合に備えた。

 

『ギルス選手、もはや勢いが止まりません!続いて第5試合、鞭使いのローズ!!』

「フフフっ、いらっしゃ~い!」

 

MCの紹介とともに出てきたのは、男で女の化粧をした、所謂"オネエ系"の男だった。

しかし、フリッドは誰が相手でも容赦する気はなかった。

 

『試合開始ー---ッ!!』

 

ゴングが鳴り響き、フリッドは構えた。しかしその瞬間、どこからか気配を感じ、足を動かした。

すると、斜め上の方から銃弾が飛び、足元を撃ち抜いた。

 

「今のは・・・!」

「ええ、万が一に備え、ダクトの中に『WISE』のスナイパーを待機させてます。まさかここで使うとは思いませんでしたが。」

(誰かが俺を狙ってるのか……?)

「何をよそ見してるのかしらぁ!?」

 

よそ見をしたフリッドに、ローズは鞭を振るってきた。しかし逆にフリッドは鞭を掴んだ。

 

(今だ!)

 

その時、ダクトに身を潜めていた若いスナイパーはもう一度フリッドに向かって銃弾を放った。

しかし次の瞬間、フリッドは飛んできたその弾丸を……素手で掴んで止めた。

 

(なっ……!!?)

(飛んできた場所は、だいたい分かったな。)

 

フリッドは弾丸が飛んできた場所をギロリと睨みつけた。

 

(ヒィッ!?ば、バレた!?ま、まさかな・・・)

 

スナイパーは一瞬、自分の存在がバレたのかと思い、身震いした。

その時、ローズは鞭を強く引っ張り始めた。

 

「オホホッ!いつまでそうしてるつもりかしらぁ!?私、意外と力は強いのよォッ!!」

 

ローズはそう言うと、さらに強い力で鞭を引っ張った。すると、徐々にだがフリッドは引きずられ始めた。

 

(確かに意外に力はあるな……だが、これならどうだ!)

 

その一瞬、フリッドは右腕を鞭に向かって振り上げた。

 

「ホホホッ!何をしても無・・・駄・・・!?」

 

ローズは笑い声を上げたが、鞭を見ると、切断されていた。

 

「私の鞭がっ!?」

『こ、これはどういうことでしょう!?ギ、ギルス選手の右腕が……変わっています!!』

 

フリッドの右腕はギルスのものに変わっていた。否、右腕だけ(・・・・)をギルスに変えたのだ。そしてギルスクロウを伸ばして鞭を切った、ということだ。

 

(初めてやったが・・・うまくいった!)

(あんな能力まであるなんて……私の計画がズタボロ!)

 

目の前で体の一部だけを変身させたフリッドを見て、フィオナは驚きながらも、悔しそうに爪を噛んだ。

 

(こうなったら最終手段・・・!)

 

フィオナはもう一度無線を取り出した。

 

「聞こえる?」

『は、はい!』

「次は私を狙って撃って。」

『えっ!?』

 

フィオナの提案に、スナイパーは声を上げた。味方を撃てと言っているのだから、誰でも驚くだろう。しかし、フィオナは構わず続けて言った。

 

「いいから。私がフリッドを引き付ける。そしたら奴の目の前で・・・私を撃って。防弾ベストを着てるから、大丈夫よ。」

『わ、わかりました。』

 

無線を切り、ポケットに戻した。そしてフィオナは会場の方へ足を踏み入れた。

 

「フリッドー!頑張って~!!」

「フィオナ!」

 

フィオナは途端に声を上げてフリッドを応援し始めた。その声に応え、フリッドはフィオナの方に顔を向けた。

しかし、その瞬間、フィオナの体に銃弾が直撃し、その体は一瞬宙に浮かんで吹き飛んだ。

 

「ッ!!」

 

その一瞬の出来事に、フリッドは目を見開いた。そして吹き飛んだフィオナは床に倒れた。

 

「フィオナー----ッ!!」

 

試合中であるにも関わらず、フリッドは叫び、フィオナの元に駆け寄り抱き起した。

 

「フィオナ・・・フィオナ!しっかりしろ!」

 

フィオナは目を開けない。防弾ベストを着ているため、痛みはあっても出血はしていないが、あくまで気絶しているフリをしていた。

 

「なーにやってんのよぉ!今は試合中よぉっ!?」

 

試合を邪魔されたのが気に食わないのか、ローズは切られた鞭を持ってフリッドに近づいた。

 

「そんな女、邪魔だから捨てちまいな!」

「ッ!!」

「アンタ、聞いてんの・・・」

 

次の瞬間、ローズの首から鮮血が吹き出した。

 

「は・・・?」

「グウゥゥゥ……」

 

茫然とするローズに対し、フリッドの口には血が付着していた。そしてその口には、嚙み千切った肉片が咥えられていた……

 

「あぁ・・・!!」

「グウゥゥゥ……!!ウオアアアアアアアアッ!!!」

 

首を噛み千切られ、血が吹き出したローズはその場に倒れた。

そしてフリッドは叫んだ。その目は真っ赤に染まり、血だらけになった歯は牙に変わり、体色は緑色に染まっていく。

そして体全体が変わっていき、ギルスへと変貌した。

その瞬間、客席から悲鳴がこだました。だが、ギルスにとって観客などどうでもよかった。

 

