SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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第37話「あなたのそばに・・・」

 

フリッド・リード・・・ギルスへと変身できる、仮面ライダーの一人。冷静沈着で頭が回り、生身での戦闘もそつなくこなせる。翔一、ユーリとの3人の中では一番の年上のため、リーダー的ポジションでいる頼れる男。

しかし、フリッドは一つ悩んでいることがあった……

 

「・・・は?フィオナに会いたい?」

「ああ……」

 

夜のバーでフリッドはロイドとフランキーの3人で酒を飲みながら話していた。

 

「あのさ、確かお前……その夜帷、フィオナに殺されかけたんだよな?」

「ああ……」

 

ロイド達には言っていなかったが、フリッドは一度、フィオナに殺されていた。しかしその後、自分でも分からない内に復活し、一度フィオナと会ったが少しだけ話して別れていた。

 

「お前おかしいぞ!一度殺されかけた相手に、また会いたいなんてさ!」

 

フランキーはフリッドに向かって叫ぶ。フランキーの言うことはもっともだった。一度自分を殺そうとした相手にまた会いたい、などとは普通だったら思わないだろう。

だが、フリッドは会いたいと思っていた。フリッドは一度、ダミアンと険悪になってしまったが、再会し、その絆を取り戻すことが出来た。なら、その時と同じようにフィオナとももう一度……と、甘い考えをもってしまった。

 

「分かってるよ。でも……」

 

そのまま何も言うことなく、言葉が詰まった。

すると、ロイドが声を掛けた。

 

「なぁ、なんでそこまでフィオナにこだわるんだ?言っちゃなんだが、君は結構イケメンな方だろ?君を好きになる女性は結構いるんじゃないのか?だったら、別にフィオナじゃなくても……」

「俺には彼女だけだ。」

 

ロイドの言葉を遮るようにフリッドは呟いた。その一言にロイドとフランキーは目を見開いた。

フリッドは続けて言った。

 

「……俺は一度愛すると決めた以上、他の女性に目移りしたくないんだ。」

 

そう言うと、フリッドはワインを一口飲んだ。

その時のフリッドはどこか寂し気だった。それを見たロイドはフッとため息をついた。

 

(夜帷……お前、愛されてるんだな。)

「ロイド君、頼む!」

 

その時、フリッドは頭を下げながら両手を合わせてきた。

 

「フィオナは君と同じ組織にいるんだろ?なんとか……会えないか?少しの間でいいんだ!頼む!君の任務も手伝う!これからも!」

「……と言われてもな……どうしたものか……」

 

フリッドに頼み込まれ、ロイドは顎に手を当てて考え込んだ。

 

────────────────────────

 

後日、

 

(今日は先輩と任務……久々に先輩と二人きり……はぁぁぁぁっ、先輩といっしょなら嫌なこと全部忘れられるし、なんならフリッドのことだってどうでもよくなってくる!)

 

夜の街の中、フィオナは路地裏を進んでいた。ロイドと二人きりで任務に当たれることに喜び、顔には出していないがその嬉しさのあまり、心の中で狂喜乱舞していた。

 

「夜帷。」

「先輩、お待たせしま、し・・・た・・・?」

 

フィオナは一瞬言葉がつまり、目を見開いた。目の前にいるのはロイド・・・だけでなく、その横にはフリッドもいた。

 

「や、やぁ・・・フィオナ。」

 

申し訳なさそうな顔でフリッドは手を振って挨拶をしてくる。それをよそに、フィオナはロイドの腕を掴み、フリッドから離れた。

 

「どういうことですか黄昏?」

「いや、実は色々あって……アイツが俺達の任務を手伝ってくれることになった。」

「……は?」

 

ロイドの一言に、フィオナはワケが分からなくなり、声を上げた。

フリッドは自分達とは違い、スパイではない。スパイの訓練も受けていないただの一般人だ。何故そんな男に任務を手伝わせるのか理解できなかった。

もう一つ理解できなかったのは、何故か分からないがロイドや自分がスパイであることがフリッドにバレていることだった。

 

「とにかくだ、ここからは二手に分かれて任務に当たるぞ。お前はフリッドと行くんだ。俺はフランキーから情報を手に入れてくる!」

「あ……」

 

フィオナが声を上げている間に、ロイドはさっさと行ってしまい、その場にはフリッドとフィオナの二人きりになった。

 

(き、気まずい……!)

