SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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久々にフィオナの出番です。アンド、ギルス再登場です。





第27話「2度目の再会」

ある日のこと・・・

 

「ハァ……」

 

バーリント総合病院で事務仕事をしていたフィオナは、珍しくため息をついていた。

それは、決してこの事務仕事が辛い、というワケではなかった。

 

(名誉挽回するための策が思いつかない……!)

 

アギト捕獲作戦が失敗して以来、フィオナはロイドの信用を回復するため、頭の中で様々な策を巡らせていた。

一つ目の策は成功した。フリッド・リードの殺害は上手くいった。

もう一つは何か大きな手柄を立てて、名誉挽回するつもりだった。しかし、そのための策が思いつかなかった。

 

(こうしてる間にも、先輩はヨル(怪力女)津上翔一(キューピッド気取り男)にぃ・・・!!)

 

フィオナはポーカーフェイスを保ちながら親指の爪を噛んだ。

そんな時、

 

「フィオナさーん!すいませーん!」

 

フィオナを呼ぶ声が聞こえ、フィオナは上を向いた。しかし、呼んだ男の顔を見た瞬間、フィオナは怒りを覚えた。

 

「……津上さん。」

(津上翔一ィィィィィ!!)

「どうも!」

 

フィオナが怒っていることには気づかず、翔一は笑顔を浮かべている。

 

「……何の御用でしょう。」

「実は、ロイドさんから頼まれた資料を届けに来たんですけど・・・ロイドさんはどこにいます?」

「3階の方にいると思いますよ。ご案内します。」

 

フィオナはそう言うと椅子から立ち上がり、翔一の案内を始めた。これは親切心からではなかった。

フィオナはヨルと同様に、翔一のことを敵視していた。それもこれも、ロイドがヨルと翔一のことを好いていると、フィオナが勘違いしていたからだった。

 

(こいつと先輩を二人きりにしてたまるか!)

 

そんなことを考えながら、目的地にたどり着いた。

 

「失礼します。」

 

ドアをノックして中に入った。中にはロイドが机に向かってカルテを見ていた。

ロイドは二人に気づき、顔を向けた。

 

「あ、翔一君!」

「ロイドさーん!資料持ってきましたー!」

「やぁっ、すまないな。」

 

資料を手渡してきた翔一とにこやかに話すロイド。その光景を見て、フィオナは心の中で歯ぎしりを立てた。

 

(やはり……あのヨル(怪力女)に向けているのと同じ笑顔……!!先輩、やはり両刀使い(男も好き)なんですか!?)

 

フィオナの勘違いは加速していった。

その時、翔一はカバンから何か取り出した。

 

「ロイドさん、これ!お弁当です!忘れてましたよ!」

「なに?そうだったか……」

 

ロイドは翔一から弁当が入った包みを受け取った。

それを見たフィオナは目を見開いた。

 

(なっ!?ま、まさか……愛妻弁当!?い、いや、妻じゃないから"愛妻"じゃない……?混乱してきた……)

 

フィオナは頭が混乱していた。そんな時、翔一はフィオナに包みを差し出してきた。

 

「よかったら、フィオナさんも食べます?これ、俺の分ですけど・・・よかったらどうぞ!」

「え?」

「フィオナ君、もらっておきなさい。翔一君の料理は美味しいから。」

 

ロイドはそう言いながら弁当を食べていた。包みに入っていたのは"おにぎり"だった。

ロイドは片手におにぎりを持って食べながら、翔一が持ってきた資料に目を通している。

フィオナはチラリと部屋の時計を見た。もう昼食時になっていた。

 

「じゃあ、遠慮なく。」

「どうぞどうぞ!あっ、そうだ!フィオナさん、ちょっと聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「?」

 

────────────────────────

 

2人は屋上へ移動し、近くのベンチに隣り合って座った。

 

「・・・話ってなにかしら?」

「えーっと・・・あ、食べながらでいいですよ!」

 

翔一は笑顔で言うと、弁当を食べることを勧めた。それに従い、フィオナは中に入っていたおにぎりに手をつけた。

 

