SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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第40話「暴かれた事実」

 

「イテテ……」

 

アナザーアギトとの遭遇から3日、翔一はバイト先のパン屋で元気に働いていたが、アナザーアギトとの戦いでつけられた傷が痛み、胸を抑えた。

そこに店の店主が声をかけてきた。

 

「どうした?ケガか?」

「あ、いや、その……恋の悩み!なんつって!」

「なんだそりゃ。ほら、次のパン焼けたぞ!早く並べろ!」

「はい!」

 

まさか戦ってるときに傷つきました、とは言えないため翔一は誤魔化した。

店主はまともに聞く気はないのか、翔一に焼きたてのパンが乗った鉄板を差し出した。翔一はそれを受け取り、売り場の方へ持っていき、かごの中に入れていく。

その時、ドアのベルがカランカランと鳴り響いた。

 

「いらっしゃいま……あっ!」

「よっ、津上君。」

 

店に来店したのはフリッドとユーリだった。

 

「あら~、いらっしゃい二人とも!パン買いにきたんですか?どうぞどうぞ!どれも美味しいですよ!」

「ああ、ここのパンが美味しいのは知ってるよ。それより、店が終わった後時間あるかい?」

「?」

 

パンを勧めてくる翔一を軽くあしらいながら、フリッドは翔一に尋ねた。それに対し、翔一は不思議そうに首を傾げた。

 

夕方店が終わり、翔一はフリッドとユーリとともに街にある鉄板焼きの店を訪れた。

 

「ぐあっ・・・モグモグ・・・ったくなんなんだよ、この前のアイツは!!」

 

焼けた肉をいっぺんに頬張りながら、ユーリは3日前に戦ったアナザーアギトの愚痴をこぼしていた。

 

「今度会ったら処刑してやる!!」

「声が大きいよ、ユーリ君。しかしまぁ、確かに意味が分からない奴だったな……」

 

怒るユーリを宥めながらも、フリッドもユーリの意見に賛同するように肉を食べながら呟いた。

 

「でしょ?!しかも僕のこと、『アギトでもない雑魚』とか言いやがって……おい!津上!聞いてるのか!?」

「ん?あ、美味しいですねここの店!」

「お、お前なぁっ!」

「まあまあ。」

 

ユーリが怒って愚痴をこぼしている横で、翔一は美味しそうに肉を食べていた。

そのことにユーリは怒鳴り声を上げたが、すかさずフリッドが宥めた。

 

「しかし……何か引っかかるな……」

「どうしたんですか?」

「アイツがユーリ君に言ったあの言葉……」

 

『帰ってお姉ちゃんのおっぱいでも吸ってな。』

 

アナザーアギトがユーリに向かって言った言葉を思い出し、それを口にしたフリッド。

それを聞いた二人は首を傾げた。

 

「それがどうしたんですか?」

「確かに言われましたけど……ッ!!」

 

その時、ユーリは突然顔を真っ赤にした。

 

「お、思ってませんからね!?ねねねねね、姉さんの、お、お、お、おぱぱぱぱぱ……をチューチューしたいなんて思ってませんからァッ!!!」

『………』

 

顔を真っ赤にして急に否定しだすユーリに、翔一とフリッドは何も言わず、冷たい目でそれを見ていた。

 

「……で、何か引っかかるんですか?」

「無視するなよ!!」

 

ユーリをよそに翔一はフリッドに尋ねた。すると、フリッドは顎に手を当てて考え込んだ。

 

「そうだな……何かがずれてるというか、セオリーから外れているというべきか……例えばこういうセリフの時って普通、『ママのおっぱいでもしゃぶってな』……っていうところじゃないか?」

「……まぁ、ドラマとか映画だとそうですね。」

 

フリッドの言葉を聞き、翔一は頭の中でドラマや映画の登場人物がフリッドが言ったようなセリフを思い浮かべた。

 

「なのに、奴は"ママ"じゃなくて、わざわざ"お姉ちゃん"と言ったんだぞ?……これがどういうことか分かるか?」

「……わかんないです。」

 

腕を組んで考えた翔一だったが、結局分からず、困り顔を浮かべた。隣にいるユーリも同様だった。

 

「どういうカラクリなのか分からんが、奴はユーリ君に姉がいることを知っていたということだ。」

「……あっ!」

 

ようやく事の重大さに気づき、ユーリは冷や汗を掻き声を上げた。

 

「……奴の正体が何者なのか分からないが、用心した方がいい。」

「はい……!」

 

ユーリはゴクリと唾を飲み込み、低い声とともに頷いた。

 

その後、食事を終えた3人は店を出た。

 

