SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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今回、初めて特殊タグを使いました


第48話「光輝」

 

「はーい、お待たせしました~!」

 

翔一はにこやかに笑いながら、テーブルに皿を置いた。皿にはトマトのパスタが綺麗に巻かれて盛られている。

 

「ナスとトマトの冷製パスタ、翔一スペシャルです!」

「わぁっ、おいしそうですね!」

「冷製パスタなんて初めてだな……」

「いららきますっ!」

 

3人ともフォークでパスタを巻き、一口食べ……目を輝かせた。

 

『おいしいっ!!』

 

3人は同時に叫ぶと、さらに食の手を進めた。

 

「こんなにおいしいパスタ、初めてです~♪」

「また腕を上げたんじゃないか?翔一君。」

「いやぁ、それほどでも!あ、それからデザートもあるんですよ!もう一つの翔一スペシャル……ニンジンで作ったニンジンケーキです!」

 

さらに翔一はテーブルの上にオレンジ色のケーキを置いた。それを見て、ロイドとヨルは「おおっ」と声を上げたが、アーニャはしかめっ面を見せた。

 

「うっ、ニンジン……」

「大丈夫だよ!これならアーニャちゃんでも食べられると思うからさ!俺もね、子どものころトマトが嫌いだったんだ。でも、思い切って食べてみたら凄く美味しくて……」

「ま、待った!」

 

アーニャに語り掛ける翔一に、ロイドが待ったをかけた。

 

「い、今、『子どものころ』って……記憶が戻ったのか!?」

「……ちょっとだけ。」

 

翔一はそう言うと親指と人差し指で小さい隙間を作って見せた。

しかし、翔一に少しでも記憶が戻ったことを喜び、ロイドは微笑んだ。

 

「そっか……でも良かったな、記憶が戻って。」

「そう、ですね……」

 

にこやかに微笑むロイドに対し、翔一はどこか浮かない表情だった。

 

「どうした?」

「いや、ちょっと……記憶が全部戻ったら、どうなるのかなって……それに、ロイドさん達とお別れになるのかなって……」

 

その一言に、食卓の空気が静まり返った。考えないようにしていたが、翔一はいつかロイド達と別れる日が来る。ロイド達にはそれが分かっていた。分かっていたが故に、何も言えなかった。

すると、アーニャが口を開いた。

 

「……アーニャ、ショーイチにずっといてほしいっ!」

 

そのアーニャの一言に続くように、ロイドとヨルも口を開いた。

 

「そうですよ……翔一さんだって私達の家族です!」

「ああっ、ずっとここにいればいいじゃないか!」

「みんな……」

 

ロイド達の優しい言葉に、翔一は胸が締め付けられそうになった。

 

「で、でも、もし俺が極悪人だったら……」

『それは絶対ないっ!』

 

その時ロイド達は一斉に声を上げた。

 

「だいたい、君みたいなバカな奴が悪人なワケないだろ。」

「そうですよ、毎回笑えないギャグ言いますし。」

「それに、おひとよし!」

「褒めてるんですかそれ?」

 

可笑しく思ったのか、翔一は笑った。ロイド達も釣られて声を出して笑った。

同時に、翔一はロイド達に感謝していた。「ここにいていい」、「ここにいてほしい」と言ってくれたロイド達に、感謝してもし足りないほどに。

その時、玄関のインターホンが鳴り響いた。

 

「ヨルせんぱーいっ!飯食いに来たぞー!」

 

その声はグリムだった。今日も今日とて食事をたかるつもりらしい。

 

「はーい!」

「まったく毎日毎日……」

 

またしてもグリムが来たことにロイドはため息をついた。同時に、ふと思った。

「翔一はいずれ、自分達の元を去ってしまう」ということを。どれだけ自分達が「ここにいていい」と言っても、いずれはその運命を辿ってしまう。ロイドはそう思った。

 

(……何か、できないだろうか。彼のために……)

 

翔一のためにしてやれること……そう考えたロイドは、あることを思いついた。

 

────────────────────────

 

日曜日、ロイド達は家族揃って出かけていた。もちろん翔一も一緒に。

ロイドは考えた。翔一のために何をしてやれるのか……それは、できる限り一緒にいて、翔一に思い出を作ってやること……それが最良だと思ったのだ。

 

そして、ロイド達は買い物のため街のスーパーマーケットを訪れた。

 

「……翔一君、翔一君っ!」

「うーん……」

 

スーパーの鮮魚コーナーで、翔一は唸り声を上げていた。その後ろでロイドが慌てていた。

それもそのはず、鮮魚コーナーに並べられている魚の口に、翔一は指を入れ始めたからだ。

そうなれば当然、周りの人間は翔一及びロイド達を見てくる。

 

(くっ、目立つ……!)

