SPY×AGITΩ   作:ぴりもに

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いよいよ最終章!多分、他の章よりかは短くなるかな、と思います。




最終章「目覚めよ、その魂」
第54話「真心を込めて」


 

その日、翔一を始めとした「アギトの会」のメンバー達は近所の喫茶店に集合していた。

 

「で、今日は何の用だよ?津上先輩。」

「フフッ……」

 

グリムが尋ねると、翔一はニコッと笑った。

 

「アーニャちゃんまでつれて……」

 

翔一の隣にはアーニャが座っていた。アーニャも翔一同様にニコニコ笑っていた。

 

「えー、今回!アーニャちゃんを正式にアギトの会のメンバーにすることを決定しました!」

「えっへん!」

『おおーっ……』

 

アーニャはポケットから、翔一からもらったと思われるアギトの会の会員証を取り出してみんなに見せた。

 

「えへへ……アーニャのおたから!」

 

アーニャは会員証を見て、ニコニコ笑っている。

以前から入りたいとは思っていたが、自分の正体がバレてしまうので言い出せなかった。しかし、皆にそれがバレてしまった今となっては、気兼ねなく会員になれた。

 

「ショーイチ、あざざます!アーニャ、だいじにする!」

「うんっ!喜んでくれてよかった!」

 

そもそも「アギトの会」に誘ってくれたのは翔一だった。アーニャはなおのこと会員証をギュッと大事そうに抱きしめた。

 

「よかったね、アーニャちゃん。」

「ヒヒッ、俺の後輩としてこき使ってやるからな。覚悟しろよ?」

 

その様子をフリッドはコーヒーを飲みながら、グリムはサンドイッチを頬張りながら微笑ましく見ていた。

しかし、ユーリはどこか不服そうだった。

 

「ちょっと待て……今、正式って言った?え?じゃあ、こいつ……補欠の僕より上!?」

 

アーニャの会員証をよく見ると、確かに名前の頭の部分に「補欠」と書かれていない正式のものだった。ユーリのものには「補欠」と書いてあるにもかかわらずだ。

 

「だって、ユーリさんアギトじゃないじゃないですか。」

「だからってこんな扱いないだろ!僕、こいつより立場下かよ!?」

「フッ……」

(アーニャ、おじよりえらい……)

 

自分の方が立場が上だと知り、アーニャは勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。

その顔を見て、ユーリは悔しそうに歯ぎしりを立てた。と、同時にグリムは吹き出した。

 

「ブフッ!!お、お前小学生より立場下かよっ!!ぶははははははははっ!!傑作だなこりゃ!!ヒーヒッヒッヒッヒッ!!」

 

「アギトの会」においてユーリが一番立場が下……それが面白いのかグリムは腹を抑えて大爆笑した。

しかし、当然ユーリは怒りを募らせた。

 

「こ、このクソガキッ!」

「やんのかよ補欠ちゃんがよぉ!」

 

ユーリは怒り、グリムの胸倉をつかんだ。それに対しグリムは喧嘩腰になって突っかかろうとする。

しかし、喧嘩が始まろうとした瞬間、フリッドが間に入って二人を止めた。

 

「やめなさい二人とも!ところで津上君、今日呼んだのはアーニャちゃんのことだけか?」

 

フリッドは話題を変えて翔一に話しかけた。

すると、翔一はスッと息を整え語り始めた。

 

「実は……ロイドさんとヨルさんにプレゼントをあげたいんです。」

「プレゼント?」

「はい!俺、二人が本物の夫婦になってほしいってずっと思ってました。それが、ようやく本物になって……俺、滅茶苦茶嬉しいんです!だから、本物になったお祝いにプレゼントしたくて……」

 

翔一の話を聞き、3人はロイドとヨルの顔を思い浮かべた。二人が仮面夫婦だということはここ最近になって知った(フリッドは前から知ってた)。

それが本物の家族になったことは喜ばしいことだった。

 

「そうだな……あの二人の記念日だ。それぞれプレゼントを用意しよう!」

「ち、ちょい待て!」

 

その時、グリムが声を上げた。

 

「そ、それ、俺達一人一人渡す感じか……?」

「そうだな……俺と津上君がロイド君に渡して、ユーリ君とグリムがヨルさんに渡す……とかでも……」

「そ、そう言われてもよぉ……!」

 