「で、聞きたいことなんですけど・・・フィオナさん、最近フリッドさんって見ました?」

 

フィオナの食べる手が止まった。

 

「・・・どうしてそんなことを?」

「フリッドさん、アーニャちゃんの家庭教師なんですけど……この前……フィオナさんと出会ってから見てないんですよ。だから、どうしたのかと思って……」

 

翔一は知らない。フリッドは目の前にいるフィオナに刺し殺されてしまったことを。

一度食べる手が止まったフィオナだったが、再度おにぎりを食べ進めた。

 

「……私には関係ないわ。だって、彼は元カレだし。」

「なんか、冷たいんですね・・・確かにフリッドさんは元カレかもしれませんけど、フィオナさんは一度は付き合ってたんでしょ?それって、フリッドさんのことが好きだったからですよね?昔好きだった人のこと、心配じゃないんですか?」

 

事情を知らない翔一はズケズケとフィオナに聞いてくる。そんな翔一の態度に、フィオナはますます苛立ちが募る。

 

「ちょっと聞きたいんですけど、フィオナさんはどうしてフリッドさんと付き合ったんですか?」

 

フリッドとは任務のために付き合っていただけ、とは言えなかった。

一瞬答えに困ったフィオナだったが、手に持ったおにぎりを食べ終え、残ったおにぎりを翔一に叩き返した。

 

「逆に聞くけど、なんで他人のあなたにそんなこと話さないといけないの?」

「え?いや、それは……」

「あなたストーカー?はっきり言って気色悪い!もう彼のことは話さないで!」

 

吐き捨てるように言うと、フィオナはその場から立ち去ろうと歩きだした。その時、ふと病院の庭に目が入った。

そこに一人の男が立っていた。

 

「!!」

 

フィオナは目を見開いた。何故ならそこにいたのは、すでに死んでいるはずの男・・・フリッド・リードだったからだ。

 

「フィオナさん?どうしたんですか?」

 

フィオナの異変に気付き、翔一は彼女に近づいた。そして、彼女が見ている場所に同じく目線を向けた。

 

「あっ!フリッドさん!おーー--いっ!!」

 

久々にフリッドを見て嬉しくなったのか、翔一は庭にいるフリッドに向けて手を振りながら叫んだ。

すると、向こうも翔一に気づいたのか、手を振ってきた。

 

「よかった~、元気そうで!ですよね、フィオナさ・・・」

 

翔一は後ろを振り向いた。しかし、そこにフィオナの姿はなく、階段に続く扉が開いていた。

 

────────────────────────

 

(どうして・・・!どうして奴が生きている!?)

 

フィオナは頭の中が混乱していた。混乱しながらも早歩きで病院内を歩き、駐車場に向かって移動していた。

 

(奴は確かに殺したはず!私が確実にこの手で!!)

 

あの時、フィオナは確実にフリッドを殺害した。しかし、フィオナは知らなかった。フリッドはアーニャとイワークという男の手で蘇ったことを。

 

(このまま奴を生かしたら、私が殺される!それに、先輩の身も危うくなる!)

 

焦る気持ちを抑えながら駐車場にたどり着いたフィオナは、自分の車のシートに手を触れた。その中に密かに隠していた拳銃を取り出し、内ポケットに入れた。

 

(もう一度殺さないと!今度は確実に・・・!!)

 

その時、フィオナは背後に気配を感じた。額に汗を掻きながら、ゆっくりと後ろを向いた。

そこにはフリッドがいた。その姿を見た瞬間、フィオナは一気に青冷めた。

 

「……!!」

「フィオナ……」

 

フリッドはフィオナの名を呟き、ゆっくりと近づこうとする。

しかし、フィオナはすぐさま車に飛び乗りエンジンをかけた。そして一気に走り始めた。

 

「ま、待ってくれ!!」

 

逃げていくフィオナを見て、フリッドはバイクで後を追い始めた。

 

────────────────────────

 

フリッドとの逃走劇は数十分ほど続き、街はずれの山の麓で車を乗り捨て、中へと入っていった。

そこは普段キャンプ場として使われている場所だが、今は人気がなかった。

フィオナは近くのコテージの中に入り、フリッドを待ち構えた。

 

(今度こそ、確実に……!!)

