SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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※初っ端からロイヨル要素あります。


第24話「重なった面影」

 

夕方になり、ヨルは一足先に家に帰って来ていた。

 

「はぁ……」

 

洗濯物を畳みながら、ヨルはため息をついた。

 

(翔一さんはどこに行ったんでしょう……それにアーニャさん……昨日からずっと元気がないですし……大好きなピーナッツも食べないなんて……)

 

ヨルは翔一の安否を気遣っていた。同時に、アーニャの様子がおかしいことも気掛かりだった。昨日、翔一と話してから様子がおかしかった。何か思いつめたような顔をしていた。

学校へ行くときも、学校から帰って来た後も、加えて大好きなピーナッツにも手をつけないほどだった。

しかし、ヨルにはどうすることもできなかった。ヨルはそんな自分が情けなくなり、またため息をついた。

 

「あ・・・」

 

その時、ヨルは声を上げた。洗濯物を畳んでいる際、ロイドが着ているTシャツが目に入ったのだ。

それを手に取り、自分の体にくっつけた。

 

「大きいなぁ……」

 

当たり前だが、自分が着ているものとは大きさが違い、サイズが異なっていた。同時に、この大きい服が入る大きい体で、この前抱きしめられたことを思い出し、ヨルは顔が熱くなるのを感じた。

その時、ヨルはあることを思いついた。それはとても恥ずかしいことで、もし誰かにバレたら死んでしまいたいぐらい恥ずかしいことだった。

 

「ち、ちょっとだけ……」

 

小声で呟きながら、Tシャツに鼻をくっつけた。

 

(ふあぁ……ロイドさんの匂い……)

 

Tシャツからは洗剤の匂いしかしなかったが、ヨルはその中にわずかに残るロイドの匂いに、胸をときめかせた。

 

「ロイドさん……」

 

その時、ヨルの脳裏にはこの前抱きしめられた時のことが鮮明に浮かんでいた。

自分がフリッドに抱きしめられたところを見られ、それにヤキモチを焼いたロイドが言ったことを。

 

『ヨルさん!俺以外の男相手に、赤くならないでください!俺の方を、見ててください!』

『俺はヨルさんのことが大好きなんですから!!』

 

ロイドがあんなことを言うなど、ヨルも思っていなかったが、とても嬉しく思っていた。

思い出すだけで胸が高鳴り、心拍数も上がり、顔もどんどん紅潮していく。

 

「私も……大好きです……」

 

Tシャツに残るロイドの匂いを嗅ぎながら、ヨルは静かに呟いた。同時にTシャツを握る手に力が入る。

 

「ロイドさん、好き……大好き……!ロイドさぁん……!」

(ダメ…私ったら、こんなこと思ったらいけないのにぃ……!)

 

匂いを嗅ぐ度に手に力が入り、顔だけでなく体全体も熱くなり、息も荒くなっていく。

それはヨル自身もいけないことだと分かってはいたが、どうにも止められなかった。

そして、

 

「ロイドさん…キス、してください……」

 

とうとうヨルは自身の欲望を口に出した。それはロイドに対する愛情というべきか、劣情というべきか……

 

「いっぱい、いっぱいキスしてください……ロイドさん……!」

 

興奮が増したヨルはさらなる欲望を口に出した。もうどうにも止まらなかった。

匂いを嗅ぐだけで湧き上がる興奮が収まらず、これ以上いけばもっといけないこと(・・・・・・)まで口に出してしまいそうだった。

しかし、そんな興奮にもとうとう終わりがきた。

 

「あ、あのー……ヨルさん?」

 

ふと男の声が聞こえ、ヨルはそっとその方向へ顔を向けた。そこには、翔一が立っていた。

 

「……いつからそこに?」

「えっと……『私も大好きです』って言ったところから……ですかね。す、すいません。聞いちゃいけないし、見ちゃいけないとは思ったんですけど……」

 

先ほどのヨルの行動と言動を知ったせいか、恥ずかしいのか翔一の顔は赤くなっていた。

しかし、ヨルはそれよりも顔を真っ赤にしていた。今の自分の恥ずかしいところをほとんど見られてしまったのだから。

 

「あああああああああああああああっ!!!」

「えっ?ぐほぁっ!!」

 