「よくも、よくもフィオナを……!!」

 

怒りに震えるギルスが目をつけたのは上にあるダクトだった。

ギルスはそこに目をつけると高く跳躍し、壁を登ってダクトへたどり着いた。

 

「ひっ!?」

「ガァウッ!!」

 

鋭い拳が繰り出され、ダクトの檻を貫通。中にいたスナイパーを引きずり出し、会場の方へ降りた。

そして、スナイパーを床に叩きつけた。

 

「がはっ!」

「よくも、よくもォォォォ!!」

 

フィオナが撃たれたのは、フィオナ自身の作戦。だが、それを知らないギルスはただ怒りのままにスナイパーを殺そうとした。両腕のギルスクロウを伸ばし、スナイパーに向かって振り下ろした。だが、その瞬間、ギルスの腕は止まった。

 

(ダメだ、殺したら……!!)

「やめろォッ!!」

 

その時、ロイドがギルスに体当たりし、スナイパーへの攻撃を止めた。

 

「くっ……!?なっ、ロイド君!?」

「やめろ、フリッド・リード!」

「なんで君がここに……!!?」

 

ここにロイドがいることに驚くギルス。それをよそに、法条がフィオナの元に駆け寄った。

 

「大丈夫ですか?」

「ええ……でも、作戦はまだこれからよ!」

 

フィオナのその一言の後、会場に武装し銃を装備した「WISE」の隊員たちが乗り込んできた。

 

「なっ・・・!?フィオナ、どういうことだ……?どういうことなんだ!?」

 

動揺し、ギルスは叫んだ。フィオナは立ち上がり、ゆっくりと口を開いた。

 

「……悪いわね。あなたのこと、利用させてもらったわ。」

「そんな……!『側にいる』って言ったのも、嘘だったのか!?」

「ええ、嘘よ。」

 

ギルスからの問に、フィオナは何の躊躇もなく答えた。

その返答を聞き、ギルスは絶望感を覚え、その場で膝をつき、うずくまった。

 

「嘘だ、嘘だ・・・!」

 

そして、涙ぐむ声でブツブツ呟き始めた。

 

「我々は離れましょう!」

「そうね。」

 

その隙に、法条とフィオナはその場から逃げ出した。ロイドも同様に怯えるスナイパーを抱えて逃げ出した。

 

「っ!待って、待ってくれフィオナ・・・!」

 

ギルスは立ち上がり、後を追おうとした。しかしその瞬間、背後から銃弾が命中した。

 

「がっ!?」

 

そこから何発も何発も、ギルスの体に銃弾が浴びせられていく。

 

(なんで、なんで俺がこんな目に……この体になったせいなのか?俺が、化け物だからか?)

 

ギルスは、フリッド・リードは自分のこの体を呪った。だが、それでも自分を撃ってくる者達を怒りに任せて攻撃しようとはしなかった。攻撃すれば、殺してしまえば、自分が自分でなくなってしまうと思ったからだ。

銃弾の雨を浴びながら、ギルスは逃げ続けた。幸い、普通の銃弾では痛みを与えられても、ギルスの体を貫通しなかった。銃弾は皮膚の表面で止まり、ポロポロと床に落ちた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・!」

 

逃げに逃げ続けた。フィオナやロイドは見失い、フリッドも元の姿に戻っていた。

外は雨が降っており、フリッドはずぶ濡れになりながら街を歩き続けた。

 

「ごほっ!ごほっ!」

 

例の咳が出てきた。この後、また血を吐くだろうと、フリッドは思った。

 

「あ・・・・」

 

その瞬間、フリッドは立ち眩みし、その場に倒れた。

 

(俺はこのまま死ぬのか・・・?別にいいか。悲しんでくれる人がいるワケでもない・・・)

 

フリッドはフッと自分を嘲笑い、そのまま眠りにつくように目を閉じた。

だが、

 

「・・・さん!フリッドさん!」

 

女の声が聞こえてきた。目を開けるとそこには……

 

「大丈夫ですか!?」

 

目の前にいたのは、心配そうな顔でこちらを見つめる女性。

その人はフリッドが家庭教師をしているアーニャの母親、ヨルだった……

 

 

 





おまけ「なんか忘れちゃってんだ」

試合前……

(あれ?そういえば俺、津上君に何か聞きたいことがあったような気が……あっ!)

フリッドは翔一にアギトに関して聞くのを忘れていた。
以前も聞こうと思ったが、その時に限って翔一がいなかったり、フィオナと久々に再会できたりで聞きそびれていた。

「ギルス選手!もうすぐ試合開始です!」
「あ、はい!」

そして試合が始まり、フリッドはまたもそのことを忘れるのだった。

――――――――――――――――――――――

今回、ギャグ要素が少なかったので、ここで補給。

フリッドの連続での圧勝は、「スパイファミリー」本編で船の上で無双するヨルさんの1ページを参考にしました(ワイヤー使いとチャクラム使いのとこ)

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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