グリムはいつもと違い、珍しく慌てていた。

その様子に他の4人は首を傾げた。

 

「お、俺……プレゼントなんて、何選べばいいのかわかんねぇよ……」

 

さらにグリムは弱々しくなり、声もだんだんと小さくなっていった。顔もどこか不安そうだ。

そんなグリムを見て、先ほどの仕返しをするようにユーリはニヤリと笑った。

 

「フフッ、まぁお前みたいなガサツな奴に、姉さんが喜ぶようなプレゼントなんて選べないだろうな!」

「ッ!」

「コラ、ユーリ君!」

「ふんっ!」

 

ユーリは鼻息をフンと鳴らし、そっぽを向いた。すると、グリムはポケットから財布を取り出し、バンッと小銭をテーブルに叩きつけた。

 

「……帰る。」

 

そう言って、グリムはどこか寂し気な表情を見せながら拗ねて喫茶店を出て行ってしまった。

 

「……ユーリ君、ちょっと大人気ないんじゃないか?」

「フリッドさんが甘すぎるんですよ!あーいう生意気な奴は、もっと叱った方がいいですよ!」

「グリム、ちゃんとプレゼント選んでくれるといいですけど……」

 

────────────────────────

 

(ケッ、なにがプレゼントだよ……くっだらねぇ……)

 

グリムは不機嫌そうに街を歩き、自分のマンションへと向かっていた。

しかし、本当はプレゼントをあげたいと思っていた。記念日だから、というだけでなく、日頃の感謝の印として好きな人にプレゼントを渡したいと思っていた。

しかし、グリムはヨルに何をあげても喜ばないと勝手に思っていた。

 

(先輩は、ロイドからのプレゼントの方が絶対喜ぶに決まってる……俺なんかのプレゼントなんて……)

 

もちろん、ヨルに何をプレゼントしても喜ぶはずだろうが、今のグリムにはそう考えられず思い込みだけが募った。

そして考えているうちに家に着き、ソファに横になった。

 

 

(プレゼントかぁ……女は何渡したら喜ぶんだ……?)

 

ソファで寝転がりながら考えていると、家に電話がかかってきた。

グリムは起き上がり、電話に出た。

 

「はい、もしもし。」

『どうも、グリム君。』

「……店長か。」

 

電話の相手は「ガーデン」の取締役である店長。グリムはその声を聞いておおよその用事を察した。

 

「仕事か?」

『ええ、いつも通りロイヤルホテルで。』

「わかった。……なぁ、店長。女って……何渡したら喜ぶんだ?」

 

グリムは店長に尋ねた。人生経験が豊富そうな店長ならば、何かアドバイスをもらえると思ったのだ。

すると、店長は電話越しに笑った。

 

『もしや、いばら姫にですか?』

「なっ……!?そ、そんなこと…!!」

『言わなくても分かりますよ。あなたはよく彼女のことを見てましたから。』

 

グリムはその瞬間、顔が真っ赤に染まった。

図星だった。グリムはよくヨルのことを目で追っていた。好きな異性のことが気になるという、恋する少年にはよくあることだが、それを他人から言われると恥ずかしさがあった。

 

『そうですね…女性ならやはりアクセサリーとかでしょうか。髪飾りやネックレス…色々ありますよ。』

「アクセサリーか……わかった、ありがとな。……それから、もう二度とヨル先輩のこと、“いばら姫“って呼ぶんじゃねぇ!」

 

グリムは怒鳴り声を上げた。店長がヨルのことを「いばら姫」と呼んだのが気に食わなかったのだ。ヨルは「ガーデン」をクビになって、もういばら姫ではなくなった。普通の女になった。

だからこそ、グリムはヨルのことを「いばら姫」とは呼んでほしくないと思っていた。

 

『そうでしたね……失礼。では、頼みましたよグリム君。』

 

店長は一言謝ると、そのまま電話を切った。

そんな店長に対し、グリムは舌打ちを打った。

 

「チッ、本当にわかってんのかよ…あの褐色ジジイ。」

 

────────────────────────

 

仕事に出たグリムは、ロイヤルホテルに向かう前にアクセサリーショップに立ち寄った。そこで髪飾りを買った。

花の形をした髪飾りで、花はタンポポの形をしていた。

別に花の種類はなんでもよかったが、店員に聞いたところこれが一番人気だと言っていたので、これを選んだ。

 

そして、ロイヤルホテル……

 