「それじゃあ、二人とも何かあったら連絡を。」

『はい。』

 

2人はフリッドに返事をし、そのまま別れようとした。

だが、その時だった。

 

「ショーイチー----ッ!!」

 

翔一を呼ぶ幼い声が聞こえてきた。その方角に顔を向けると、そこにいたのはボンドに跨ったアーニャだった。

 

「アーニャちゃん?どうしたの?こんなところで……」

 

翔一はその場でかがんでアーニャにここに来た理由を聞こうとした。しかし、アーニャの目は涙で潤んでいた。

そして、涙ぐんだ声で呟いた。

 

「じなんが……!ぎんぱつのおねーさんもしんじゃう……!!」

 

────────────────────────

 

時間は夕方に遡る……

 

「えっ!?ダミアン様、格闘技習い始めたんですか!?」

「スゲーッ!!」

「フッ、皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)になる者としては当然のことだ。」

 

放課後、ダミアンは自分が格闘技を習い始めたことを、友人のエミールとユーインに自慢していた。

 

「も、もしかして、あのフリッドさんに習ってるんですか!?」

「いいなぁ……だって、仮面ライダーから教わってるってことですよね!?俺も習いたいです!」

 

エミールとユーインは目をキラキラ輝かせながら、フリッドの姿を思い浮かべた。その目は憧れのものを見る少年の目だった。

しかし、ダミアンは突然眉間に皺を寄せてキッとした顔を見せた。

 

「ダ、ダメだ!それは絶対ダメだ!!」

「な、なんでですか?」

「なんでって……!」

 

その時、ダミアンは顔を真っ赤に染め、下に俯いた。

 

「ふ、二人っきりに……なりたい、から……」

『……え?』

 

ダミアンの思わぬ言動と反応に、二人は困惑し、声を上げた。

その様子を、近くにいたアーニャとベッキーは見ていた。

 

(ダミアンったら、またあの叔父様にデレデレしてる……もしかしてダミアンって、性別とか歳の差とか関係なしに、甘えさせてくれる人が好きなのかしら……)

(じなん、うれしそう……)

 

ダミアンのフリッドに対する思いを考察するベッキーに対し、アーニャはただただ嬉しそうにニマニマ微笑んでいた。

と、その時……

 

「君がダミアン君?」

 

一人の女性がダミアンに声をかけてきた。銀髪に片目が隠れ、コートを着ているポーカーフェイスの女性……フィオナだった。

 

「そう、ですけど……」

「おねーさん!」

 

ダミアンが返事をするのと同時に、アーニャが駆け寄って来た。

 

「あら、アーニャちゃんもいたのね。」

「アーニャちゃん、知り合いなの?」

「ちちのびょういんの……」

 

同じく駆け寄ってきたベッキーに説明しようとするアーニャだったが、それよりも早くフィオナが説明に入った。

 

「初めまして。私、アーニャちゃんのお父さんが働いてる病院で、事務員をしてるの。フィオナっていうの。」

 

ポーカーフェイスで坦々と自己紹介をするフィオナ。ベッキーはそれを聞いて目を見開いていた。

 

(ロ、ロイド様と同じ職場……!?くっ、なかなか美人じゃない……!)

 

ベッキーは密に対抗意識を燃やしていた。そうとは知らず、フィオナはダミアンの方へ顔を向け直した。

 

「フリッドはここに来てるかしら?ここにいると思ったんだけど……」

「い、いや、叔父さんはいないけど……」

(アイツ、今日任務手伝ってくれるって言ったのに……後で殴ろ。)

 

この日、フリッドはフィオナの任務を手伝う約束をしていたのだが、それを忘れて翔一とユーリと会っていたため、フィオナは約束をすっぽかされたと思って怒っていた。

すると、ダミアンが恐る恐る尋ねてきた。

 

「あ、あの……お、お姉さんは叔父さんの……なんですか?」

「……(一応)同棲してる彼女よ。」

『ど、同棲ッ!!?』

 

フィオナの一言に、その場にいた全員が驚いた。

 

(あの叔父様、彼女いたのね……まぁ、あんなイケメン放っておかないか。)

(仮面ライダーの彼女だ……!)

(すっごい美人……)

(……どーせいってなに?)

 

さらに全員、それぞれ考え込みながらフィオナの方をまじまじと見つめていた。ダミアンも同様だったが、それは見つめるというより見惚れているに近かった。

 

(キレイな人だなぁ……叔父さんカッコいいもんな、そりゃあこんなキレイな彼女がいてもいいよな……そ、それに……お、おっきい……!!)

