SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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今回で破章最終回です!いやー長かった……まぁ、次の章も長くなりそうなんですけどね……




第35話「一つの終わり、一つの始まり」

 

「ハッ!!デヤァッ!!」

 

アギトの炎を纏った拳が炸裂する。水のエルは衝撃波の球体でそれを防ごうとするが、アギトの拳はそれを突き破り、次々と拳を命中させていく。

 

「グオオオオッ!!」

(な、なんという力だ……!)

 

アギトからダメージを喰らい、水のエルは悲痛な叫びを上げるとともに驚いていた。

自分を恐れていたあのアギトが、こうも強くなっていることに。

後ろで見ていたユーリとギルスも同じ反応を見せていた。

 

「今までのアギトと違う……すごく強くなってる……」

「トラウマを、乗り越えたおかげか・・・」

 

驚くと同時に、アギトの強さに見惚れていた。

その時、アギトは手を前に突き出した。するとベルトが光を放ち、その光の中から赤と白に彩られた双刃刀「シャイニングカリバー」が現れた。

 

「ハッ!」

 

シャイニングカリバーを軽く振るい、構えた。

そして、剣に炎を纏わせた。

 

「くっ・・・!チィッ!!」

 

水のエルは負けじと戦斧を振るうが、次の瞬間、水のエルの戦斧は真っ二つに切り裂かれた。

 

「ハアッ!!」

 

そして、シャイニングカリバーで水のエルの胸を一閃した。水のエルの胸にバックリと傷が開き、そこから黒い靄のようなものが漏れ出した。

 

「ぐっ!おおおお……!!」

 

必殺の一撃を喰らい、水のエルは悶え苦しみ、その場に膝をついた。そして、その額には光輝く光輪を浮かばせた。

それを見たアギトは、戦いは終わったと感じ、剣を下した。しかし、水のエルは急に笑い始めた。

 

「フッフッフッ……そうか、これがアギトの力……限りなく進化する力か……この力をあの方は危険視しているのか……」

(あの方・・・?)

「だが、どうあがこうと……お前達、人間・・・に……未来は、ない……!!」

 

不敵に笑いながら、アギト達に指を差した。そして水のエルは意味深な捨て台詞を吐いたかと思うと、そのまま倒れ爆発してしまった。

アギトはその爆発をしばし眺めていたが、ふっと背を向けユーリとギルスの元に歩み寄った。

 

「津上、お前・・・本当に……」

「津上君!乗り越えたんだな!」

 

未だに翔一がアギトである事実が飲み込めないユーリをよそに、ギルスは変身を解いてフリッドに戻り、気さくに話しかけた。

対し、アギトも翔一の姿に戻り、笑顔を向けた。

 

「はい!いっぱい泣いたらスッキリしました!」

「フフッ、やはり君は笑ってる顔が一番似合ってるよ。」

「へへっ、そうですか?」

 

2人が和気あいあいと話す中、ユーリはもごもごと口ごもり、話せないでいた。

 

(まさかアギトが津上だったなんて……なんて声かけりゃいいんだよぉ・・・)

 

ユーリにとってアギトは憧れの存在だった。その憧れの正体が、内心小馬鹿にしていた男だとは夢にも思わず、なんと声を掛ければいいか分からなくなっていた。

その後、結局ユーリは翔一に声を掛けられず別れたのだった。

 

────────────────────────

 

後日、入院しているヨルが意識を取り戻したと聞き、翔一は病院を訪れた。

 

「ヨルさん!」

「翔一さん!」

 

病室に入り、声をかけた途端、ヨルは笑顔を浮かべていた。すでに来ていたロイドとアーニャも同様だった。

 

「目が覚めて本当によかったです!これ、アップルパイ作ってきました!ヨルさん、リンゴ好きでしたよね?」

「まぁっ、ありがとうございます!」

 

翔一は包みに入ったアップルパイをテーブルに置いて広げ、切り分けようとした。しかし、その途端に手が止まった。

 

「あ、そうだ・・・ヨルさん、あの時言ったこと覚えてますか?」

「あの時、ですか?」

「ほら、俺のこと……その、『好き』って言ってくれたこと……」

 

翔一はほんのり頬を赤らめ、はにかみながら言った。それを聞いたヨルは思い出したのか、同じく頬を赤く染めていた。

 

「え、えっと・・・あれは・・・」

(う、うわあああああっ!わ、私ったらなんてこと言っちゃったんでしょう……!ロイドさんという人がいながら・・・!)