 

空気が気まずくなるのを感じたフリッドは思わず冷や汗を掻いた。

 

(何を話せば……!共通の話題がない……!意外なほどない!!あっ、ロイド君の話だったらイケるか!?ありがとうロイド君!これからも時折任務手伝ってあげるから!)

「あ、あの、フィオナ……」

 

意を決してフィオナに声をかけようとするフリッド。しかし、

 

「……チッ」

 

フィオナは舌打ちを打った。それもわざわざフリッドに聞こえるように。

それを聞いた瞬間、フリッドは驚き、身体が止まった。

 

「ほら、いくわよ。」

「……うん。」

(舌打ちされた……)

 

舌打ちされ、フィオナに拒絶されたと思ったフリッドはショックを受けながら、後をついて行った。

今回の任務は麻薬の取引現場を見つけ出し、麻薬密輸組織を壊滅させること。比較的簡単な任務なので、ロイドはこの任務にフリッドを同行させることにしたのだ。

 

「言っとくけど、私や先輩の邪魔はしないように。」

「わ、分かってるよ。君に迷惑はかけない。」

「……チッ」

 

遠慮がちに言うフリッドに、フィオナはまたも舌打ちを打った。

それから二人は行動を共にする中で、ついに麻薬の取引現場を突き止めた。

 

「ここか……」

 

取引現場は港の倉庫だった。中を覗くとすでに人が何人かいた。しかも全員が暴力団組員だと思われる。

 

「どうする?乗り込むか?」

「そのためにあなたがいるのよ。」

 

フィオナはそう言うと、ポケットからマスクを取り出し、フリッドに手渡した。

 

「頼むわよ、切り込み隊長さん。」

「オーケー……!」

 

受け取ったマスクを顔につけ、フリッドは首の骨を鳴らした。

そして、正面から堂々と中へ向かっていった。

 

「ん?なんだお前……!?」

 

入り口で見張りをしていた男が声を上げた瞬間、フリッドは顔面に拳を叩きつけ殴り飛ばした。見張りの男は殴り飛ばされ、倉庫の鉄の扉に叩きつけられた。

叩きつけられたことで扉が音を立てて歪み、その音で中にいた組織の組員達が一斉に銃をそちらに向けた。

 

「さて……ここから先は、どうなっても知らないぞ。」

 

重い鉄製の扉を開け、フリッドは組員達を睨みつけながら呟いた。

そして、組員達に向けてじりじりと距離を詰める。その間、フリッドは目線を周りに向けた。

 

(使えるものは……色々あるな。)

 

倉庫の中にあるものを見ながら使えるものを探していると、組員達は一斉に銃を撃ってきた。

その瞬間、フリッドは右腕をギルスに変え、鞭状の触手を伸ばして飛んできた銃弾を全て弾いた。

 

「なっ!?」

「な、なんだアレは!?」

 

組員達が驚くのをよそに、フリッドは左腕もギルスに変え、触手を伸ばして倉庫の中にあるドラム缶を巻きつけ、組員達に向かって投げた。

投げたと同時に触手の先端でドラム缶を真っ二つに割った。すると、中から茶色の液体が組員達に降り注いだ。

 

「うわっ!!」

「ぺっ、ぺっ!こ、これ石油だ!」

「さすがは倉庫の管理者だな。何が入ってるかお見通しか。」

 

フリッドは静かに言うと、ポケットからライターを取り出した。

 

「な、何をする気だ!?」

 

組員達のリーダーらしき男が青ざめた顔で叫ぶ。すると、フリッドはニヤリと笑った。

 

「麻薬を売るようなクズどもは、よく燃えるだろうな。」

「ひっ!?」

「選べ。おとなしく保安局に自首するか、この場で死ぬか……」

 

怯える組員達を睨みながら、フリッドは一歩足を踏みしめる。

 

「脅しじゃないぞ。」

 

ライターの蓋を開け、点火する。さらに一歩近づく。

 

「死に際に何を見るだろうな。自分の家族か、麻薬によって家族を奪われた遺族の怨念か……」

 

脅しに近いことを言いながら、また一歩足を踏みしめる。

その時、リーダーが声を上げた。

 

「な、なんでこんなことに……!」

「なんでだと?それはお前達のせいだろ。いいか?今、ここで起きていることは全て、お前達の自業自得。お前達のせいで起きているんだ。お前達だけが悪いんだ。責任転嫁するんじゃあない。」

 

