今回はフリッドとダミアンの過去話です。なのでライダーの出番ありません。
都内にある高級ビュッフェ・・・今日、この店にフォージャー一家は来ていた。
フリッドの奢りで。
「いやぁ、君達には本当に世話になった。特にヨルさん、アーニャちゃん。二人のおかげで、俺はダミアンとまた会うことができた。本当にありがとう!」
椅子に座りながら、フリッドはロイド達に頭を下げた。特にヨルとアーニャの二人には深々と下げている。
続いて、翔一の方に顔を向けた。
「津上君、君にはすまないことをした……朧気だが、アギトである君に迷惑をかけてしまったことは覚えている。本当にすまなかった!」
翔一に向かって申し訳なさそうに謝るフリッド。
「そんな……気にしないでください!」
「そうですよ、フリッドさん!」
「うぃっ!かてーきょーし、よくがんばった!」
頭を下げて謝るフリッドに、翔一、ヨル、アーニャの3人は励ますように声をかけた。それに続くようにロイドもフリッドに声をかけてきた。
「その通りだ、頭を上げてくれ。幸い、怪我人は出なかったし、翔一君は・・・まぁ、おかげで記憶を少し取り戻せた。それに、こんな豪勢なビュッフェに招待してくれたんだ。礼を言うのはこっちの方だ。」
「いや、これでも足りないぐらいだ。ヨルさんとアーニャちゃんに恩を返すにはな。」
フリッドが招待したこのビュッフェは高級、かつ超がつくほどの人気店であり、予約必須の店だった。しかし、フリッドはそれだけではヨルとアーニャに恩を返すには足りないと思っていた。
「いえ、私はこれで十分です!お料理も美味しいですし、アーニャさんも喜んでます!」
「うぃっ!」
フリッドの心配をよそに、ヨルとアーニャは「大丈夫」と言わんばかりに、美味しそうに料理を食べていた。
そんな二人を見て、そしてヨルの気遣いを嬉しく思ったフリッドは微笑んだ。
「ヨルさん・・・あなたは優しい方ですね。素敵だ……」
「えっ!?や、やだ、フリッドさんったら……」
突然褒めてきたフリッドに、ヨルは顔を赤らめて照れ始めた。
「はははっ、照れているとこも、また素敵だ。可愛らしい。」
「も、もう・・・」
ヨルは恥ずかしさのあまり下を向いて俯いた。その光景を見て、ロイドは先ほどの紳士的な態度はどこへやら、フリッドを睨んで敵意をむき出しにした。さらに持っていたグラスを今にも粉砕してしまいそうなぐらいギュッと掴んでいた。
(この男・・・馴れ馴れしい……!)
ロイドの脳裏に、以前フリッドとヨルが交わした会話の内容が浮かんでいた。
『あなたは見た目だけじゃなく、心も美しい。』
『あうぅ……』
ヨルが自分以外の男から褒められ、顔を赤面させていることに、ロイドは腹を立ててヤキモチを焼いていた。しかしロイド自身はそれをヤキモチだとは認めなくなかった。
「ちち、ヤキモチ?」
「なっ!?」
その時、突然指摘してきたアーニャの言葉に驚き、ロイドは思わず顔を赤らめた。
「あっ、顔赤い!図星でしょ、ロイドさん!」
それに呼応するように翔一もロイドをからかい始めた。
「ち、違う!そういうのではない!」
実際ヤキモチを焼いていたのは事実なのだが、それを認めたくないロイドは首を横に振った。
対し、フリッドはその様子にニコニコと笑い、ヨルの方は赤面して顔を俯いたままだった。
「ヨルさん、よかったですね。ロイド君がヤキモチを焼いてくれて。」
「え?」
「ヤキモチを焼いてくれている、ということは・・・あなたのことが相当好きだということですよ。」
「なっ・・・!?」
突然のフリッドの言葉に、ロイドの顔は真っ赤に染まった。同時にヨルの方も顔が真っ赤になった。
(な、何を言ってるんだこの男は・・・!?お、俺はそんなつもりじゃ・・・!!)
