SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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第43話「決着のその後」

 

「いや~、ダミアン君無事でよかったですね!」

 

戦いが終わった後、ロイド達は家へと戻った。翔一はダミアンが無事だったことに安堵しながらニコニコ笑っている。

すると、ロイドが声を上げた。

 

「翔一君……」

「?」

「君は、気にしないのか?俺、スパイだって明かしたが……」

 

あの時、ロイドは皆の前で自分の正体を明かした。ヨルの隣にいても恥ずかしくない男でいるために。

すると、翔一はキョトンとした顔を見せたかと思うと、すぐにニコッと笑った。

 

「そんなの、気にしないですよ!だって……ロイドさんはロイドさんです!スパイだとしても、変わんないですよ!」

「翔一君……」

「優しくて、なんでもできて……でも抱えてばっかりで何考えてるか分かんないし、時々見せる笑顔がすんごい張り付いたような笑顔だし……」」

「殴っていいか?」

 

自分を受け入れようとする翔一に感動したロイドだったが、途中からいらないことを言った翔一に、感動が薄れ逆に怒りがこみ上げてきた。

 

「でも……元気出たみたいでよかったです!なんかロイドさん……振り切れたみたいで!」

「振り切れた……か。」

 

続く翔一の一言に、ロイドはフッと笑った。翔一の言う通り、あの時……自分から正体を明かした瞬間、ロイドは肩が軽くのを感じていた。まるで重い荷物を降ろしたかのように。

 

「……翔一君、アーニャ。ちょっと……ヨルさんと二人きりにさせてくれないか?」

「へ?」

 

突然のロイドの提案に、ヨルは真っ先に声を上げた。

 

「……わかりました!アーニャちゃん、絵本読んであげる!」

「うぃっ!」

 

対し、何かを察した翔一とアーニャは寝室に入っていった。

2人が部屋に入ったのを見計らい、ロイドはヨルの方に顔を向けた。

 

「ヨルさん。」

「は、はい!」

 

呼びかけられ、ヨルは変に緊張してしまい、上ずった声で返事をした。

すると、ロイドはヨルに向けて頭を下げてきた。

 

「今まで……すいませんでした。嘘をついて、騙して……!」

「そ、そんな……!」

 

「そんなこと言わないで」と言おうとしたヨルだったが、それより先にロイドが呟いた。

 

「実は、アーニャは俺の子じゃありません。」

「!」

「ある任務のために、俺が孤児院から引き取りました。あなたに近づいたのも……任務のために妻を用意する必要がありました。」

 

語りながら、ロイドの声が震え始めた。

 

「自分の都合だけであなたのことを利用して、何も知らないアーニャを利用して、翔一君まで巻き込んで……俺は、俺は……!!」

 

「最低の男」と言おうとした次の瞬間、ヨルはロイドのことを優しく抱きしめた。

 

「それ以上言わないでください。ロイドさんは最低なんかじゃありません・・・本当に最低な人だったら、この家に笑顔はありません。」

「ヨルさん……!」

「私は、ロイドさんに救われてるんです。私だけじゃなくて、アーニャさんも、ボンドさんも、翔一さんも……あなたは私達のヒーローです!」

 

ヨルは優しく微笑みながらロイドに語り掛ける。その笑顔は、いつも見ている笑顔とはまた違った、慈愛に満ちた聖母のような笑みだった。それに加えて優しい言葉……ロイドは目が潤み、涙が零れそうになった。それを隠すように、ヨルをギュッと抱きしめた。

 

「きゃっ?!」

「すいません……でも、そんなに優しいこと言われたら……俺、甘えたくなっちゃいます。」

「そ、そうなんですね……」

 

ヨルは顔が赤くなった。すると、ヨルは抱き着いてくるロイドを抱きとめた。

 

「わ、私でよかったら……いっぱい甘えてください……だから……き、来て……?」

「……ッ!!ヨルさんッ!!」

 