フリッドは怯える組員達を睨み、吐き捨てるように呟き、その場に膝をついた。

そして、いよいよ火をつけようと……しかし、その瞬間銃声が鳴り響いた。

 

「あ・・・」

 

組員の一人がうめき声を上げ、その場に倒れた。頭には小さい穴が開き、そこから血が流れ出ていた。

 

「いつまでウダウダやってるの?」

「フィオ・・・おっと。」

 

その一言とともに、フリッドと同じくマスクを付けたフィオナが拳銃片手に現れた。

フリッドは危うく名前を言いそうになったが堪えた。

と、その時だった。フリッドの耳にアンノウンが現れたことを示す、例の音が聞こえてきた。

 

(この音……!近い!だが、どこに……?)

 

その音はフリッドの鼓膜が破れそうなほど近づいていた。しかし、次の瞬間音が消えた。

と同時に倉庫の壁が破られ、アンノウンが飛び出した。

 

「ッ!フィオナ!!」

「!?」

 

フィオナの背後から襲い掛かったシャチのアンノウン、オルカロードは持っている剣でフィオナの背中を切りつけた。

 

「くっ……!!」

「フィオナー--っ!!」

 

大切な人を傷つけられ、フリッドは思わず叫び、フィオナの元に駆け寄った。

それをよそに、オルカロードは組員達の方へ向かって歩き始めた。

 

「な、なんだよこいつ!?なんで俺達の方に……!?」

 

アンノウンは超能力者及びアギトの力を持つ者、その可能性を持つ者を狙っている。しかし、そんなことなど知らない組員達はただただ虐殺されるしかなかった。

 

(しめた!アンノウンがあっちに気を取られている隙に……!)

 

フリッドは組員達を虐殺するオルカロードを放置し、フィオナを抱き上げてその場から離れた。

 

────────────────────────

 

「大丈夫か、フィオナ?」

 

フリッドは倉庫から離れた場所でフィオナを降ろし、手当をしようと彼女の着ているコートを脱がせようとした。

しかし、そんなフリッドをフィオナは突き飛ばしてしまった。

 

「触らないで!応急手当ぐらい一人でできるわ!」

「でも、背中だぞ!一人じゃ難しいだろ。大丈夫、変なとこは触らないし、見ないようにするから!」

「あなたに触られるのがイヤなのよ!!」

 

フィオナは嫌悪感をむき出しにしながら声を大にして叫んだ。それを聞いたフリッドはショックを受けたのか目を見開いた。しかし、すぐに俯いて悲しそうな顔をした。

 

「……ごめん、俺はまた君を傷つけてしまったな……」

 

目を瞑りながら、申し訳なさそうに謝るフリッド。そんなフリッドを見て、フィオナは眉間に皺を寄せたかと思うと、手を振り上げ、思い切りフリッドの頬を叩いた。

 

「フィオナ……?」

「あなたはまたそうやって……!!なんで私に対して恨み言を言わないの!?私はあなたを一度殺したのよ!?裏切ったのよ!!今だって、あなたのこと拒絶してるのに……なんであなたはそんな風にいられるの!?私はあなたのそういうところが気に入らないの!!」

 

まくしたてるように叫ぶフィオナを見て、フリッドは眉を八の字に困り顔になった。

フィオナは自分が思ったことを正直に伝えたつもりだ。声を荒げて、普段のポーカーフェイスも崩れて怒りの表情を見せている。

それを見たフリッドは彼女は本気で言っていることを理解し、口を開いた。

 

「……前にも言ったが、俺は君を愛してる。愛してる人を恨むことなんてできない。君が善人でも悪人でも、どれだけ嫌われても、それだけは変わらない。」

 

フリッドはまっすぐな瞳でフィオナを見つめ、自身の考え、その気持ちを正直に伝えた。

すると、フリッドは笑った。

 

「それに……裏切られるのも悪くない。裏切られた分、人に優しくなれる。」

 

そう言って笑ったフリッドの顔は、苦笑いに近いものだった。自分で言ってて可笑しいと思ったのか、はたまた変なことを言った自分自身を嘲笑っていたのか……

 

「フッ……」

「あ……今、笑った。」

 

その時、フィオナは自分でも気づかない内に笑みを浮かべていた。

それに気づいた瞬間、フィオナは自分でも驚いていた。

 

(私、笑ってた……?こいつの前で……)

