ロイド・フォージャーこと黄昏は、悩んでいた。今現在に至るまで、様々なことが起きた。
アギトの出現から始まり、ギルスの出現、G3及びG3-Xが保安局で開発され、第3のアギト、ルデスの出現……妻役ヨルがアンノウンに襲われ、病院送りになったこと、さらにヨルの正体が発覚し、ロイド自身も仲間に正体を明かしたこと……そして、Dr.イワークの存在とドノバン・デズモンドが発案したとされる「
ロイドはシルヴィア及び「WISE」本部に「
そのことに不安視していたが、それでもロイドは心を落ち着かせることができた。それは、家族がいたからだった。
「ヨルさん、コーヒーにミルク入れます?」
「はい、いただきます!」
「ショーイチ、アーニャ、ココアほしい!」
「はーい、ちょっと待ってね~♪」
「ボフッ!」
「ボンドもご飯ね!今出すから!」
目の前で和気あいあいとしている妻のヨル、娘のアーニャ、ペットのボンド、居候の翔一。それを見ただけでロイドの心は落ち着いた。ロイド自身も、自分の落ち着きように驚いていた。
スパイになってからというもの、ここまで落ち着いたのは経験がなかった。
それも、皆が正体を知っても受け入れてくれたおかげだろう。
(こういうのも……いいかもしれない。うん、いいものだ……)
「じゃあ、いってきます。」
「あっ、ロイドさん!」
その時、仕事に行こうとするロイドをヨルが引き留めた・・・かと思った次の瞬間、ヨルはロイドの頬にキスをしてきた。
「ヨ、ヨルさん……?」
「いいいいい、いってらっしゃいのののの……チチチチ、チウをですね……ふ、ふふ夫婦はすると聞いたので……!!」
ヨルは顔を真っ赤にし、どもりながらゴニョゴニョと話している。その後ろでアーニャと翔一はニヤニヤと笑っていた。
それを見て、ロイドはため息をつきながらヨルの顎に手を当てクイッと上にあげた。
「いってきます。」
そして、お返しとばかりにヨルの頬にキスをし、そそくさと家を出て行った。
(……ア、アレは別にそういうアレじゃない!というか、そういうアレってなんだっけ!?アレがアレでアレがアレになって!?)
ロイドは動揺していた。顔を真っ赤にしてキスをしてきたヨルを見て、「かわいい!抱きしめたい!キスしたい!」という欲求が爆発しそうになっていた。先ほどはなんとか理性を保てたが、家を出た時にはまたその欲求は再発し、自分でも何を考えているのかわからなくなっていた。
(平常心平常心平常心平常心平常心平常心平常心………ッ!!!)
頭の中で念仏のように「平常心」と唱えながら、ロイドは仕事場へと向かったのだった。
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その後、ロイドは「WISE」本部に来ていた。今回の仕事は精神科医としてではなく、本業のスパイとしての仕事だった。
本部内の会議室に呼ばれたロイドは、同じく呼ばれたフィオナ、それに法条とともに指令を待っていた。
「久しいな、法条。」
「ええ、そちらこそ。偽の家族生活はいかがですか?……顔が赤いですよ?」
「なっ!?」
ロイドは思わず顔に手を当てた。落ち着いたはずだが、まだ意識しているのかと思った……が、別に頬は熱くなかった。すると、法条はフッと笑い、
「嘘ですよ?」
(この野郎……!!)
思わずのせられてしまったロイドは心の中で歯ぎしりを立てたが、落ち着いてポーカーフェイスを保った。
すると、法条はフィオナの方に顔を向けた。
「そういえば夜帷、最近ギルスと……フリッド・リードと同棲を始めたそうですね。」
「あの男を観察、調査するためよ。」
からかうようなことを言ってくる法条に、フィオナはポーカーフェイスで淡々と答える。
すると、法条はまたもフッと笑った。
「それにしては随分お熱いようですね。首にキスマークがついてますよ?・・・今度はホントですよ?」
「は……?」
その一言を聞き、フィオナはパッと首元に手を当てて探り始めた。すると、首の後ろに何か
「ぎ、ぎぎぎぎ……!!」
(夜帷がこんな顔をするとは……)
それを発見した瞬間、フィオナは今にも煙が出そうなほど顔を真っ赤に染め、歯ぎしりを立てて見たことがないような顔をした。
(あのバカ……!痕つけるなって言ったのに……っ!!帰ったら刺すッ!絶対に……!!)