顔を真っ赤にしながらも、自分から誘ってきたヨルにロイドは感情が爆発しそうになった。

そしてとうとう我慢の限界になり、ヨルの唇に自分の唇を重ねてキスをした。

と、その瞬間……

 

「姉さんっ!ロッティのことで話が……ッ!!?」

『あっ』

 

タイミング悪く、ユーリが家に来てしまい、キスした瞬間を見られてしまった。

そしてキスの瞬間を見てしまったユーリはその場で固まってしまった。

すると、

 

「よい・・・っしょ。」

 

ヨルは固まったユーリをそっと押し出し、家の外に追い出した。

 

「ごめんねユーリ。後5分……いえ10分……いえ、明日また来て?」

 

そう言うと、ヨルはバン!と扉を閉め鍵をかけた。

ユーリは目の前でとんでもない物を見て、震えながらも、鍵を掛けられた扉に耳を押し付けた。

 

「もっとキスしてください……ロイドさん……」

「ヨルさん……!ヨルさん……!!」

 

扉の向こうから二人が互いの名を呼び合う声が聞こえ、さらにリップ音が小さいながらも聞こえてきて……

 

「う、うわあああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

ユーリは発狂し、そのまま走り去ってしまった。

 

────────────────────────

 

そのころ、

 

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

 

フリッドもまた自分の家に戻っていた。家に戻ると、フィオナが出迎えてきた。

その手には救急箱が握られ、その後ろの食卓には料理が並んでいた。

 

「……待っててくれたんだね。」

「料理作って待てって言ったのはあなたでしょ。」

 

ポーカーフェイスのフィオナはソファに座り、救急箱を開けた。

フリッドはその隣に座り、フィオナの治療を受けた。とはいってもフリッドはギルスの力で不死身なので、治癒力が高く、アナザーアギトから受けたダメージもほとんど回復していた。

 

「ほんと、化け物ねあなたは。」

「やっぱり?」

「それで?あの子は大丈夫だったの?」

 

フィオナはダミアンのことを尋ねた。すると、フリッドは優しく微笑んだ。

 

「ああ、あの子はもう大丈夫だ。俺が思ってたより・・・強くなってたよ。それにロイド君も・・・自分から皆に正体を明かしたよ。」

「先輩が……!?」

 

フリッドの話を聞き、フィオナの表情は崩れ驚いた表情を見せた。

 

「ああ。『ヨルさんの隣にいても恥ずかしくない男でいたい』ってさ。」

「そう……なんだ……」

 

フィオナはすぐさま元のポーカーフェイスに戻ったが、それでも動揺は隠せなかった。隣にいても恥ずかしくない男……自分の尊敬する人にそこまで言わせてしまうヨルに、フィオナは悔しさと羨ましさを感じていた。

同時に、分かったことがある。自分ではダメだ、と。ロイドにはヨルがいないと、ヨルでなければダメなのだと。

それを理解した瞬間、フィオナは唇を噛み、今にも泣きそうな顔になった。

 

「……ん!」

 

すると、フィオナはフリッドの前で両手を広げた。

しかし、急に両手を広げられても分からず、フリッドは首を傾げた。

 

「ん!んー!」

「あっ・・・わかったよ。おいで。」

 

フィオナの意図を理解したフリッドは、自分も両手を広げて手招きした。すると、それと同時にフィオナはフリッドに抱き着いた。

 

「こっち見ないで……!」

「ああ、見ないよ。」

「今は、全部忘れたいの……!」

「ああ、辛いことは忘れたいよな。」

 

フィオナはフリッドの胸で泣きじゃくった。フリッドは彼女の頭を撫でながら、彼女の言うことを全肯定しながら慰める。

しばらくすると、泣き止んだのかフィオナは元のポーカーフェイスに戻り、フーッと深呼吸をした。

 

「・・・ありがとう。」

「いいよ、全然。」

「何か、お礼しなきゃ。」

「そんなの全然……」

 