「な、なんだお前は!?」

「どーも、売国糞野郎ども。今日はあんまり時間ないもんでな……サクッと終わらせてやる。」

 

ヨルに早くプレゼントを渡したいグリムは早速トマホークを両手に持ち、ターゲットがいる敵陣の中に突っ込んでいった。

そんな中で、グリムはヨルに何と言ってプレゼントを渡そうか考えていた。

 

(ヨル先輩……俺はアンタほど国のために戦おうと思わなかったし、養う家族もいなかった。ただ生きるため、ただストレス解消のために俺は殺しの仕事をしてきた。言っちまえば、俺はクズだ。でも……そんな俺を、アンタは受け入れてくれた。アンタが俺を人間にしてくれた!だから、これは精一杯のお礼だ。受け取って……)

 

バキッ!

 

(く、れ……!?)

 

その時、嫌な音が響いた。

相手のSPが撃った銃弾をよけた際、銃弾がグリムの上着のポケットを貫通した。そのポケットの中には、先ほど買った髪飾りがあった。

グリムは慌てて髪飾りを取り出した。その瞬間、目を見開いた。

髪飾りが入った包みはグチャグチャになり、中でカラカラ…と何かが転がるような音が聞こえた。

 

「あ、あ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

思わず叫んでしまった。何故ポケットに入れたまま来てしまったのか、何故仕事が終わった後に買いに行かなかったのか……様々な後悔が押し寄せるなか、同時に怒りが込み上げてきた。

 

「てめぇら……!!グチャグチャにしてやる……っ!!死ねぇぇぇぇぇ!!!」

 

グリムは瞬く間にその場にいた全員を惨殺した。それだけでは飽き足らず、怒りをぶつけるように全員を原型がなくなるまで、言葉通りグチャグチャにした。

現場は凄惨な状態になり、グリムは返り血を全身に浴びながら、その場に膝をついた。

 

「ちくしょう……!ちくしょうっ!!」

 

グリムは両目に涙を溜め、悔しそうに床を殴った……

 

────────────────────────

 

仕事を終え、返り血がついた服を着替えたグリムはヨルの家の方に進んでいた。しかし、その足取りは重かった。

マンションの玄関に入ろうとしても出来なかった。ボロボロのプレゼントを渡すわけにもいかない、最初からプレゼントを渡さない…というのも気が引ける。

 

「クッソ……」

 

結局は入れず、外から部屋の窓を見上げるぐらいしかできなかった。

グリムは諦め、そのまま帰ろうとし始めた。しかし、

 

「グリム君!」

 

後ろからグリムを呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、そこにはヨルがいた。

 

「先輩……」

「窓からグリム君が見えたから……フリッドさんとユーリ、もう来てますよ!みんなで一緒にご飯食べましょう?」

 

優しい言葉をかけられ、グリムは何も言えなくなった。言葉を声に出してしまえば、すぐにでも泣いてしまいそうな予感がした。だからこそ何も言わなかった。

そんなグリムの気持ちなど分からず、ヨルは顔を覗き込んだ。

 

「どうしたんですか……?また心がグチャグチャになっちゃったんですか?大丈夫です!今度はみんなでグリム君の心にアイロンをかけてあげますからね!」

 

ヨルはニコッと笑い、グリムの頭を撫でてきた。その優しさに、グリムはますます泣きそうになった。

そしてついに……

 

「先輩……ごめんっ……!」

 

グリムは謝りながらポケットからグチャグチャになった包みを取り出した。

 

「俺……先輩にプレゼント、あげたかった……!でも、こんなになって……ごめん……!」

 

グリムの目には涙が浮かんでいた。ヨルはグチャグチャになった包みを受け取り、中を開けた。中に入っていた髪飾りは壊れており、かろうじて花の部分だけが残っている状態だった。

それを見てグリムはより一層絶望した。幻滅されると思ったのだ。

しかし、ヨルは……

 

「グリム君、紐かチェーンはありますか?」

「へ?えーと……これでいいか?」

 

グリムは戸惑いながらも、着ているコートのフードから伸びる紐を抜き取り、ヨルに手渡した。すると、ヨルはそれを、髪飾りの花の部分につなぎ合わせた。そしてそれを首にかけた。

 

「ほら!ネックレスになりましたよ!」

「あ……」

 