勝手にキスマークをつけたフリッドに怒りを燃やしながら、フィオナは元のポーカーフェイスに戻った。
その時、会議室にシルヴィアが入ってきた。
「3人とも集まったな。では、今回の任務の説明をする。」
シルヴィアはそう言うと、3人の手元に写真を手渡した。
写真には二人の夫妻が写っていた。妻と思われる女性は腹が膨れており、妊婦のようだった。
「写真に写ってる男は、西国の政治家、エリック・アンペール氏だ。エリック氏は3日前に殺害された……アンノウンに。」
「確信はあるのですか?」
フィオナが尋ねると、シルヴィアはもう一枚写真を配った。写真に写っていたのは死体だった。しかもその死体は、捻じ曲げれていた。まるで雑巾を固く絞るように。それを見た瞬間、3人はアンノウンの仕業だと確信した。
「今回のお前たちの任務は護衛だ。エリック氏の残された家族……妻のエレーヌ婦人と、腹の中にいる子どもを死守しろ。殺されたエリック氏とエレーヌ婦人は、両者ともに『WISE』に多額の資金援助をしている。ここでアンノウンに殺されるわけにはいかん。」
『了解。』
3人は返事をすると、すぐさま行動に移った。
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昼間の商店街……護衛対象であるエレーヌ婦人はここにいた。すでにSP達に囲まれながら買い物をしていたが、それより遠くから、変装をしたロイド達が見張っていた。
「こちら黄昏……そっちはどうだ?」
『異常なし。』
『こちらもです。』
通信機を使い、二人と連絡をかわすロイド。すると、フィオナがふと呟いた。
『もしアンノウンが現れたら、我々だけで倒せるでしょうか・・・?』
その言い分はもっともだった。ロイド達の懐には、新開発されたアンノウン用の「対アンノウン用貫通弾」が装填された拳銃が入っている。
ロイドは以前、この銃を使ったことがある。その時、確かにダメージを与えてはいたが、実際に倒したのはアギトだった。
「……今は護衛に集中しろ。」
フィオナと同じことを考えたロイドだったが、自分に言い聞かせるようにフィオナにも言い聞かせた。
その時、エレーヌ婦人は車に乗り込んだ。
それを見て、ロイド達も車に乗って後を追った。
「……大丈夫、大丈夫だからね……」
車の中で、エレーヌ婦人は自分の腹の中にいる子どもに語り掛けた。
「きっと正義の味方が守ってくれるからね……」
そう言って腹を優しくさすった。と、次の瞬間、車が急ブレーキをかけた。
「キャッ!」
「おい、急ブレーキをかけるな!一体なんだ!?」
隣にいたSPが運転手に怒鳴り声を上げた。運転手は震えながら道路の向こう側を指さした。
そこには……
「ア、アンノウンが……!!」
目の前にはトカゲの姿をした灰色のアンノウン、リザードロードが仁王立ちしていた。
「フゥゥゥゥ……ムンッ!」
片腕で目の前にある邪魔な車を払い飛ばしながら、リザードロードはエレーヌ婦人の乗る車に向かっていた。
「奥方様!逃げてください!」
SP達は咄嗟に車を出て、リザードロードに向けて銃を発砲するが、銃弾はリザードロードの手前で停止し、粉々に砕けた。
「そ、そんな……!」
「フゥンッ!!」
リザードロードは持っていた三叉の槍を振りかざすと、SPの一人に向かって思い切り投げつけた。
槍はまっすぐ飛んでいき、SPの胸に突き刺さった。
「がっ……!!」
さらにリザードロードはそのまま勢いよく駆け付け、槍を手にするとそのまま振り回して回りにいたSP達を一瞬で真っ二つにしてしまった。
そして、リザードロードはエレーヌ婦人が乗った車のドアをこじ開けた。
「いやあああああっ!!!」
エレーヌ婦人は悲鳴を上げた。だが次の瞬間、銃声とともに銃弾がリザードロードに命中した。
「グウッ!?」
痛みが走ったリザードロードは思わず後ろに後ずさった。当たった銃弾はアンノウン用の貫通弾。
