今回から、アギトにおける沢木ポジションのキャラが登場します。
その夜、夕食を食べ終えたロイド達は、翔一が帰ってくるのを待っていた。
「……遅いな。」
いつもであれば、アンノウンを倒したらすぐに帰ってくる翔一。しかし、今回は何時間立っても戻ってこなかった。
しかし、ロイド達は知らない。翔一はギルスと戦い、海に落ちてしまったことを。
「何かあったんでしょうか……」
その時だった。家の電話が鳴り響いた。ヨルは立ち上がり、受話器を取って電話に出た。
「はい、フォージャーです。」
『ヨルさん?』
「その声・・・翔一さん!?」
電話の相手は翔一だった。翔一の声を聞き、ヨルは声を上げた。
それを聞いたロイドとアーニャはすぐさまヨルの元に駆け寄った。
「今、どこにいるんですか!?みんな心配してますよ!」
『すいません、ちょっと色々あって……』
涙ぐむように話すヨルに、翔一は苦笑いを浮かべながら答えた。
『実は、思い出したんです。』
「?」
『昔のことを……』
翔一は静かに呟いた。それを聞いたヨルは目を見開いた。
「思い出したって・・・!?翔一さんもしかして、記憶が戻ったんですか!?」
「なにっ!?ヨルさん!」
ヨルのセリフを聞き、ロイドは半ば取り上げるように受話器を受け取った。
「もしもし!翔一君!記憶を取り戻したっていうのは本当か!?」
『ロイドさん……はい。まだ少しだけですけど……』
「それでも進展はあったってことだろ!で、どうなんだ?自分が何者なのか分かったのか?」
ロイドは翔一に尋ねた。しかし、翔一は黙り込んでしまった。
すると、翔一はゆっくり口を開いた。
『あの、アーニャちゃんと変われますか?』
「アーニャに?それはいいが・・・アーニャ!」
ロイドは自分の元にアーニャを呼ぶと、受話器をアーニャに差し出した。
「ショーイチ!」
アーニャは受話器を受け取ってすぐ、翔一の名を呼んだ。
『アーニャちゃん、ごめんね。心配した?』
「ううん、ショーイチつよい!だから、しんぱいしてない!」
アーニャはニコッと笑って言った。それにつられて翔一もフッと笑った。
『そっか……あ、あのね、アーニャちゃん。』
その時、翔一の声が暗くなった。
『俺、前にもアーニャちゃんに会ったことがあるんだ。アーニャちゃんがいた……あの施設で。』
「えっ……?」
翔一の一言に、アーニャは声を上げた。同時に頭の中が真っ白になるような感覚を覚えた。
翔一は続けて言った。
『――――――――――――――――――――』
「………ッ!!?」
"それ"を聞いた瞬間、アーニャの顔は青冷め、ショックのあまり受話器を床に落とした。
「アーニャ!?どうした!?」
「アーニャさん!?」
ロイドとヨルはアーニャに声をかけるが、アーニャは滝のように汗を掻き、同時に息苦しくなったように胸を抑え始めた。
「アーニャ……アーニャ、もうねる!!」
アーニャは叫び、その場から飛び出し、自分の部屋に逃げ込んだ。
「アーニャ・・・?」
困惑する中、ロイドは床に落ちた受話器を手に取った。
『すいません。困らせたみたいで……』
「翔一君、アーニャに何を言ったんだ・・・?」
『……すいません、今は言えません。』
電話越しに翔一は申し訳なさそうに呟いた。
翔一はさらに続けて言った。
『後、俺しばらく帰れないかもしれないです。』
「なに?」
『ある人と会わないといけないんです。それじゃあ……』
「お、おい!ちょっと待て!翔一君!!」
ロイドの静止を聞かず、翔一は電話を切った。
「……切られた。」
一方的に通話を切られ、ロイドはため息をついた。
「どうでした・・・?」
「ある人に会う、と言ってましたね……それが誰かは……」
「そうですか・・・」
その時、ヨルは胸がズキンと痛むのを感じた。まるで翔一がどこか遠くへ行くのを恐れているように。
(・・・?胸が痛い……?何故でしょう……?本当なら喜ぶべきことなのに……)
同時に、ロイドは様々な疑問が頭の中に浮かんでいた。
さきほど翔一がアーニャに言ったこと、翔一は誰と会うつもりなのか、どこへ行くつもりなのか……
(俺には分かりそうもない……)