 

思い出し、自分の言動に恥ずかしさを感じたヨルは顔を真っ赤にし、それを両手で隠した。

 

「俺も、ヨルさんのことが好きです!」

 

その時、翔一はキリッとした真面目な顔で答えた。

 

「ふぇっ?」

「ロイドさんのことも好きです。アーニャちゃんも。もちろんボンドのことも。」

 

翔一の話を聞いている内に、ヨルの顔の紅潮は収まっていき、普通の状態に戻っていく。

 

「だからその・・・その中でもヨルさんが一番っていうか・・・えーっと、異性としてだけじゃなくて、家族としても好きっていうか……上手いこと言えないですけど……」

 

翔一は好きであることの理由を言おうとしていた。しかし、上手いことが言えず、次第にしどろもどろになっていった。

そんな翔一を見て、ヨルはクスッと笑った。

 

「翔一さん、ちょっといいですか?」

「はい?」

 

ヨルは翔一を呼び、服を掴んで自分の方へ引き寄せると、その頬に優しくキスをした。

 

「・・・えっ!?」

 

何が起きたのか分からず、翔一は声を上げた。それを見ていたロイドとアーニャも目を見開いていた。

しかし、ヨルは優しい笑顔を浮かべ、翔一の頬に触れた。そして語り掛ける。

 

「翔一さん。好きである理由を話す必要なんてないですよ。私は、『好き』って言ってもらえるだけでも嬉しいです。」

「ヨルさん……わかりました!じゃあ、胸を張って言いますよ!俺、ヨルさんが大好きです!」

「アーニャも!ははすき!」

 

翔一が笑いながら言うと、それに続くようにアーニャも声を張り、ヨルに抱き着いてきた。

 

「フフッ、私もですよ。アーニャさん。」

 

ヨルは優しく抱きしめ返すと、翔一と同様に頬に優しくキスをする。

すると、翔一はロイドの方に顔を向けた。

 

「ロイドさんもヨルさんのこと好きですよね?」

「えっ!?」

 

ニコニコ笑う翔一に対し、ロイドは驚き顔を赤く染めた。

 

(い、いやいやいや!何を赤くなってるんだ俺は!た、確かにヨルさんのことは好き……だ、だがそれはあくまでヨルさんの人間性が好きなだけであって、断じて恋愛感情などでは……!!)

 

翔一に問われた瞬間、一抹の感情が胸に宿る。しかし、それを振り払うように頭の中で思考を巡らせていく。

だが、いつまでも沈黙するわけにもいかないと思ったのか、ゆっくりと口を開き始めた。

 

「お、俺は、ヨルさんは素晴らしい人だと思ってます。強く優しい人です。今回のケガだって、翔一君を守ろうとしてついたんですよね?そんなあなたのことを、俺は……その……」

 

ロイドは途端に言い淀んだ。後はただ「好き」と言えばいいだけなのに、それが言えなかった。

 

(な、何故だ?「好き」なんて言葉、ヨルさんと会う前から、何度も使ってるのに……)

 

ロイドは任務で何人もの女性と交際をしたことがある。その時には簡単に「好き」と言うことができた。だが、ヨルを前にしてしまうと途端に出来なくなった。

そのことにロイド自身も困惑し、ますます言い淀んでしまう。しかし、ロイドはスッと息を吸い、声を絞り出す。

 

「……好きです。」

 

その一言を言い終えたロイドはホッと落ち着いたように息を吐き、胸に手を当てた。すると、胸の鼓動が早くなっていることが伝わって来た。

 

(ど、動揺しているのか・・・?)

 

ドキドキと胸が高鳴っていることを不思議に思っていると、ヨルはロイドの服を掴んできた。そして自分の方へ引き寄せた。

 

(俺にもキスするのか……ヨルさんも成長したな。前はキスなんてできなかったのに……)

 

異性にキスができるようになったヨルに、ロイドは成長を感じ、フッと笑った。しかしその笑いはすぐに驚きの表情に変わる。

次の瞬間、ヨルは自身の唇をロイドの頬に……ではなく、唇に重ねた。

 

「……ッ!!?」

『!!』

 

あまりに衝撃的な光景にロイドは驚愕し、翔一とアーニャは驚きのあまり顔を見合わせた。

 

「あ、あの、ヨ、ヨルさん!?」

「・・・へ?」

 

顔を真っ赤にするロイドに対し、自分が何をしたのか分かってないのか、ヨルはキョトンとしていた。

 

「チューした!ははがちちのくちにチューした!!」

「……ッ!!!?~~~~~~~ッッッッ!!!?」

 