(お魚に指を入れたら、何が分かるんでしょうか……)

 

慌てるロイドをよそに、ヨルは翔一の行動に興味を示し、自分も真似をして隣にあった魚の口に指を入れた。

 

「ヨルさん!?」

「うーん……」

 

そして翔一と同じく唸り声を上げて考えこんだ。

 

(くそっ、ヨルさんまで……!頼む、頼むからやめてくれ……!!)

「アーニャもやるっ!」

「ちょっ!?」

 

アーニャまで二人の真似をして魚の口に指を入れ始めた。

 

「あ、あのーお客様……他のお客様のご迷惑になりますので……」

「す、すいません!今すぐ……」

 

見かねた店員に声をかけられ、ロイドは慌てて3人を止めようとした。

しかし、

 

「あ……」

 

ロイドは声を上げた。ふと目に入ったヨルの指……薬指を見つめた。その時、ロイドは思った。

「結婚指輪をあげていない」、と……

偽の家族生活が始まってからというもの、ロイドはヨルに結婚指輪を渡していなかった。最初は指輪を渡すはずだったが、初めて会ったその日に落としてしまい、苦肉の策で手榴弾のピンを指輪代わりにはめてあげた。

ロイドは考えた。今、本物の指輪を渡してあげたら、喜んではめてくれるだろうか……変に思われないだろうか……

 

「これだっ!!」

 

その時、翔一が声を上げ、店員に魚を差し出した。

 

「これ買います!これが一番新鮮な魚です!」

「あ、ありがとうございます……」

「すごいですね、翔一さん!指を入れただけで新鮮かどうか分かるなんて……あれ?」

 

新鮮な魚を当てた翔一を褒めながら、ヨルは魚の口にいれた自分の指を抜こうとした。しかし、奥まで入れてしまったのか中々抜けなかった。

 

「抜、け、な……ふんっ!」

 

思い切って腕を引いた瞬間、ブチッと音を立てて魚の頭が千切れた。

 

『あっ』

「こ……これも買いまーす……」

 

────────────────────────

 

買い物を終えた後、帰り道にある公園でロイド達は一休みした。

 

「ショーイチーーっ!!」

「あははっ、アーニャちゃんパス!」

 

アーニャと翔一、それにボンドは公園の原っぱでボール遊びをし、それをロイドとヨルは日陰にあるベンチに座り、微笑ましく眺めていた。

すると、微笑んでいたロイドの顔がキリッとした、しかしどこか寂し気な顔になった。

 

「……ヨルさん。さっき、翔一君には『ずっといていい』なんて言いましたけど……でも、いつかは翔一君は俺達の元から離れていくと思うんです。」

「ッ!そんな……!」

 

突然のロイドの一言に、ヨルは思わず声を上げた。しかし、それを遮るようにロイドは話を続けた。

 

「もちろんっ!今すぐじゃありませんし、翔一君にずっといてほしいのは本当です!でも……もし、もしも離れてしまうなら……その時までに、翔一君に何かしてあげたいんです。」

「ロイドさん……」

「ヨルさん、一緒に翔一君の思い出を作るのを……手伝ってくれますか?」

 

ロイドは真剣な表情でヨルを見つめながら言った。すると、ヨルはニコッと笑い、ロイドの手を取った。

 

「もちろんです!」

「あっ……」

 

急に手を握られ、ロイドは頬を赤く染めた。同時に、ヨルの薬指が目に入った。

 

(指輪……)

 

その時、ロイドの脳裏にある光景が浮かんでいた。

自分が買った指輪をヨルの指にはめる光景だった。そして……

 

『ヨルさん……俺は、あなたのことが……』

 

しかし、思い浮かべた瞬間ロイドは首を横に振って振り払った。

 

(な、何を考えているんだ俺は!?翔一君の思い出を作ろうと言ってるのに、こんなこと……!!)