フリッドは笑って遠慮しようとしたが、その瞬間、フィオナは彼の胸倉をつかみ、そのまま自分の方へ引き寄せた。そして、フリッドの唇に自分の唇を重ねた。

 

「フィオナ……」

「これがお礼よ。あなたにはこれで十分でしょ。」

 

スンとしたいつもの態度で言うと、フィオナはそっぽを向いた。対し、フリッドはただただ茫然としていた。初めてのフィオナからのキスだった。前に付き合っていた時、キスはしてくれなかった。だが今、彼女から初めてキスをしてくれた。フリッドはその事実に嬉しさ半分戸惑い半分でどうすればいいか分からなくなり、ただただフィオナを見つめた。

その時、フィオナはチラリとフリッドの方を見てきた……かと思うとまたそっぽを向いた。しかし今度は頬を赤らめている。

 

「あ、あんまり見ないで……恥ずかしい……」

「ッ!!」

 

その次の瞬間、フリッドはフィオナの両肩を掴んだ。

 

「へ?」

 

さらにフリッドはそのまま、フィオナの唇にもう一度キスを交わした。

 

「ん……!?ぷはっ!ち、ちょっと何して……!!?」

 

抵抗しようとするフィオナだったが、今度は口内に舌を入れられ思わず力が抜けてしまう。そしてそのまま、ソファに押し倒されてしまった。

 

「んぅ……!フリッド……!」

 

抵抗しようとしたものの、力が段々と抜けていき、やがて抵抗するのをやめた。逆にフィオナの方からもフリッドの口内に舌を入れ始めた。

 

「ぷはっ……フィオナ……!」

 

フリッドは興奮し、フィオナの首筋にもキスをし始めた。

さらに、二人は互いに互いの服に手をかけて……

 

「フリッドさー----んッ!!!」

 

しかしその時、ロイドの時と同じくタイミング悪くユーリが押し掛けてきた。

 

「き、聞いてくださいッ!!姉さんが、姉さんが……僕の前でキス、を……」

 

半狂乱になって叫ぶユーリだったが、視線に気づいて目を向けると、そこには自分の方を睨むフリッドとフィオナがいた。

 

「あ・・・え、えっと・・・」

「……ユーリ君?」

 

フリッドはソファから立ち上がり、笑顔でユーリの前に立った。笑ってはいたが、目は笑っていなかった。

 

「鍵を掛けてないのは俺のせいだけど、ノックぐらいしようね?」

「いや、それは……急なことだったし……」

「しようね?」

「は、はい。」

 

笑いながら注意をするフリッドの圧に押され、ユーリは徐々に後ろへ下がり、家の外に追い出された。

 

「話は明日まとめて聞くから。じゃっ!」

 

そのままフリッドはバタン!とドアを閉め、鍵をかけた。

ユーリはそっとドアに耳を押し付けた。

 

「ああっ……!フリッド……来て……!」

「フィオナ……!フィオナ……!!」

 

ドアの向こう側から衣擦れの音と二人のくぐもった声が聞こえてきた。

それを聞いた瞬間、ユーリは行き場のない怒りを覚え……

 

「どいつもこいつも……!!ぢぐじょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

またしても叫び声を上げ、走り去っていったのだった。

 

────────────────────────

 

翌日……

 

「うわっ!ダミアン様どうしたんですか!?」

「顔ケガしてるじゃないですか!」

「……転んだ。」

 

頬にガーゼをつけて登校してきたダミアンに、エミールとユーインは慌てふためいていた。ダミアンは嘘をついたが、ケガをよく見れば嘘だと分かる。

そんな時、校内放送が流れた。

 

『ダミアン・デズモンド君、至急玄関まで来てください。』

「?」

 

放送で呼ばれ、ダミアンは玄関へ向かった。

 

「ゲッ……」

 

玄関では二人の男が待っていた。一人は叔父のフリッド。もう一人は、自分の腹違いの兄にして、自分を殺そうとした男、グリムだった。

フリッドに会えたことに喜びながらも、グリムと再会したことに微妙な顔を見せたダミアン。

 