「その顔が好きだった。」

「え?」

「付き合ってた時、時折見せる君の微笑む顔……俺はそれが大好きだった。その笑顔のためなら、俺はなんだってできるよ。」

 

そう言うと、フリッドは微笑んだ。それを見たフィオナも、もう一度笑みを浮かべた。

この時、フィオナの中に感じたことのない感情が芽生えていた。それは"安心感"だった。あれだけ嫌っていたはずの男の笑顔、言葉・・・その全てに安心を感じた。今までの緊張がほぐれるような……

 

(安心してる……私が……?もしかして、先輩も……)

 

その時、フィオナは思った。ひょっとしたら、ヨルと一緒にいるときのロイドも、今の自分と同じ気持ちだったのではないか、と。

 

(もしそうなら、私は……)

 

その時だった。

 

「グルルルル……」

 

2人の前にオルカロードが姿を現した。組員達を全員殺したのか、全身血まみれになっていた。

 

「フィオナ、下がってろ。」

 

フリッドはフィオナを守るように立ちふさがり、自身の顔の前で両腕を交差させた。

 

「変身ッ!!」

 

フリッドは叫び、ギルスへと変身。両腕のギルスクロウを伸ばし、オルカロードに向かっていった。

 

「ウオオオオオオオオオッ!!」

 

ギルスの叫び声とともにオルカロードの剣とギルスクロウがぶつかり合い、火花を散らす。

その様子をフィオナはただ見つめていた。その表情はまるでギルスに、フリッドに惹かれているようだった。

 

(私は……私は、あの人のこと、ちゃんと見てたのかな……)

 

戦いを見ている中で、フィオナは自分はフリッドのことを何も知らないことに気づいた。

前に付き合っていたのは、任務のためであり、そこに恋愛感情はなかった。しかし、フリッドはそれに気づいていないとはいえ、自分に目一杯の愛情を注ごうとしてくれた。

そんな気持ちに気づかず、ただ邪魔だからと、殺そうとした。相手を理解しようとせず、ただ自分の都合だけで……

 

(もし、もしまだ間に合うなら……)

「ウオアアアアアアアアアッ!!」

 

ギルスは叫ぶと同時に踵のヒールクロウを伸ばした。

 

「ハッ!」

 

そしてそのまま跳躍し、右足を天高く振り上げ、オルカロードの肩に踵落としを繰り出しヒールクロウを突き刺した。

 

「ウオオオオオオオオオッ!!」

 

ギルスは獣のような叫びを上げ、もう片方の足でオルカロードを蹴り飛ばし、刺さったクロウで切り裂いた。

 

「グッ!グオアアアアアッ!!」

 

オルカロードは断末魔の叫び声を上げながら爆発四散した。

戦いが終わり、ギルスはフィオナの元に歩み寄った。

 

「もう大丈夫だ、フィオ……!?」

 

その瞬間、言葉が詰まった。フィオナが自分に抱き着いてきたからだ。

 

「フ、フィオナ……?」

 

自分でも驚くほど胸が高鳴るのを感じたフリッドは恐る恐るフィオナに声をかけた。

フィオナはまるでフリッドに縋るように、胸に顔をつけていた。すると、フィオナは口を開いた。

 

「……そばに、いさせて。」

「え?」

「私、あなたのことが嫌い。でも……あなたのことを全部知りたい。嫌いになるかどうかは……それを知ってからにしたいの。」

 

今の正直な気持ちを伝えたつもりだった。少し恥ずかしさを覚えたのか、フィオナは顔を隠すように顔を胸に押し付けた。ギルスに変身してはいるが、そこからフリッドの鼓動と胸の温かさが伝わってくる。

 

「……ああ、いいよ。」

 

すると、フリッドは優しく語り掛けながら、フィオナを優しく抱きしめ返した。同時に、変身を解いて元の姿に戻った。

2人は互いに互いのぬくもりを感じながら、そのまましばらく抱き合った。

 

────────────────────────

 

後日、フリッドはフィオナとともにフォージャー家を訪れていた。

 

「そ、それで、用とはなんでしょうか……」

 

ヨルは緊張しながらソファに座り、フィオナと対面していた。

その後ろで、ロイドは不安そうな顔で様子を見ていた。

 

(何を言い出す気だ、夜帷……また何か変なことを言う気じゃ……)

「単刀直入に言うわ。私、あなたのことが嫌い。」

(やっぱりか!!)