ヨルは恥ずかしさのあまり雄たけびを上げ、そのまま翔一の顔面にストレートパンチを繰り出し、翔一を殴り飛ばした。

殴り飛ばされた翔一は勢いよく飛んでいき、ドォンッ!という音とともに勢いよく壁に激突した。

 

「はっ!?す、すいません!!恥ずかしくてつい……」

「だ、大丈夫です……」

 

翔一はこの時のことを、

 

「アギトじゃなければ即死でした。」

 

と、後に語った。

 

「はは?へんなおとした・・・っ!?」

 

物音に気付いたアーニャが部屋から出てきた。しかし、翔一の姿を見て青ざめたような顔をした。

 

「いてて・・・アーニャちゃん!ただいま!」

 

翔一はいつものように笑顔をみせた。しかし、翔一のあの一言を聞いたアーニャは、怖くなり、すぐさま部屋に戻ってドアを閉めてしまった。

 

「たはは・・・嫌われちゃったか・・・」

 

そんなアーニャを見て、翔一は苦笑いを浮かべた。

 

「翔一さん……あの時、アーニャさんになんて言ったんですか?」

「それは・・・すいません。今は、言えないです・・・」

 

翔一は申し訳なさそうに言うと、また苦笑いを浮かべた。そんな翔一を見て、ヨルは何も言えなかった。

人は何かしら隠したいことがあるものだ。自分も殺し屋であることを皆に隠している。そんな自分が、翔一に追及する資格はない、とヨルは思っていた。

 

「あ・・・そうだ。俺、思い出したことがあるんです。」

「え?なんですか?」

「俺、姉さんがいたんです。」

 

元の、いつも通りの笑顔に戻った翔一は語り始めた。

 

「お姉さん、ですか?」

「はい。幼いころに両親を亡くした俺にとって、姉さんはたった一人の家族なんです。すっごく優しい人で……俺が調理師学校行ってた時も学費の面倒見てくれて……『俺もバイトするよ』って言ったら、『あなたは自分のやりたいことに集中して!』って逆に怒られちゃって!」

 

翔一は壁に激突した際に落ちた小物を片付けながら、自分の姉のことをヨルに話した。

嬉しそうに話す翔一を見て、ヨルも嬉しそうに笑った。

 

「素敵な人……大好きだったんですね、翔一さん。」

「はい!でも……姉さん、死んだんです。」

「え・・・?」

 

突然翔一の声が暗くなり、表情が曇った。同時に、ヨルは声を上げた。

 

「建物の屋上から、飛び降りたんです。警察は自殺っていってましたけど……俺、信じられなくて……それで!・・・ここまでは覚えてるんですけど……でも、いつか思い出します!」

 

翔一はそう言うと、先ほどの暗い表情が嘘のような笑顔を浮かべた。

その笑顔を見て、ヨルは胸が締め付けられた。

 

「姉さん、ヨルさんに似てたんです。」

「え?」

「見た目じゃなくて、雰囲気とかが。だから・・・ヨルさんと一緒にいると、不思議と落ち着くっていうか……」

 

翔一の話を聞き、ヨルはあの時のことを思い出した。パーティー会場にアンノウンが現れた際、翔一は半狂乱になって倒れてしまった。その翌日、目を覚ました翔一はいきなりヨルに抱き着いたこと……

ヨルは、あの時何故翔一が自分に抱き着いたのかいまいちピンとこなかったが、今の話を聞いて全て理解した。

翔一は、自分を死んだ姉と重ねているのだと。

 

ヨルも翔一と似たような境遇だった。翔一との違いは、今も弟のユーリが元気に生きているということだ。しかし、翔一は最後に残された家族すらいなくなった。

そう考えてしまうと、何かしてあげたいと思うようになった。

 

「あ、あの!翔一さん!」

「?」

 

ヨルは翔一を呼ぶと、自分の両腕を広げてみせた。

 

「わ、私のこと、『姉さん』って呼んでもいいですよ!」

「え?」

「ぎ、ぎゅってしてあげましょうか!?も、もちろん、骨は折らないよう気を付けます!」

 

ヨルは翔一に向かって叫んだ。恥ずかしいのか頬を赤らめていた。

姉がいなくなって、翔一は寂しい思いをしている、とヨルは思った。だから、何か力になってやりたいと思った結果、自分が姉の代わりになってやろうと思ったのだ。

そんなヨルの気遣いに気づいたのか、翔一は優しく微笑んだ。

 