「叔父さん……なんでこの人が……」

「いや、急に押しかけてすまなかったな。実はグリムが言いたいことがあるって。」

「おい、クソガキ!」

 

その時、グリムはヤンキー座りをしながらダミアンを睨みつけた。

急に呼ばれてビクッと体を震わせ、ダミアンは直立不動になった。それに対しグリムは……

 

「……この前は、ごめん。」

「へ?」

 

グリムは急に謝ってきた。その顔はまるで正直に気持ちを伝えられない子供のようで、ダミアンは思わず戸惑った。

するとグリムの表情はすぐ、この前のようなキッとした怖いものに変わった。

 

「『ごめん』って言ったんだよ、コラッ!聞き流しとけや!」

「は、はい……!」

「それから……お前、頑張れよ。」

 

立ち上がりながら、グリムは静かに呟いた。

「頑張れと言われても」と、ダミアンは首を傾げた。

 

「お前、あの時言っただろ?父ちゃんと母ちゃんは、心の奥で自分のことを愛してるはずだって。」

「あ……」

 

グリムに言われて、ダミアンは思い出した。グリムに捕まっていたあの時、確かにダミアンは言った。

父親も母親も自分のことを愛していないかもしれない。だけど心の奥では愛してるはず……そう言った。

 

「俺の前で偉そうに言いやがったんだ。証明してみせろよ。」

 

言いたいことは言えた、とでも言わんばかりにその場から立ち去ろうとするグリム。

しかし、その時ダミアンは叫んだ。

 

「ま、待って!」

 

ダミアンの叫びに、グリムは背を向けたまま足を止めた。

 

「そ……そっちも頑張ってね!ア、アニキ(・・・)!!」

「!」

 

ダミアンはグリムを「アニキ」と呼んだ。ダミアンは、グリムの先ほどの言葉に優しさを感じた。

自分を攫い、殺そうとしたのにも関わらずだ。まるで彼の本心を聞いたような気がして、ダミアンは絆されいった。

 

「ふん……き、気色悪いっての……」

 

そう言いながらも、まんざらでもなくグリムは照れて頭を掻いた。

それを見たフリッドはフッと微笑んだ。

 

「じゃ、またなダミアン。今度は3人でホットドッグ食べような。」

「うん!」

 

フリッドはダミアンと別れると、グリムの後を追い、彼の肩を叩いた。

 

「ちゃんと謝れたな。えらいえらい♪」

「うぜぇ!気持ち悪いんだボゲッ!!」

 

────────────────────────

 

「……なるほど、そんなことがあったか。」

「グリム君、ちゃんと謝れたんですね!」

 

後日、日曜に皆フォージャー家に集まり、フリッドはグリムとダミアンのことを報告した。

そんな中、皆はチラリとリビングの床の方を見た。

 

「おい、いいかクソチビ。」

 

グリムはリビングで遊ぶアーニャを睨んでいた。

 

「俺のことはセンパイかパイセンって呼べ!」

「ぱいせん」

「よし、それでいい。」

 

ロイド達はまだ知らないが、アーニャも翔一達と同じくアギトである。そのため、まだアギトに変身できないアーニャに、グリムは自分のことを先輩と呼ばせようとしていた。

 

(アイツはなぜアーニャに「先輩」と……人生の先輩的な意味か?)

 

そのことを知らないロイドはただただ首を傾げた。

すると、ヨルはテーブルに鍋敷きを敷き、その上に鍋を置いた。

 

「試作の料理を作ってみたんです!食べてみてください!」

 

鍋の蓋を開けると・・・そこには血の池地獄を再現したような毒々しいスープのようなものがあった。

 

「わぁっ、姉さんの料理だ♪」

「こ、これはなんとも……」

 

ユーリとグリム以外は全員冷や汗を掻き、引きつった笑顔を浮かべていた。特にフリッドは初めてヨルの料理を食べるので、なおさら緊張していた。

 