 

いつでも銃を抜けるよう、内ポケットに手を入れた。

その時、コテージのドアが開き、フリッドが中に入って来た。

 

「フィオナ!」

「動かないで!」

 

近づこうとしたフリッドだったが、フィオナに銃を抜けられて足が止まった。

 

「何故あなたが生きているのか分からないけど、今度こそ死んでもらう!あなたが生きてると、色々と迷惑なのよ!!」

「フィオナ……」

 

フィオナに拒絶され、フリッドは悲しい表情を見せていた。しかし、フィオナは関係ないとばかりに引き金に指をかけた。

だがその時、コテージの窓ガラスがガチャーンッ!と何者かに破られた。

 

「グルルルル……」

「アンノウン!?」

 

フィオナの後ろの方で、青いエイ型のアンノウン、スティングレイロードが窓ガラスを突き破って現れた。

フィオナは一瞬驚いたが、すぐさまロードに向かって銃弾を放つが、アンノウンにそんなものは効くはずもない。

ロードはヒレを鎖鎌のように変化させ、フィオナに向かっていく。ロードの狙いはフリッドだが、その前にいるフィオナは邪魔だと捉え、フィオナに向かってヒレを振り下ろした。

 

「ッ!!」

 

フィオナは思わず目を閉じた。しかし、いつまで経っても痛みがこなかった。不思議に思ったフィオナはそっと目を開けた。

目の前には、なんとフリッドが自分を庇うように立っていた。

 

「くっ・・・!!」

 

フリッドの腕には、ロードのヒレが突き刺さっていた。その痛みに耐え、フリッドは苦悶の表情を浮かべていた。

 

「あなた、どうして・・・!?」

 

フィオナは目を見開いて驚いていた。

さきほどまで自分を殺そうとしていたのに、フリッドはそんなことはお構いなしにフィオナを助けたのだ。

 

「……誰にも、君を傷つけさせない!殺させない!!うおおおおおおおっ!!」

 

フリッドは叫び、腕に力を込めてヒレを抜き取り、ロードを殴り飛ばした。

そして、両腕を顔の前で交差させた。

 

「変身ッ!!」

 

フリッドは叫び、その身をギルスへと変身させた。

 

「ウオオオオオオオオオオッ!!」

 

ギルスは雄たけびを上げ、ロードに掴みかかった。そしてロードを壁の方に蹴り飛ばし、さらにそこから渾身の力で飛び蹴りを喰らわせた。蹴りを喰らったロードはコテージの壁を突き破って外へ出た。

 

「グウゥゥゥ……フッ!」

 

ロードは立ち上がり、鎖鎌のように変化させたヒレを振り回し、ギルスに向かって攻撃した。

対し、ギルスは右腕から鞭状の触手「ギルスフィーラー」を伸ばして応戦した。

空中で鞭と鎖鎌がぶつかり合う中、ギルスは左腕からも触手を伸ばし、ロードの足に巻き付け横転させた。

 

「ガァウッ!!」

 

横転したロードに、ギルスが飛びついた。そのまま頭を掴み、地面にガリガリと引きずりながら駈け出した。

 

「ウォラァァァァァッ!!」

 

ギルスはロードを宙に放り投げた。

 

「ハアッ!!」

 

そして、ロードが落ちてきたところをギルスは手刀で胸を突き刺した。

 

「グアアアアアアッ!!」

「ウオオオオッ!!」

 

ロードは痛みのあまり叫ぶが、ギルスはお構いなしに投げ飛ばし、地面に叩きつけた。

そして、ギルスは踵の爪ヒールクロウを伸ばした。

 

「ハッ!」

 

ギルスは右足を頭上まで振り上げながら跳躍し、ロードの肩に踵落としを叩きつけた。同時に踵から伸びた爪が背中から突き抜けて心臓に突き刺さった。

 

「ウオアアアアアアアアアッ!!」

 