そのことアーニャは自分の部屋のベッドで蹲っていた。
「ウソ・・・ウソだ・・・ショーイチが・・・!」
電話での翔一の一言が、頭の中にこびりついて離れなかった。
それほどまでに衝撃的なことだった。
電話越しに、翔一が言い放った台詞……
『被検体Ω……それが、あの施設での俺の名前。』
――――――――――――――――――――
翌日、
(まさか、俺がここに来ることになろうとは……)
ロイドはある場所へと来ていた。そこは保安局の本部だった。
ロイドは気乗りがしなかった。「WISE」にとって保安局は敵であり、ロイドはその敵陣の中に一人で潜入しているようなものだった。
「ロイドさん。」
「ジョージ。」
中に入ると、ジョージこと法条が出迎えた。
この日、ロイドを保安局に来るよう誘ったのは、この法条だった。
「一体なんなんだ?見せたいものがあるというのは……」
「まぁ、来れば分かりますよ。どうぞ、こちらへ……」
法条はそう言うと、ロイドの案内を始めた。
案内された先は、未確認生命体対策班の本部。G-3が配属されている場所だった。
法条はその本部のドアを開けた。
「アイネさん。」
「ジョージ君!久々ね。あら?あなたは確か……」
アイネは法条の横にいるロイドに目をやった。対し、ロイドはアイネにペコリと一礼した。
「ジョージ、まさか君の知り合いというのは・・・」
「ええ、この方です。アイネさんもイーデン校の卒業生で、私の同期です。」
法条が軽く紹介すると、アイネは法条の肩を叩いた。
「ねぇ、ジョージ君。噂で聞いたんだけど……マードックの奴、首にしたんですって?」
「ええ、大勢の前で暴力を働いたので。」
「アハハハハッ!!ざまーないわね!!」
するとアイネは急に笑い出した。
「アイツ、偉そうにしてるだけの能無しだから、消えて"せいせい"したわ!」
「そういえば、昔アイツの金玉にスタンガン当てたって聞きましたよ。」
「ええ。あまりのもムカついたから、私の開発した20万ボルトの奴を思い切りね!そしたらアイツ、ビクンビクン痙攣して泡吹いてたから笑っちゃったわ!!」
(よく退学にならなかったな、この人……)
アイネの過去話を聞き、法条はフッと笑った。対し、ロイドは冷や汗を掻きながら思った。
「でも、本当にクビになってよかったと思うわ。アイツに泣かされた子、いっぱいいるから。あなたもそうでしょ?ジョージ君。」
「そうなのか?」
「……昔の話です。」
法条はそう言うと、笑うのを止め、冷たい目をした。
その話を聞き、ロイドは何故法条が今までマードックに対して無礼な態度を取っていたのかを理解した。
それは昔やられたことを根に持っていた法条による復讐だったのだ。
「もう昔話はいいでしょう。アイネさん、"例のモノ"を見せてください。ロイドさんも興味があるそうなので。」
「わかったわ。」
アイネはそう言うと、二人をG3が積んであるトラック「G-3トレーラー」が配備されている車庫へと向かった。
トレーラーにたどり着き、中に入るとそこには……
「これは……!」
「これこそ、新型のG3……『G3-X』です!」
――――――――――――――――――――
そのころ、翔一はとある場所へと来ていた。
そこは東国と西国のちょうど境目にある場所だった。しかし、そこにはもう何もなく、焼け跡だけが残されていた。
バイクから降りた翔一は辺りを見回した。
「待っていたよ、津上君。」
その時、背後から声が聞こえた。振り返るとそこには、顔に包帯を巻いた黒コートに黒い手袋、黒の帽子を被った黒づくめの男が立っていた。
「……イワーク博士。」
翔一は静かに呟いた。翔一はその男に見覚えがあった。それもそのはず、イワークという男はこの焼け跡になった"施設"の関係者だからだ。
「記憶を取り戻したのか?」
「まだ少しだけです。俺が
「そうだったな……もう、アレからどれくらい経っただろう……」
イワークは空を見上げ、遠い目をしていた。その目から、過去に何かあったことは察することが出来た。
「でも、肝心なことが思い出せないんです。昔ここで……とんでもない起きたことは覚えてるんです。でも、それが何なのか……」