「ありがとうございます。でも、大丈夫です!その気遣いだけで嬉しいですから!」

「翔一さん・・・」

「代わりに、ロイドさんをギュッとしてあげてください!この前みたいに!」

「ふぇっ!?そ、そんな・・・!」

 

その瞬間、ヨルの顔が先ほどのように真っ赤になり、顔を下にして俯いた。

そんなヨルを見て、翔一はニコニコ笑っていた。と、その時だった。

 

「!」

 

例のあの音が、アンノウンが現れたことを示す金切り音が聞こえた。

 

「ヨルさん、すいません!俺行きます!」

「あ・・・!」

 

ヨルは思わず声を上げたが、その間にもう翔一は行ってしまった。

その時、ヨルは自分を情けなく思っていた。翔一はみんなの居場所を守るために、たった一人でアギトとして戦っている。そんな翔一に、自分は何もしてやれない……

 

(私、弱いなぁ……)

 

情けなくなったヨルは、心の中で静かに呟いた。

 

────────────────────────

 

夕日が沈み辺りが暗くなっていた頃、とある美術館では閉館の準備が進んでいた。

この美術館は、以前フォージャー一家が訪れたことのある場所だった。

 

「フウゥゥゥ……」

 

そんな美術館に唸り声がこだました。

 

「?」

 

巡回していた警備員の一人がその唸り声に気づき、声が聞こえた方まで足を進めた。

倉庫の方に差し掛かると、そこにライトを向けた。

 

「誰かそこにいるのか?」

 

倉庫のドアを開け、声をかけるが返事はない。警備員は首を傾げ、ドアを閉めて後ろを向いた。

その時、目の前には蜂の姿をしたアンノウンが立っていた。

 

「フウゥゥゥ……」

「う、うわあああああああっ!!」

 

警備員は悲鳴を上げ、その場から逃げ出した。

 

「フフッ・・・フッ!」

 

蜂のアンノウン、ビーロードは手を前にかざした。すると、警備員の動きが止まり、壁の方へ独りでに引きづられていった。

 

「な、なんだこれ!?」

 

壁は水面の波紋のように歪み、その中に徐々に体が飲み込まれていく。

このままでは壁の中に全身が埋まっていく・・・その時だった。何者かが警備員に突進し、壁の中から引きはがした。

 

「か、仮面ライダー!!」

 

警備員を助けたのはアギトだった。アギトは警備員に向けて首を動かし、逃げるよう促した。

 

「あ、ありがとう!」

 

警備員は礼を言うと、すぐさまその場から逃げ出した。

 

「アギト・・・」

 

ビーロードは静かに呟くと、どこからともなくレイピアを取り出して構えた。

そして、アギトに向かって突進してくる。

 

「ハッ!」

 

ビーロードはレイピアで突いた。しかし、アギトは逆に腕を取ってそのまま窓ガラスに向かってぶん投げた。

ビーロードの体は窓ガラスを突き破り、外へ追い出された。

 

「タアッ!!」

 

窓から外へ出ると同時に、アギトは飛び蹴りを繰り出した。

ビーロードはその飛び蹴りをかわし、アギトの着地したところを狙ってレイピアを振り下ろした。

だが、アギトは着地と同時にフレイムフォームへと姿を変え、赤く変わった右腕の装甲でレイピアを防ぎ、同時にベルトからフレイムセイバーを抜いた。

そしてビーロードを突き飛ばし、剣の一太刀を浴びせた。

 

「グウッ!!」

 

怯んだビーロードだったが、背中の羽を広げて空を舞った。そしてレイピアを構えてアギトに向かって突っ込んできた。

アギトはそれを咄嗟にかわし、さらにフレイムセイバーの鍔の角を翼のように展開した。

 

「ハアァァァァ……」

 

アギトは深く息を整え、敵がもう一度突っ込んでくるのを待った。その時、ビーロードがもう一度レイピアを構えて突っ込んできた。

 

「ハッ、デヤァァァァァァ!!」

 

その瞬間、アギトは炎を纏ったフレイムセイバーで真っ二つに切り裂いた。

真っ二つになったビーロードは断末魔を上げる間もなく爆発した。

アンノウンを倒したことに安堵し、アギトは元のグランドフォームに戻った。と、その時だった。

 