「あの、ロイドさん……?どうしたんですか?」

 

ロイドの様子が変なことに気づいたヨルは、心配そうに顔を覗き込んできた。

 

「い、いえ、なんでもないです!ヨ、ヨルさん!そ、その……ゆ……ゆ……」

「湯?」

 

ロイドは指輪のことをヨルに伝えようとしたが、どもってしまい「指輪」という単語が言えなかった。

 

「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆ……つ、つつ、つ……」

「……あっ!」

 

その時、ヨルは何かに気づき、ロイドの手を離した。すると、なぜか自分の爪を見始めた。

 

「……やっぱり!私ったら指の爪(・・・)切るの忘れてました!」

「……えっ?」

「ロイドさん気づいてくれたんですね!ありがとうございます!」

 

どうやらヨルはロイドが「指の爪」と言いたかったのだと解釈し、そのことをロイドに感謝している。

しかし、勘違いされた方は何とも言えず、ロイドは死んだ魚のような目になっていた。

 

「ドウイタシマシテ……」

(……ヨルさん、あなたって人は……)

 

もはや何も言えず、ロイドの表情は死んだままになった……

 

「ロイドさーんっ!ヨルさーんっ!」

 

その時、翔一がアーニャを抱きかかえながら二人の元に駆け寄ってきた。

すると、翔一はロイドの様子に首を傾げた。

 

「あれ?ロイドさんなんか元気なくないですか?」

「大丈夫……大丈夫……」

(ヨルさんは悪くない……俺の心が弱いだけ……)

(ちち、ボロボロ……)

 

ショックを受けているロイドの心を読み、アーニャは何とも言えない顔をしていた。

そんな中、翔一が本題に入った。

 

「そろそろ帰りましょう。魚買ったから、痛む前に冷蔵庫に入れないと……」

「そうだな……じゃあそろそろ……」

 

「帰ろう」とロイドが言おうとした瞬間、翔一は目を見開き、明後日の方向を見始めた。

 

「翔一さん?」

「すいません!俺、行きます!」

 

翔一はそう言うと、抱きかかえていたアーニャを優しくおろした。

 

「アンノウンが出たのか!?」

「はいっ!いってきます!」

 

そう言って、翔一はロイド達の元から走り去ってしまった。だがその時、ボンドの脳内にある映像が流れた。

それは、アンノウンと戦い、勝利したアギトが何者かに取り囲まれてしまう姿だった……

 

「ボフッ!ボフッ!!」

 

ボンドは未来を予知できる。アギトの、翔一の未来を予知したボンドはロイドのズボンを噛んで引っ張り始めた。

 

「お、おい!どうしたんだボンド?」

(ボンド……ッ!?ショーイチが、ショーイチがあぶないっ!!)

 

ボンドの心を読んだアーニャは、翔一に危機が迫っていることを知り、ボンドの背中にまたがった。

 

「アーニャ、アギトみにいくっ!」

 

アーニャは嘘・・・とも言いにくいことを言いながらボンドの頭を叩き、走らせた。

 

「コ、コラ!待つんだアーニャ!ボンド!」

「お、追いかけましょう!」

 

二人は慌てて後を追い始めた。

 

────────────────────────

 

場所は変わり、港の倉庫……

 

「た、助けてくれぇ!!」

「グルルルル……」

 

倉庫内で男の悲鳴がこだました。男の目の前にはフクロウの姿をしたアンノウン、オウルロードが鉤爪を手にしてにじり寄っていた。

オウルロードの後ろにはすでに殺された作業員達の死体が無造作に散らばっていた。

 

「フンッ!」

「がっ!」

 

オウルロードは鉤爪を男の腹に突き刺した。すると、鉤爪は熱を持ち始め、男の内臓をその熱で炙り始めた。

 

「ああああああああっ!!あ、熱いっ!熱いぃぃぃぃぃ!!」

 

男は熱さのあまり暴れ狂い、逃げようとした。しかしどれだけ暴れても鉤爪は離れず、やがて男は内側から内蔵を焼き尽くされてしまい死に絶えた。

その時、一足遅く翔一がたどり着いた。

 

「ッ!!」

「アギト……」

 

オウルロードの足元に転がる死体を見て、翔一は眉間に皺を寄せ、拳を握り、静かに怒りを燃やした。

そして、金色のひかりとともに腰にベルトを出現させた。

 

「変身ッ!!」

 

ベルトの両端のスイッチを押し、アギトへと変身した。

 

「ハッ!」

 

変身してすぐ、アギトはオウルロードに向かって突進した。しかし、オウルロードは翼を広げて突進をかわした。

 