(ロイドさんがヤキモチ焼いてる・・・すごく嬉しい・・・)
(ま、まずい・・・ここは話題を変えなくては……!!)
いたたまれなくなったロイドはこの場の空気を変えようと、話題を変えることにした。
「そういえば、フリッドさんはダミアン君と仲良いですよね!」
(ナイスだ、翔一君!)
その時、翔一がフリッドに話しかけてきた。恐らく偶然ではあるが、話題を変えてくれたことにロイドはありがたく思っていた。
「どうしてそんなに仲が良いんですか?」
「そうだなぁ・・・」
翔一に尋ねられ、フリッドは顎に手を当て、思い出に耽るような遠い目をし始めた。
「ロイド君には少し話したが・・・あれは1年前だ。」
フリッドはダミアンと初めて会った一年前のことを話し始めた。
亡くなった父親の財産の取り分のことでドノバンと話していた時、父親と遊んでほしいダミアンと出会ったこと、その後、キラキラした目でバイクを見ていたダミアンと一緒に出掛けたことを。
さらにその後のことも語り始めた。
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俺は時間を見つけては・・・というより、週に一度はあの子と会ってた。
その度に二人で遊んだり、色んなものを食べたり、色んなものを見た。
「いいぞ、ダミアン!いいコントロールだ!」
「えへへ・・・練習したんだ!」
キャッチボールしたり・・・
「う~~~ん♪美味しい~~~♪」
「だろ?俺はこれが世界で一番美味い物だと思ってるんだ。」
俺の大好物のホットドッグを一緒に食べたり、
「わぁ……バイクがいっぱい!」
「ハハハッ、バイク屋なんだから当たり前さ。」
俺の行きつけのバイク屋に連れて行ったりしてた。
あの子にとって、外にある物全てが新鮮に映ってたんだろうな。珍しい物を見つけてはキラキラ目を輝かせてた。
それを見て、俺も楽しかったし、何より可愛くてなぁ……ついつい色んなとこに行ったり、食べ物を食べたりしてたな。
そんなある日のことだった。
「ダミアン!」
「叔父さーん!」
俺はいつもみたいに屋敷に行ってダミアンと会った。その日ちょっと不思議だったのは・・・ダミアンがいつもより甘えに来てたことだった。
出会ってすぐ、俺から離れようとしないんだ。
「どうしたんだ?今日はずいぶん甘えん坊だな。」
俺はそう言いながら、屋敷の窓の方に目が入った。2階の窓の方には父親のドノバンさんが、4階の窓の方には母親のメリンダさんがいた。二人とも俺とダミアンの方を見てた。
少なくとも二人は微笑ましそうに見てはいなかった。二人とも真顔で気味が悪かった。多分、ダミアンが甘えに来てるのも、二人が原因だと思った。
「よーし、こっちに来な。」
「うん!」
「よっと……」
俺はダミアンを抱っこしてやった。その間、俺は窓から覗いてる二人を睨んだ。
……正直言って、俺はあの二人が大嫌いだった。二人ともダミアンに冷たいし、関心がない。
俺は心底二人を軽蔑しながら、ダミアンと一緒にバイクに乗って出かけた。
「ダミアン、イーデン校に入学するんだって?」
「うん。」
「凄いなぁ!イーデン校っていったら、偏差値が相当高い学校だろ?そんなとこに入学できるなんて、叔父として鼻が高いよ!」
公園でホットドッグを食べながら、俺はダミアンがイーデン校に入学することを聞いた。俺は嬉しくなってダミアンの頭を撫でた。
でも、ダミアンは浮かない顔をしてた。いつもなら俺が頭を撫でただけで喜んでいたのに。
「・・・何かあったか?」
「別に……」
こういう時、「別に」なんて言うのは何かあった証拠だ。でも、俺は特別追及はしなかった。
するとダミアンは……
「お、叔父さんは……『逃げたい』って思ったことある?」
なんて言ってきた。
「そりゃあ、あるよ。どうしたんだ?」
俺は出来る限り優しい声でダミアンに聞いた。すると、ダミアンはゆっくりと、何があったか言ってくれた。
「……父上と母上、入学式に来れないって……」
その話を聞いて俺は、イライラしたな。「またあの二人か」って思ったよ。
ハラワタが煮えくり返るような気持ちだった。「ダミアンのこと可哀想だと思わないのか」って思った。
「で、でもそれは別にいいんだ。父上は忙しいし、母上だって用事あるし……だいたい、兄貴の時だって入学式来なかったらしいし。」
無理して笑って言うダミアンに、俺はますます二人に対してイライラが募った。
ダミアンだって、本当は来てほしいって思ってるのに、それに答えないなんて……そんなの親じゃない!