ロイド達は現場にたどり着き、リザードロードに発砲したのだ。
ロイド達はさらに発砲し、リザードロードを後ろに下がらせる。
「夜帷、婦人を確保しろ!」
「はい!」
車までたどり着くと、フィオナは婦人の手を引いて車から脱出した。
「婦人、こっちへ!」
「あ、ありがとう……ッ!?前っ!」
その時、エレーヌ婦人は前を指さした。顔を向けると、そこにはもう1体の、赤い装飾を身に着けたリザードロードが立ちふさがっていた。
「もう1体!?」
「しまった……待ち伏せてたか!」
「こっちの銃弾が尽きますよ……!」
ロイド達が今の今まで対峙していた槍を持ったリザードロードは、ダメージこそ受けているが致命傷には至っていない。このままでは銃弾が尽き、返り討ちになるのが容易に想像できた。
「くっ……!ん?なんだ、この音は……?」
その時、耳に音が響いてきた。それはバイクのエンジン音だった。
「ハッ!」
道路の向こうから、黒い影が飛び出し、フィオナと婦人の前にいる赤のリザードロードを蹴り飛ばした。
「ア、アギト!!」
二人の前にアギトが現れた。さらに……
「ガァウッ!!」
青のリザードロードの前にギルスが現れ、ギルスクロウで切り刻む。
「ギルス!」
(来てくれたのか!)
二人の仮面ライダーが来てくれたことにロイドは喜んだが、その横で法条は銃を構えた。その銃口は、なんとアギトの方へ向けられていた。
「なっ……!?何をしているんだ!?」
「決まってるでしょう!アギトを捕獲するんですよ!!」
ロイドは咄嗟に腕を掴んだが、法条は構わず銃口を向け続ける。
「今が千載一遇のチャンスです!邪魔しないでください!」
「やめろ!婦人に当たるだろっ!!」
今、銃を撃てばエレーヌ婦人に当たる可能性が高かった。だがそれに構わず、法条はアギトを捕獲しようとしていた。そして無理にでも銃口を向け、引き金を引こうとした。
「この……やめろォッ!!」
その時、ロイドは大声で叫びながら、思い切り法条を殴り飛ばした。
「がふっ!た、黄昏……!!」
殴られ、その場に転がった法条はロイドを睨みつけた。そんな法条を無視し、ロイドは婦人とフィオナの元に駆け寄った。
「大丈夫ですか?行きましょう!」
「え、ええ・・・」
ロイドは殴った法条を置き去りにし、二人を安全な場所に連れていくため、その場を去った。
「おっ、邪魔な奴らはいなくなったみてーだな……」
その時、ライダーとアンノウンが戦う戦場に男の声が響いた……かと思った次の瞬間、目にも止まらぬ速さで赤と青のリザードロード、両方が殴られ、宙に浮かんだ。
「俺を忘れんなよ!」
現れたのは新参者、アナザーアギトこと仮面ライダールデス。さらに……
「G3-X、現場に到着しました!戦闘開始します!」
G3-Xを装着したユーリが同じく到着した。
「手伝うぜ、アギト先輩!」
「支援します、フリッ・・・ギルスさん!」
ルデスはアギトの方へ、ユーリはギルスの方へ移動した。
ルデスはベルトから専用の武器「ダークトマホーク」を取り出し、柄を連結させてハルバードへと変化させた。
アギトもベルトから「ストームハルバード」を取り出すと同時に「ストームフォーム」へと変化した。
「ハッ!」
「オラッ!」
二人は互いにハルバードを赤のリザードロードに向けて振り下ろす。赤リザードも負けじと槍で応戦し、長物対決に持ち込んだ。
そのころ、ユーリとギルスの方は……
「フンッ!ウガァッ!!」
ギルスは触手「ギルスフィーラー」を鞭のように振るい、遠間から青リザードに攻撃した。ユーリも遠距離から銃を乱射し、一方的に攻撃していく。
「グッ、グオオオオオオッ!!」
青リザードは叫び、玉砕覚悟で突っ込んでいく。
「GG-02、アクティブ!」
すると、ユーリは銃「GM-01」にグレネードランチャーである「GG-02」を連結し、グレネード弾を放った。