「ッ!?ぐあっ!!」

 

何者かがアギトに体当たりし、アギトを吹き飛ばした。

そこに現れたのはもう一体のビーロードだった。

 

「もう一体・・・!」

 

アンノウンがもう一体現れたことに、アギトは身構えた。と、さらにその時サイレンの音が鳴り響いた。

 

「アギトさん!」

 

ガードチェイサーに跨ったG3-Xが現場に到着した。

 

『ユーリ君、さっそくの実戦よ!気合入れなさい!』

「はい!」

『GM-01スコーピオン、アクティブ!』

 

ユーリはさっそく銃を装備し、ビーロードに銃口を向けた。

 

(よし!アギトさんも見てるし、いいとこ見せないと……なのに、なんで…こんなに怖いんだよ……!!)

 

G3-Xを装着しているユーリは、何故か例えようのない恐怖に駆られていた。だが、その恐怖を振り払い、銃弾をビーロードに向けて撃った。

ビーロードは銃弾を浴び怯んだものの、すぐさまレイピアで弾きながらユーリの方へ走りだした。

 

『ユーリ君!例の奴を!』

「はい!」

 

アイネの指示に従い、ユーリはガードチェイサーのトランクからある物を取り出した。それは、G3-Xの最大戦力ともいえる新兵器だった。

ユーリは暗証番号「1、3、2」に続き、決定スイッチを押した。すると「カイジョシマス」という音声とともに展開した。

ユーリはそれをさらに展開、変形させ一つの武器を完成させた。

 

『GX-05ケルベロス、アクティブ!』

 

その名は「GX-05ケルベロス」。アタッシュケースから変形するG3-X専用のガトリング砲だ。

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

ユーリは雄たけびを上げ、ガトリングをビーロードに向けて乱射した。

 

「グウッ!?」

 

ビーロードはその銃弾を浴びた。一発喰らえば、もう抜け出せない。

ガトリングの銃弾の嵐を浴びることになる。

 

「グッ、グアアアアアアッ!!」

 

銃弾を浴び続けたアンノウンは、断末魔を上げて爆発した。

 

『よっしゃ!』

『やったわね、ユーリ君!』

 

通信機からリョーマとアイネの喜ぶ声が聞こえてくる。だが、ユーリの耳にその声は届いていなかった。

 

『ユーリ君?』

 

その時、ユーリはガトリングをアギトに向け始めた。

 

「ッ!?」

『ユーリ君!?何やってるの!?』

「はぁ……はぁ……!!」

 

今のユーリには何も見えていない、何も聞こえていなかった。あるのはただ恐怖心だけだった。

自分が自分でなくなってしまうような恐怖心に駆られていた。

 

「うわあああああああっ!!」

 

恐怖のあまりユーリは叫び、アギトに向かってガトリング砲を乱射した。

アギトはその銃弾の嵐をかいくぐり、ユーリの懐に入った。

 

「ユーリさん!やめてください!」

「来るな、来るなぁぁぁぁぁ!!」

 

もはや尊敬しているアギトの声さえも届かない。砲身でアギトを殴りつけ、さらに地面に突き倒す。

 

「僕に、僕に……近寄るなぁぁぁぁぁ!!」

 

ユーリは地面に倒れたアギトに銃口を向け、トリガーを引こうとした。

だが、その時、

 

「あ……」

 

ユーリはフッと意識が遠のいてのを感じ、その場に倒れてしまった。

 

『ユーリ君!?ユーリ君!!』

『ユーリ!!』

「ユーリさん!」

 

アイネ、リョーマ、アギトが声を掛け続ける中、ユーリは意識を失い、気絶してしまった。

その後、ユーリは思い知ることになる。G3-Xの欠陥……否、完璧が故の欠点を……

 

 





3話ぶりのロイヨルです。
当初、翔一が入ってくるシーンを無くして、ちょっとエッチなシーンを入れようと思いました。ですが書いていく内に止まらなくなって、「これもうR-18だろ……」な内容になってしまったので、翔一が出てくるシーンと差し替えました。


・・・え?どんな内容か気になる?それはもう、ヨルさんが乱れに乱れて、もうこの場では書けないような状態になっちゃう感じです。
後はご想像にお任せします……

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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