「ッ!」

 

攻撃をよけられ、アギトは宙を見上げた。するとオウルロードは飛翔しながら突進し、すれ違い様に鉤爪でアギトの胸を切り裂いた。

 

「うわっ!!」

 

攻撃を食らい、地面に転がるもすぐに立ち上がった。

 

「ハァァァァァァ……ハアッ!!」

 

そして、体に力を込めそれを解き放つように、バーニングフォームへと姿を変えた。

その時、オウルロードはもう一度アギトに向かって突っ込んできた。しかし次の瞬間、アギトは跳躍し、飛翔するオウルロードに掴みかかった。

 

「ッ!?」

 

突然のことに動揺し振り落とそうとするオウルロードだったが、アギトは決して離そうとせず、体中に力を込めた。すると、バーニングフォームのひび割れた装甲から炎が浮かび上がり、それは業火となってオウルロードの体を燃やした。

 

「グッ、グオオオオオオッ!!」

 

燃やされる苦しみに悶えながら、オウルロードはそのまま倉庫の壁を突き破り外に投げ出された。

動揺にアギトも投げ出され、地面に転がった。

 

「翔一君!」

 

その時、ちょうどロイド達が港の倉庫にたどり着いた。しかし、アギトはロイド達に気づくことなく……何故か空に燦々と輝く太陽に目がいっていた。

戦いの最中……決して敵から目を背けてはいけない。敵から目を離すことは死を意味する……にもかかわらずアギトは空を見上げ、全身に太陽の光を浴びた。

 

(敵から目を離すなんて……!?翔一さん、何を……!?)

「危ないっ!!」

 

次の瞬間、オウルロードはアギトに向かって鉤爪を振り下ろしてきた。しかし……

 

ズドンッ!!

 

爆音にも近い衝撃音が鳴り響き、オウルロードは地面に叩きつけられていた。そしてその地面には小さいクレーターが出来上がっていた。

 

「い、一体……何が……!?」

「速すぎて、見えませんでした……!!」

 

ロイド達は一瞬何が起こったのかわからず、冷や汗を搔いていた。オウルロードも同様だった。

ただ、一つ言えるのは、アギトは拳を振るっただけだった。それも、光の速さ(・・・・)で。

すると、いまだに太陽の光を浴び続けているアギトに変化が起きた。バーニングフォームの装甲がどんどんひび割れていった……と思いきや、その装甲が剥がれ下から新たな装甲が顔を出した。

 

「ちち、はは……ショーイチが、ショーイチがかわるっ!!」

 

アーニャは満面の笑みで叫んだ。その一言が示すように、アギトは姿を変えた。

筋骨隆々なマッシブボディだったバーニングフォームとは異なり、細見で通常のグランドフォームに似ていた。赤い頭部はそのままだが、装甲は銀色になり、胸のアーマーには特殊な模様が刻まれている。

 

(なんて、神々しい……!)

(綺麗……)

 

ロイド達は変わったアギトの姿に見惚れていた。まるで神の如く神々しくなったアギト……姿が変わるや否や、オウルロードの方に顔を向けた。

すると、ベルトからシャイニングカリバーを出現させ手にした……かと思いきやそれを二つに分離させ二刀流になった。

 

「ハッ!」

 

輝く軌跡を描きながら二振りの剣が振り下ろされる。その速さは目にも止まらぬ、まるで閃光のように振り下ろされ、残像が残るようだった。

そんな斬撃を、まるで演舞でも踊るようにオウルロードの全身に浴びせていく。

 

「フゥゥゥゥ……」

 

深く息を吸い込むのと同時に、二刀になったシャイニングカリバーに光を纏わせる。

 

「ハッ!」

 

一太刀、

 

「デヤァッ!!」

 

さらにもう一太刀。まるでXを描くようにオウルロードを切り裂いた。

 

「グッ!ウウウウウウッ、ウオオオオオオオオッ!!」

 

断末魔の叫びをあげ、オウルロードは爆発していった。

その爆炎を背に、アギトは静かに佇んでいた。

 

「まるで、光輝(シャイニング)そのもの……」

 

ロイドが静かに呟いた一言は、まさに今のアギトを示す言葉だった。

アギトは変身を解き、翔一の姿に戻った。

 

「あれ?みんな?」

 

すると、ようやくロイド達に気づいたのか駆け寄ってきた。

 