無謀にも突っ込んできたため、青リザードはグレネード弾の直撃を受けた。
「ウオアアアアアアアッ!!」
そこに、ギルスが隙を逃さず懐に潜り込んだ。体を捻り回転し、そこから連続の回転蹴りを浴びせていく。さらに、そこから得意のかかと落としを脳天に炸裂させた。
「グウッ!?」
「ユーリ君、今だ!」
「はい!GX-05!」
ユーリはガトリング砲を取り出し、さらに「GM-01」と連結し、銃口にロケット弾頭を装填した。
そして、青リザードに向けて発射した。
「グッ、グオオオオオオッ!!」
ロケット弾頭を食らった青リザードは吹き飛び、地面に転がった。
その隙に、ギルスは踵のヒールクロウを伸ばした。
「ウオオオオオオオオオオオオオ!!フッ!」
跳躍するとともに片足を頭上まで振り上げ、そのまま青リザードの肩にかかと落としを食らわせ、クロウを食い込ませた。
「ウオアアアアアアアッ!!」
ギルスは牙をむき出しにして叫ぶと、そのままもう片方の足で蹴り飛ばし、青リザードの背中に刺さったクロウで心臓を切り裂いた。
「グウウウウッ・・・グオアアアアアアアッ!!」
ギルスとG3-X、両者の必殺の一撃を食らい、青のリザードロードは爆発し、粉々に散った。
アギトとルデスの方も決着がつこうとしていた。
「そらそらそらっ!」
ルデスは激しくハルバードを回転させながら赤リザードに迫る。そして頭めがけて振り下ろす。
赤リザードはそれを防いだ。しかし、ルデスは防がれた瞬間、ハルバードの連結を解除しトマホーク状態に戻し、防がれてない方で腹に一太刀浴びせた。
「からの……!どりゃあっ!!」
さらにトマホークの背の部分を連結させ、両刃の大斧に変化させた。そのまま勢いよく振り下ろした。
赤リザードは咄嗟に槍で防ごうとしたが、大斧の方が威力は高く、赤リザードは槍もろとも斬られた。
「グアアアッ!!」
「ハアッ!!」
その時、バーニングフォームに変化したアギトは、ルデスの背中を踏み台にして宙に飛び上がり、炎を纏った拳で殴りつけ、地面に叩きつけた。
「さぁて、とどめといこうぜ!」
「うんっ!」
『ハアァァァァ……!!』
アギトはシャイニングカリバーに炎を、ルデスは地面に浮かんできた深緑色の紋章を大斧に集中させた。
「デヤアァァァァァァァッ!!」
「ゥンドリャアアアアアッ!!」
アギトは突進しながらシャイニングカリバーの炎の一閃で、ルデスは紋章エネルギーによって強化された大斧による一撃で赤のリザードロードを切り裂いた。
赤のリザードロードは断末魔を上げることなくバラバラになり、爆発していった。
「フッ……ざっとこんなもんだぜ。」
「うるさいな……お前は戦闘中喋りすぎなんだよ!」
得意気に笑うルデスに、ユーリは叱ろうとした。すると、気に入らないのかルデスはユーリを睨んできた。
「あ?こいつは余裕の表れだよ。そういうお前は全然喋らねえな。余裕ねぇのか?」
「なっ……!?なんだと!?」
「はいはい、二人とも喧嘩しないの!」
一触即発の状態になった二人を、ギルスが間に入って宥めた。そこにアギトも加わってきた。
「今日カレー作るんですよ!いっぱい作りますから、よかったら食べに来てくださいね!」
「俺、肉大盛な。」
「フィオナも連れていっていいかな?」
「もちろん!」
「どうでもいいけど、早く立ち去った方がいいぞ!この場は保安局で現場検証が入るから!」
アギト達は他愛のない会話を続けながら、バイクにまたがった。
その時、アギトは後ろを振り向いた。
(さっき誰かいたような気がしたけど・・・気のせいかな。)
法条の姿が消えていた。戦闘の最中、法条は密に逃げていたのだ。それに気づかなかったアギトは、首を傾げたが、特別気にすることなくバイクを走らせた。
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パァンッ!