「・・・だから、逃げたいのか?」
「・・・うん。どこか遠くへ、誰も知らないようなとこへ行けばさ・・・何も気にしなくていいと思うんだ!嫌なこと全部忘れられるし、それに父上と母上だって・・・!」
「それは無理だよ、ダミアン。」
俺はダミアンの言うことを否定した。ダミアンは目を見開いて驚いてたけど、俺は続けた。
「どんなに逃げたって、現実は変わらない。却って辛くなるだけだぞ、ダミアン。」
「そんなことあるもんか!」
俺の言ったことを否定して、ダミアンは大声を上げた。
「俺は逃げてやる!そうすれば父上も母上も、俺のこと心配してくれるもん!!」
「ダミアン!そんなことしたって・・・!」
「うるさい!家族でもないくせに!」
ダミアンはムキになって悪口を言ってきた。子どもの言うことだ。感情に任せて言っただけだって分かってた。
でも、俺は少しイラっとして・・・
「そうか・・・だったらとことん逃げさせてやる!」
俺はダミアンをバイクに乗せてヘルメットをかぶせてバイクを走らせた。
そして信号に差し掛かったところで・・・
「どっちにいくんだ?」
「み、右・・・」
俺は信号や曲がり角に差し掛かる度に、ダミアンにどっちに曲がるか尋ねた。
その後、結局街を一周しただけで終わった。さっきの公園に戻ったんだ。
「・・・もういい!」
ダミアンはそう言ってバイクを降りた。そんなダミアンを見て俺は・・・
「もういいのか!これぐらいで逃げた気になったのか!お手軽なんだな、お前の『逃げる』ってのは!!」
大声を上げて、ダミアンの「逃げたい」って気持ちを全否定した。大人気ないかもしれないが、これぐらいしないと分かってくれないと思った。
そしたら、ダミアンは今にも泣きそうな顔で俺を睨んできた。
「もういい!叔父さんなんか知らない!叔父さんは・・・俺の味方だと思ったのに!!」
ダミアンはそう言って走って行ってしまった。
「ダミアン!」
俺はすぐさま後を追いかけた。でも、途中で姿を見失って街中を探し回った。そして路地裏を見てみたら・・・
「おい、クソガキよぉ!人にぶつかったら、まずごめんなさいじゃねぇの?」
「慰謝料として100万出せよぉ!」
「お、俺、そんな金持ってない・・・」
路地裏でダミアンがチンピラ達に絡まれていた。恐らく、ダミアンが奴らとぶつかって、因縁つけられてしまったんだ。
「親に言って出してもらえよぉ!『パパ~!ママ~!お小遣いくだちゃい!』ってよぉ!」
「う、ううっ・・・」
「チッ、めんどくせぇ!こいつどっかに売っちまうか?変態に売れば結構金に……」
その瞬間、俺は瞳孔が開いた目を開きながら、背後からチンピラに襲い掛かり、その脳天に踵落としを叩きつけてやった。
「へぶっ!!?」
チンピラの一人は声を上げて地面に叩きつけられた。それを俺は思い切り踏みつけた。
突然のことに、チンピラどもは戸惑っていた。
「な、なんだお前は!?」
「その子を離せ・・・でないと・・・!」
俺は倒れたチンピラの腕を掴んで、そのまま関節を逆方向に曲げてへし折った。
「ぎゃああああああああ!!」
「これぐらいで済むと思うなよ……お前らの骨を一本一本へし折って、生き地獄を味合わせてやる。子どもを脅して、暴力を振るうことがどれだけ罪が重いか……身を持って味わえ!」
「や、やっちまえぇ!!」
俺は子どもに暴力を働くようなクズが許せなかった。いっそこいつらを殺してしまおうかと思ったが、ダミアンが見てる手前、そんなことはできない。
チンピラどもは俺に襲い掛かって来たが、俺は返り討ちにしてやった。骨も何本か折ってやった。多分複雑骨折もしてたと思う。
「ば、化け物だこいつ!」
「逃げろぉ!!」
チンピラどもはさっさと逃げていった。その時俺はハッと我に帰った。
やりすぎた、と思った。ダミアンが襲われていたとはいえ、子どもが見てる前で、人の関節を逆方向に曲げたり、脳天に蹴りをかましたりしたからな。