自信満々に見せてくるヨルに、グリムは声を上げた。紐は太い上に、長さが微妙に短いが、それは紛れもなくタンポポの飾りがついたネックレスだった。

すると、ヨルはそのタンポポの飾りを手にとった。

 

「これ、タンポポですよね。タンポポの花言葉には、『真心の愛』って意味があるんです。この飾りには、グリム君の真心がちゃんと籠ってます!私、すっごく嬉しいです!」

「先輩……!」

「一緒に家に入りましょ?お腹空いたでしょう?」

「う…うんっ!」

 

グリムはすっかり泣き止み、ヨルに手を引かれて歩き始めた。

その時、グリムは自分の考えを恥じた。ヨルはプレゼントの形がどうなったからといって、それをけなしたり、幻滅するような人物ではない。受け入れてくれる優しい女性だった。

グリムはその優しさを受けて、改めてヨルのことを惚れ直した。

 

────────────────────────

 

「あー、食った食った。」

「ったく、一番遅れた癖に一番食いやがって……」

 

家の中に入ったグリムは、遅れてきたことなど気にせず、翔一の料理をたらふく食べていた。

そんな中、ロイドは席から立ちあがった。

 

「……みんな、今日はありがとう。色々とプレゼントをくれて……それで……なんだ、みんなに言わなきゃいけないことがあるんだ。」

『?』

「翔一君とアーニャにはそれとなく伝えたんだが……実は、俺達フォージャー家はこの家を出ることにした!」

『………はぁっ!!?』

 

一瞬思考が停止したが、ロイドの突然の告白にフリッド、グリム、ユーリの3人は驚いて声を上げた。

 

「仕事も辞める。もう、俺もヨルさんも職場に辞表を出した。新しい仕事を始めるためにな……」

「あ、新しい仕事って……何をするんだ?」

「実は、喫茶店を開こうと思ってな……」

 

ロイドはそう言うと、照れくさそうに笑い、ヨルの肩を抱いて自分の方に引き寄せた。

すると二人は顔を見合わせて笑った。

 

「俺とヨルさん……二人で決めたんだ。本物の家族になって、第2の人生をスタートするために……」

「で、でも喫茶店なんて、土地のアテとか……!」

 

ユーリは不安げな顔でロイドに尋ねる。すると、ロイドは棚から一枚の紙を取り出した。それは土地の住所と地図が描かれていた。

 

「これ、結構いい土地じゃないか?駅から近いし、広さもまぁまぁ……ここに住居兼店を作ったとしても十分足りるな。」

「でも、こういうとこ高いんじゃ……あー、でも……アンタら二人金持ってそうだもんな。物欲なさそうだし。」

 

グリムはロイドとヨル、二人の顔を交互に見ながら呟いた。対し二人は苦笑いを浮かべた。

グリムの言ったことはあながち間違いでもなかった。ロイドは金を持っていても任務の連続で使う暇などなかったため、結果として貯金はそこそこある。ヨルも決して高級志向でなかったため、意外に小金を貯めこんでいた。

 

「はは……でも、この土地結構安かったんだ。掘り出し物ってやつでな。」

 

そう言ったロイドだったが、ロイドは知らなかった。この土地が安いのは、決して掘り出し物というワケではなく……喫茶店を作るために土地を探していると聞いたフィオナが、この土地の地主と不動産屋を脅して安くしたということを……

 

「で、でもさ……やっていけるの?喫茶店なんて……!」

「ロイドさんは料理上手です!それに、みんな一緒なら大丈夫です!」

「そ、そうかもしれないけど……で、でも!」

 

納得がいかないユーリは抗議しようと声を上げる。そこに、

 

「いいじゃねぇか。」

 

グリムが遮るように大声を上げた。

 

「二人で・・・家族で決めたことなんだろ?それを部外者である俺達が止める理由なんてねぇよ。」

「……」

 

ユーリは何も言えなかったが、不安だった。聞きかじりで聞いた話だが、飲食店の経営は難しいと聞いたことがあったからだ。安定するかも分からない仕事を姉にさせるなど、ユーリにとって不安しかなかった。

その気持ちはフリッドとグリムも同じだった。しかし、ここでいくら否定したとしても、それはロイド達にとってプラスにならない。決意を鈍らせることになる。

 

「もし何かあったら、俺達を頼ってくれよ。」

「ああ、協力するさ。」

 