「WISE」本部内の一室で乾いた音が鳴り響いた。ロイドが法条を呼び出し、平手打ちをかましたのだ。
「なぜ殴られたか分かるな?……なぜあの時アギトを攻撃しようとした!?」
ロイドは怒鳴り声を上げた。法条は黙って説教を聞いていた。
「俺達の任務は護衛だぞ!それをお前は功を焦って・・・いや、私欲に走ったな!お前の行動で全てを台無しにするところだった!反省しろっ!!」
ロイドは声を上げて怒った。任務が台無しになる・・・というだけでなく、アギトに、翔一に危害が加わるかもしれなかったのだ。彼を傷つける者は許せないと思っていたからだ。
言いたいことを言ったロイドは、そのまま部屋を出て行った。
「……チッ!」
一人取り残された法条は舌打ちを打った。
(こんな屈辱を味わうとは……!だが、これは使える……!)
歯ぎしりを立てた法条だったが、すぐにニヤリと笑った。
「黄昏に殴られた」・・・その結果を利用するつもりだった。
(黄昏は何度もアギトと接触している……接触する内に、アギトを神のように信仰するようになった。それで私の計画を邪魔した……この筋書きで行こう……!)
法条はロイドを陥れ、さらにアギト捕獲作戦に利用するつもりだった。
自身の身勝手な考えを報告しようと、シルヴィアのいる部屋の前に立った。ノックをしようとしたその瞬間、ドアが開いた。
「……法条……」
「
「そんなことはいい。ちょっと来い。」
シルヴィアに誘われるまま、法条は部屋に入った。すると、部屋の中には一人の男が立っていた。
その男は、Dr.イワーク……アギトとアンノウン、両者と密接に関わる男だ。
「彼は……?」
「……Dr.イワーク。本名は、アベル・ユーゴ。彼は超能力研究の第一任者であり・・・この『WISE』の―――だ。」
「ッ!?」
シルヴィアの言葉に、法条は目を見開いて驚いた。それほどまでに衝撃的だった。
イワークことアベルは、「WISE」と密接に関わっていたのだ。
すると、アベルは口を開いた。
「……このことはメンバー全員に知らせるつもりだ。それから、『オペレーション
「真実・・・?どういうことですか!?」
「……私も、今知らされた。」
疑問ばかりが浮かぶ法条に、シルヴィアは顔を背けながら答えた。
そして、アベルの口から真実が語られた。それは、「WISE」のメンバーが、『オペレーション
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「WISE」にてそんなことが起きてるとは知らず、ロイドは家へ帰ってきた。
「ただいまー……」
「あ、おかえりなさーい!」
家に入ると、すでに翔一達は夕食を食べていた。食卓にはグリムとユーリの姿もあった。
さらに、かぐわしい香りが鼻孔をくすぐってきた。
「この匂い・・・今日はカレーか。」
「はい、いっぱい作ったんでみんなに食べてもらってるんです!」
「津上先輩、おかわり!」
「はーい!」
さっそく完食したグリムが、おかわりを要求してきた。翔一は快く皿を受け取った。
その時、ロイドはその場にヨルがいないことに気が付いた・・・かと思うと、洗面所の方からヨルが出てきた。
「ロ、ロ・・・ロイドしゃん!」
噛みながら近づいてきたヨルは、ロイドの顔に背伸びをしながら近づき、朝と同じように頬に……ではなく、唇にキスをした。