「どうぞ、召し上がれ♪」

「いただきまーす♪」

「い、いただきます……」

 

全員、一斉にスープを食べ始めた。

 

「……ゴフッ!グオアアアアアアアアアアアアア!!」

 

次の瞬間、フリッドは血反吐を吐くと同時にギルスへと変身してしまった。

 

「え、ええええええっ!!?だ、大丈夫ですか!?」

 

急に変身したフリッドに、ヨルは驚いて声を上げた。フリッドは変身したまま息を切らしていた。

 

「はあ・・・はあ・・・大丈夫です。あまりのマズ・・・刺激的すぎて、驚いただけです・・・」

(なんだコレは・・・!?ちょっとした劇薬だぞ!?変身してなければ、間違いなく死んでいた・・・)

 

ギルスの姿のまま、フリッドはチラリとロイド達の方を見た。

 

「どうですか?」

『し、刺激的な味です……』

 

ロイド達もフリッドと似たような反応だった。それでも「マズい」とは一言も口にしなかった。

 

(さすがだな、ロイド君達は……気遣いができてる……ユーリ君の方は……)

 

さらにフリッドはユーリの方を見た。

 

「うまー-----いっ♡」

 

そう叫んだユーリは血管を浮かび上がらせ、涙を流し涎と嘔吐と血反吐を吐いた。

 

「美味しい!美味しいよ姉さん!また腕を上げたね……ゲボボッ!!」

(な、なんという男だ……!姉のためにこんな無理をするとは……初めて君を尊敬したよ、ユーリ君……!)

 

そんなユーリに、フリッドは(逆に)尊敬を示していた。しかし……

 

「マズい。」

『えっ』

 

その一言に、その場にいた全員が固まった。そして「マズい」と言ったのは他でもないグリムだった。

 

「マズいって言ったんだよ。よくもまぁ、こんなクソマズいモンを人に出せんなぁ・・・あ?」

 

不機嫌そうな顔でスープを飲み干したグリムは、皆が思っていたであろうことを平然と言ってのけた。しかし、今のこの状況でその言葉は禁句といえる。

そのため、ロイド達は焦り始めた。同時に、ヨルは「マズい」と言われて目に見えて落ち込み始めた。

 

(こいつ・・・!なんて失礼なことを・・・!)

(味はアレでも、彼女が一生懸命作ってくれたものを……!)

 

ロイド達はグリムを叱ろうとする一歩手前まで来ていた。しかしそれよりも早く、ユーリが声を上げた。

 

「おい!お前、姉さんが作った料理をバカにするな!!」

「マズいからマズいって言ったんだよ。何?お前の舌腐ってんの?それとも頭の方か?」

「~~~~っ!!!お前……!!」

 

グリムの暴言に腹を立てたユーリは、思わず拳を振り上げた。しかし次の瞬間、

 

「おかわり。」

 

グリムはヨルの前に皿を差し出した。

 

『……えっ?』

 

その一言に全員声を上げた。

 

「なんだよ?おかわりって言ったんだよ、よこせよ。」

「え・・・でも、私の料理マズいって……」

 

ヨルは目をウルウルと輝かせながら申し訳なさそうな表情を見せた。

すると、グリムは何故か頬を赤らめ始めた。

 

「うっ……マ、マズいけどよ……食べ物粗末にするの勿体ねぇからよ……そ、それに、せ……先輩が作ったものなら、の、残さねぇよ……!」

 

話していく内に、グリムの顔は段々と真っ赤になっていき、ヨルから目を逸らしながら皿を突き出した。

その反応は明らかに……

 

(こ、こいつのこの反応……!まさか……!?)

(おや?おやおやおや……?)

(せ、青春……!?)

(ぱいせん、チョロい……)

 

グリムのヨルに対する態度に、ロイド達は気が付いた。グリムはヨルに好意を示しているということに。

しかし、グリムのその態度を見ても気づかない人物がいた。

 

(何が「残さない」だ……!生意気な小僧め……!)