「ダ、ダミアン・・・怖い思いをさせてしまったな・・・本当にごめ・・・」
俺はすぐさまダミアンに謝ろうとしたが、それよりも早くダミアンが俺にしがみついてきた。
「怖かった・・・!怖かったよぉ・・・!!」
ダミアンは泣いていた。俺に対して怖がっていたのか、それともチンピラに対して怖がっていたのか分からないが、俺はダミアンを抱きしめた。
それから俺達は公園に戻って、ベンチに座って休んでた。
「……ごめんね、叔父さん。」
ダミアンが口を開いた。
「何が?」
「叔父さんを怒らせたこと。叔父さんの言う通りだった……どれだけ逃げても、現実は変わらないんだね。さっきだって、来てくれたのは父上や母上じゃなくて叔父さんだったもん。」
どうやらダミアンは、俺が言ったことを理解してくれたらしい。理解してくれて嬉しかった。でも、同時に可哀想に思った。
そう思った俺は……
「ダミアン、こっちおいで。」
ダミアンの身体を引っ張って、膝の上に乗せた。そして後ろからギュッて抱きしめてあげた。
「お、叔父さん?」
「ダミアン・・・確かに現実は変わらない。辛いことや悲しいことも多い。でも、それに抗わず諦めたらダメだ。負けたっていい。辛いことに抗う、それが一番大事なんだ。」
俺はダミアンを抱きしめながら語り掛けた。ダミアンは俺の服を掴んでずっと話を黙って聞いてくれた。
「もし・・・もし、辛すぎて『もうダメだ』って思う時があったら・・・俺が傍にいる。一緒に乗り越えよう、な?」
俺は言いたいことをダミアンに伝えた。すると、ダミアンは俺の方に体を向けてきた。満面の笑みを浮かべていた。
「叔父さんっ!」
「ん?」
「大好きっ!!」
「ああっ、俺も大好きだ!!」
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「それから少し経って、俺はトラックに轢かれた。それでギルスに変身できるようになって、一度ダミアンに嫌われて、それで・・・」
ダミアンとの過去を語る中、フリッドはふとヨルの方に目が入った。
「う、うううっ・・・!」
ヨルは鼻水を垂らしながら、両目からポロポロと涙を流していた。
その姿を見て、フリッドは戸惑った。
「ヨ、ヨルさん?」
「すいません・・・ただ、お二人が仲直りできて本当に良かったって思って・・・・!ううううっ・・・!」
ヨルが泣く姿を見て、ロイド達は苦笑いを浮かべていた。
「すいません・・・ヨルさんって結構涙もろいんですよ。この前なんて、感動映画の予告編見ただけで泣いちゃって!」
「ははは・・・そ、そうか・・・」
翔一の話を聞き、フリッドはさらに苦笑いを浮かべた。すると、フリッドはロイドの方を見た。
「・・・ロイド君。ちょっと話があるんだ。来てくれないか?」
「・・・ああ、分かった。」
フリッドは深刻そうな顔をしていた。それを見てロイドはただならぬ予感を感じながら承諾した。
2人はトイレに向かい、誰もいないことを確認して話を始めた。
「君には聞きたいことがある。君は、何者だ?フィオナとはどういう関係だ?あの闘技場にいた、あの男は何者だ?」
会話が始まるなり、フリッドはロイドを質問攻めにした。
「・・・ただの精神科医だ。」
「ウソだ。あの闘技場は普通の人間には入れない。いくら医者であっても、精神科医じゃおかしい。」
(こいつ、意外に頭が切れるな・・・)
言い逃れができない、ロイドはそう思った。嘘をいくら並びたてたところで、この男は必ずその嘘を暴き出してしまうと思った。
ロイドは正直に話した。自分が西国のスパイであること、とある任務で、ヨルとアーニャを騙して偽りの家族関係を築いていることを。
「・・・あの二人を、騙してるのか。俺の恩人を。」
その時、フリッドの声が異様に低くなった。