ギルスは叫ぶと同時にもう片方の足で蹴り飛ばし、刺さった爪で切り裂いた。

 

「グッ、ウウッ・・・グオアアアアア!!」

 

ロードは苦痛の叫びを上げながら頭の上に光輪を浮かばせた。そして断末魔を上げながら爆発した。

アンノウンが倒されたのを見て、フリッドはギルスから元の姿に戻り、その場を立ち去ろうとした。

 

「待って!!」

 

その時、立ち去ろうとするフリッドをフィオナは呼び止めた。

 

「どうして……どうして私のことを助けたの?私は、あなたのことを殺そうとしたのよ!?」

 

フィオナは声を荒げていた。それもそうだ。普通ならフィオナは恨まれても仕方ない立場にいる。にも関わらず、フリッドはフィオナのことを助けた。

すると、フリッドは静かに口を開いた。

 

「……君のことを恨んでないといえば、嘘になる。でも……君は、心から愛した女性だから。」

 

フリッドは悲しそうな目で言った。かと思えば、その場でフィオナに向けて頭を下げてきた。

 

「……ごめん。俺が現れなきゃ、君はあんなことしなかったと思う。本当にごめん。それから……『愛してる』なんて言って、ごめん。俺みたいな化け物に言われても、嬉しくないよな。」

 

フリッドは一瞬頭を上げて苦笑いを浮かべた、かと思えばまた頭を下げた。

フリッドは何度も何度も「ごめん」と謝り続けた。対し、フィオナは目を見開き、驚いているようだった。

どちらかといえば、フィオナの方が謝る立場であるにも関わらず、フリッドの方が頭を下げて謝っていたのだ。

そのことに、フィオナは理解できないでいた。

 

「本当にごめん。もう……二度と君の前には現れないから。さようなら。」

 

フリッドは最後に、微笑みを浮かべ、フィオナに別れを告げてその場を立ち去っていった。

フリッドが立ち去り、姿が見えなくなっていく中、フィオナはその場にへたり込んだ。

 

「なによ、『ごめん』って・・・恨み節ぐらい吐きなさいよ・・・!!」

 

この時、俯いていたフィオナの顔はポーカーフェイスが崩れ、今にも泣いてしまいそうな顔になっていた。

 

「なんで、なんでよ……!!」

 

────────────────────────

 

そのころ、フリッドはバイクを走らせてある場所へ向かっていた。

そこは、ダミアンが通うイーデン校だった。

 

(……何故かここに来てしまった……)

 

フリッドはもうダミアンとは会わないと決めていた。しかし、心の中では「もう一度会いたい」と何度も何度も思い続けていた。

そのため自然と足がこの場所に進ませたのかもしれない。

時刻はもうすぐ夕暮れ時になろうとしている。そろそろ学校が終わる時間だった。

 

(ダミアン……俺は……!)

 

息を深く吸い、勇気を持ってフリッドは校門をくぐり、その一歩を踏みしめた。

 

 

 





おまけ「これまでの不幸」

フリッド・リード(ギルス)のこれまでの不幸

1:居眠り運転のトラックに轢かれ、ギルスに覚醒する
2:変身してダミアンを助けるも、ダミアンに拒絶される
3:その後ダミアンと再会し、アンノウンから守るため戦うも、力不足で逆にダミアンがアンノウンの毒に犯される
4:さらにその後見舞いに行くも、さらに拒絶される
5:変身の度に体が傷つき、吐血するようになる
6:別れた恋人フィオナと再会するも、未練タラタラなのをいいことに利用される
7:言われるままに格闘技大会に参加したかと思えば、彼女に嘘をつかれていたことを知り、絶望する
8:その後、「WISE」の隊員たちから弾丸の雨を浴びせられる
9:ロイドとヨルのイチャイチャのダシに使われる
10:その後暴走し、アギトとG-3に襲い掛かるも、最終的にアギトともに海へダイブした
11:さらにその後、フィオナに刃物で刺されて殺される

「……俺、ロクな目に遭ってないな……」
「どんまい、かてーきょーし」

 

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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