 

気づかなかったのはユーリと、

 

「……はい!いっぱい食べてくださいね、グリム君!」

 

ヨル本人だった。

 

「お、おう……」

(やっべ……こいつの顔見てると、ドキドキしてくる……クソッ!)

 

グリムは自分の高鳴る胸の鼓動を抑えるように一心不乱にスープを食していく。

すると、フリッドは心配そうに尋ねてきた。

 

「き、君、体は大丈夫なのか?」

「ん?ああっ、俺、ガキの頃食うものなくて……生ごみとかドブネズミとか日常的に食ってたから、これぐらいだったら全然平気。」

 

あっけらかんとしながら言ったグリムはグビッと何事もなくスープを飲み干した。

 

「おかわり。」

「はい♪」

 

自分の作った料理をいっぱい食べてくれるグリムを見て、ヨルはニコニコと笑っていた。

 

(ヨルさん、喜んでますけど……料理が生ごみと同レベルに評されてるのと同じなのでは……?)

 

その後、グリムはヨルが作った地獄のようなスープを全て飲み干し、いたって平気そうな顔で伸びをした。

 

「あー食った食った。マズい飯ごちそうさん。」

 

グリムはそう言うと席を立ちあがった。

 

「口直ししてくるか……じゃあな。」

「グリム君!」

「あ?」

 

立ち去ろうとするグリムに、ヨルは呼び止めた。グリムはヨルの方に体を向けた。

すると、ヨルはグリムの頭に手を置き優しく撫で始めた。

 

「残さず食べてくれて、ありがとうございます。グリム君はいい子ですね、えらいえらい♪」

「え……あ……あ、あ、あ……!!」

 

その瞬間、グリムの顔は一瞬でトマトのように真っ赤に染まり、今にも煙が出そうになっていた。

そしてグリムはヨルの手を振り払った。

 

「バババババ、バカかお前!?お、俺はガキじゃねぇんだ!!そんなんで喜ぶワケねぇだろ、バーカバーカバーカ!!」

 

顔を真っ赤にしながら突然ヨルをバカ呼ばわりするグリム。先ほどユーリのことを煽ったとは思えない、低い語尾力でヨルを罵倒しはじめる。

 

「バカはバカ同士でバカやってろバーカ!!」

 

もはや「バカ」としか言えなくなったグリムはそのままその場を後にし走り去ってしまった。

そして、そんなグリムを見て、ヨルとユーリ以外の全員は……

 

(分かりやす~~~っ)

 

と思っていた。

対し、ヨルとユーリは、

 

(グリム君、怒っちゃいました……10代って難しいですね……)

(あのクソガキめ……!姉さんの料理食べて平気だったからって調子乗るなよ……!!今に見てろ!)

 

まったくもって気づいていないのだった。

兎にも角にも、こうしてグリムはアギト達の仲間入り(?)を果たしたのだった。

 

 





グリムがヨルさんを好きになる展開は元々考えていなかったのですが、原作読み直してると、ロイドに好意を示す女性は多いのに、ヨルさんに好意を示す描写ってないんですよね。なので、それをやってみたいと思いました。
年下の男を恋愛対象として見ていない&他人の自分への好意に対して鈍感……というヨルさんも描きたかったので……

以下、グリムのプロフィールです

—―――――――――――――――

グリム (本名:グラハム・デズモンド)

職業:殺し屋
能力:アナザーアギトへの変身、頑丈な体と戦闘能力
年齢:16歳(アーニャを覗けば最年少)
身長:168cm(アーニャを覗けば一番低い)
体重:59kg
趣味・特技:体を動かすこと、大食い
好きなもの:肉、スナック菓子、チョコレート
嫌いなもの:ドノバン・デズモンド
好きな異性のタイプ:……ヨル先輩
特徴:褐色肌、牙が生えている、鋭い釣り目に三白眼、ヨルの料理を食べても平然としている、体が頑丈(歯で飛んできた弾丸を受け止める)、力持ち

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