「お、お、お、おかえりなさいの……チウ、です……」
「……チッ」
「ううっ、ね、姉さん……」
人前ではばからずキスをしたヨルに、翔一とアーニャはニヤニヤ笑い、ヨルに片想いしていたグリムは舌打ちを鳴らし、ユーリは泣きじゃりながら見ていた。
キスされた当の本人は、ポカンとしながらもすぐにキリッとした表情に戻り、ヨルをみつめた。
(こんな人前でキスとは……ヨルさん、成長したなぁ……)
「ただいま、ヨルさん。」
「さ、さっき歯を磨いてきまして……カレー臭くないですよね……?」
「フフッ、大丈夫ですよ。」
先ほどまでカレーを食べていたヨルは、おかえりのキスをするために猛スピードで歯を磨いていた。それを知ったロイドは微笑ましく思い、笑みを浮かべた。
と、その時……
「そういえばフリッドさん遅いなぁ……フィオナさんと来るって言ってたのに……」
と、翔一が声を上げた。
そしてそのころ、フリッドの方では……修羅場を迎えていた。
「ま、待てフィオナ!話せば分かる!」
自宅の風呂場にて、フリッドはナイフを持ったフィオナに迫られていた。
ポーカーフェイスではいるが、雰囲気からして怒っているのが分かる。
「あれほどキスマークつけるなって言ったのに……しかも首の後ろなんて分かりづらい場所に……案外狡いのね。」
「狡いわけじゃない!それに分かりやすい場所にもつけた!胸にひとつだけ……」
ドスッ!
「ゴフッ!」
次の瞬間、ナイフで腹を刺され、フリッドは口から血を吐いた。
「・・・言いたいことはそれだけ?」
「ち、ちょっと待ってくれ……一つ言わせてくれ……フィ、フィオナだって悪い!君は魅力的で、ギャップが良すぎてかわいいんだ!昨日の夜だって、俺の名前をずっと連呼して求めて……!!」
ドスッ!
「ガフッ!」
言っている最中、またもフリッドは腹を刺されて血を吐いた。
さらにフィオナは怒りを表すようにぐりぐりとナイフを押し付けてきた。
「ゴフゥッ!!フ、フィオナ……そ、それは照れ隠しとしては刺激が強すぎ……俺じゃなきゃ死んでるけど……?」
「照れ隠しじゃないわよ、このバカッ!!反・省・し・ろぉぉぉぉぉっ!!!」
「グオオオオオオッ!!」
ギルスの力のおかげでフリッドは死にはしなかったが、ボロボロになった。その後風呂場は殺害現場のようになったのは言うまでもない……
おまけ「惚気…?」
「……ということがあってだな。ひどい話だろ?」
後日、フリッドはフィオナに刺されたことをグリムに話していた。
「……おっさん、今のは惚気だと思っていいのか?今、間接的に自分と彼女がヤリまくってキスしまくってること話したよな?知り合いにである俺に。」
「な、何をバカな……でも……いつもポーカーフェイスの彼女が、俺の前でだけ表情が崩れるのが堪らないんだ……それ見れるなら刺されてもいい……」
フリッドは恍惚とした表情を浮かべながら、口元を歪めていた。
それを、グリムはドン引きしながら冷たい目で見ていた。
「……なんであの女が絡むとIQが下がるんだろうな、アンタ。」
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最後のフリッドとフィオナのシーンは入れる予定はなかったのですが、ギャグ成分が少なかったため入れました。
今後、シリアスシーンが続くので、ギャグはありません……その分、おまけが多くなるかもしれません。