「し、翔一君!今のは一体……!?」

「いやー、俺にも何がなんだか……でも、なんでロイドさん達がここに……?」

「それは、アーニャが君を見たいと言い出して……」

 

ロイド達は一斉にアーニャの方を見出した。アーニャはしどろもどろになり、目を泳がせた。

 

「そ、それは……その……」

 

自分とボンドが超能力者であることを明かせないため、アーニャは必死に嘘をつこうとしていた。

だが、その時どこからともなくエンジン音が聞こえてきた。その音はだんだんと近づいてきて、ロイド達のその正体を現した。

 

「な、なんだ!?」

 

ロイド達の前に現れたのは黒塗りの車4台。ロイド達を取り囲むように止まった。

そしてその内の一台のドアが開き、そこから現れたのは……

 

「なっ・・・・!?ほうじょ……ジョージ!!」

 

イーデン校の教頭にして「WISE」のスパイ、法条だった。

法条はフッと笑うと手をパンパンと鳴らした。その音を合図に他の車からスーツを着た男達が一斉に出てきた。

 

「全員、対象を捕獲してください!」

 

法条のその言葉に従い、男達は一斉にある二人の人物に飛び掛かった。その人物とは、翔一とアーニャだった。

 

「なっ!?」

「やぁっ!?」

「何をするんだ!?やめろ!!」

「二人を……!放しなさいっ!!」

 

三人が突然の事態で慌てる中、ヨルは怒りを露わにして翔一とアーニャを捕まえた男達に向かっていった。

しかし、

 

「動かない方がいいですよ、いばら姫(・・・・)。」

「!?」

 

法条のその一言に、ヨルは動きを止めた。ヨルは動揺していた。何故、アーニャの通う学校の教頭が自分のことを知っているのかと。

すると、法条はニヤリと笑い、懐から抜いた拳銃を翔一とアーニャの方へ向けた。

 

「あなた方の大事な二人が蜂の巣になりますよ?」

「くっ……法条ッ!!」

「黄昏……あなたにはガッカリですよ。アギトを二人(・・)捕獲しているにも関わらず、それを本部に報告しないなんて……これは裏切り行為ですよ。」

 

法条のセリフにロイドは何も言えなくなった……が、同時に疑問に思った。法条は「アギトを二人」と言った。

それを聞いてロイドの中で一つの答えが浮かんだが、それを認める気にはなれなかった。

 

「ま、待て!どういうことだ……!?」

「まだ分からないんですか?あなたが娘役に選んだ、アーニャという娘は……アギトです。」

「……ッ!!!」

「アーニャさんが、アギト……!?」

 

認めたくはなかったが、認めるしかなかった。アーニャはアギトであり、超能力者であることを。

思い当たる節は何度かあった。一人でクロスワードを解いたり、急に母親の存在を欲したり、急に甘えてきたり……

 

「二人の身柄はこちらで預かります。今回の件……上に報告しておきますよ、黄昏。『黄昏はアギトの力を独占するために、あのいばら姫と共謀して二人を束縛した』とね。今からどうなるか楽しみですよ。」

(これで私の勝ちだ、黄昏……!!)

 

法条は勝ちを確信していた。ずっと煮え湯を飲まされてきた……勝手に思っていたのだ。

そんな中、翔一とアーニャは無理やり車へと乗せられていた。

 

「ちちーっ!!ははーっ!!」

「ロイドさんっ!!ヨルさーんっ!!アーニャちゃんは大丈夫!俺が助けますから!だから、だから二人は……ッ!!?」

 

翔一はロイドとヨルに何かを訴えかけた。しかしその途中で睡眠薬をかがされてしまい、フッと意識を失ってしまった。アーニャも同じく睡眠薬をかがされ、眠っていた。

二人を乗せた車はそのまま走り去ってしまった。

取り残されたロイドとヨルは、何もできずその場で膝をついていた。二人が本気を出せば、あの場で二人を助けられたかもしれない。だが動けなかった。

娘のアーニャがアギトで、超能力者だった……その事実に、どうすればいいのか分からなくなり、ただ困惑するしかなかった。

 

「う…うう……!うおおおおおおおおおおお……!!!」

 

ロイドの悲痛の叫びが、港にこだました……

 

 

 

 




アギトの最終フォーム(名前は今は伏せます)は急章のクライマックスで出す予定でしたが、原作の「仮面ライダーアギト」でも唐突に出てきたので、それをリスペクトして今回、顔出しということで出しました。

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