「他人のために涙を流せるあの人を、あんなにいい人を・・・!!」
フリッドは怒りに体を震わせた。ロイドのことが許せなかったのだ。自分の恩人を騙していたことが許せないと思っていた。
フリッドは両腕だけをギルスに変身させ、さらにクロウを伸ばし、ロイドに差し向けた。
「っ!」
「俺は君が許せない。今すぐにでも、二人を騙した君を殺してしまいたいぐらいだ。」
(やはりこうなったか・・・!)
ロイドはこうなることをある程度は予想していた。フリッドの性格から考えて、相手を騙して疑似家族を作っているなど許せない行為だと思っていると考えたからだ。
しかし、フリッドは途端に腕を下に下した。
「・・・と思ったが、やめだ。」
「は・・・?」
ロイドは声を上げた。あれだけ殺意を向けていたのに、なぜ急にやめたのか分からなかった。
すると、フリッドはニヤリと笑った。
「君は冷酷な人間じゃない、と思ったんだ。君、さっきヤキモチ焼いてただろ?」
「なっ!?」
「他の男に奥さんが取られると思ってたんだろ?」
「ち、違う!」
突然の突拍子もない質問に、ロイドは顔を赤らめながら否定した。しかし、フリッドは続けて言った。
「もし、君が冷酷なスパイなら、あの場で絶対にヤキモチなんて焼かないって思ったんだ。むしろ、『どうでもいい』といった態度を取るはずだ。」
フリッドの言葉に、ロイドは目を見開いた。確かにそうだ、と思った。どうして自分はあの場でヤキモチを焼いてしまったのか、ヨルが他の男と話すぐらいいいだろうと思えばいいのに、何故か自分はそうしなかった。
「君は、彼女のことを本気で愛してるんじゃないか?」
「そう・・・なのか・・・?」
ロイドは自身なさげに呟いた。仕事上、女性と付き合うことは度々あったが、感情的になったことはなかった。だが、ヨルの時は違った。何故そうなのか、自分でも分からなかった。
すると、
「プッ、アハハ!」
「わ、笑うなぁ!」
フリッドは突然笑い出した。
「すまない。でも・・・おかげで君のことを少し信じたいって思ったよ。」
「フリッド・・・」
「このことは誰にも言わない。君の家族にも、知り合いにもね。それと、俺に出来ることがあったら協力する。」
「ほ、本当か!?」
フリッドの申し出はかなりありがたかった。ギルスが味方につけば、「WISE」としてもありがたいはずだった。
「ただし!約束しろ。ヨルさんとアーニャちゃんの傍に、ずっといてやれ。今の任務が終わっても、ずっと家族でいてやるんだ!あの二人にとって、君は替えが効かない人間なんだ!」
フリッドはロイドの肩を掴み、訴えかけた。
「それができないなら、俺は本当に君を殺す!」
フリッドの言葉を聞き、ロイドは思った。
(こいつは・・・こいつはとことん自分より相手を優先するんだな・・・)
フリッドの他人を優先するその優しさに、思わず笑ってしまいそうだった。こんな人間が、今の世の中にいたということが嬉しいと感じていた。
そして、とうとうロイドはフッと笑みを浮かべた。
「フッ・・・翔一君といい、アギトは人が良い奴ばっかりなのか?」
「なに?」
「・・・約束する。俺はずっとヨルさんとアーニャの傍にいる。」
「そうか!ありがとう!」
赤の他人なのに、「ありがとう」とフリッドは言った。それにまた笑ってしまいそうだったが、ロイドは堪え、フリッドと握手を交わした。
正直、約束を守れるかは分からなかったが、ロイド自身も二人を悲しませたいとは思っていない。その思いはフリッドとの対話でより強固なものになった。
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「フーッ、今日はごちそうさま。」
「満足してもらったようでよかったよ。」
食事を終え、ロイド達は店を出てフリッドに礼を言った。
(ちち、かてーきょーしにころされなくてよかった!)