 

ダミアンはフィオナの身体の一部分を見て、赤面しながらゴクリと唾を飲んだ。

と、そこにアーニャが肩を叩いてきた。

 

「じなん・・・エロガキ」

「ちがぁぁぁぁぁぁぁぁう!!!」

 

ダミアンの心を読んだアーニャは、軽蔑する目で見つめた。対しダミアンは顔を真っ赤にして否定した。

すると、

 

「ダミアン君、ちょっとこっち来て。」

 

突然フィオナはダミアンの手を掴み、無理やり引っ張って来た。

 

「あっ!?ちょ、ちょっと……!」

「ダミアン様!」

「お、お前ら先に帰ってろ!寮長には遅くなるって伝えてくれ!!」

「わ、分かりましたー--!!」

 

エミールとユーインに伝言を伝えながら、ダミアンはフィオナに引きずられていった。

 

「……さて、君に聞きたいことがあるの。」

 

校舎の裏の方まで来たフィオナは、ダミアンの前で屈み、顔を近づけた。

 

「な、なんですか……!?」

(ち、近い……!あ、あと、おっ、おっぱ……の方も……!!)

 

フィオナが近づいてきたことで、ダミアンの目線がフィオナの胸元に吸い寄せられる。

なんとか目線を逸らそうとするが、一度意識してしまうと中々目を逸らせず、目が泳いでしまう。

そんなダミアンの目線に気づいたフィオナは、心の中で舌打ちを打っていた。

 

(チッ……子どもとはいっても所詮は男……スケベ心はあるってことね。)

 

ダミアンの下心に呆れながらも、フィオナは本題に入った。

 

「あなたにとって、フリッドってどんな人かしら。」

「え・・・?」

 

フィオナのその質問に、ダミアンは顔の紅潮が消え、キョトンとした顔を見せた。まるで、「どうしてそんなことを?」とでも言いたげだ。

それを察したフィオナは答え始める。

 

「……私は、あの人の全部を知りたいの。他の人をどう思ってるとか、他の人からどう思われてるのか……とかね。君は、あの人とは一番親しいんでしょ?」

「……うん……」

 

ダミアンはコクリと頷き、ゆっくりと質問に答え始めた。

 

「……叔父さんのは、優しくて、かっこよくて、頭も良くて……でもちょっと変なところもあって……俺、そんな叔父さんが大好きだ!でも……叔父さんに会う度に、『もっと一緒にいたい』って思うようになって……そんなワガママはダメだって分かってる!でも、一緒にいた分だけ離れるのが怖いんだ……!」

 

ダミアンは語りながら、怖くなったのか自分の両手で自分の身体を抱いた。

その話を聞いたフィオナは、思うところがあるのか、口をギュッと紡いだ。フィオナ自身も、ダミアンと同じ気持ちになっていたのだ。

フリッドと一緒にいる度に、離れるのが怖くなり、一緒にいたいと思ってしまう。スパイとして、それはあってはいけないことであり、そう思ってしまう自分自身に戸惑ってしまう。

 

(この子も、私と同じ……)

 

ダミアンも自分と同じ気持ちであることを理解したフィオナは、そっと頭を撫でようと手を伸ばした。

その時だった。

 

「ッ!!危ないッ!!」

 

ふいにフィオナは敵意を感じ、ダミアンを抱きしめると同時にその場から飛び退いた。

その瞬間、フィオナの横顔を一本のナイフが通り過ぎ、頬をかすめた。

 

「……チッ、よけんじゃねぇよ……」

 

ナイフを投げたと思われる男が舌打ちを打った。すると、男はニヤリと笑いながらゆっくりと歩き、その姿を二人にさらした。

 

「お初にお目にかかるなぁ……夜帷さん。それに、ダミアン……!!」

 

2人を睨みながら、男はダミアンの時だけドスの効いた低い声で呟いた。

フィオナは驚愕していた。男は自分が「夜帷」であることを知っているからだ。

 

(私のことを知ってる……!?こいつ、ヤバい……!!)

「俺の名は、グリム……!そのガキに用がある……!!」

 

グリムは腰に下げたホルスターから2本のトマホークを取り出すと、二人を睨みながらゆっくりと近づいてきた。

 

「……ッ!!逃げるわよ!!」

「逃げんなぁっ!!」

 

フィオナはダミアンを抱きかかえ、逃げ始めた。それをすかさずグリムは追いかけ始めた。

 

(やばい……!じなんとおねーさんがあぶないっ!!)