「思い出さない方がいい。」
思い出そうとする翔一に、イワークは冷たく言った。
そんなイワークに、翔一は目を見開いて驚いた。
「どうして……!?」
「それは君のためにはならないからだ。」
「でも……これは俺だけじゃなくて、アーニャちゃんの問題でもあるはずです!だって、この施設にはアーニャちゃんの本当のお母さんも……!!」
「やめろっ!!」
その時、イワークは声を荒げた。翔一は驚いたのかビクッと体を震わせ、口が止まった。
「真実を知ることが、君やアーニャのためになるわけじゃない。……帰るんだ。」
「……なんか、冷たいんですね。」
翔一はフッとため息をつき、諦めがついたような顔をしながらバイクに跨り、ヘルメットをかぶった。
「博士だって、アーニャちゃんのこと可愛がってたのに。」
「………」
イワークは黙り込んだ。そんなイワークの返答は聞かず、翔一はバイクを走らせた。
その時、イワークに近づく人影があった。
「グリムか。」
グリムという男はニヤニヤ笑いながら、バイクで去る翔一の後ろ姿を眺めた。
「アイツがアギト、津上翔一か……へっ、大したことねぇな。俺なら簡単に倒せるぜ。」
「調子に乗るな。彼が完全に覚醒し、力を取り戻せば……倒されるのはお前の方だ。」
「ケッ、そうかよ。」
イワークの言葉が気に入らなかったのか、グリムは不服そうに舌打ちを打った。
そして、肩に担いでいた"モノ"を乱雑に地面に落とした。
「回収できたんだな、彼を。」
イワークは振り返り、地面に転がったモノを見つめた。それは、フィオナに刺されて死んだ、フリッド・リードの遺体だった。目は虚ろになって光がなくなっていて、間違いなく死んでいた。
「こんなゴミカス、今更役に立つのかよ?」
グリムはそう言うと、無礼にも足でフリッドの遺体を踏みつけた。
「大丈夫だ。生き返らせる。」
イワークはグリムの所業を咎めることなく、右手の手袋を外した。その手の甲には形容し難い、不思議な形をした紋章が刻まれていた。
「その紋章って、人間も生き返らせることもできるのか?」
「ああ。だが、今回は私一人の力では手に余る。……あの子の力も必要になる。」
イワークはそう言うと、ギュッと拳を握った。
対し、グリムはため息をつきながら呟いた。
「アーニャ、だっけ?あのガキも俺や津上と同じだってのか?」
「そうだ。あの子もまた……アギトだ。」
――――――――――――――――――――
「これより、G3-Xのテストを始めます。ユーリ君、準備はいい!?」
「はい!いつでもいけます!」
保安局内にあるトレーニングルームでG3-Xのテストが行われた。
G-3の強化版ともいえるG-3Xを装着したユーリは、2階の指令室にいるアイネに返事をした。
(よーし、ロッティの奴も見てるし、ここはいいとこ見せて奴に吠え面かかせてやる!そんで……)
ユーリは張り切りながら、頭の中で妄想を始めた。
『ヨルさん、君の弟は素晴らしいよ!かくかくしかじか……』
『えっ!?ユーリがそんな活躍を!?凄いわユーリ!貴方みたいな弟を持って、私は本当に幸せ♡ん~~~~♡』
ロイドから活躍を聞き、嬉しくなった姉のヨルは、嬉しさのあまり自分に熱いキスをしてくる・・・妄想をした。
「フヘ、フヘヘヘヘ……」
そんな妄想をしながら、ユーリはマスクの下でだらしない笑顔を浮かべながらヨダレを垂らした。
そんな中、2階の指令室では、
「G3-Xは様々な面での改善が施されています。戦闘能力も向上。さらに極めつけとして、画期的なシステムを備えています。」
「システム?」
ロイドに向かって、法条は得意気にG3-Xの解説をした。すると、法条はニヤリと笑った。
「そのシステムとは、理想的な動きを装着員に促すコンピュータ機能です。コンピュータが導き出す動きに、装着員が従って動くことで、ほぼ100%勝利に導くのです。いやぁ、これを提供するのは苦労しましたよ。」
「なに?どういうことだ?」
「フッ、このシステムを提供したのは私です。」
絵に描いたようなドヤ顔で語る法条に、ロイドは目を見開いて驚いた。
「なんだと・・・?」