アーニャの一言を聞いた瞬間、自分が何をしたのかようやく気づき、ヨルは声にならない声で叫び、顔を今にも煙が出そうなくらい真っ赤に染めた。

 

「わ、わらひが、ろいろさんに……キ、キス……ファーストキッス……」

 

恥ずかしさと混乱のあまり、ヨルは顔を真っ赤にしながら目を回し、キャパオーバーでベッドに倒れてしまった。

と、その時だった。

 

「姉さん!来たよ・・・ってあれ!?姉さん!?」

 

病室に、ヨルの見舞いに来たユーリとフリッドが来訪した。ユーリは病室に入った瞬間、顔を真っ赤にしてベッドに倒れ込んだヨルを見て声を上げた。

 

「い、一体何が……!?」

「さっき、ヨルさんがロイドさんにチューしたんですよ!口にブチューって感じで!」

「コ、コラ!翔一君!!」

 

困惑するユーリに、翔一は嬉々として語ったがロイドはすぐさまそれを止めさせた。ユーリに話したら絶対に怒ると思ったからだ。

しかし、すでに遅く……

 

「……はあああああああああああああっ!!!?」

 

ユーリは病院内であるにも関わらず大声を上げた。

 

「ロッティィィィィィ!!貴様という男はァァァァァァ!!この場で処刑してやる!!直ちに!すぐに!この場で!!」

「まあまあ、落ち着きなさい。」

 

大声を上げ暴れようとするユーリだったが、フリッドはユーリにアームロックをかけて止めた。

 

「いやぁ、おめでたいなロイド君!で、アーニャちゃんに弟か妹は作ってやるのか?」

「何言ってんだお前は!?」

 

真面目な顔で言うフリッドに、ロイドは思わずツッコミを入れた。

すると、

 

「お、弟か妹だぁ!?そ、それはつまりロッティと姉さんが……!!」

 

ユーリはアームロックを掛けられながら、頭の中でロイドとヨルが夜の情事を行っている様を想像してしまった。

 

「断固反対!!ロッティはこの場でぶっ殺す!!」

「ちょ、ちょっとユーリさん!ここ病院!それに子どもの前ですよ!」

「うるせぇぇぇぇぇ!!」

 

その後、ユーリがあまりに騒がしくしたせいで、翔一達は病院から追い出されてしまったのだった。

 

────────────────────────

 

その夜、イワークが住む古い洋館では……

 

「津上君がエル・ロードの一体を倒したか……そして第2段階への覚醒……いよいよ最終段階の覚醒も近いか。」

「なら、次は俺の出番か?」

 

その時、イワークの背後に一人の青年が立った。褐色の肌に牙を生やし、三白眼を持つどことなく猛獣を思わせる青年だった。

 

「お前にも手を貸してもらうぞ……グリム。まずは、"ガーデン"に入ってもらう。」

「ああ……ヨルって女に挨拶しないとな。俺の先輩になるんだからな……」

 

暗闇の中、グリムという青年はニヤリと笑い、月明かりで牙を光らせた。

 

 

────────────────────────

 

そして同時刻……

とある建物の一室……

 

「水のエルがやられたか……」

 

一人の男が窓の外に映る月を眺めながら呟いた。

その背後に2体のアンノウンが暗闇の中から現れた。

 

「アギトは進化を続けております。」

 

その内の一体、鷹のアンノウンが呟く。

 

「このまま野放しにして良いのでしょうか。」

 

その隣に佇むもう一体のアンノウン、ライオンのアンノウンが続いて呟いた。

 

「構わぬ。」

 

すると、男はアンノウンの方に顔を向けることなく、冷静な口調で言い放った。

 

「奴らがどうあがこうが、結果は見えている。もうしばらく泳がせておけ。例の計画のためにもな……」

『御意のままに。我らが創造主……』

 

男の言葉に従いながら、2体のアンノウンはその場で跪いて敬服した。

 

二つの思惑が今、動き出そうとしている。翔一やロイド達はいまだそれに気づいていない。

二つの思惑が自分達の運命を大きく動かすことも知らずに……

 

 




今回、ロイドとヨルさんのキスシーン入れるか迷ったんですけど、原作読んでて「早くキスしろ」というフラストレーションが溜まりすぎて、思わずやってしまいました。

後悔はしてない。

作品内において、どのライダーの話が一番好きですか?期間は4月10日から4月17日まで。アンケート結果は後日作品内で発表します

  • アギト編(翔一+フォージャー一家)
  • G-3編(ユーリ+対策班、ノエル)
  • ギルス編(フリッド+ダミアン、フィオナ)
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