 

ひそかに二人の後を追いかけていたアーニャは、グリムが二人を襲うところを目撃していた。

アーニャはすぐさま家へと戻り、ロイドとヨルに報告し、今度はフリッドを探しにボンドとともに街へ出たのだった。

 

────────────────────────

 

やがて夜になり、グリムから逃げ続けていたフィオナとダミアンは、ビルの中に隠れていた。

そのビルは最近廃墟になったばかりのビルだった。

 

「はぁ……はぁ……」

「アイツは、一体なんなの……あなたのこと狙ってるみたいだったけど……」

 

ビルの一室に隠れ体を休ませながら、フィオナはチラリとダミアンの方を見た。

フィオナの一言を聞き、ダミアンは目を見開いて驚いた。

 

「え・・・!?俺を……!?なんで……」

「こっちが聞きたいわ……最悪……」

 

状況はいいとは言えなかった。まず、この部屋は4階の部屋だということ。窓から飛び降りて逃げようにも、周りに掴まれるものはない。懐に拳銃はあるが、グリムに効くとは到底思えなかった。一目見た時に気が付いた。奴は普通の人間ではないことを。

 

「ッ!!」

 

その時、外から足音が聞こえ、フィオナは自分とダミアンの口を塞ぎながら、静かにゆっくりと部屋の中にあるロッカーの中に隠れた。

 

「ダーミアーンくーん♪あーそびましょー♪」

 

外から楽し気だが、狂気を孕んだ低い声が聞こえてくる。

 

「お姉さん……!」

「シッ・・・静かに・・・」

 

怖がるダミアンを抱きしめ、落ち着かせるために頭を撫でた。

その時、グリムが部屋の中に入って来た。一瞬体がビクッと震えたがすぐに抑えた。

 

「もういいかーい・・・まーだだよー・・・」

 

まるで遊んでいるかのように声を出しながら、部屋を徘徊するグリム。ロッカーに隠れているフィオナとダミアンは何もできない。ただ、グリムがこちらに気づかないことを祈るしかなかった。

その時、グリムがロッカーの前を通った。

 

(!!)

 

しかし、グリムは二人がいるロッカーの前を素通りした。それを見て、二人はホッと胸を撫で下ろした。

 

「見ィ~つけたァ♪」

 

しかし次の瞬間、グリムは二人が隠れていたロッカーをこじ開けた。

 

(こいつ、最初から気づいて……!?)

「くっ!!」

 

フィオナは咄嗟に懐に隠した拳銃を発砲した。至近距離のため、必ず当たる距離だ。

しかし、

 

「見つけた……!」

 

驚いたことに、グリムは発射された銃弾を歯で挟み込んで止めてしまった。

それを見た二人は仰天すると同時に唖然としてしまった。その隙に、グリムはロッカーから二人を引きずり出し、フィオナを蹴り飛ばして床に這いつくばらせ、ダミアンは胸倉を掴んで宙に浮かせた。

 

「う、うわあああああああっ!!」

「ようやく見つけたぜ、クソガキィ……!!この日が、この日がようやくやってきた……!!」

 

ダミアンは恐怖で涙を滲ませ、今にも泣きそうになっていた。そんなダミアンを見て、グリムは舌なめずりをした。

そして、持っていたトマホークの刃をダミアンの頭に差し向けた。そのままトマホークを振り上げた・・・

 

「やめろぉ!!」

 

その時だった。怒鳴り声とともに部屋にフリッドが乗り込んできた、その後ろにはフォージャー一家に翔一、ユーリの姿もあった。

 

「安心しな、まだ殺しはしねぇよ。」

 

グリムはそう言って後ろを振り返り、フリッド達に姿を見せた。

 

「グリム君!?」

「ヨルさん・・・?知ってるんですか?」

 

ヨルは思わずグリムの名を口にしてしまった。しかし気づいたときにはもう遅く、グリムは突然笑い始めた。

 

「そっかぁ……確かまだカミングアウトしてないんだったなぁ、先輩。」

「先輩だと……!?」

「ロイドさん、聞かないでください!!」

「そいつはなぁ!!」

「みんな聞かないでぇっ!!」

 

ヨルは声を張り上げた。いつもなら相手の間合いに入って蹴り飛ばし、口封じをするところだが、ダミアンを人質に取られているせいで手出しができない。

そして、ヨルにとって恐れていたことが起きてしまう。

 

「そいつは俺と同じ殺し屋だっ!ガーデンの殺し屋、いばら姫なんだよぉっ!!」

 

声を大にして叫ぶグリム。それを聞いた、その場にいた全員が驚愕し、茫然とした。翔一とアーニャはバツの悪そうな顔で俯き、ヨルは絶望し、その場で膝をついた。

 

(バラされた……ずっと隠してたことが、こんなにあっさり……)

「ヨルさんが、ガーデンの……?」

「嘘だ・・・そんなの嘘だぁっ!!」

 