実は、アーニャはトイレでの会話をこっそりと聞いていた。しかし、二人が無事友好を築けたことを知り、ニコニコ笑っていた。
「津上君!」
その時、フリッドは翔一に声を掛けた。
「次にアンノウンが現れたら、今度は一緒に戦おう!」
「はい!もちろんです!」
2人は互いに握手を交わした。今ここに、二人の戦士が共闘することを誓ったのだ。
「これからよろし・・・ウボァッ!!」
しかしその瞬間、フリッドは口から血を吐いた。
『ま、また血を吐いたー--ッ!!?』
ロイドは一斉に声を上げて驚いた。しかしフリッドは何事もなかったように血を拭い始めた。
「ま、まさかギルスの後遺症が・・・!?」
「いや、後遺症自体はもう治ったんだ。でも・・・散々血を吐いたせいか、自発的に吐血できるようになってな。いきなりここで血を吐いたら、みんな驚くかなーって。」
「いや、驚くわ!!」
口から血を垂らしながら平然と語るフリッドに、ロイドは思わず突っ込んだ。
「さっきまでのいい話が台無しだぞ!」
「ハッハッハッ、まぁ笑って誤魔化してくれ。あ、もう一回血吐いてみせようか。」
『しなくていいッ!!!』
皆、声をそろえて一斉に叫んだ。
前途多難あるものの、ロイド達に頼もしい仲間が増えた瞬間だった。
おまけ「レジェンド その2」
「よぉ、アンタがこの作品でのギルスか。」
「初めまして、フリッド・リードです。」
フリッドはある男と対面していた。それは「仮面ライダーアギト」にてギルスに変身していた男、葦原涼だった。
「ため口でいいんだぜ?年齢的にはアンタが上なんだから。」
「いや、あなたの方が先輩ですから・・・」
「そうか。しかし、アンタも色々あったんだな。」
「ええ、大変でした。」
「まぁ、不幸具合だったら、俺が上だけどな。」
「は?」
フリッドは声を上げた。
「それは聞き捨てなりませんね。俺の方が不幸なはずです。あなたは昔の恋人に刺されたことありますか?」
「ない!だが、お前は3人もの女と別れたことあるか?しかも俺の場合はその内の二人が死んだからな!」
2人は唐突に不幸自慢を始めてしまった。その様子を遠巻きにフィオナが見ていた。
そして思った。
「それ、互いに自分にダメージ与えてない?」
と、フィオナは思った。だが口には出さなかった。フィオナは空気が読める女・・・というワケではなく、ただ関わるとロクなことにならないと思っただけである。
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今回で破章におけるギルス編のエピソードは終わりです。
しかし、不幸具合だったら葦原涼とフリッド、どっちが不幸かなぁ・・・どっちもどっち?
作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します
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アギト編(翔一+フォージャー一家)
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G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
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ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)