 

フィオナの突然の一言にロイドは予想が的中したと思い、すぐにヨルのフォローに回ろうとした。しかし……

 

「だから、私の友達になってくれないかしら。」

『……え?』

 

続くフィオナの一言にロイドとヨルは声を上げた。それをよそに、フィオナは紅茶を飲みながら話を続けた。

 

「私はあなたのことを知りたい。どうせ嫌いになるなら、相手のことを全部理解した上で嫌いになりたいの。だから、友達になってくれないかしら。」

 

いつものポーカーフェイスで語るフィオナに、様子を見ていたロイドはなんとも微妙な顔を浮かべていた。

 

(わ、分かるんだか分かんないような……)

 

しかし、それとは逆にヨルは笑顔を浮かべていた。

 

「……嬉しいです!フィオナさんとお友達になれるなんて!」

 

ヨルは嬉しさのあまりフィオナの手をとった。ヨルは思った。このままフィオナと友人になれば、フィオナに対してモヤモヤすることはなくなるのではないかと。

そう思うと、ますます嬉しくなり、フィオナの手を握ってしまう。

 

「これからよろしくお願いします!」

「え、ええ……」

 

すると、フィオナはそっぽを向き始めた。その顔は何故か赤くなっていた。

 

「こ、こちらこそよろしく……ヨ、ヨルちゃん……」

 

その時、フィオナはヨルのことを名前で呼んだ。「夫人」ではなく、ちゃんと名前で。しかも「ちゃん」付けで。

呼ばれた当の本人は喜ぶよりも先に、ポッと頬が赤くなっていた。

 

「……かわいい……」

「は?」

「も、もう一度呼んでくださいませんか!?『ヨルちゃん』って!!」

 

フィオナが自分のことをちゃん付けで呼んだことにかわいらしさを感じたヨルは思わず食って掛かった。

対し、自分が言ったことを思い出したフィオナは顔を真っ赤に染め、否定し始めた。

 

「い、嫌よ!!絶対言わないから!!」

「おーねーがーいしーまーすー!!」

「いーやーだーっ!!」

 

すでにポーカーフェイスはなくなり、フィオナは感情をむき出しにしてヨルの申し出を拒否していた。

その様子を見ていたロイドは苦笑いを浮かべていた。

 

(ま、まぁ・・・これで夜帷がヨルさんに食って掛かることはなくなるか……それに、フリッドも仲直りできて満足だろう。)

「よかったな、フリッ・・・ドォォォォォォ!!?」

 

横を向いてフリッドに声を掛けようとしたロイドは、思わず叫んでしまった。

何故ならフリッドは鼻血と吐血をしながら倒れていた。

 

「な、何があった!?」

「フィオナが、ヨル、さんに……ちゃん付けとか……可愛すぎる……!!」

 

フリッドはフィオナがヨルに照れながらちゃん付けで名前を呼んだことに対して、悶絶していた。所謂"萌え"というものを感じたのだろうが、フリッドはそんな知識は知らないだろう。

 

「く、悔いは、ない……!!」

「カッコつけてるけど、カッコ悪いぞお前。」

 

鼻と口から血を垂れ流しながら右手の親指を立てるフリッドに、ロイドは呆れながらツッコんだ。

そんな中、ヨルとフィオナの問答はまだ続いたのだった。

 

 

 




おまけ「怖い」

「まさかあなたが、脅しとはいえあんなこと言うとは驚いたわ。」

フィオナは、フリッドが組員達に対してライターの炎をチラつかせながら脅しをかける様子を思い出していた。すると、フリッドはキョトンとしていた。

「え?脅しじゃないよ?」
「え?……じゃあマジで殺す気だったの?」
「うん。」

フリッドは本気で殺す気だった……その事実にフィオナは、「えっ、怖っ・・・怒らせないでおこ」と思ったのだった。

────────────────────────

フリッドは悪人は容赦がない性格です。

今回でようやくフリッドとフィオナの関係に決着がつきました。決着自体は結構迷ったんですよ。悲しい話にするか、笑い話にするか……でも相当ひどいことしたし、笑い話にはできない、かといって悲しい話だと鬱展開になるし救いがない。
ということで、二つを混ぜてちょうどいい塩梅になったと思ってます。


後、どうでもいいですけど、ヨルフィオっていいよね……最初相手のこと嫌いだったけど、会う度に相手の良さが見えて、嫌いじゃなくなってむしろ好きになっちゃうみたいな……原作でも百合展開(またはそれに近いこと)こないかな……

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