フリッドとグリムは微笑みながらロイド達に言った。

笑って背中を押して送り出してやることが、自分達のやるべきことだと理解していた。

そしてユーリも……

 

「ね、姉さん!辛くなったら言ってね!僕、いくらでも力になるし、お金もいくらでも貸すから!」

「ユーリ……ありがとう……」

 

フリッドとグリムの気持ちに気づき、ユーリもまた背中を押そうとした。

こうしてロイド達は仲間に背中を押され、第2の人生への舵を切っていく……

 

────────────────────────

 

食事会が終わり、フリッド達はそれぞれの家に帰っていった。

そのころロイド達は……

 

「店の名前、メニュー、間取り、道具の配置……やることは山ほどある。みんな、これから忙しくなるぞ!」

「はい!」

「うぃっ!」

「ボフッ!」

 

ロイドの言葉に意気揚々と返事をする二人と一匹だったが、その時ロイドは一人足りないことに気づいた。

 

「翔一君は・・・?」

「ロイドさん!」

 

すると、寝室から翔一が笑顔を浮かべながら出てきた。その手には薄い手帳のようなものが握られていた。

 

「これ、プレゼント。」

「これは・・・?」

「俺の通帳です!そんなに入ってないですけど、全然使ってませんし、好きに使ってください!」

「な、何を言ってるんだ!?こ、これは君が稼いだ金だろう!?」

 

突然通帳を渡され、「好きに使え」と言われてロイドは動揺していた。ヨルも同じく動揺していた。

 

「そ、そうですよ!翔一さんが頑張って働いて稼いだお金なんですから、好きなことに使ってください!」

「……だからですよ。これが、俺の思いつく『好きなこと』です!」

「翔一さん……」

 

翔一の一言に、その場の空気がシン…と静まり返った。

 

「俺、お金って・・・大事な人のために使えば、価値は何倍にもなると思うんです。これが俺にとって、一番価値があることです。」

「翔一君……!」

 

ロイドは目頭が熱くなった。翔一が自分達のことを大事に思っていたことは知っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。しかし、それを悟られまいと、ロイドは翔一の手を握った。

 

「……ありがとう、翔一君。」

「はい!」

 

その光景を見て、ヨルとアーニャは微笑んだ。しかし、唯一ボンドだけは不安そうな顔をしていた。

アーニャは首を傾げて不思議に思っていた。ボンドが何を考えているのか知ろうと、ボンドの心を読んだ。

しかし、そこに写ったのは、頭の中に写った映像は凄惨そのものだった。

ギルスは全身を紫色の炎で火炙りになり、ルデスは左腕を切り飛ばされ、ユーリは全身を氷漬けにされ……最後に翔一、アギトは…胸に剣を突き刺され、糸が切れた人形のように項垂れている。

そして、この凄惨な光景を作ったのは……アギト、白いアギト……

 

「……ッ!!!?」

 

その光景を見た瞬間、アーニャは声が出そうになった。全身に冷や汗が噴き出し、体は震えた。そして例えようのない恐怖が全身を襲った。

だが、アーニャはブンブンと首を横に振った。アーニャは信じている。どんな絶望が来ようと、翔一達が絶望を希望に変えてくれると信じているからだ。

 

 

 

 




おまけ「かわいい・・・?」

「姉さんもフリッドさんも、グリムのこと可愛がってますけど、アイツのどこが可愛いんですか?」
「見て分からないか?」
「ほら、ユーリ!ちゃんと見なさい!」

グリムが可愛がられているのが理解できないユーリに、フリッドとヨルは食事しているグリムの姿を見せた。
グリムはハンバーグを大雑把に切って、それを口いっぱいに頬張る。その顔はなんとも幸せそうだ。付け合わせのパンも、取られまいと両手で持って齧り付く。付け合わせのポテトやニンジンもいっぺんに口に放り込んで頬張る。肉が少なくなると、名残惜しそうに見つめながら食べた。
そして、キンキンに冷えた瓶のコーラをゴキュゴキュ、と飲んでいった。

『可愛くない?』
「さっぱりわかりません。」

「いっぱいご飯食べる子は可愛い」ということを伝えたかったヨルとフリッドだったが、ユーリには何一つ理解できなかったのだった。


────────────────────────

グリムは最初、皮肉屋的なキャラとして作るはずだったのですが、どうも愛嬌がないので、半分萌えキャラとして描いてます。
……これ、萌えるのかなぁ……

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