「ちょっとこちらへ……」
法条はロイドを連れ、部屋の隅へ移動した。
「黄昏、私は考えたんですよ。真の東西平和とは何か、とね。西国は前からアンノウン対策に手をこまねいていました。東国にはG3がありますが、西国にはありません。そこで西国は東国に技術提供を持ち込みました。」
「まさかその技術というのが……」
「ええ、G3-Xのシステムですよ。私は西国政府の了解を取り、それを東国に売りました。これがどういうことかわかりますか?アンノウンを通じて、両国が同盟を結んだということです。共通の敵に対して、かつて敵対していた国同士が手を取り合う……これこそ真の平和といえませんか?」
法条は得意気に語っていたが、ロイドは一抹の不安を持っていた。
確かに今はアンノウン対策のために両国は手を取り合うだろうが、アンノウンが全て倒された後は?同盟はなかったことになるのではないか、と考えていた。
「テスト、開始!」
ロイドが考え込む中、G3-Xのテストが開始された。
トレーニングルームの床から円状の的が現れる。対し、G-3Xは即座に銃を抜き、的の真ん中を射抜いた。それから何度も的が不規則なタイミングと場所に現れるが、それをことごとく真ん中を射抜いてみせた。
続いて、両サイドから黒く重い鉄球が発射された。
「ハッ!」
G3-Xは軽くジャンプして片方の鉄球を蹴りで叩き落とし、もう片方の鉄球を銃で撃ち落とした。
「続いて、模擬戦闘開始!」
アイネの一言とともに防護服を装着した隊員2名が、盾と警棒を手にG3-Xににじり寄る。
G3-Xと隊員との緊張状態が続く中、隊員の一人が先に動いた。しかし、それよりも早くG3-Xが左腿に装備した電磁警棒「ガードアクセラー」を抜き、隊員の手首を叩いて警棒を叩き落とした。
そして、喉元に警棒を突き付ける。
「うおおおっ!!」
その時、背後からもう一人の隊員が襲い掛かってきたが、G3-Xは喉元に警棒を突き付けたまま足を上げ、襲い掛かってきた隊員を蹴り飛ばした。
「つ、強い……」
「そうでしょう?G3-Xがあれば、アギトなどいなくても単独でアンノウンと戦えますよ。」
「以上、テスト終了!お疲れ様、ユーリ君。」
『は、はい……』
テストの終了が告げられた瞬間、G3-Xを装着したユーリは、そのまま床に膝をついた。
『ユーリ君、大丈夫?』
「はぁ・・・はぁ・・・だ、大丈夫です・・・!!」
息を切らしながらユーリは答えた。
同時に、G3-Xに対して何か違和感を抱いていた。
(な、なんだこれ・・・?体が、勝手に動かされているような……)
ユーリは気づいていなかった。G3-Xにはある"欠点"があることを。
それは法条やアイネさえも気づいていない、重大な欠点だった……
イワーク博士の名前は沢木哲也の「沢木」をカタカナに変換して、「サワキ」→「サワーク」→「イワーク」となりました。
ポ〇モンの名前でもなければ、「強いられているんだ!」って言う人でもありません。
後、イワーク博士の見た目はリバイスの狩崎パパとほとんど同じです。違いは顔に仮面ではなく、包帯を巻いているところぐらい。
それから遅くなりましたが、法条の簡単なプロフィールです。
—―――――――――――――――
法条 (偽名:ジョージ・リグラ)
職業:イーデン校の教頭
本職:スパイ
年齢:25歳
身長:178cm
体重:73kg
趣味・特技:分析、相手を煽ること
好きなもの:フレンチ
嫌いなもの:生理的に嫌悪感を抱かせる人間、生意気な子ども
特徴:気取り屋で高級志向のナルシスト、皮肉屋、毒舌、アーニャとよく睨み合っている、フィオナとは同期、見た目は原作の北條透とほぼ同じ
作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します
-
アギト編(翔一+フォージャー一家)
-
G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
-
ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)