その時、ユーリは今にも泣きそうな目で懐から拳銃を抜き取り、グリムに銃口を向けた。

 

「おっと。」

 

グリムは咄嗟にダミアンを盾にした。それを見て、翔一は咄嗟にユーリの腕を掴んだ。

 

「ユーリさん!やめてください!ダミアン君がまだ……!!」

「うるさぁい!!姉さんが……姉さんが殺し屋なワケないだろ!!両親が死んで、ずっと僕を育ててくれた優しい姉さんが……人殺しなんて……そんなの、嘘だ……嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だァァァァァァァァァ!!」

 

翔一の腕を振り払い、ユーリは半狂乱になりながら撃鉄を降ろした。そして、グリムに向かって引き金が引かれた。

銃声が鳴り響き、銃弾は盾にされているダミアンに・・・いかなかった。

 

「ぐぅ……!!」

 

あの一瞬、フリッドはグリムの前に飛び込み、ユーリが放った銃弾をその胸で受けたのだ。

 

「フリッドさん!!」

「そ、そんな……僕が、フリッドさんを……!!」

 

仲間を撃ってしまった・・・その事実に、ユーリの手は震え、持っていた拳銃をまるでくっついてきた害虫を払うように投げ捨てた。

その光景を見て、グリムは面白おかしく笑っていた。

 

「クハハハ……ヒーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!いいねぇ、お前ら!こんな簡単な絶望するなんてなぁ!!」

 

絶望に打ちひしがれているヨル、ユーリ……今起きている状況についていけず、飲み込めなくなっているロイド……それがグリムにとって笑いの種だった。

そんなグリムに、ロイド達の怒りを向ける様にフリッドは叫んだ。

 

「お前……!!お前は一体なんなんだ!!」

「チッ……」

 

フリッドが尋ねると、グリムはその場で床に唾を吐いた。

 

「そんなに聞きたきゃ教えてやるよ。俺の名はグリム。本名はグラハム……!グラハム・デズモンド(・・・・・)!!父親は、ドノバン・デズモンドだっ!!」

 

衝撃的な一言が、グリムの口から放たれた。ドノバン・デズモンド……確かにグリムはそう言った。それを聞いたユーリ以外の全員が皆目を見開いた。

 

「デズモンド、だと……!?」

「お父様が、お前の父親……!?」

「そうだよ……」

 

その時、グリムはダミアンの髪の毛を引っ張りながらその顔を睨みつけた。

 

「俺はな、お前の父ちゃんの愛人の子なんだよ……!アイツは俺を、母親を捨てやがった!!」

「嘘だ……!そんなの嘘だ!!」

「現実見ろやテメェ!!お前の父ちゃんはなぁ、自分のためだったら愛した女も簡単に捨てられるゴミクズなんだよぉ!!」

 

グリムの口から放たれたその一言に、今度はダミアンが絶望を味わった。

振り向いてほしい、認めてもらいたいと思っていた父親が、簡単に愛する人を捨てられる人間だった・・・その事実が重くのしかかった。

すると、グリムはその場でダミアンを乱雑に床に落とした。思い切り尻を打ち、ダミアンはその場でうずくまり泣きじゃくった。

痛みではなく、事実を知ったことによる悲しみで泣いていた・・・

 

「こんなモンじゃ終わんねぇぞ。もっと絶望させてやる……お前らもだ!」

 

泣きじゃくるダミアンを見下ろし、さらにフリッド達にトマホークを差し向けた。

 

「幸せこよしやってるテメェらも……絶望させてやる……!!」

 

グリムは怒りがこもった顔で言い放つと、トマホークで窓をたたき割り、そのまま窓から飛び降りていった。

その場に残されたフリッド達は……追いかける気になれなかった。ヨルが殺し屋だということ、グリムがドノバンの隠し子だということ……その二つの事実が、皆の足を止めた……

 

 

 




おまけ「ブーメラン」

アマゾンアルファ
「ドノバンの野郎……自分の子どもを捨てるなんて、最悪じゃねぇか。」

ゴルドドライブ
「まったくだ!子どもは親にとってモルモット・・・いや、大事な存在なのに!」

仮面ライダークロノス
「そんなクズ親は絶版だぁ……!」

ロイド「ドノバンもお前らには言われたくなかっただろうな。」

—―――――――――――――――

当初、ドノバンの隠し子という設定はなかったのですが、ドノバンの年齢って66歳なんですよね。ダミアンとは祖父と孫くらい歳離れてるし、それに政治家だから愛人の一人か二人いてもおかしくない気がするんですよね。・・・という理由でグリムの隠し子設定が生まれました。

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